著者
岩澤 知子
出版者
麗澤大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、中世諏訪の神仏習合思想から生み出された「諏訪流神道」の形成過程および構造の分析を通して、諏訪古来のカミ信仰が、古代律令制により導入された神祇制度、さらに中世における仏教との交渉を通して、いかに多義的な神の姿を創出するに至ったか、その豊かな歴史性や多様性を明らかにしていく。中世日本の神仏習合に関するこれまでの研究は、神道と仏教の関係を分析するに際し「神道」を一括りの概念と捉えてきた。本研究では、近年の神道史研究の成果を踏まえ、「神道」を「カミ信仰」「神祇制度」「神道」という三つの異なる概念から成るものと捉え直した上で、これら三要素の相互関係ならびに仏教との習合関係を探求していく。
著者
橋場 弦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

古代ギリシア社会において、スタシスすなわち党争は、ポリス社会の宿痾ともいうべき病理現象であった。その中で暴力の行使は、ときにポリスの分裂につながる深刻な打撃を社会に与えたが、同時にそれを回避し、公共の場における議論と合意形成によって国家の統合を図る回路も模索された。都市国家アテナイは、民主政というシステムの実現を通して、この回路の構築にもっとも成功したケースであると言える。民主政の成熟とともに、紛争解決手段としての暴力(ビアー)の行使は、市民団の前での弁論によって置きかえられ、そこにポリス的公共性の担保が求められたのである。
著者
岩本 和久 中野 幸男 宮川 絹代
出版者
札幌大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

シニャフスキー、ブロツキー、ヴェネジクト・エロフェーエフ、マムレーエフらの著作を分析しながら、ソ連文学における「狂気」の表象の諸相を探り、作家たちの「抵抗」しているものが何かを明らかにする。また、この作業に平行する形で、ソ連の精神医療の諸問題を調査する。具体的な研究計画としては、文献資料の購入、日本国内やロシアの図書館を利用した文献調査、研究会の開催、学会や国際会議での研究報告を予定している。2020年度はソ連国内における非公式作家の活動や精神医療の状況について分析する。2021年度は作家の亡命先での活動を分析する。2022年度は非公式作家・亡命作家の作品がソ連後の文学に与えた影響を探る。
著者
中村 史
出版者
小樽商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

古代インドのサンスクリット大叙事詩『マハーバーラタ』の比較文学的研究、特に、日本古典文学に流れ込んだ『マハーバーラタ』説話の原典との比較研究、日本神話研究への『マハーバーラタ』神話研究の方法的応用の模索、そして、より規模の大きな比較研究をめざしての『マハーバーラタ』説話それ自体の研究を行なった。また、続行し暫時行なう予定である。
著者
塩見 一雄
出版者
東京水産大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

1.ウナギ体表粘液の抽出物は,マウス静脈投与で強い毒性を示すことを見いだした。毒は著しく不安定で,経口投与では毒性を発現しないことから,食品衛生上の問題はないと判断した。各種クロマトにより電気泳動的に均一な精製毒が得られ,毒は分子量40万の酸性タンパク質で,分子量23万と11万のサブユニットより成ること,Gly,Ala含量が高く,Met,Cys,Tyr,Trp含量の低いことを明らかにした。精製毒のLD_<50>は3.1μg/kgで,毒性のきわめて高いことが注目された。2.ウナギ体表粘液中に少くとも2成分のレクチンの存在を認め,そのうちの1成分を各種クロマトで精製し,分子量4〜5万の酸性タンパク質であることを示した。体表粘液中には溶血因子も検出されるが,クロマト操作中の失活が著しいため精製は断念した。3.ウナギ血清中のタンパク毒を精製し,LD_<50>が670μg/kgの精製標品を得た。毒は分子量15万の酸性タンパク質で,分子量11万と7万のサブユニットで構成されると推定した。4.ウナギ以外の50種魚類について体表粘液毒を検索し,ヨ-ロッパウナギ,ハモ,マアナゴ,ドジョウ,カジカ,クサフグおよびキタマクラの7魚種に検出した。これらの中では,ヨ-ロッパウナギおよびハモの毒性が高く,両魚種の本体はウナギ毒と同様に不安定なタンパク質で,分子量もウナギ毒とほぼ同程度(約40万)であった。5.ウナギ体表粘液から精製した毒でラットを免疫したところ,ウナギ毒の致死活性を強く抑制する抗血清が容易に得られた。ヨ-ロッパウナギ毒およびハモ毒の致死活性も抗血清である程度抑制されることから,両毒とウナギ毒との免疫学的類似性が示唆された。一方,抗血清は,ウナギ血清毒に対しては中和効果を示さず,ウナギ体表粘液および血清中のタンパク毒は,免疫学的にお互いに異なると考えられた。
著者
中山 寿子
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

小脳登上線維シナプス刈り込みへミクログリアが関与するか、関与するならばどのような機序であるかを明らかにする研究を行った。ミクログリアを枯渇させる薬剤または活性化を抑制する薬剤を小脳皮質に投与したマウスや、脳内のミクログリアが減少した遺伝子改変マウスを用いた実験から、登上線維が正常に1本化するためには生後2週目にミクログリアが存在することが必要であることを明らかにした。作用機序に関して、ミクログリアが不要な登上線維を貪食していないことを示唆する結果を得たほか、一本化に重要であることが既に報告されているシナプスの機能に作用することによって登上線維シナプスの発達を制御することを示唆する結果を得た。
著者
池埜 聡
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成30年度の成果は以下の5点にまとめられる。1. 情報交流を目的としたインターアクティブなホームページを公開した。2. 客員研究員(Visiting Project Scientist in Psychiatry)として米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部マインドフル・アウェアネス・リサーチ・センター(MARC)に1年間在籍し、米国のマインドフルネス実践の現状と課題の抽出、そしてMARCとの研究・実践における連携体制を構築した。3. MARC提供の1年間マインドフルネス指導者養成プログラム、マインドフルネス・ファシリテーション・トレーニング(Training in Mindfulness Facilitation: TMF) を修了。認定資格であるUCLA-Trained Mindfulness Facilitator 及びInternational Mindfulness Teachers Association (IMTA)-Certified Mindfulness Teacher (CMTP-0146)を取得し、ソーシャルワーク(SW)専門職のストレス低減を超えたSWの価値の体現に資する介入方法としてマインドフルネスを応用する理論と実践方法を修習した。4. 日本マインドフルネス学会及びオックスフォード大学マインドフルネス・リサーチ・センター(OMC)共催によるマインドフルネス認知療法(MBCT)指導者養成プログラム(最終モジュール)を修了。スーパーバイズを受けることでMBCT実践が可能な立場となった。うつ再発予防及びストレス低減などSW専門職のエンパワメントにMBCTを活かす道筋を明確化した。5. TMFとMBCTの比較に基づくマインドフルネス指導者養成の問題、トラウマ被害者などへのマインドフルネスのネガティブな影響、SWの価値に資するマインドフルネスのあり方などをテーマにした学会発表、論文出版及び論文投稿を達成した。
著者
永井 晋 永村 眞 山家 浩樹 岡本 綾乃 西田 友弘 高橋 悠介 西岡 芳文 山地 純 井上 和人 永山 由梨絵
出版者
神奈川県立歴史博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

「重要文化財 金沢文庫文書」4149通について、その本文の校訂、年代推定、紙背文書を利用した関連文書群の復元を行い、「重要文化財 称名寺聖教」との接続の関係をあわせて考察し、称名寺収蔵資料群の一群としての金沢文庫古文書の資料的価値を定める努力を行った。その成果は、「金沢文庫文書検索システム」としてデータベースを構築し、インターネットでの公開をめざしたが、接続のための環境整備が調わず、金沢文庫図書室でのスタンドアローンとしての公開となった。データベースでは、古文書本文・書誌情報・画像(古文書表裏)を金沢文庫図書室で公開した。
著者
関 奈緒 齋藤 玲子 佐々木 亜里美 田邊 直仁 岩谷 淳 岡崎 実 磯谷 愛奈 大面 博章
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,(1)学区内の地域住民のインフルエンザ発症率と学童の発症率は強い正の相関を示すこと,(2)児のワクチン接種及び「こまめな手洗い」には発症予防効果が認められるが,「マスク着用」は発症リスクを増加させること,(3)情報提供シートのみの行動変容介入は十分ではないことを明らかにした。学童の発症予防は地域の流行制御対策の核であり,予防行動の実施促進に向けたより効果的な介入方法が必要と考えられた。なお,3日以上の学級閉鎖(学年・学校閉鎖を含む)は当該学区における閉鎖後の学童の発症率抑制効果が認められたが,地域住民の発症率抑制効果は認められなかった。
著者
曽田 公輔
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ベトナムの家禽群における鳥インフルエンザウイルスの流行を制御するために、流行ウイルスの家禽に対する病原性を評価する必要がある。本年度は前年度までに検証したウイルス株に加え、複数のベトナムの家禽由来のH5亜型高病原性鳥インフルエンザウイルス(HPAIV)およびH6,9亜型の鳥インフルエンザウイルスのアヒルに対する病原性を検討した。さらに研究実施者の所属機関である鳥取大学における2017-18シーズンの国内の鳥インフルエンザ確定診断において分離されたH5亜型ウイルスについても同様の解析を行った。近年東アジア地域ではclade2.3.4.4に属するH5N6亜型ウイルスが家禽に浸潤しているが、その走りであるDuck/Vietnam/LBM751/2014株を接種したアヒルは6-8日目に死亡した。直近に日本国内で分離されたMute swan/Shimane/3211A001/2017を接種したアヒルは半数が接種後2週間生残した。一方でclade2.3.4.4 HPAIVの祖先にあたるclade2.3.4 HPAIVであるDuck/Vietnam/G12/2008 (H5N1)を接種したアヒルは2-3日で全羽死亡した。前年度の成績も合わせると、H5亜型HPAIVのアヒルに対する病原性は現在にいたるまで次第に減弱してきていることが示された。ベトナムで分離されたH6およびH9亜型の鳥インフルエンザウイルスを接種したアヒルは、ウイルス排出が認められた一方、2週間生残した。最終年度は上記の単独のウイルス接種試験の結果を基に、H5亜型HPAIVおよび鳥インフルエンザウイルスがアヒルに共感染した場合、すなわちベトナムの家禽で実際に起こっているウイルス感染状況をモデル化し、今後の防疫に有用な情報を得る予定である。
著者
松野 陽一 長谷川 強 山崎 誠 鈴木 淳 小峯 和明 岡 雅彦 新藤 恊三 松野 陽一
出版者
国文学研究資料館
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1990

古典籍の成立事情と書写伝流の経路を究明する上で、写本の巻末に記載される奥書・識語を収集して、これを整理することは極めて重要、かつ有効な方法である。国文学研究資料館文献資料部では、可能な限り広範な古典籍の奥書を集成し、研究することに着手したが、2年間にわたる本研究において得られた具体的な成果は、以下に記すとおりである。1.国文学古典籍は日本各地の文庫・図書館等に所蔵されるが、質、量ともに豊富で、本研究の目的に合致するものとして、宮内庁書陵部本6,300点と陽明文庫本3,400点とを対象にして、奥書を抽出した。2.記載年時の明示されない奥書は、書写者の生没年時など周辺の事項から推定するなどして、抽出した奥書を年代順に配列して、文庫別にデ-タファイルに蓄積した。3.集成した奥書デ-タを、ジャンル別、作品名別、奥書記載者別などいくつかの要素に分析して、サンプリングデ-タの作成を試みた。4.サンプリングデ-タの一具体例として、文庫形成の面で独特の蔵書構成を示す真福寺本の奥書を悉皆調査して、書名による分析を通して書名索引を作成した。その成果は「研究成果報告書」に掲載した。5.奥書集成の具体例として、藤原俊成の家集『長秋詠藻』の諸本の奥書を写真版で収集し、書承経路をつきとめた。この作業では対象を書陵部本と陽明文庫本に限定せず、諸本を博捜して目的を達成することに務めた。この成果も「研究成果報告書」に掲載することができた。
著者
横山 ちひろ 村山 美穂 田原 強 尾上 浩隆 村山 美穂 田原 強 尾上 浩隆
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

コモンマーモセットの示す社会性における、遺伝子/環境-行動連関の分子基盤を明らかにするために、セロトニン、ドーパミン、性ステロイドおよびバソプレシン神経伝達等に係る遺伝子多型の調査および陽電子断層撮影装置(PET)による脳内生体分子イメージングを遂行した。社会性行動の定量評価しそのスコアと遺伝子多型および脳内分子局在活性との関連性を明らかにするとともに、親子分離による社会行動への影響を明らかにした。
著者
北條 祥子 吉野 博 坂部 貢 熊野 宏昭 吉野 博 坂部 貢 熊野 宏昭
出版者
尚絅学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

化学物質過敏症やシックハウス症候群は微量な化学物質により起こる健康障害であり、世界的に患者の増加が問題になっている。しかし、世界的にも診断基準や病態などはよくわかっていない。また、これらの疾患患者の診断やスクリーニングに役立つ問診票は確立していない。そこで、本研究では、日本のMCS 患者の病態を明らかにしながら、MCS・SHS 患者の診断やスクリーニングに役立つ問診票を作成した。
著者
木村 穣 梶原 景正 坂部 貢 大塚 正人
出版者
東海大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

有機リン等の被爆が主原因とされるシックハウス症候群の患者単球においてNeuropathy Target Esterase(以下NTE)の活性が健常者に比べて高いことを2013年に報告した。有機リンが結合したNTEが化学変化を起こすと遅延性のOPIDN(organophosphate-induced delayed neuropathy)を引き起こすとも言われ、有機リン関連疾患の発症機構解析と疾患モデル開発のために、NTEをコードする遺伝子PNPLA6を導入したマウスを作製し、その性状を明らかにすると共に、NTE遺伝子導入細胞での有機リン感受性を検討した。複合体検出系も開発中である。
著者
桝井 文人 柳 等 伊藤 毅志 山本 雅人 松原 仁 竹川 佳成 河村 隆 宮越 勝美
出版者
北見工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

今年度は,戦術要素の収集・解析と戦術推論手法開発の継続,ストーントラッキング手法の実証実験,人工知能アルゴリズムの応用,スウィーピング計測システムのモデル化と実験に取り組んだ.以下,各項目別に報告する.(1)戦術要素の収集と解析については,新たに日本代表決定戦,平昌オリンピックの試合情報を追加して分析し,チームショット率と得点の関係,ポジション別ショット率と得点の関係,さらに,先攻後攻におけるショット率と得点の関係についての知見を得た.さらに,得点機会と失点機会に注目した分析を行い,チーム固有の発生確率パターンが存在することを発見した.(2)人間判断要素の収集と解析については,昨年度に実施した認知心理学実験結果を分析し,戦術の思考過程の考察を行なった.戦略書に基づいたデジタルカーリングAIにおける序盤定石の構築も引き続き行なった.(3)ストーン挙動要素の収集については,実際のカーリングホールにて氷上での動作検証実験を行なった.シートの氷の下にキャリブレーション用モジュールを埋め込むことで,昨年度の課題を解消した.シーズンを通しての耐久性と,キャリブレーション時の誤差について検証を行い,概ね陸上と同じ結果が得られることが確認できた.(4)戦術推論手法の開発では,昨年度実装した離散化座標と評価値の期待値に基づいてショット選択を行う人工知能アルゴリズムを用いて平昌オリンピックの試合を人工知能アルゴリズムで再現した.また,デジタルカーリング環境における戦術学習支援システムを構築した.(5)スウィーピング計測については,計測システムに加わる力のモデル化と,スウィープ時の力とモーメントの計測結果の検討を行なった.
著者
織田 信男 山口 浩 伊藤 拓 山本 眞利子
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

平成29年度は、スーパーヴァイジー(Svee)2名に対して平成28年10月より開始した第2期1年目のスーパーヴィジョン(SV)を2年目の平成29年4月から11月まで継続して実施した。その後、第3期のSveeを募集したが応募者は1人であり、12月から3月までは1人のSveeに対してマッチングを考慮の上でスーパーヴァイザー(Svor)を選定し、SVを実施した。研究の手続きは、平成27年度を踏襲し、SVを対面・電子メール・スカイプの3つのコミュニケーションメディア(CM)を用いて順番に実施した。3人の異なるオリエンテーションを持つSvorと同一のSveeへのアンケートデータをもとに、メールSVによる事例困難度の得点について3(Svor A・Svor B・Svor C)×2(事前・事後)の分散分析を行った。結果は時間の主効果のみが認められた(F(1,10)=5.65, p<.05)。メールSVは対面SVやSkype SVに比べてSveeによるSVの評価が低くなる傾向があるが、Svorによる評価を上げるための工夫がアンケート結果から確認された。具体的には、Sveeのニーズに応えるためにSveeにフィードバックを求めるといったメールのやりとり回数の増加、複数の視点をまとめて返す形式からSveeのケース報告資料にSvorのコメントを書き込む形式への変更、平均8つのケース(全てのケース)に短いコメントを返す形式から一つのケースに絞って返事をまとめて返す形式への変更等が認められた。これらの研究知見を第28回日本ブリーフサイコセラピー学会京都大会で発表する予定(投稿済み)。