著者
富澤 達三
出版者
東京大学大学院総合文化研究科附属アメリカ太平洋地域研究センター
雑誌
アメリカ太平洋研究 (ISSN:13462989)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.31-40, 2005-03 (Released:2010-03-16)

1. Kawaraban in the Edo Period In the last days of the Tokugawa Shogunate, many kinds of Kawaraban (used as News sources of the commonalty) were published in the metropolis like Edo and Osaka. In the past, it was said that the oldest Kawaraban prints were published in the days of the Osaka War (1615), but the recent research has brought a new theory that they were made in earlier period. Kawaraban had several distinctive features. * news were their main contents * people paid money to read them * instant prints* publisher was anonymous * no fixed format and low quality prints There were many kinds of news printed in the Kawaraban such as catastrophe (fire, earthquake and eruption), murder cases (Katakiuchi (vengeance) or Shinju (double suicide)), strange incidents (appearance of monster or ghost), and the arrival of the foreign ships called Kurofune. The Edo-bakufu strictly prohibited production and selling of the prints that dealt with such topics. But in the end of Edo-era, enormous amount of public prints were produced for the mass while the censorships by Edo-bakufu became nominal, and Kawaraban were published openly. In particular, big fires broke out frequently in Edo and the Kawaraban often reported their damages. The disaster information of the Kawaraban was relatively credible, and therefore served to calm people's fears and also transmitted the situations of the damages from Edo to provinces. 2. Kawaraban of Black Ships (Kurofune Kawaraban) In 1853 (Kaei-6), Admiral Perry voyaged to Uraga, and urged Japan to start commerce. Edo was thrown into an uproar, and hundreds of Kawaraban which informed this incident were produced. These "Kurofune Kawaraban" told the people the circumstance by the stereotypical images and some fultual information. The Kurofune Kawaraban were non-censored illegal prints, and many of them were one-sheet-type. It was rare that such printings containing political information were published in a large quantity and were purchased by the general public. In this paper, I will analyze the image of the Kurofune Kawaraban, and examine their roles in the public world.
著者
Fukumoto T. Hayashi N. Sasamoto Hamako
出版者
Springer
雑誌
Planta (ISSN:00320935)
巻号頁・発行日
vol.223, no.1, pp.40-45, 2005-12
被引用文献数
12

Efficiency of novel fiber formation was much improved in protoplast culture of embryogenic cells (ECs) of a conifer, Larix leptolepis (Sieb. et Zucc.) Gord., by pre-culturing ECs in a medium containing a high concentration of glutamine (13.7 mM). The fibrillar substructures of large and elongated fibers of protoplasts isolated from Larix ECs were investigated by laser confocal scanning microscopy (LCSM) after Aniline Blue staining and atomic force microscopy (AFM) using a micromanipulator without any pre-treatment. Fibers were composed of bundles of fibrils and subfibrils, whose diameters were defined as 0.7 and 0.17 mu m, respectively, by image analysis after LCSM and AFM. These fibers were proven to be composed of callose by using specific degrading enzymes for beta-1,4-glucan and beta-1,3-glucan.
著者
今水 寛 宇野 洋二 川人 光男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.932-941, 1996-05-25
被引用文献数
14

計算論的なアプローチでは, 生体が外部座標(視覚の作業座標など)と身体座標(関節角や運動指令など)との間の座標変換に対応する内部モデルを獲得し, 速く正確な運動制御を可能にしていると考えられている. 本研究では身体座標を含む座標変換の内部モデルが適応的に変化するかどうかを調べるため, 位置計測装置とCRT画面を用いて, 肘と肩の関節角をそれぞれ0.5倍, 1.25倍するように視覚環境を変換した条件下で, 被験者に繰り返し到達運動の訓練を行わせた. 到達運動の正確さは次第に向上し, 学習が起きていたことを示していた. 更に, 実際に使っている腕とは反対側の腕の関節角変換を学習させたところ, 実際に使っている腕の関節角変換よりも難しかった. また, 実際に使っている腕の関節角変換を両腕で交互に学習するときには, 学習効果の両手間転移があることがわかった. 以上の結果は, 被験者が上記のような変換を身体座標での線形変換として学習していたこと, 中枢神経には身体座標を含む座標変換の内部モデルが存在し, 外部環境や筋骨格系の変化に応じて, 比較的短時間で適応的に変化することを示唆している.
著者
綱島 伸明 佐藤 洋一郎 横平 徳美 岡本 卓禰
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1995, no.1, 1995-03-27

マルチウィンドウ合成方式として広く用いられている描画時合成方式では,管理ソフトウェア(例えば,Xウィンドウシステムにおけるサーバ)において,ウィンドウ間の重なり処理や再描画処理が実行されるが,ウィンドウの移動やリサイズなどのように,短い時間間隔で連続的に要求が発生するウィンドウ操作の場合,各操作に伴うこれら2つの処理がこの時間間隔内に終了せず,連続的操作全体の実行時間がユーザの許容範囲を越えてしまう.一方,この問題点を緩和できる方式として拡張表示時合成方式が知られている.この方式では,各ウィンドウの画像(他のウィンドウに隠されている画像も含む)が別々のメモリに格納され,これらから同時に読み出した画像が,各ウィンドウの表示優先順位にもとづいてハードウェア的に合成される.従って,管理ソフトウェアにおける重なり処理は不要となるが,多数のウィンドウの表示を可能とするためには,メモリ量が膨大になる.本報告では,拡張表示時合成方式の利点を極力生かしつつ,メモリ量を大幅に低減することのできる合成方式を提案する.
著者
古川 浩 大崎 邦倫 赤岩 芳彦 清水 裕之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム
巻号頁・発行日
vol.93, no.255, pp.71-77, 1993-09-30

コードレス電話や無線LANなどの屋内無線通信システムを構築するにあたっては電波伝搬特性の解明が重要である。本論文では将来屋内無線通信に用いられると思われる準マイクロ波帯において中規模建物内での伝搬損推定とフェージング特性の調査を行なった。伝搬損の推定には次の4つのモードを考えた。(1)見通し内における低損失伝搬路伝搬波、(2)廊下伝搬波、(3)障害物を通り抜けた直接波、(4)建物再侵入波である。これらの伝搬モデルに必要なパラメータを実験から求め伝搬損の推定を行った。その結果平均誤差4.5dB前後で推定することができた。一方、フェージング特性についてはレベル分布とライスパラメータにより解析した。また、空間的に離した2本のアンテナに受信される信号の相関係数を測定した。その結果、見通し内のライスパラメータは約2、見通し外のライスパラメータは約1となることがわかった。ダイバシティ受信を行った場合2本のアンテナの相関が0.5以下となる場所率は80〜95%であることがわかった。
著者
菅沼 毅 浦 昭二
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.38, pp.1231-1232, 1989-03-15

通常、プログラマはロジックエラーを次のようにしてデバッグする。まず、プログラムを実行し制御の流れ・変数値の変化等の実行時情報を収集する。次にこれを仕様やプログラムとの比較により解析してバグ原因の仮説を立てる。そして再び情報収集・解析を行い、仮説の正しさ/誤りを調べる。この手続きによるバグの発見には豊富な経験や技術あるいは勘を要し、多くの試行錯誤を伴うため、初心者には困難である。そこで、「'エラー'とは、利用者の意図どうりにシステムが機能しない状態.'バグ'とは、エラーの発生し得る要因のうちソフトウェアに内在する原因.」という定義に立ち返って、エラーが発生した際のバグの発見・真の原因探索の支援方法について考える。従来の代表的なアプローチに対する批判点のうち本研究の着目点として次の2点を想定している。a)プログラムを静的なものとして捉えていること,b)プログラミングの意図を考慮していないこと。a)に関しては、インスツルメンテーションを用いた動特性データの保存により、対象をソースコードだけではなく、プログラムの動作・振舞いとする。b)に関しては、プログラムに込められた意図を、宣言的な表現を用いて記述することにより、処理の対象に加える。プログラムへの意図と実際の動作との間に存在する矛盾はプログラムが期待通りに動作していない点であり、すなわちバグである。 よってこの矛盾点を発見・報告することが出来ればデバッグ時の有力な情報に成ると考えられる。
著者
藤本 桂一 石川 智治 篠田 亮 宮原 誠
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. US, 超音波 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.596, pp.59-62, 2002-01-18

CD盤の構造・材質による音質の違いはCDの始まりの頃, ホットに議論された事はあるが明確な答えが出ないままに立ち消えになった.我々は, 高度感性情報を忠実に伝送し, 深々さ, 凄み, 等の"深い音楽"を伝達する目的の研究の中から, 信号の時間方向の伸び縮み歪み(jitter)が音質劣化の元凶であると推測するに至った.jitterに注目し, 注意深い観察から, 最終的には信号に何らかの問題が生じるとしても, 光学的な平均的とらえ方では, ピット毎の光反射の瞬時的あばれを測定できていない.一方, 機械的振動としてとらえると, 材質, 構造に起因するCD盤の光反射の瞬時的あばれを, 間接的ではあるが, モニターできると見通し, 実験, 考察をしてきた.その仮説は, 過去の種々の問題を説明しており, 矛盾は一つも起きていない.例えば, 音質上大きく違うのに, 反射率は, ほとんど変わらないが, 振動に関係する(アルミ箔の厚み)を計測すると二桁も違う, と言う結果が出ている.CD盤の材質, 構造, プロセスと, 高度感性情報の忠実な再現に関して報告する.CDの音質を向上させる大きなかぎと考えている.
著者
大和田 勇人 溝口 文雄
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.45-46, 1994-09-20

制約充足問題はAIの中心的問題の一つであり,例として設計,レイアウト問題等がある.制約充足問題とは,制約集合を充足する変数への値の割り当てを決定することであり,NP-完全なクラスに属する.そのため,近似的ではあるが効率のよい解法が求められている.例えば,制約充足問題の代表的な手法であるアーク無矛盾は局所的なものであり,後戻り探索を実施する前に局所的に矛盾するものを除去する.さらに,実問題を考えると,必要十分な制約集合を与えることは困難で,できるだけ多くの制約を充足するものを求めるといった部分制約充足問題も考慮しなければならない.我々は,住宅間取り問題に対して,このような手法を導入してきたが,満足のいく解法を得ることはできず,新たなアプローチを模索している.本研究はこのような問題意識から,制約充足だけでは解決できない部分を過去の事例を利用して,帰納学習により補完するという方法を考える.特に,正,負事例から論理プログラムを生成する帰納論理プログラミングを用いて,制約充足問題の近似解を求めるための規則を生成することを目指す.現状では,帰納論理プログラミングで用いられている相対最小汎化を制約論理プログラミングの枠組みから拡張し,システム化した.本稿ではその概要を報告する.
著者
野見山 寛之 満保 雅浩 静谷啓樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.108, pp.31-35, 1998-11-27

従来の電子透かし法が持っていた否認不可に係わる問題を解決するために、非対称電子透がし法が考案され、理論的な定義と、その具体的な構成例が示されている。しかし、最初に提案された非対称電子透かし法にはサーバの不正の余地が残されており、完全に安全だと言い切れないことが指摘されている。これに対応して、サーバの不正への対策を意図した具体的な電子透かし法が幾つが提案されている。ところが、非対称電子透かし法の定義自体の矛盾はまだ修正されていないため、本論文では、この修正を行う。加えて、今までに見過ごされているサーバの不正が存在することを指摘し、その一解決策を示す。このサーバの不正は、著者の知る限りにおいて、サーバの不正を考慮した各種の方式を含む、既存の全ての方式に共通に存在する不正である。In order to solve the problem of non-repudiation in ordinary fingerprinting, asymmetric fingerprinting has been introduced in [10], and its definition and concrete samples are shown. However, it is pointed out in [8] that concrete asymmetric fingerprinting schemes shown in [10] have a problem of server's deviation. Accordingly, several concrete asymmetric fingerprinting schemes supposedly solving this problem have been proposed in [10] and other papers. In this paper, we change a part of the definition of asymmetric fingerprinting in [8] since it is not well defined on the buyer's security. Moreover, we point out that there is a server's deviation overlooked in the previous papers, and show a scheme secure against the deviation.
著者
南 俊朗 廣川 佐千男 伊東 栄典 池田 大輔
出版者
九州情報大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

ICT技術の進展を受け図書館は様々な取り組みを行ってきた.Webサイトを開設し外部に向けた情報発信を積極的に行い,Web経由での蔵書検索を可能とし,貴重図書のディジタルデータの公開,電子ジャーナルの充実などを行ってきた.本研究は,図書館における次なる段階として評価情報などを利用した図書推薦システムに着目し,そのシステム要件や運用に関する基礎的な検討を行い今後の実用化への道しるべを与えることを目的に実施された.このような図書推薦システムの実現には,(1)評価情報などの収集,(2)情報の解析,(3)結果の提示,などが必要となる.これらに関する次のような研究を行い,また,その成果を国際会議などで発表した.(1)収集:評価情報への基礎データには,図書館外部情報,図書館サイトで収集された情報,図書館内収集の資料利用データなどがある.この認識の下,特定トピックに関するWebページを収集するトピッククローラーを開発しWebページからの情報抽出技術を研究した.また,RFID技術を利用したインテリジェント書架による館内での図書利用データの収集技術を研究し予備的実験を実施した.(2)解析:図書の評価情報を含む幅広いメタデータを対象とした解析技術を研究した.書評リストや音楽のプレイリストも対象とした.評価データ抽出へ適用するために,大量の項目リストから類似項目を発見する技術も研究した.またインテリジェント書架で収集された利用データを解析し,図書館や図書館利用者にとって有益な知見を得る手法を研究した.(3)提示:図書推薦サービスはそれだけで独立したものではなく,図書館ポータルサイトにおける利用者インタフェース全体の問題との認識の下,検索結果を鳥瞰して提示する技術を研究しWeb情報の統合化に関する研究成果を学内ポータル構築に適用した.これらの研究成果は,今後図書館で普及すると考えられる利用者への個別(Personalized)サービスなどに有効であるものと期待される.
著者
永瀬 宏 井上 清一 四七 秀貴
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.8, pp.2255-2263, 2000-08-15
被引用文献数
3 3

全順序関係を持つセキュリティレベル設定アルゴリズムの研究については,グラフ解析に基づいたセキュリティレベル設定法であるSLAアルゴリズム(Security Level Assignment)が発表されている.これは,データを流したいという処理要求とデータを流したくないという機密要求をそれぞれ独立したグラフで表し,それらを重ね合わせたグラフを解析して設計可能判定性とレベル設定を行うアルゴリズムである.SLAで設定されるレベルは,設定が可能なレベルの許容値の中で最小値となることから,レベルを上げても要求実現には矛盾が起こらない場合がある.そこで本論文ではレベルの許容値の中で最大値のレベルを決定する逆SLAアルゴリズムを新たに提案し,これをもとにレベルの変更可能な範囲を導出する.For the research of assigning totally ordered security levels, the SLA (Security Level Assignment) algorithm was proposed from graph theoretic approach. In the SLA algorithm, processing requirement to flow data and confidentiality requirement to inhibit data flow, among entities, are firstly expressed in two independent graphs. Then, two graphs are mixed to an integrated requirement graph. By analyzing the integrated requirement graph, design capability is evaluated, and security levels are assigned to entities. Since security levels, assigned by the SLA algorithm, take minimal value within the allowable range of levels, security levels of appropriate entities may be raised without contradicting to original requirements. Hence, this paper newly proposes inverse SLA algorithm to find the maximal allowable security levels, and to determine freedom of security levels assigned to entities.
著者
太田諭之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.127, pp.7-9, 2008-12-12

インターネットを利用して作曲者と楽曲の情報を呼び出し、聴覚的な情報 (MIDI) や視覚的な情報 (FFT アナライザ) を表示させ、演奏家の演奏の支援となるデータベースを作成した.HTML と簡単な Java Script だけで実現させている.このデータベースにより演奏者が効率的に情報を得ることが出来,必要な情報の収集が容易となる.又,データベースソフトを用いていないので,データの変更や書き換えは HTML のタグを理解していれば簡単に出来る.I created database the information on a musical piece. It was called with the composer using the Internet, hearing information (MIDI) and visual information (FFT analyzer) were displayed, and the database used as support of a performance of a player was produced. It is made to only by HTML and easy JavaScript. A player can acquire information efficiently with this database, and collection of required information becomes easy. Moreover, since database software is not used, change of data and rewriting can be simply performed, if you understand the HTML tag.
著者
村北 宏之 林 守正 三上 博久 石田 泰夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.236-240, 1986-03-05
被引用文献数
1 6

高速液体クロマトグラフィーによる血中薬物の分析において,カラムスイッチング法を用いた前処理の自動化を試みた.目的成分を前処理用カラムに保持させた後,流路切り換えにより分析用カラムに導入して定量する方法を採用した.前処理用カラムとしては,テトラメチロールメタントリアクリレート系樹脂を充てん剤とする逆相クロマトグラフィー用カラムを用いた.分析用カラムには,オクタデシル基化学結合シリカを用いた.前処理用カラムに対する血清中のタンパク及び薬物の溶離挙動を調べ,前処理用移動相,前処理用カラム洗浄液,分析用移動相,更に流路切り換えのタイミングを設定した.抗けいれん薬,テオフィリン,リドカインを対象とし,血清直接注入により良好な再現性が得られた.相対標準偏差値は,保持時間に対し0.3%以下,ピーク面積に対し1.2%以下であった.
著者
末田 達彦 纐纈 伸二
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.402-411, 1984-10-25

前報にひきつづき3種の理論的生長曲線, MITSCHERLICH式, Logistic式, GOMPERTZ式をバンクスマツ(Pinus banksiana LAMB.)349個体の胸高半径生長にあてはめ, 各曲線の理論的妥当性, あてはめの難易, あてはまりの良否を検討した。前報のシロトウヒの場合と同様, いずれの理論式も, あてはめによって得られる係数の値と理論から考えて妥当と思われる値の間に食違いを示したが, この矛盾はMITSCHERLICH式においてもっとも穏やかで, Logistic式においてもっとも顕著であった。あてはめの難易, あてはまりの良否についてもMITSCHERLICH式がもっとも優れており, ついでGOMPERTZ式, Logistic式の順となった。以上の結果は前報のシロトウヒの場合とほぼ同じであるが, これは各曲線の特性を反映しているものとみてよい。一部に曲線間の順位に逆転があるが, これは陽樹バンクスマツと陰樹シロトウヒの差異によるものと考えられる。本報および前報の結果を合わせ, 樹幹半径の生長を表わすには, 理論的にも現実的にもMITSCHERLICH式がもっとも優れているという暫定的結論を得た。
著者
吉田 正平 海野 信也 香川 秀之 篠塚 憲男 上妻 志郎 武谷 雄二
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, 2001-11-01

正期産妊娠における妊娠中の胎児超音波計測による推定体重と出生体重の関係を知る目的で548例の児奇形のない妊娠をretrospectiveに検討した.対象症例は正期産時の出生体重の偏差値によって6群に分類した.推定体重偏差値と出生体重偏差値の関係とその変化を, 推定時期を妊娠20週以降4週間ごとに分けて検討した.推定体重偏差値によって判定した胎児発育パターンは正常発育児とIUGR児では明らかに異なっていた.その差は妊娠20〜23週には既に存在していた.妊娠20〜23週以降満期に至るまで推定体重偏差値は出生体重偏差値と有意に相関していた.本研究によって, 超音波測定によって検出しうる胎児発育の差は既に妊娠20〜23週で存在していることが明らかとなった.
著者
宮本 正一 安永 智秀
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.49, pp.47-52, 1993-07-25

日本産のメクラカメムシ亜科に含まれる近縁な2積を検したところ,いずれも既知の属にあてはまらない未記載種と判明したので,新属Adelphocorisellaを創設し,各種にA.lespedezae,A.insulanaの種小名を与え,後種については終齢幼虫も含め記載,図示した.前種は本州(青森市,つくば市),九州(福岡市)において,マメ科植物(マルバハギ,クズ)から得られている.後種は西表島,与那国島から知られ,クズの1種に寄生する.この両種は互いに酷似するが,分布が異所的であることに加え,頭頂複眼間の幅,触角の長さ,雄交尾器の形状などに相違がある.Adelphocorisella属は,Adelphocoris属と極めて近縁で,一見非常によく似ている.しかし,雄交尾器のvesicaにAdelphocoris各種の共有新形質である櫛状骨片と鈎状骨片を欠く上,体がやや小さく,前胸背につやがないこと,脛節棘が淡色であること,雄の腹部生殖節(把握器基部付近)に突起がないことで区別でき,新属として扱うことに矛盾はない.なお各種の和名であるが,それぞれカスミヒゲナガメクラガメ(lespedezae),リュウキュウヒゲナガメクラガメ(insulana)としておきたい.