著者
竹田 沙記 中﨑 千尋 伊藤 健人 能都 和貴 本屋敷 敏雄
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

【目的】茶に含まれるカテキン類は、様々な生理作用が知られている。特に生理活性が高く、含有の多いものとしてエピガロカテキンガレートがあるが、体内への吸収率は低いと考えられている。また、茶に含まれる成分にカフェインがあるが、カフェインはカテキン類と容易に複合体を形成することが分かっており、またカフェインは同時摂取した成分の体内滞留時間、濃度に変化を与えることも知られている。カフェインがカテキン類の吸収率を増加させるのであれば、茶の生理活性を検討するためには複合体形成による体内動態への影響を調べることが必須と考える。カテキンとカフェイン複合体を投与し、体内動態について検討を行うこととした。【方法】カテキン類とカフェインがモル比1:1となるように複合体を調製後、8週齢のWistar/ST系雄性ラットを無作為に群に分け、複合体を経口投与した。投与後15、30、60、90分と経時的に血漿を採取した。体内のカフェイン量の濃度変化についてLC/MSを用いて測定した。【結果・考察】複合体投与によりカテキン類の種類による、カフェイン濃度の体内濃度に対する影響が示唆された。
著者
藤田 誠
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.802-804, 2015-10-20 (Released:2016-10-20)

本研究は,日本農芸化学会2015年度(平成27年度)大会(開催地:岡山大学津島キャンパス)「ジュニア農芸化学会2015」において発表されたものである.アミガサハゴロモは,半翅目ハゴロモ科に属する昆虫で,本州,四国,九州の常緑照葉樹林に生息し,幼虫・成虫共に主にカシ類の葉や茎から吸汁して生活する.1~5齢幼虫は腹部先端からロウ物質を分泌し,このロウ物質は羽毛や花の雄しべに似た形になる(図1).発表者は小学2年生のときにその不思議な姿を見て,ロウ物質の形が作られる仕組みや役割に興味をもった.図鑑で調べたが生態や形態に関する詳しい記述がなかったことから自分で調べようと考え,長年にわたって研究を続けてきたという.今回発表されたのはその最近の成果の一端である.

4 0 0 0 OA 夢とまじない

著者
花部 英雄
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.174, pp.57-67, 2012-03-30

四五〇〇もの俗信を集めた「北安曇郡郷土誌稿」は、日本の俗信研究の先駆けとなる資料集である。その中の「夢合せ」の項に二〇〇ほどの夢にかかわる俗信がある。まずはこの俗信のうち「夢の予兆」にあたる内容を分析し、民俗としての夢の一般的傾向を明らかにする。次に、「夢の呪い」について、夢を見る以前、以後とに分けてその内容を検討し、夢をどのように受けとめ、それに対応しているかを確認する。さらに呪いのうち韻文形式をとる三首の歌を話題にして、全国的事例からその内容、意味を分析する。そして、この呪い歌の流通の背景に専門の呪術者の関与があることを例証し、呪術儀礼の場で行なわれ、やがて民間に降下してきたことを跡づける。続いて、呪文の「悪夢着草木好夢滅珠玉」を話題にする。福島県の山都町史に悪夢を見た朝、北に向かい「悪夢ジャク、ソラムク、コウムジョウ」と三回唱えればよいという。前述の呪文を耳に聞いた形で伝えてきたものと思われる。この呪文が求菩提山修験の符呪集にあり、修験山伏がこの祈祷にかかわってきたことがわかる。同じ呪文が、陰陽道系の呪術を記した南北朝時代の『二中歴』にあり、ここでは人形に悪夢を付着させて水に流したり、焼却したりする作法が記されている。宮廷の陰陽道儀礼の中で、「悪夢は草木に着け」の呪文が唱えられてきたのであろう。平安時代の『簾中抄』や『口遊』では、桑の木に悪夢を語るとある。なぜ桑の木に悪夢を語るのが悪夢祓いになるのか。現行の民俗を見ていくと、奄美のクチタヴェ(呪文)に好い夢は残り悪い夢は草の葉に止まれというのがある。また、南天に夢を語り、揺するという例もある。南天は「難転」の語呂合せであり、さまざまな呪術儀礼に用いられるが、古くは桑が悪夢消滅の草木であった。桑は蚕の食物であり、悪夢を桑の葉に付着させ、蚕に食べてもらうことで悪夢を消滅させるというのがその原義にあったのではないか、というのが本稿の結論となる。
著者
小川 崇
出版者
日本社会教育学会
雑誌
日本社会教育学会紀要 (ISSN:03862844)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.47-56, 1999 (Released:2021-02-25)
参考文献数
61

The aim of this paper is to clarify the position and characteristics of Political Education in the activities of The Woman's Suffrage League of Japan (WSL) which was organized to agitate for women's suffrage in 1924.   The most important aim of WSL was to achieve women's suffrage. Therefore they lobbied the Diet. They assumed that Political Education would become more familiar to women and a more important part of their activities after they got the vote. The movement for women's suffrage made progress in this period.   After “Mansyu-Jihen” (1931), however, lobbying for women's suffrage at the Diet began to decline gradually. To cope with this difficult situation, WSL began to cooperate with local governments instead of going directly to the Diet During this process, they realized that connecting Political Education with the everyday lives of women would arouse their political interest.   This Political Education was meant to increase the popularity of the movement to get women's suffrage by focusing on the everyday lives which women were living. It was also meant to convert their individual demands into political opinions, through their everyday lives.
著者
小林 朋佳 稲垣 真澄 軍司 敦子 矢田部清美 北 洋輔 加我 牧子 後藤 隆章 小池 敏英
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.465-470, 2011 (Released:2014-12-25)
参考文献数
20
被引用文献数
3

数字や線画を単独あるいは交互に呼称する課題を通常級在籍中の小学1~6年生207名に行い, ひらがな音読能力との関連を検討した. 数字呼称時間は小学3~4年生まで短縮し続け, 単音音読時間と相関していた. 一方, 線画呼称は学童期の前半で特に短縮変化が目立ち, 以降はゆるやかに変化した. 交互課題はいずれの年齢においても単独呼称より時間がかかったが, エラーがほとんどなく施行できた. 呼称能力はひらがな音読能力と関連性がみられ, 交互課題は単語音読とより強く相関していた. 日本語話者の発達性読み書き障害の病態解明の一助として, 音読異常を持つ小児の数字・線画呼称スピードを今後検討する必要があると思われる.
著者
齋藤 康一郎
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.116, no.12, pp.1342-1343, 2013-12-20 (Released:2014-02-22)
参考文献数
3
被引用文献数
1
著者
植田 睦之 馬田 勝義 三田 長久
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.S9-S13, 2011 (Released:2011-09-11)
参考文献数
6

洋上風力発電のバードストライクのリスクの高い種を検討する上の一資料として長崎県池島近海において2009年11月から2011年1月にかけて海上を飛行する鳥類の飛行高度を調査した。海上30m~150mをバードストライクの危険のある高さと想定すると,オオミズナギドリ Calonectris leucomelas,カツオドリ Sula leucogaster,ウミネコ Larus crassirostris はそれより低い高さを,スズメ目の鳥類はそれより高い高さを主に飛ぶため,バードストライクの危険性は低いと考えられたが,ウミウ Phalacrocorax capillatus,セグロカモメ L. schistisagus,ミサゴ Pandion haliaetus,トビ Milvus migrans はバードストライクの危険性が高いと考えられた。
著者
武田 憲昭
出版者
Japan Otological Society
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.147-149, 2000-07-25 (Released:2011-06-17)
参考文献数
17

For the treatment of patients with Meniere's disease in the acute period, randomized controlled trials showed that anti-vertigo drugs, such as diphenidol and betahistine, are significantly effective. In the chronic period, Meniere's disease is specifically managed by osmotic diuretic, isosorbide. The dose comparative study showed that its opitimal dose is 90ml/day. Despite many controversies against endolymphatic sac surgery, including the Danish sham surgery study suggesting a placebo effect of mastoidectomy, the efficacy of the procedure is widely accepted. However, it is not clear that endolymphatic sac surgery alters the natural history of Meniere's disease in a long term.
著者
松田 千広
出版者
東洋英和女学院大学大学院
雑誌
東洋英和大学院紀要 = The Journal of the Graduate School of Toyo Eiwa University (ISSN:13497715)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.47-65, 2015-03-15

Assuming that people have three predominant perception and sensation systems, visual, auditory and kinestic, the research examined the relationship between stress coping style and the superiority of the three respective perception and sensation systems. The research conducted a survey of 59 women college students, postgraduate students and adults varying in age from 18 to 51.First of all, it was confirmed that the women could be classified into three groups, namely “visual predominant group”, “auditory predominant group” and “kinestic predominant group.” As for the method of measuring and classifying the superiority, it was found that previous research using boththe “eye movement method” and the “questionnaire method” were inappropriate. Therefore, based on cognition linguistics, this research attempted to classify the superiority of perception and sensation by means of “predicative words,” which form a sensory language. As a result, the women could be successfully classified into the three superiority groups, “visual predominant,” “auditory predominant,” and “kinestic predominant” based on the predicative words.Then, the research used “Tri-axial Coping Scale” (Kamimura, 1995) to statistically examine the relationship between each superiority group and the stress coping actions. As per the examination, it was found that “kinestic predominant group” shows a high “activeness” for problem solving.The classification of the superiority groups of perception and sensation using predicative words has potential as an assessment method in clinical situations where other tools and devices cannot be used. This research therefore provides a new perspective that can be utilized for clinical activities in future.

4 0 0 0 OA 光山押形

著者
刀剣会本部 編
出版者
刀剣会本部
巻号頁・発行日
vol.坤, 1918
著者
益子 洋人
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.133-145, 2013 (Released:2013-10-10)
参考文献数
32
被引用文献数
8 1

本研究では, 過剰適応を「関係維持・対立回避的行動」と「本来感」から捉えた。本研究の目的は, 自他双方が満足できる葛藤解決を目指す「統合的葛藤解決スキル」をとる程度と, 関係維持・対立回避的行動, 本来感との関連を検討することであった。予備調査では, 大学生429名の回答を分析し, 「丁寧な自己表現」「粘り強さ」「受容・共感」「統合的志向」からなる統合的葛藤解決スキル尺度(Integrating Conflict Resolution Skills Scale ; ICRS-S)を開発した。α係数や再検査信頼性の値から, 一定の信頼性が確認された。また, 社会的スキル, 友人満足感, 対人葛藤方略スタイルとの相関分析から, 一定の妥当性が確認された。本調査では, 大学生197名の回答を分析し, 統合的葛藤解決スキルと関係維持・対立回避的行動, 本来感の関連を検討した。共分散構造分析の結果, 統合的葛藤解決スキルは本来感を向上させ, 過剰適応者の適応を促進する可能性が示唆された。
著者
船水 直子
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.321-355, 2020-09-30

A・S・バイアットは『千夜一夜物語』についてのエッセイの中で,次々に語られる物語は無限の表徴であり,永遠に繫がる点で死んでも遺伝子が受け継がれていく人間と同じだと述べる。同じ頃に『ナイチンゲールの目瓶の中の魔神:五つの御伽話』は書かれた。『ガラスの棺』の仕立て屋は,お姫様と結婚し弟王子も含め三人で暮らすことで豊穣を手にする。『ゴドの話』では付け足しのように語られる鍛冶屋の娘の消息の中に豊穣がある。『長女のお姫様の物語』では王国にとっては余分な存在となった姫が,森の老婆との心豊かな暮らしを手に入れる。『竜の息』では巨大竜が村を壊滅させた話が代々伝えられ,村人に真の豊かさを教える。『ナイチンゲール目瓶の中の魔神』では女,妻,母の役割を終えた主人公が魔神と出会い永遠に繫がる豊かな物語を手に入れる。余分な存在として運命に任せ生きることで,永遠に繫がる豊穣の物語を手にすることができるというテーマがこの短編集を貫いている。