著者
小杉 亮子
出版者
埼玉大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2022-08-31

本研究は、高等教育政策や都市計画、産業振興政策が複合的に重なった領域としての大学立地施策に着目し、1945年から1970年代までの日本における学生運動の盛衰のメカニズムを明らかにする。具体的には、1960年代後半における学生運動の中心地と言えた神田・御茶ノ水地区(東京)を取り上げ、文献調査・聞き取り調査・地理情報システムを用いた分析を組み合わせ、大学立地施策によって同地域に大学が集中し、学生街が形成され、学生街での生活をとおして学生たちが政治化していった過程、ならびに大学立地施策の変更によって大学の郊外移転等が進み、同地域の学生街が解体し、そこを拠点とする学生運動が衰退した過程を明らかにする。
著者
湯淺 太一 近山 隆 上田 和紀 森 眞一郎 八杉 昌宏 小宮 常康 五島 正裕
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

本研究では,計算機システムが備えている広域性と局所性の両方に対応できる適切な計算量モデルとソフトウェアシステムの構築を可能にするために,計算連続体と呼ぶ概念に基づいて,さまざまな観点から,計算に関する既存概念の再検討,統合,および発展を図ってきた.主要な研究成果は次のとおりである.1.計算連続体モデルによる計算量解析本プロジェクトでは,単一計算機内のメモリ階層から計算機間のネットワーク遅延の差異までを,統一的に,かつ簡潔に表現できる計算量モデルとして「計算連続体モデル」を提案し,このモデルに基づいた計算量解析結果が,従来方法よりも現実の計算に近いものであることを示した.また,複雑な並列アルゴリズムに対しても,その振舞いが把握できるように,計算連続体モデルの仮想機械を設計し,実装した.2.並行言語モデルLMNtalに関する研究また本プロジェクトでは,階層グラフの書換えに基づくスケーラブルな並列言語モデルとしてLMNtalを設計し,このモデルの改良を進めてきた.このモデル上でプロセス構造の解析技術を確立するとともに,実用に供するプログラミング言語としての実装を行った.階層グラフ書換えは,多重集合書換え計算モデルや自己組織化に基づく計算モデルなどを特別な場合として含んでおり,既存の多くの計算モデルの架け橋となることが期待できる.3.局所性を重視した処理系実装方式の研究プログラミング言語の実装において,特に局所性を重視することによって,実行性能が飛躍的に向上することを実証した.その例として,階層的グループ化に基づくコピー型ごみ集めによる局所性改善をあげることができる.これは,スタック溢れに備えたキューを併用することにより,少量のスタックで大部分を深さ優先順にコピーするごみ集め方式のさらなる改良の提案であり,仮想記憶の局所性だけでなく,キャッシュの局所性も考慮した実装となっており,実際の計算機上で極めて効率の良い処理系を実現できる技術である.
著者
大平 剛 馬久地 みゆき
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

アメリカザリガニの造雄腺ホルモンをコードするcDNAを単離し、アメリカザリガニ造雄腺ホルモンのアミノ酸配列を明らかにした。次いで、アメリカザリガニ造雄腺ホルモンを化学合成した。そして、合成造雄腺ホルモンを、アメリカザリガニの近縁種で単為生殖する全雌のザリガニ(以下、ファラクス)に週1回の頻度で14回注射した。注射を開始してから20週目に雌性生殖孔が消失し、第1腹肢が雄性化したファラクスが見出された。生殖腺を観察したところ、精巣と輸精管が確認された。その個体の生殖腺を組織形態学的に観察したところ、精原細胞や精子形成が確認された。ホルモン処理による完全な性転換の誘導は、本研究が世界最初の例である。
著者
津守 不二夫
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本研究は5次元プリンタを開発し,応用していくことを目的とする.5次元プリンタとはこれまでの3次元プリンタ(x,y,z)に加え「それぞれの箇所における材料物性の配向(3次元ではθ,φの2方向で表される)」を制御したプリンタである.研究期間中に開発した装置はガルバノスキャナを備えたUVレーザ光源により樹脂を硬化するタイプである.この装置を利用した応用例は生体模倣構造のひとつである人工繊毛である.人工繊毛をアレイ状に出力する際,一本一本に磁気異方性を付与することにより,それぞれの動きが異なる構造を出力した.この方法により実際に自然界にで観察されるメタクロナール波を再現することが可能となった.
著者
西本 憲弘 吉崎 和幸 桑島 正道
出版者
大阪大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1998

カルニチンは、生体にとって重要なエネルギー源である長鎖脂肪酸のβ酸化に関与する分子量161の小分子である。このカルニチンの輸送担体の遺伝子異常を有するJVS(juvenile visceral steatosis)マウスにおいては脂肪肝や低血糖、筋委縮などの全身性カルニチン欠損症状に加え、著しい胸腺の萎縮が認められ、組織学的検索から胸腺細胞のアポトーシスが疑われた。そこでJVSマウスを用いて、胸腺でのアポトーシス現象およびT細胞の分化におけるカルニチンの関与について検討した。【方法】2,4,8週齢のhomozygote(jvs/jvs)、heterozygote(+/jvs)ならびにL-カルニチン(1μmol/grBW,ip)による治療を行ったhomozygoteを用いた。胸腺の重量測定、HE染色、TUNEL法によるアポトーシスの検索に加えて、FACS-によるT細胞表面マーカーの解析を行った。【結果および考察】JVS未治療群では胸腺は萎縮していたがL-カルニチン腹腔内投与により胸腺重量は正常化したことからこの胸腺の委縮はカルニチン欠乏によって生じることが確認された。さらにJVSの胸腺ではアポトーシス陽性細胞の増加がTUNEL法により確認された。胸腺より分離したT細胞数もコントロールに比べ約1/10に減少し、これらの細胞を用いたFACS解析からJVSマウスの胸腺ではCD4^-8^-分画の割合が増加し、CD4^+8^+分画の割合が減少していることがわかった。このことからカルニチン欠乏におけるT細胞の分化をPositive Selectionの段階で障害する可能性も示唆された。JVSマウスはヒト原発性カルニチン欠乏症のモデルマウスであり後天性のものに必ずしもあてはまるとは限らないが、カルニチン欠乏はヒトAIDS患者でも報告されておりカルニチン欠乏状態がT細胞免疫不全を悪化させている可能性がある。カルニチンは経口でも補うことが可能であるからカルニチン欠乏が疑われる場合、不足を補うことで病態の悪化を防ぐことが可能である。
著者
内藤 隆文 川上 純一 佐藤 聖 石田 卓矢
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

がん悪液質を有する患者では、うつ、傾眠、せん妄などの中枢症状を生じる。これらの中枢症状にはがんの組織浸潤に伴い分泌されたサイトカインによる影響が関連することが推測されている。さらにはサイトカインの濃度上昇は、肝臓のチトクロムP450(CYP)の活性を低下させる。しかし、がん悪液質の病態時におけるオピオイドの薬物動態、中枢症状の発現および血中サイトカインとの関係は十分に明らかにされていない。本研究ではCYP3A4により代謝を受けるオピオイドのオキシコドンをモデル薬物として、がん患者における悪液質の進行度に基づきオキシコドンの薬物動態、中枢症状の発現およびサイトカインの血中動態について評価した。
著者
東本 裕子 天木 勇樹 白須 洋子
出版者
横浜商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究は、国際的志向性が低い学生の異文化感受性を育て、英語力と共に自己効力感を向上させる英語・異文化理解教育に貢献することを目指す。具体的には次の項目について研究を行う。1つ目として、国際的志向性が低い学生の異文化や英語に対する心持ちや背景に関する調査を行う。2つ目は、異文化感受性発達モデルによる各段階の学生への効果的な異文化理解指導法を考案する。3つ目は、異文化協働学習等コロナ禍でも可能なオンラインを含む交流学習を通し、異文化への興味喚起と英語学習への意欲変化を検証する。4つ目は、既存の発達尺度と英語・異文化理解指導法の見直し、教育理論の改善、高度化を図る。
著者
中村 一創
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2022-04-22

「文」という概念がなぜ人間に備わっているのか、「文」は我々の言語能力においてどのように定義されているのか、これら二つの問題に科学的解答を与えるのが本研究の課題である。「文」は「句」とは異なる概念であり、人間が思考したり意思を伝達したりするには「句」さえ存在していれば十分である。しかし我々が文と文でないものを見分ける能力を持っているのは事実であり、そうした余分な能力がなぜ存在するのかが生物言語学の重要な問題となるのである。本研究では、文概念の存在を主語・助動詞倒置をはじめとする様々な文法現象と結びつけて明らかにし、さらに哲学・生物学等の知見も活かしつつ、文概念の発生を生物言語学的に説明していく。
著者
高木 佐保
出版者
麻布大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2022-07-01

内分泌機能と言語能力の関連を明らかにするために、半家畜動物であるネコを対象に、家畜化の過程で変化したホルモン(オキシトシン/コルチゾール)分泌量測定し、言語能力との関連をみる。研究1では実験の結果から言語能力を同定し、内分泌機能との関連を調べる。研究2では、言語能力と内分泌機能の因果関係を明らかにするため、ホルモンレベルの操作を行ったうえで、研究1と同様の実験を行い、「コトバの理解」の向上や、「発声の複雑化」がみられるか調べる。研究3では、研究1で得られた結果から、言語能力が高い/低い個体を分類する。それらの群の遺伝子を解析し、家畜化の過程で獲得したと考えられる「言語遺伝子」を同定する。
著者
内田 聖二
出版者
奈良大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

伝統的に転移修飾(transferred epithet)と呼ばれている修辞表現は文語的、詩的と言われてきたが、コンピューターコーパスなどで確認すると、現代英語でも同じような現象が観察される。本研究では、この「文語的」な言語現象を認知語用論の視点から見直すことによって、転移修飾、メタファー、連語などにおける修飾関係は基本的に同じで、それぞれが独自の分布をしているのではなく、段階的な言語現象であることの説明を目指す。
著者
山越 康裕 渡辺 己 塩原 朝子 安達 真弓
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究課題は、言語構造が大きく異なるいくつかの言語を対象に、「文」がどのように規定されうるのかを明らかにすることを目的とする。「文」は話者が比較的自覚しやすい単位であり、かつ表記の上ではピリオドや句点といった記号で区切ることができる一方、言語学において明確に規定することが困難な単位である。とくに自然談話、つまり日常の話し言葉を観察すると、本来文末にあるべき要素が欠落していたり、節が複雑に連結した一つの長大な発話があったり、文法上は文が完結しているはずの箇所で音声的休止が入らなかったりと、判断が難しいデータにあふれている。そこで、自然談話の観察から「文」の規定が可能なのかどうかを探求する。
著者
板垣 優河
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-04-25

本研究は、植物を採集し、加工するうえで必要な道具や手法の検討を通して縄文時代の植物食を復元しようとするものである。そこでまず、土掘り具とされる打製石斧、加工具とされる磨石・石皿類に対して多量の機能分析を実施し、各石器の使用状況を具体的に解明する。併せて、国内の山間部を対象に堅果類や根茎類の採食にかかわる民俗調査を広く実施し、さらに関連文献を悉皆的に調べることにより、かつて日本列島でみられた野生植物の採集・加工の実態を把握する。そして、以上の作業を統合して縄文時代の植物食を技術的側面から可視化させ、縄文人の生存戦略や社会・文化の構造基盤、さらには人類史上におけるその特質までを究明する。
著者
森口 裕之
出版者
京都市立堀川高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

プランクトン個体を発見し、捕獲し、個別の個体を飼育しながら追跡観察できる実験系を開発することで、学校における「プランクトンの観察」をその場限りに終わらせず、そのライフサイクルを実験を通して学ぶことができる学習へと発展させることを意図して、簡易なプランクトン個体単離飼育容器を開発した。容器の素材には、透明性や加工性などに優れるシリコーンゴム(PDMS : Polydimethylsiloxane)を用いた。スライドガラスにセロハンテープや寒天の小片を貼り付け、それらを凸版の鋳型としてPDMSを硬化させることで凹部を型取りし、鋳型から剥がしたPDMS小片を別の平坦なスライドガラス上に貼り付けることで、プランクトンを流す流路や、そこから分岐したプランクトンの飼育部屋などを作り込んだ透明なデバイスを多数製作した。ここで、市販のセロハンテープの小片1枚を鋳型にすると高さ50μm前後の流路が成形され、セロハンテープを重ねる枚数を調整することで飼育対象とするプランクトンのサイズに応じた高さの流路を作製できた。例えば、2枚重ねたセロハンテープを鋳型とした場合には、ゾウリムシ(Paramecium caudatum)の個体が余裕を持って通過し、縦方向には回転できないが横方向には回転できる程度の高さの流路が作製された。デバイス内の流体の駆動・操作は、「紙縒り」に水を吸わせる方法(毛細管力による方法)やシリコーンチューブ等を介して空気圧を操作する方法、流路出入口上に設けた液貯めの水面の高さの差による静水圧による方法等のほか、流路に刺し込んだガラス管マイクロピペットによる吸引や、二流路型のガラス管マイクロピペット(θ管)を用いた培養液の交換も可能であることを確認し、実際にゾウリムシの個体を飼育部屋に単離し、少なくとも1週間、飼育しながら顕微鏡観察を続けることが可能であることを確認した。
著者
長滝 祥司 三浦 俊彦 浅野 樹里 柴田 正良 金野 武司 柏端 達也 大平 英樹 橋本 敬
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

人間は己の存在形態を正当化するために神話や宗教などを創造してきた。道徳において先鋭化するこれらは、人間を取り巻く自然条件によって偶然に枠組みが定められたものであり、条件が変容すればその内容は根底的に変わりうる。現在、様々な技術が人間の心理的身体的能力を拡張し始めると伴に、人間を凌駕する知的ロボットが創造されつつある。我々はこうした事態を自然条件の大きな変容の始まりと捉え、未来に向けた提言が必要と考える。そこで本研究は、ロボット工学や心理学などの経験的手法を取り入れつつ、ロボットのような新たな存在を道徳的行為者として受容できる社会にむけた新たな道徳理論の主要テーゼを導出することを目的とする。
著者
伊藤 直樹 花輪 壽彦 及川 哲郎 山田 陽城 矢部 武士 永井 隆之
出版者
北里大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題で我々は、新たな生理的な活性として、OX-Aに海馬神経系前駆細胞の増殖促進作用を介した抗うつ様作用が存在する可能性を初めて示唆した。このことは新たな作用機序を有する抗うつ薬の開発に役立つものと考えられる。またこれまでに、漢方方剤である香蘇散が脳内OX-A発現挙動に対して作用を示した結果が得られていることから、本研究課題で得られた結果は、香蘇散の抗うつ様作用メカニズムの探索に役立つと考えられた。
著者
NUR・ADLIN・BINTI ABU・BAKAR
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2020-09-11

本研究の目的は,省エネルギー型生物学的処理技術であるDHS-USBシステムを陸上養殖に導入し,窒素およびリン化合物の同時除去を目指した閉鎖循環型養殖システムを構築することである。閉鎖型養殖水に含有される窒素およびリン化合物の除去を目指し、高密度養殖排水処理によるシステム内汚泥の微生物群集の変化を観察し,それぞれのリアクターの許容性能と機能を明らかにする。さらに,魚体への影響と安全性を評価するために,病原性微生物のモニタリングを実施とともに魚に対したDHS-USBシステムで処理した水の影響を観察する。本研究の成果は,(SDGs)の達成,特に持続可能な食糧供給と水質制御に貢献できると考えられる.
著者
小高 裕和
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

新世代・次世代の高精度宇宙X線観測に向けて、モンテカルロ法に基づくX線放射計算コードの開発を行った。このコードはさまざまな天体に適用可能な高い汎用性を持つフレームワークMONACOとして完成した。物理プロセスとして、高温の降着流における逆コンプトン散乱、光電離プラズマ、低温物質からのX線反射を扱うことができる。これらを中性子星・ブラックホールへの降着流、活動銀河核からの超高速アウトフロー、活動銀河ダストトーラス、白色矮星の降着円盤コロナに適用し、モンテカルロ計算による高精度データをすざく衛星、チャンドラ衛星、XMM-Newton衛星などのデータに適用する仕組みを確立した。
著者
萩原 昭広
出版者
大阪人間科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

フリースクールやたまり場に代表される「居場所」の定義は多義かつ曖昧なため確立されていないが、近年では物理的側面・心理的側面の両方を併せ持つものと理解されつつある。起立性調節障害を理由とした不登校は中学生全体の約1割を占めると言われる。登校できないことによって他者や社会との関わりが減り、対人面や学習・体力面で大きなハンデが生じている。これらを踏まえ、疾病の特徴を踏まえた居場所支援を定期開催し、他者との交流の場の確保ややってみたいことの提案・企画・運営を学生ボランティアとともに行うなどの仕掛けを講じる。この居場所が対象児にとっての有用性や自己肯定感の向上に寄与するのかについて検証を行う。
著者
細貝 亮
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究の目的は、全国紙の論調の極性化現象について、その実態と進行メカニズムを明らかにすることである。近年、全国紙の論調の違いが以前よりも大きくなってきているとの指摘がしばしばなされるようになった。しかしながら、このような論調の極性化現象は、いつから、どの程度、どのような意味で進行していると言えるのか、検証が待たれているところである。本研究では、新聞記事の極性化の程度を示す「極性化指標」を提案し、これを各時代各争点の記事に適用することで、新聞論調の極性度の時代的変化を一貫した基準で記述するとともに、その進行メカニズムと発生条件の一端を解明することを目指す。
著者
真鍋 俊照 MEEKS L. R. MEEKS L.R.
出版者
四国大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

日本の僧侶と尼寺の関係から、その歴史、思想を真鍋が担当、また京都と奈良、大阪に点在する尼寺の歴史・思想をローリ・ミークスがそれぞれ担当した。そのうち現存する尼門跡寺院36ヶ寺のうち平成18年度は4ヶ寺(地安寺、称名寺、霊鑑寺、宝鏡寺)を調査した。19年度、3ヶ寺(大聖寺、中宮寺、法華寺)を調査した。そして、絵画・聖教(経典、法式等).目録・工芸品・衣裳・打敷を調査・写真撮影した。そして7ヶ寺の宝物から、尼僧と男僧の儀式・法金の違い、時代性、規模、生活状態、会話状の言葉(御所ことば)の記録、伝え語りを中心に研究した。それにより、ミークスは、「女性救済に関連する問答」の実態を「菩堤心集」より調査し、平安後期(12世紀)では、旧仏教の学僧たちが女性に対して想像以上に寛容であったことを示すとし、また、女性であっても仏道修行が、入念に行われていた実態をつきとめた。さらに「菩堤心集」では、仏教界の男性中心のイデオロギーと在家者のあいだには、種々と違和感があったことを論証した。真鍋は、東国の金沢北条氏の菩提寺の金堂に伝来する文保元年(1317)の修造記述を重視して、「弥勒来迎」「壁画」が、「弥勒上生経」や「弥勒下生経」を具現した本尊「壁画」が完成した。しかしこれは表面の絵画で、裏面にも「弥勒浄土図」が描かれており、両面により、日本で随一の弥勒下生の情景が発見された。そして絵画の実証を行うため、経典と絵画化の関係、図像の礼拝の実態など北条氏と称名寺の僧侶の側の信仰の位置づけ価値感を明確にした。そして、奈良地方の尼僧が育んできた、円照寺の打敷の調査・経理も行い、京都の尼門跡寺院の違いを比較研究した。二年間で調査した資料は、86点である。