著者
長谷川 毅 妙中 直之 日月 亜紀子 阿古 英次 金原 功 西村 重彦 中塚 伸一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.1247-1251, 2010 (Released:2010-11-25)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

症例は50歳代,男性.昭和61年に潰瘍性大腸炎(全結腸型)を指摘されていたが放置していた.平成11年に下血にて大腸内視鏡検査を施行,S状結腸癌と診断され同年11月に潰瘍性大腸炎に合併したS状結腸癌として結腸亜全摘術,J型回腸嚢直腸吻合術を施行した(高分化型腺癌,mp,ly2,v1,n0,stageI).平成20年1月に腫瘍マーカーの上昇(CEA,CA19-9)を認めたため大腸内視鏡検査を施行,残存直腸に粘膜不整像を認め,生検にて低分化腺癌と診断された.平成20年3月腹会陰式直腸切断術を施行した.病理組織検査にて直腸内分泌細胞癌と診断された.術後経過は良好で術後第25病日よりmFOLFOX6を開始し,術後10カ月現在,再発の所見は認められていない.直腸内分泌細胞癌はまれな疾患で,1984年以降で自験例が本邦60例目であり,潰瘍性大腸炎の残存直腸に発生したのは本邦初である.
著者
高木 浩人
出版者
愛知学院大学
雑誌
愛知学院大学論叢. 心身科学部紀要 (ISSN:18805655)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.47-54, 2008-03

本研究は254名の大学生を対象に,組織への帰属意識と充実感との関連について検討した.重回帰分析の結果,充実感のすべての要素(充実感,孤立感,自立・自信,自己の存在の肯定)が,大学生の所属組織への組織コミットメント4要素(内在化要素,愛着要素,存続的要素,規範的要素)によって説明可能であることが明らかとなった.とくに,(a)内在化要素は,充実感,自立・自信,自己の存在の肯定と有意な正の関連を示し,(b)愛着要素は充実感と有意な正の関連を,孤立感と有意な負の関連を示し,(c)大学の場合,愛着要素と存続的要素が充実感と有意な正の関連を,孤立感と有意な負の関連を示していた.今後の研究への含意が議論される.
著者
乾 健太郎 徳永 健伸 田中 穂積
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.42, pp.124-125, 1991-02-25

文章を生成するには,語乗選択や語順などさまざまな要素に関する決定が必要である.これらの決定は,文章中で述べる話題を選択・構成するwhat-to-sayレベルとwhat-tqsayの内容を表層化するhow-to-sayレベルに分けて考えることができる.2つのレベルの決定は相互に依存するため,その緊密な関係を実現するアーキテクチャの必要性が指摘されている.たとえば,1文の中にどれだけの話題を含めるかという問題は,話題間の意味的なつながりから制約(what-to-sayの制約)を受けると同時に,それを表層化したときに適切な長さの文になるかという制約(how-to-sayの制約)も受ける.また,how-to-sayレベルのみについて考えても,種々の決定が相互に依存し,それらをどの順序で決定すればよいかが必ずしも明らかではない.たとえば,後置詞句の語順は,後置詞句の長さに依存するため,語彙選択を先におこなわなければ適切に決めることができない.語彙選択には照応表現の選択も含まれるが,照応表現は,先行洞と照応詞の距離などに依存するため,適切な照応表現を決定するためには語順の情報が必要である.このように,生成に必要な種々の決定の間には相互依存関係がある.この問題に対する代表的なアプローチの1つに種類の異なる決定を交互におこなう手法があるAppeltやHovyでは,how-to-say決定部が決定の過程で必要に応じてwhat-to-say決定部を呼び出すことにより両者の相互作用を実現しているまた,Hovyは,how-to-say決定過程に対し,決定の種類ごとに異なるモジュールを用意し,モジュールの適用順序を動的に変えることによって,決定の順序に柔軟性を持たせる手法を提案している.しかしながら,これらの手法では,一度決定した要素については変更しないため,将来の影響を十分に予測した上で個々の決定をおこなう必要がある.Appelt,Hovyの手法では,統語的要因を考慮しながらwhat-to-sayを決定するため,what-to-say決定部は複雑なメカニズムを必要とする.また,what-to-say決定部を呼び出すタイミングの管理も困難である文章生成では,論旨展開や照応表現などの文脈的な問題も考慮しなければならないため,メカニズムはさらに複雑になる.本稿では,この問題へのアプローチとして,一度表層化した文章を繰り返し改良し,最終的に質の高い文章を生成するモデルを提案する.一般に,文章を繰り返し改良することを推敲と呼ぶが,生成過程全体を推敲過程としてとらえることによって,生成に必要な種々の決定を相互に依存する形で実現できる.本稿では,推敲に基づく生成モデルの概要と一部の実現について述べる.
著者
嶺重 慎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

(1) ブラックホールのペア、バイナリーブラックホールへのガス降着流を、質量、連星系軌道の離心率、円盤面の傾き角を変えて計算し、放射特性を明らかにした。(2) バイナリーブラックホールモデルに基づきシミュレーションを実行して輝線プロファイルを計算し、観測の非対称なダブルピーク・プロファイルを再現した。(3) ブラックホール合体時に予想される超臨界降着流の大規模輻射磁気流体シミュレーションを実行し、クランピーアウトフローの証拠を見いだした。
著者
春日 敦子 青柳 康夫
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.309-318, 2005-08-05
被引用文献数
1

干し椎茸の水戻し汁の, 料理への利用の是非を検討する為, 3通りの水戻し方法を試みた。水戻し方法「P」は, 230分水戻しを行った。水戻し方法「Q」は始めに30分間水戻しを行い, その水戻し汁は捨て, 等量の新たな水を加え, 更に200分水戻しを行った。水戻し方法「R」は水戻し時間以外は「Q」と同様の方法であり, 一度目の水戻し時間は90分, 2度目の水戻し時間は140分であった。3通りの水戻し方法にて, 無機質, 遊離アミノ酸, 5'-ヌクレオチド, 有機酸含量の分析, 及び官能検査を行った。これらの結果を基に, 干し椎茸の水戻しは, 水戻し90分後水戻し汁を一旦捨て, 新しい水を加え, 干し椎茸中心部の堅い部分が柔らかくなるまで更に水戻しを継続する, という新しい方法を提案したい。
著者
中野 倫靖 緒方 淳 後藤 真孝 平賀 譲
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.41, pp.45-50, 2004-05-07
被引用文献数
1

本稿では,人がドラムの音を真似て口ずさんだ音声(口ドラム)を認識し,それに対応するドラムパターンを検索する手法を提案する.従来,実際のドラム音(楽器音)を対象とした認識は研究されてきたが,口ドラムは研究されていなかった.口ドラム認識では,音質とドラム音表現の両方の個人差への対処が問題となるため,従来のドラム音認識手法は適用できない.そこで本手法では,擬音語を中間形式として採用することでこの問題に対処する.擬音語の各音素を口ドラム音のスペクトル構造へ対応付けるために確率モデルを用い,音質の個人差を吸収する.また,各ドラム音に対応する擬音語の辞書を用意して、表現の個人差に対処する.200発話の口ドラムデータに対して実験した結果,91.5%の認識率を得た.This paper proposes a method of recognizing voice percussion )simulated drum sound by voice) and retrieving the corresponding drum pattern from a database. Although drum sound recognition has been the topic of existing work, there has been no previous attempt that dealt with the problem of voice percussion recognition. This problem is difficult because of individual differences inherent in voice spectrum characteristics and also in how the intended drum sounds are articulated. We solve this problem by utilizing phonemic sequences of onomatopoeia as internal representation. The sequences are estimated from the input power spectrum with a stochastic model, and are flexibly matched with dictionary entries representing typical drum patterns. This two-level scheme is intended to deal with the two types of individual differences mentioned above. In an experiment with 200 utterances of voice percussion, our method achieved a recognition rate of 91.5%.
著者
山川 充夫
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

地方都市の中心市街地空洞化は、世界都市化経済のもとでの都市システムの変容、都市化経済のもとでの郊外化、少子高齢化社会での空間市場縮小といった3つ過程の複合化現象として捉えられ、少子高齢社会では人口の空間的流動性が二極化していくので,地方における中心部の機能構築と空間整備は定着性の強い人口に焦点を当てて都市空間整備を行なう必要ある。地方都市の中心市街地の空洞化を促進したのは、改正大店法である、これは大型店出店を原則自由とするもので、巨大化・複合化戦略のなかで資本規模の大小にかかわらず、売場面積の拡大をはかりつつ、大店舗網のS&Bを進めた。例えばジャスコは提携・合併を繰り返し,中部・近畿をホーム地区としつつ全国に拡大しつつ、店舗のS&Bを進め、店舗が「ストック」としてではなく,「フロー」として取り扱われていること、そして規模と業態の異なる店舗を組み合わせて商圏の重層的掌握をねらっている。地方中核都市を中心とした30都市を選定し、小売業概況、大型店立地動向、中心市街地における商業活動や歩行者通行量、中心市街地再構築の視点などを人口規模別に検討すると、商業集積拠点としての中心市街地が維持されうるか否かの分岐点は人口規模20〜30万人台にある。また福島県内においてみると、一方の極としては地方中核4都市における駅前型・市街地型の商業集積の空洞化が進んでおり、他方の極としては郊外におけるロードサイド型ないしは郡部町村での商業集中の動きがあり、これらの動きの中間地帯に住宅背景型や中小6市の中心市街地が位置している。地方都市の中心市街地を活性化するには、消費者ニーズに対応した業態の転換や質の良い商品・サービスの品揃えを充実しなければならず、同業種・異業種を含め魅力ある個店が集積させることによって中心的機能としての結節性を獲得できる。当面の活性化のポイントはTMOであり、なお個性を見出せないが、特定会社型は商工会商工会議所型に比べれば、まちづくり運動に一定の蓄積があり、より多様な活動を行っている。例えば福島県会津若松市七日町通り商店街では「商業の活性化」ではなく、明治・大正期の建物の「修景を軸とした」まちづくり運動がワークショップ方式で進み、修景事業による空き店舗の解消、基本計画の策定、イベント導入などが積極的に進められ、会津若松市のまちなか観光の中心的役割を果たすまでになった。
著者
藤沼 康実 青木 陽二
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.181-183, 1998-11-30
被引用文献数
1 4

冬季の自然風景地の利用としてスキーは重要な活動である。スキー場の利用者数の変動を知ることは,冬季における自然風景地を管理する上で,混雑による不快や過剰利用による自然の破壊,毎日のゴミ処理量や駐車場の必要量などを知る上で大切である。日光国立公園における奥日光湯元スキー場のスキー客数と駐車場の利用台数の変動について,休日のような社会的要因と気温や積雪のような自然的要因の影響について分析を行なった。その結果,1,2月と日祝日,土曜日に利用が多くなることがわかった。また,積雪や気温,湿度などの気象条件も有意に影響していることが分かった。
著者
萩原 泰治 足立英之
出版者
神戸大学
雑誌
國民經濟雜誌 (ISSN:03873129)
巻号頁・発行日
vol.185, no.4, pp.83-96, 2002-04
著者
西島 央
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

本研究は、戦前期の小学校の唱歌教育について、学校の建築図面などから読み取れる唱歌室の配置やつくりと、学校日誌などの学校公文書などから読み取れる楽器などの備品・消耗品・教具類を整理し、実際にどのような唱歌の授業が行われており、どのような"音"が奏でられていたかを明らかにすることを目的とする。平成16年度は、調査対象地域の長野県で、唱歌科の普及の早かった上田市・小県郡周辺と、遅かった下伊那郡を中心に、唱歌科の普及期である明治10年代後半から30年代までの時期に限定して、学校建築、楽器等の設備・備品や、唱歌科の授業、儀式・学校行事等における唱歌に関する史料を蒐集した。この調査によって明らかになった知見は以下のとおりである。第一に、唱歌科普及を推し進める要因について、従来から論じられてきた(1)小学校令、教授細目などの制度の整備、(2)小学校祝日大祭日儀式規定と同儀式用唱歌などによる儀式の制度化、(3)各種講習会や個人の尽力に基づく教員養成に加えて、(4)唱歌室の設置、楽器などの教具の購入といったモノ的条件の整備が非常に重要であることがわかった。第二に、残念ながら、当該時期における学校の楽器保有状況を示す史料は非常に少なく、どのような"音"が奏でられていたかを検証するに足る史料は得られなかったが、五線譜に記譜された唱歌の普及とオルガンなどの伴奏用楽器の普及に時差があることから、少なくとも、当時つくられた唱歌を現在演奏するのとは、音程などがかなり違う"音"であったことは推測できる。以上から、今後は、今日の日本人の音楽性を形成していく過程について、モノに注目した調査研究が必要であることが示唆できる。同時に、これまで連携されることのほとんどなかった、戦前期の学校音楽の研究と大衆音楽の研究をつないでいく必要を痛感した。本補助金助成期間は終了するが、引き続きこれらの点に留意して研究を続けていきたい。
著者
國島 正彦 小澤 一雅 渡邊 法美 野城 智也 吉田 恒昭
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

本年度は、工事入札契約制度と安全管理の調査研究に焦点を当て、公共工事執行過程の構造分析と問題点の抽出、コスト縮減のための手段としてVE制度の導入に関する研究、建設労働災害の構造的特性を探るとともに、施工の生産性についての研究を行った。公共事業の妥当性、納税者の不信感、高いと思われているコストが問題とされているが、必要と思われることは、事業決定のプロセスを透明にすること、市民社会と市場メカニズム双方に基づく開かれたシステムを構築していくこと、コストに関しては物価水準が違うことから単純にアメリカと比べて3割高いわけではないがコストダウンの余地はあるため、コストの総合的な解明、発注規模の大型化や平準化、生産性の向上などを行ってコスト縮減に取り組む必要があることが示唆された。コスト縮減の手段としてVEについては、費用・品質・技術開発の3つの視点から、発注者と元請企業の行動を目的・制約条件・手段・評価の4項目に分類した。評価結果をもとに公共工事執行過程の問題点を抽出し、契約後VEの導入について、「減額変更を伴わず工法責任は乙が取る方式」から契約後VE方式を実施させることが現実的であると考えられた。安全と生産性について研究を行った。建設業者の多様性と施工の生産性を考慮しながら、現場の安全管理と事故・災害との関連を表現できる概念モデルを構築した。ガス管の埋設工事を例に取り、施工の生産性に影響を与える要因を明らかにし、それらの影響要因と生産性との関係を定量的に表現することのできる統計モデルを構築した。
著者
北川 圭子
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.71, no.600, pp.197-201, 2006
被引用文献数
2

The dining kitchen is the housing style after World War II. The dining kitchen has spread to Japan based on "55-4N-2DK" of Japan Housing Corporation. It turned out that "55-4N-2DK" was the same as civil servant apartment "RC52 type". The root was "Wohn Kuche","Wohn Kuche" was researched in Europe after World War I. I defined this process, "Process of Wohn Kuche". In the background where the dining kitchen was born, there was a theme of housework reduction of the housewife. There were five stages in the forming process of dining kitchen. I defined, "Theory proposal period", "Model proposal period", "Experimental period", "Development period", and "Established period".
著者
李 常慶
出版者
Japan Society for Information and Media Studies
雑誌
情報メディア研究 (ISSN:13485857)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-20, 2005

本稿では,1970年代末から始まった中国古典籍のデジタル化の流れをまとめた上で,中国の古典籍史上最大の叢書である『四庫全書』のデジタル化について紹介し,最後に『四庫全書』のデジタル化が学術研究に与える影響について考察した.この考察を通じて,『四庫全書』のデジタル化は中国古典籍の保存,整理および利用に大きな役割を果たすのみならず,今後の中国古典籍のデジタル化,例えば,漢字処理技術の開発などにおいても非常に参考になるものであることを明らかにした.さらに,『四庫全書』のデジタル化により,膨大な量の古典籍の本文を加工して利用しやすくなり,これの検索ももれなく行なうことができ,さらに,数量的分析も行ないやすくなるので,古典籍の学術研究に大きな刺激を与えることができることをも指摘した.
著者
佐藤 良明 岩佐 鉄男 木村 秀雄 松岡 心平 DEVOS Patrick 長木 誠司
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

専門分野を異にする音楽=芸能研究者によって構成された本研究は、近現代を中心とした日本の「うた」の変容を、歴史的・地域的にきわめて広い視座から捉え直す研究として始まった。研究の根幹は1920年代以降の日本のポピュラー音楽の展開にあるが、「日本的」な歌舞の源基をなす、能を舞う身体の研究や、明治期における西洋歌唱の導入に伴う異文化混成の研究を含む「総合的」な視野のもとに進められた。漠然と「日本的」とされてきた音楽性の実態を、収集音源から実証的に把握し直した結果、近代の民衆が路上や演芸場で楽しんだ音楽に反映されているのは、なんらかの安定した「民俗音楽的類型」というより、西洋から移入された規範音楽への反発と、にもかかわらず起こった馴化の矛盾的な融合の姿であることが観察された。本研究はまた、日本の流行歌が、欧化政策が分断した「西洋的洗練」対「日本的情緒」の対立項に、アメリカから移入されたポップスが含有する「反クラシック的様式」とが絡む、複雑な構造の中で展開した様相を明らかにした。その成果は、一つには、「演歌の成立と発展」をめぐる書物に、もう一つには「J-POPの正体」をめぐる書物に結実しつつある。近代の米国で「下層民衆」が育んだルーツ音楽が、メディア社会における産業・権力構造の変容と絡みながら、ロックンロールという形式を取るにいたり、それが世界のポップ音楽を革新したいきさつは、一般図書『ビートルズとは何だったのか』(2006)で述べられた。同書が採ったグローバルかつシステム論的な枠組みの中に、演歌ならびにJ-POPの成立と発展を位置づけ、国際的な研究の場に発信していくことが次の課題である。