著者
後藤 広史
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.31-42, 2007

本研究の目的は,前路上生活者が施設から「自己退所」する要因を探索的に明らかにし,路上生活者に対して,施設での援助活動を展開する際の指針をうることである.そのために,施設を「自己退所」した経験をもつ路上生活者15人に対して,(1)施設入所前の路上生活をどのように営み,それをどう意味づけていたのか,(2)そのような路上生活者が施策を利用するにあたっての目的は何だったのか,(3)そして,施設での生活はいかなるものであり,なにが「自己退所」のきっかけとなったのかという3点に着目し,インタビュー調査を行った.研究の結果,「自己退所」に関わる要因として,「路上生活への適応」「利用目的のずれ」「施設で直面する諸困難」という3つの要因が抽出された.このことから,「路上生活を尊重した援助」「ていねいなアセスメントの必要性」「住環境および処遇の改善」という援助の指針が得られた.
著者
柴田 隆行
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.50, pp.86-98, 1999-05-01 (Released:2009-07-23)

Man soll die Geschichte der Philosophie von den alten Philosophien überhaupt unterscheiden, weil jene dieselbe ist, die verschiedenen alten Philosophien unter einem bestimmten Kriterium nacheinander ordnet. Und sogar die Geschichte der Philosophie ist von der Historiographie der philosophischen Lehren und von der Biographie der sogenannten Philosophen dadurch unterschied, daß sie das Logische als das Kriterium hat. Aber heutigentags ist das Logische in der Geschichte der Philosophie oft ableugnet. Was würde denn die Geschichte der Philosophie ohne das Logische sein?Ich untersuche hier erstens die Geschichte der Philosophiegeschichte, und zweitens analyse zwei Versuche der Einteilung der Philosophiegeschichte, und drittens schlage ich eine Einteilung derselben vor.
著者
浅野 彰之 石田 亮 森上 裕子 大橋 朋悦 山内 裕士 山田 浩史 錦見 俊徳 小林 弘明
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.111, no.4, pp.130-133, 2020-10-20 (Released:2021-10-20)
参考文献数
9

症例は50歳,男性.尿閉を主訴に当院受診.CTでは膀胱内に直径1.7cmの円形の膀胱異物を認めたため,膀胱鏡を施行.膀胱内にガラス玉を認めた.異物が球状であり,自己挿入が可能であった事から経尿道的手術を予定した.機器は軟性膀胱鏡,異物鉗子,滅菌経腟用エコープローブカバー等を用い,異物鉗子でプローブカバーの開口部をつかんだ状態で,タモ網を使用する要領でガラス玉をプローブカバー内に入れ,そのまま牽引し用手的に摘出した.術中出血はなく良好な視野のまま摘出可能であった.術後排尿は問題なく,以後一年間の外来フォローでは再発を認めていない.
著者
江藤 一郎
出版者
神田外語大学
雑誌
神田外語大学紀要 = The Journal of Kanda University of International Studies (ISSN:09175989)
巻号頁・発行日
no.29, pp.395-415, 2017-03-31

資料・研究ノート
著者
彌永 信美
出版者
弘前大学國史研究会
雑誌
弘前大学國史研究 (ISSN:02874318)
巻号頁・発行日
no.104, pp.44-68, 1998-03-30
著者
森 泰規
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングレビュー (ISSN:24350443)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.11-17, 2023-02-28 (Released:2023-02-28)
参考文献数
6

今回本稿では,職員(組織成員)のクリエイティブな活動が,組織の成果にもたらす効果をブルデューの理論概念を援用して検討する。すなわち,個々人の特定の趣向や行動様式(=ハビトゥス)は個々人でなく集団として共有され,その方向性を示すこと(Bourdieu, 1980/1988)また,どのような趣味をもつかによって,人はみな自分自身の「界」をつくり差異化を果たそうとする(Bourdieu, 1979a/1990; Crossley, 2001/2012; Kataoka, 2019)ことである(ハビトゥス概念・界概念)。生活者3,000名を対象とした調査(2021年6月)で回帰モデルを用いた分析の結果,正解率は64.9%を示し,かつ「趣味の楽器演奏」の経験があると,業務上の達成実感は2.3倍(最低でも1.6倍,最大の場合3.3倍)であることがわかった。世帯年収や15歳時の出身家庭における蔵書数も説明力を持っていたが趣味よりは影響が小さく,年齢はさほど説明力をもたなかった。これらにより経済資本や出身階層の文化資本よりも,後から身につけた趣味が相対的に強い影響を及ぼすことを示した。
著者
高井 敏朗
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.809-816, 2011-07-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
52
被引用文献数
1
著者
佐藤 眞 SATO Makoto
出版者
岩手大学教育学部社会科教育科
雑誌
岩手大学文化論叢 (ISSN:09123571)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.107-111, 2009

学校から職業社会への移行パターンが大きく変容した現在,さまざまな角度から「若者と仕事」が論じられ,キャリア教育,フリーター・ニート論の隆盛はブームの感さえある。 「日雇い派遣」,「ネットカフェ難民(事実上のホームレス)」に象徴される,きわめて不安定な労働と生活を強いられている多くの若者たち。その実態がマスコミでも採り上げられ,「年越し派遣村」の報道が世論を喚起した。こうした失業・貧困をめぐる状況は若年層に限定された問題ではなく,すべての年齢階層にひろがる生活不安,深刻化するワーキングプア問題として,その実相が明らかになるにつれ,何らかの政策的対応をせまる諸運動が随所で形成されつつある。 小論は,いま「未曾有の危機」にあるとされる日本経済のもとで,不安定雇用の動態をスケッチするための基礎的作業を試みたものである。
著者
伊東 信宏 小島 亮 新免 光比呂 奥 彩子 太田 峰夫 輪島 裕介 濱崎 友絵 上畑 史 阪井 葉子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ブルガリアの「チャルガ」は、「マネレ」(ルーマニア)、「ターボフォーク」(旧ユーゴ諸国)などのポップフォーク(民俗的大衆音楽)と並んで、1990年代以降バルカン諸国に特有の社会現象であり、同様の現象は日本の「演歌」をはじめとしてアジア各国にも見られる。本研究はそれら諸ジャンルの比較を行い、その類似と差異をあきらかにすることを目指してきた。これまでに大阪、東京などの諸都市で、8回の研究会を開催し、20の報告が行われた。2017年にはこの問題に関する国際会議を開催する予定である。そこでは上記諸ジャンルの社会的文脈を検証し、歌詞や音楽構造の分析が行われた。日本語による単行本出版が準備されている。
著者
Masaru Kiyomoto Eishi Sato Taro Yanagawa Yoichi Harada Toru Hatayama Takuji Kono
出版者
The Japanese Society for Neuroendovascular Therapy
雑誌
Journal of Neuroendovascular Therapy (ISSN:18824072)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.61-67, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
20

Objective: We report a case of accidental N-butyl-2-cyanoacrylate (NBCA) glue migration into the vertebral artery (VA) via dangerous anastomosis during transarterial embolization (TAE) for transverse sinus (TS)-dural arteriovenous fistula (DAVF), which was rescued by mechanical retrieval using a stent retriever and aspiration devices.Case Presentation: A 49-year-old right-handed female patient was admitted to our hospital with motor aphasia. MRI revealed congestion in the left temporal and occipital lobes, involving a small hemorrhage. DSA revealed a DAVF complicated by a sinus thrombus in the left TS. The DAVF was mostly fed by the left occipital artery (OA) and drained into the cortical veins of the temporal and occipital lobes through the patent part of the sinus. TAE was performed via the left OA with low-concentration NBCA. However, NBCA glue migrated into the left VA through a dangerous anastomosis, and a left VA angiogram revealed severe VA stenosis and floating NBCA glue. There was a fragile attachment of the NBCA glue to the arterial inner wall; therefore, we successfully retrieved the NBCA glue with a stent retriever and aspiration devices without complications. Finally, TAE was performed using another feeder, and the DAVF was completely obliterated.Conclusion: TAE using NBCA is useful for the treatment of DAVF; however, it should be noted that there is a risk of migration via potential anastomotic routes. Low-concentration NBCA glue can be retrieved using these devices in limited cases.
著者
岡田 英己子
出版者
首都大学東京
雑誌
人文学報. 社会福祉学 (ISSN:03868729)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-46, 2002-03-25

都の重度障害者政策の転機となる療護施設の設立経緯を通して、ケア(介護)・援助の当事者性と専門職性の相互補完性を検討する。具体的には救護施設での「永久」介護拒否宣言と、府中療育センター「闘争」での二つの問題提起から、女性障害者が主導する障害者の権利運動論の形成過程をみる。また自立に向けた療護施設での条件整備と施設職員の1970年代の自己の職業像の変化を辿りつつ、基礎構造改革で見直しを迫られる療護施設の限界にも言及する。
著者
速水 融
出版者
日本学士院
雑誌
日本學士院紀要 (ISSN:03880036)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.285-309, 2008-03
著者
倉持 将也 植田 宏昭
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.101, no.1, pp.21-37, 2023 (Released:2023-02-07)
参考文献数
56
被引用文献数
1

熱帯インド洋-西部太平洋域の対流活動に関連して、2020/21年冬季の前半と後半の間で東アジアの気温偏差は負から正へと転じた。平年より気温が低かった2020/21年冬季の前半では、対流圏上層のチベット高原南東部と日本上空にそれぞれ高気圧性と低気圧性の循環偏差対が発現していた。この波列パターンは、東インド洋から南シナ海上で強化された熱帯積雲対流に励起されたロスビー波の伝播を示し、本研究で新たに東南アジア-日本(Southeast Asia–Japan: SAJ)パターンと呼称する。一方、2020/21年冬季の後半では、活発な対流活動域は東方のフィリピン海へ移動し、上層高気圧偏差もまた日本の南へと位置を変えた。このような循環偏差は西太平洋(western Pacific: WP)的なパターンとして認識でき、東アジアの高温偏差をもたらした。SAJパターンに関連するチベット高原南東部の高気圧性循環偏差と南シナ海の対流強化の関係は、パターンが顕著に発現した月を抽出した合成解析でも統計的に有意であることが確認された。一方、WP的なパターンの半分の場合では、フィリピン海での対流の活発化を伴っていた。これらの異なる2つの循環偏差は、線形傾圧モデルに南シナ海とフィリピン海に熱源を与えることでそれぞれ再現された。さらに渦度収支解析から、チベット高原南東への気候学的な上層風の収束が SAJパターンの空間的な位相固定性において重要であることが示唆された。