著者
冨井 直弥
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
AI・データサイエンス論文集 (ISSN:24359262)
巻号頁・発行日
vol.4, no.L1, pp.3-8, 2023 (Released:2023-03-01)
参考文献数
1

JAXAは衛星SARによるインフラ変位監視技術の開発を実施してきた.用いている衛星は「だいち2号(ALOS-2)」である.Lバンド合成開口レーダを搭載しているため,高分解能モードがあり,空間分解能3m,観測幅50kmである.Xバンドに比較して波長が長く,雲・雨・葉の透過度が高い.計測原理は,衛星-地表面の距離変化を2回以上の観測の位相差から相対変位を求める.例えば河川堤防の定期点検は,現在目視にて実施しているが,JAXAは点検前に衛星による一次スクリーニング結果を反映し,変位検出箇所を重点的に目視点検する方法を提案した.また,衛星データを使ってインフラの変位を自動解析できるツールを開発.航空レーザ測量や水準測量と比較して,SAR解析は現地作業・機材準備の必要もない.計測範囲も50km四方まで可能.計測精度はmmオーダである.
著者
鶴本 一成 林 洋克 伊野 匠 山本 大樹
出版者
一般社団法人 日本災害医学会
雑誌
日本災害医学会雑誌 (ISSN:21894035)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.5-11, 2023-03-20 (Released:2023-03-20)
参考文献数
15

2015年4月25日に発生したネパール大地震に対し、手術等が可能な国際緊急援助隊医療チームが派遣された。1次隊はバラビセ村で診療を行っており、2次隊は1次隊の活動を引き継いで活動を開始した。医療調整員はこれまでの派遣同様の診療受付・バイタルサインの測定などの他、転院搬送が必要な患者を、現地救急車にて搬送する際に同乗し患者管理を行った。5月12日に発生した余震によりバラビセ村から撤収し、カトマンズ市内の病院で支援を行った。病院では救急車などで来院した患者の搬入、独歩で来院した患者のトリアージの他、他国医療チームがフィールドクリニックの展開準備をしていたため、配置・設営などの助言および補助、さらに臨床工学技士・臨床検査技師が行う治療・医療機器のメンテナンスの補助を行った。医療調整員は機能拡充チームとしての活動および病院支援を行った。今後の機能拡充チームとしての活動は、他職種のより一層の理解と現地ニーズに応えるための柔軟性が求められる。
著者
Giunta Claudio
出版者
イタリア学会
雑誌
イタリア学会誌 (ISSN:03872947)
巻号頁・発行日
no.60, pp.1-33, 2010-10-20
著者
高橋 泰城
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.69-71, 2008 (Released:2011-12-03)
参考文献数
21

神経科学と経済学との境界分野は,Neuroeconomics(神経経済学)と名づけられ,近年活発な研究がなされている.本発表では,時間割引および不確実性下の意思決定に関して,経済学における規範的意思決定からの乖離に関する神経経済学的研究(神経ホルモンや中毒財との関連),および行動経済学·進化生物学との関連を紹介する.
著者
松本 七映 鎌田 真光 林 英恵 カワチ イチロー 平山 太朗 根岸 友喜
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.223-228, 2021-05-31 (Released:2021-06-16)
参考文献数
19

「パ・リーグウォーク」は2016年3月に無料配信を開始したプロ野球パシフィック・リーグ6球団の公式アプリである.ファン心理を核として,行動科学理論とゲーミフィケーションに基づき,楽しみながらアクティブに過ごせるよう設計されている.例えば,プロ野球の試合と連動した1日合計歩数による対戦球団ファン同士の歩数合戦や,1日1万歩を達成すると1枚ランダムに選手画像がもらえる選手図鑑機能などがある.長期的かつ大規模に事業継続され,2021年3月時点で全47都道府県から6万超のダウンロードがあった.匿名データを用いた検証では,アプリ利用による歩数の増加とその継続が確認された.また,自治体等が実施する既存保健事業ではリーチが比較的困難であった男性,壮年期,様々な社会経済的状況の人々も巻き込み,これらの層でも歩数増加が認められた.アプリ利用開始時点で運動の行動変容ステージが前熟考期の者が約4分の1も占めていたことも分かっている.「みるスポーツ」と「するスポーツ(身体活動・運動)」を融合させたこのモデルは,新たな健康づくり,スポーツ施策の在り方を提示している.また,「ファン心理」という切り口は,他のスポーツやエンターテイメントへも応用可能である.好きな画像が集められるなどの非金銭的なインセンティブ,対象(集団)の団結力を引き出す競争の仕組み,ゲーム要素は,自治体の取り組みにも活かせるかもしれない.
著者
和田 洋六
出版者
The Surface Finishing Society of Japan
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.246-250, 1997-03-01 (Released:2009-10-30)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1
著者
Keerthi S. Guruge Hirokazu Hikono Nobuaki Shimada Kenji Murakami Jun Hasegawa Leo W.Y. Yeung Noriko Yamanaka Nobuyoshi Yamashita
出版者
The Japanese Society of Toxicology
雑誌
The Journal of Toxicological Sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.687-691, 2009-12-01 (Released:2009-12-01)
参考文献数
14
被引用文献数
51 74

Recent studies showed that perfluorooctane sulfonate (PFOS) affects the mammalian immune system at levels reportedly found in the general human population. It has been demonstrated that exposure to immunotoxic chemicals may diminish the host resistance of animals to various pathogenic challenges and enhance mortality. Therefore, the current study was carried out to characterize the effect of a 21 day pre-administration of zero, 5, or 25 μg PFOS/kg bw/day in female B6C3F1 mice on host resistance to influenza A virus infection. At the end of PFOS exposure, body/organ weights did not significantly change whereas PFOS distribution in blood plasma, spleen, thymus and lung was dose-dependently increased. PFOS exposure in mice resulted a significant increase in emaciation and mortality in response to influenza A virus. The effective plasma concentrations in female mice were at least several fold lower than reported mean blood PFOS levels from occupationally exposed humans, and fell in the upper range of blood concentrations of PFOS in the normal human population and in a wide range of wild animals. Hence, it should be important to clarify the precise mechanism(s) for excess mortality observed in the high dose group.
著者
好井 裕明
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.314-330, 2004-12-31 (Released:2010-04-23)
参考文献数
23

差別を語るということ.これは差別することでもないし, 差別について語ることでもない.本稿では差別することの特徴としてカテゴリー化の暴力と被差別対象の “空洞化” を述べ, 差別について語る社会学の基本として〈受苦者〉の生に限りなく接近することの意義や問題性を論じる.そのうえで差別を語るということを, 自らの差別的経験を自分の言葉で語ることとして捉え, ある啓発講座での実際の語りからその営みを例証する.普段私たちは自らの差別的経験を語ることはない.その意味でこの営みは非日常的である.しかしこれは, 語る本人やその声に耳を傾ける他者が, 差別について抽象的一般的に考えるのでなく, 常に自らが生きる日常生活から遊離することなく等身大の世界で具体的に考えることができる営みなのである.そしてこの非日常的な営みを新たなトピックとすることで差別の社会学の可能性が広がってくる.〈受苦者〉の生, 〈被差別当事者〉の生を原点とすることは差別の社会学の基本である.そのことを認めたうえで〈かつて差別したわたし/差別する可能性があるわたし〉の生を原点とし, 〈わたし〉の普段の営みを見抜き, 自らの生へ限りなく接近することから差別を捉えなおすという営みが, さらに差別の社会学を豊穣なるものにすることを主張したい.
著者
宮松 浩憲 Hironori Miyamatsu
出版者
久留米大学経済社会研究会
雑誌
経済社会研究 = The journal of the Society for Studies on Economies and Societies (ISSN:24332682)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1-2, pp.179-192, 2022-07-25

これまでの研究からは十分には見えてこなかった庶民・農民の生活史を,人名から多面的かつ詳細に捉える方法を提示する。本稿では,主として「食べる」を含む人名を通して,領主と従属民の関係に新たな光を当てる。

3 0 0 0 OA 独唱:捨てた葱

著者
野口 雨情[作詞]
出版者
コロムビア(戦前)
巻号頁・発行日
1927-10
著者
青野 浩之 笹野 稔
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.28-37, 2018-03-30 (Released:2018-07-31)
参考文献数
30

関節炎モデルは関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)の病因・病態解析の研究において広範に使用され,潜在的な治療標的の同定や標的の妥当性の検証のために遺伝子改変モデルを用いた研究が進められてきた.特にTNF-αやIL-6を代表とする炎症性サイトカインを阻害する生物学的製剤の登場に関節炎モデルは大きく貢献してきた.一方,RA治療のための新規薬剤開発にコラーゲン関節炎を代表とする様々な動物モデルが汎用されているが,関節炎モデルでの薬剤の効果はRA患者での治療効果と必ずしも一致したものではなく,薬剤の臨床での有効性を予見できるかどうかはモデル系の選択や試験計画に大きく依存する.いずれにしても,動物モデルは,RAにおける疾患のメカニズムの解明および新しい治療法の開発を発展させるために不可欠である.本稿では現在,汎用されている関節炎モデルを紹介するとともに,さらに革新的なRA治療薬を見出すために使われつつある新規動物モデルについても述べる.
著者
佐々木 享 SASAKI Susumu
出版者
名古屋大学教育学部技術職業教育学研究室
雑誌
職業と技術の教育学 (ISSN:13442627)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-6, 2006-03

国立情報学研究所で電子化したコンテンツを使用している。
著者
大橋 敦夫
出版者
上田女子短期大学
雑誌
学術研究所所報 (ISSN:24368105)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.27-36, 2023-03-01

長野県方言の代表語である「ずく」についての総合的な研究を行なった。考察の観点は、その語源・語義・派生語・日常生活での活用の4点である。その結果、次のような結論を得た。①語源については、諸説あるが、「術(じゅつ)」説を支持する。②語義は、意義の核として、「勤労を尊重する気持ち」があり、これをもとに派生語が生みだされている。③派生語の分析では、ことわざについても言及し、例数の豊富なことを示した。④日常生活での活用では、多方面にわたり、様々な用例を挙げることができる。ここからも面積の広い長野県全体を覆う数少ない方言であり、長野県民自身が愛好している様子が窺われる。
著者
細合 晋太郎 高瀬 英希 出分 卓矢 菊地 俊介
雑誌
研究報告組込みシステム(EMB) (ISSN:2188868X)
巻号頁・発行日
vol.2023-EMB-62, no.54, pp.1-7, 2023-03-16

著者らは,並行性能および堅牢性に優れた関数型言語 Elixir の ROS 2 クライアントライブラリである Rclex(https://github.com/rclex/rclex)の研究開発を OSS にて進めている.現行の Rclex は ROS 2 がインストールされた実行環境を想定しており,ROS 2 および 64 ビットの Ubuntu に強く環境依存している.本研究では,Rclex の移植性の向上および適用範囲の拡大のため,Elixir の IoT フレームワークである Nerves への対応に取り組む.具体的には,ROS 2 環境が整備された Docker イメージから,Rclex の実行に必要なライブラリを Nerves のファイルシステムに配置できるようにする.Rclex 環境を含む Nerves ファームウェアのビルドについては,専用の Mix タスクを提供し,通常の Elixir プロジェクトの開発と同じ流儀で実行できるようにする.産業用リアルタイム OS コントローラである e-RT3 Plus を用いた活用事例を示し,さらに定量的評価では Nerve s対応が通信性能に大きな影響を与えないことを確認する.本研究の成果である Rclex on Nerves によって,Rclex の適用範囲を IoT デバイス向けに拡大させることができる.Elixir 技術者にとって ROS 2 の通信技術の導入を容易化させるだけに留まらず,ROS 技術者にとっても最小限かつ堅牢性の高い ROS 2 プラットフォームを構築できることに貢献する.
著者
亀田 秀子 相良 順子
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.277-287, 2011 (Released:2016-03-12)
参考文献数
22
被引用文献数
3

本研究の目的は,過去のいじめられた体験の体験者の語りから,自己成長感をもたらす要因を検討することである。専門学校生,短大生,大学生の男女17名を対象に半構造化面接を実施した。結果は,次の通りである。自己成長感をもたらす要因として,1)学校・家庭での話しやすい関係の構築と自己開示があったこと,2)いじめられた辛さをわかってくれる人の存在,信頼のおける大人の存在,3)家族関係と友人関係の良好さ,4)ソーシャル・サポートが得られたこと,5)積極的な対処法を取ったことが示唆された。また,いじめられた体験から自己成長感に至るプロセスにおいて,自己開示,ソーシャル・サポート,重要な他者の存在,肯定的意味づけ,そしてポジティブ思考などが,自己成長感に至る重要な促進要因であることが示唆された。
著者
伊藤 義徳 金築 優 根建 金男
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.97-108, 2001-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究では、認知心理学において注目されている自動的処理と統制的処理という概念が、認知行動療法(CBT)に及ぼした影響について展望するとともに、この概念を積極的に取り入れることが、さらなる臨床心理学の発展に寄与する可能性について考察を行った。自動的処理と統制的処理は、人の認知過程において、意識しないままに行えてしまう活動と、子細に注意を払いながら行う活動があるという事実に着目した理論である。感情の喚起により統制的処理が阻害され、相対的に自動的処理が優位になるという相互の関係性があり、特に感情情報に対する処理過程は、感情障害のメカニズムを説明するモデルにおいて重要な役割を担っている。また、処理の二過程理論は認知・社会心理学の幅広い分野で応用されており、臨床領域においても、さまざまな応用が可能であると考える。こうした他分野の知見を積極的に臨床活動に応用してゆくことが、認知臨床心理学の役割であると考える。