著者
川本 茂雄
出版者
The Linguistic Society of Japan
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.1981, no.80, pp.1-12, 1981-11-30 (Released:2010-11-26)
参考文献数
11

Resumé of the presidential address at the 1981 Spring Convention of the Linguistic Society of Japan. The author tries to show by means ofconcrete examples how semiotics may be brought to collaborate withlinguistics to interpret poems and poetic express
著者
竹下 昌志
出版者
北海道大学大学院文学研究院応用倫理・応用哲学研究教育センター
雑誌
応用倫理 (ISSN:18830110)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.3-20, 2023-03-31

近年、私たちがより道徳的になる方法の1つとして、道徳的エンハンスメントが提案されている。道徳的エンハンスメントとは、ある道徳的主体の道徳的能力の改善や道徳的能力の獲得・選択を目的にした何らかの処置や介入のことである。道徳的エンハンスメントの方法として多く議論されているのはバイオエンハンスメントであるが、これは個人の自由や自律性を損なうという懸念がある。そこで、近年のAIの発展を受け、道徳的AIエンハンスメントが提案されている。提案されている道徳的AIエンハンスメントには、道徳的判断を下しユーザーに伝えるAI、ユーザーに助言するAI、ユーザーと議論するAIがある。しかし、道徳的AIエンハンスメントには、道徳的エンハンスメントに成功しないのではないか、AIの助言にしたがうことは問題があるのではないか、などの指摘がなされている。そこで本稿では、道徳的AIエンハンスメントの種類や、道徳的AIエンハンスメントが何を改善するのかについて整理した後、六つの批判を取り上げ、それらに対して反論することで道徳的AIエンハンスメントを擁護する。また既存研究でほとんど擁護されていない、質問を受けて答えるだけのAIによる道徳的AIエンハンスメントも擁護する。
著者
大沢 文夫
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.987-992, 2000-08-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
43

この50年の間に生物学は驚異的な発展をとげた.生物は分子でできた機械をもち,生物個体自身も一種の機械とみることができるという.生物の分子機械は歯車のように確実に動く人工の機械とどこまで似ていて,どこが違うか.最近,分子機械の入出力ルースカップリング説が実証された.分子機械の研究は生物のナノテクノロジーの基本を明らかにし,来世紀の生物に学ぶテクノロジーへのヒントを与えるであろう.
著者
増田 毅
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.718-722, 2021 (Released:2021-10-10)
参考文献数
7

トリチウム摂取に対する線量評価のためには,その体内動態を明らかにする必要がある。ICRPは,公衆の線量係数を求める際に,トリチウムの体内動態を表す単純な2コンパートメント・モデルを用いてきた。ただし,2016年に作業者の線量係数を求める際には,その体内動態モデルをより複雑なものへ改訂している。これにより作業者の線量係数は従来よりも安全寄りの大きな値となっている。これは脂肪組織を含むと考えられる長半減期成分をモデルに取り入れたためである。

3 0 0 0 OA 麻酔薬と記憶

著者
和泉 幸俊
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.191-202, 2008 (Released:2008-04-16)
参考文献数
48

術中覚醒とは術中に意識が回復する事態だが, 術後記憶が保持されれば外傷後ストレス障害に帰着しうる. よって術中覚醒について論じる場合, 使用される麻酔薬の記憶に対する薬理作用が明らかにされなければならない. 記憶の実験的モデルである海馬の長期増強 (LTP) の誘導を後からの投与で阻止するものとしては代謝性グルタミン酸受容体の拮抗薬があるが, 術中覚醒時の使用が論議されるベンゾジアゼピンよりも, 術中覚醒後の記憶形成の阻止には有用かもしれない.
著者
竹澤 邦夫
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.205-209, 1995-02-15 (Released:2017-09-22)
参考文献数
13
被引用文献数
1

従来の可能性回帰は異常値に弱い。そこで、「平行な2本の直線の間にかなりの数のデータがある、という条件の下で、2本の直線の切片の差を小さくする」という方針に基づく可能性回帰アルゴリズムを開発した。この方法は、データの中に占める異常値の割合によらず対応でき、アルゴリズムが単純なため容易に実施でき、結果の解釈がしやすい点に特徴がある。また、この方法を応用すれば、可能性回帰の文脈に沿った、しかも、異常値に対して頑健なLOWESS(LOcally WEighted Scatter plot Smoothing)を実現することができる。
著者
大曲 貴夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.110, no.11, pp.2355-2360, 2021-11-10 (Released:2022-11-10)
参考文献数
21

SARS-CoV-2(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)による感染では他のウイルス感染症と同様にまずは自然免疫が応答するが,I型インターフェロン応答が阻害されるために一部の患者では感染が抑制されずに進行し,NLRP3インフラマソームの活性化が持続する.そこに獲得免疫系の応答が強く起こり,さらにI型インターフェロン応答が遅発性に強く起こるために重症化すると考えられている.
著者
佐藤 香寿実
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.393-416, 2019 (Released:2020-02-15)
参考文献数
47
被引用文献数
5 1

本稿の目的は,フランス,ストラスブールの大モスクの建設過程およびその利用を通じて,言説実践としてのスケールがいかに実質的な効果を生み出したのかについて,「スケールのパフォーマティヴィティ」の観点から論じることである。同モスクは,ライシテ(非宗教性の原則)が重要視されるフランスにありながら,異なる制度を持つアルザス・モーゼル地方法を活用し,地方公共団体からの資金援助を受けて2012年に建てられた。本稿では,人文地理学で発展してきた社会構築主義的な「スケール」視角に依拠し,スケール言説がモスクの建設過程および物質性にいかに作用したか,またモスクの利用を通じて新たなスケール言説がいかに再構築されているか,インタビューで得た語りを引用しながら分析を試みた。分析において,アクターや状況に応じて登場する複数のスケールが,「ここ/よそ」の区別に結び付けられていること,さらにスケールの言説実践を通じて,「ここ/よそ」の境界は絶えず問い直されていることが示された。
著者
Miyuki H Komachi Kiyoko Kamibeppu
出版者
Japan Society of Nursing Research
雑誌
Journal of International Nursing Research (ISSN:24363448)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.e2022-0032, 2023-08-25 (Released:2023-08-25)
参考文献数
34

Objective: Families of patients in the intensive care unit (ICU) often experience severe stress, and understanding their experience is important for maintaining family functioning. This study aimed to determine the characteristics and factors associated with family functioning in families of patients admitted to the ICU. Methods: This cross-sectional study recruited all family members (N = 144) of patients admitted to the ICU at two teaching and advanced treatment hospitals, 77 (53.5%) of whom completed a questionnaire. Family members provided the demographic and clinical characteristics of the patients and completed the Family Relation Index (FRI), the Impact of Event Scale-Revised, the Center for Epidemiologic Studies Depression Scale, the State-Trait Anxiety Inventory (STAI) Form X, the Connor-Davidson Resilience Scale (CD-RISC), and the Social Support Questionnaire. Results: Ten (13.0%) and 37 (48.1%) family members had the "hostile" and "sullen" family functioning type, respectively. Multiple regression analysis revealed the presence of a significant negative relationship between the FRI and the STAI-state (B = −0.057, β = −0.36; p =.001) that the participants had experienced a stressful event within the previous month (B = −1.201, β = −0.276, p =.009), and that the participants' CD-RISC scores were correlated with family functioning (B = 0.021, β = 0.176, p =.049). Moreover, this model explained 23.9% of the variance in total FRI scores with regard to family functioning. Conclusions: In total, 61% of the family members had poor family functioning and required support. Among the family members of patients in the ICU, anxiety was associated with poor family functioning, whereas resilience was associated with good family functioning.
著者
近藤 洋一 間島 信男 野尻湖哺乳類グループ
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.89-104, 2023-08-01 (Released:2023-08-17)
参考文献数
73

野尻湖からナウマンゾウをはじめ多くの脊椎動物化石が発見されている.1962年の第1次野尻湖発掘から2018年の第22次発掘までに15,989点の資料が野尻湖発掘調査団によって得られた.本論では第1次発掘から第22次発掘の資料をもとに,タクサ別層準別化石数の特徴を明らかにした.臼歯化石については,野尻湖層立が鼻砂部層T4~T6ユニット(43.8~42.6 ka)が単位時間単位体積当たりの化石数が最も多いことが分かった.また,臼歯化石からナウマンゾウの層準別の最小個体数をもとめ,その変遷を明らかにした.その結果,年齢構成の特徴から,野尻湖におけるナウマンゾウが選択的な死による集団である可能性があることが判明した.
著者
川満 富裕
出版者
日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会
雑誌
日本ストーマリハビリテーション学会誌 (ISSN:09166440)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.3-10, 2003 (Released:2022-08-31)
参考文献数
31
被引用文献数
1

人工肛門に言及した1903年以前の文献を探し出し、わが国における人工肛門の初期史を考察した。文献は18件みつかった。これによると、人工肛門に関する知識が西洋から日本に伝わった。人工肛門を意味する最古の訳語は1832年に現れた「義肛」で、人工肛門に関する知識は『泰西名医彙講』(1837年)の出版後に深まったと思われる。人工肛門の実際については、はじめて人工肛門が造られたのがいつかは分からないが、遅くとも1892年に造られた記録がある。また、1910年までには数十例の人工肛門造設術が行われたという報告がある。