著者
岩月 憲一
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-04-25

英語による論文執筆は,非英語母語話者には大きな負担であり,その支援は,我が国の研究スピード及びプレゼンスの向上という観点でも極めて重要である。本研究は,英語論文において繰り返し使われる表現,「定型表現」に着目し,この定型表現を大量の論文から抽出し,適切に分類し,検索・提示する方法の確立を目指す。そして,英語論文の執筆支援システムを構築し,広く利用に供することが本研究の最終目的である。
著者
黒坂 寛 中谷 明弘 菊地 正隆 真下 知士
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

胎生期における顎顔面の形成は複雑かつ精巧に行われ、その発生過程の不具合は口唇口蓋裂等の顎顔面形成不全の原因となる。同疾患は多因子性疾患であり、胎生期における遺伝的要因と環境的要因に大きな影響を受けて発病する事が知られている。本研究では家族性に頭蓋骨早期癒合症、多数歯アンキローシスを呈する患者や口蓋裂と先天性欠如歯を持つ患者のエキソーム解析を行い新規遺伝子変異を同定した。今後は同新規遺伝子変異の機能解析を細胞株や動物モデルを用いて行い、同疾患の病態をより詳細に解析する予定である。またレチノイン酸シグナルとエタノールの過剰投与の相互作用についても顎顔面形成不全を引き起こす新規メカニズムを解明した。
著者
葉柳 和則 市川 明 増本 浩子 中村 靖子
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、「ナチスが政権を握っていた時代(1933-1945)、スイスのチューリヒ劇場において、なぜ亡命芸術家たちがナチスによって禁じられた作品の上演を続けることができたのか」という問いに答える。鍵となるのは「精神的国土防衛」というスイス固有の文化運動である。この運動は初期の段階においては、排外的な性格を持っていたが、1939年頃に「多様性の中の統一」こそが「スイス的なもの」であるという認識を前面に出した。この多様性の中に文化的諸潮流を包摂するという論理が亡命芸術の受容と上演を可能にした。
著者
永松 俊哉 北畠 義典 泉水 宏臣
出版者
公益財団法人明治安田厚生事業団
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

これまで我々は,睡眠改善にストレッチが一部寄与する可能性を報告したが、どのような運動様式が有効なのか、あるいは運動の効果が発現する機序については依然不明の点が多い。そこで本研究では、まず実用性を重視した短時間のストレッチ運動プログラムを作成し、睡眠ならびに精神的健康に関連する生理的・心理的要因に及ぼす本プログラムの影響を検討した。その結果、本プログラムの実施は、体温変動、ストレス反応軽減、および気分の改善をもたらすことが示された。続いて、本プログラムが睡眠改善に寄与するのか否か、軽度睡眠障害者を対象に睡眠脳波の変動および睡眠前後のストレスマーカーをもとに検証した結果、本プログラムは睡眠中にストレスを緩和する作用を有する可能性が示唆された。
著者
糠谷 学
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

3-メチルコランスレン(MC)などの多環芳香族炭化水素(PAH)は,脂質代謝異常および脂肪肝を引き起こすことが報告されている.しかし,その毒性発現機構についてははとんど解明されていない.そこで.我々はDNAマイクロアレイを用いて無処置のマウスとMCを投与したマウスの肝における遺伝子の発現パターンを比較し,PAHにより発現が変化する遺伝子について検討した.その結果,多くの脂質代謝酵素遺伝子の発現がPAHにより抑制されることを明らかにした.興味深い事に,これらの遺伝子は共通して核内レセプターperoxisome proliferators-activated receptor α (PPARα)の標的遺伝子であった.このことより,PAHによる脂質代謝酵素遺伝子の発現抑制は,PPARαシグナル伝達の抑制により生じている可能性が考えられた.そこで,申請者は,PAHによるPPARαシグナル伝達機構への影響について検討した.その結果,PAHによりPPARαシグナル伝達が抑制されることを明らかにした.また,興味深いことに,この抑制はPAHと結合し活性化する転写因子・芳香族炭化水素受容体(AhR)を介していることが明らかとなった.次に,PAHによるAhRを介したPPARαシグナル伝達の抑制機構について解析を行ったところ,PPARαシグナル伝達系を構成している因子であるretinoid X receptor α (RXRα)のmRNAおよびタンパク質量の減少が重要であることを明らかにした.このRXRαの減少はAhRに依存的な現象であったことより,PAHによる脂質代謝酵素遺伝子の発現抑制およびPPARαシグナル伝達の抑制はAhRを介したRXRαの抑制が原因である可能性が考えられた。現在,この抑制機構に関するさらなる詳細な解析を行なっている.
著者
潮 秀樹
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2017-06-30

甲殻類による食物アレルギーの発症機序はIgE介在性アレルギーだけでは説明できないと考え,甲殻類アレルギーは,いわゆる「食べ合わせ」のように,甲殻類ヘモシアニンがヒト免疫担当細胞を著しく活性化し,感作を誘発するという仮説を立てた.まず,甲殻類ヘモシアニンおよびその分解物がヒトおよびマウス樹状細胞等の炎症応答に及ぼす影響を明らかにした.甲殻類トロポミオシン経皮免疫誘導食物アレルギーマウスを用いてヘモシアニンがアナフィラキシーなどのアレルギー反応を増悪することを確認した.樹状細胞等に結合するペプチド配列を網羅的に探索し,食品成分中に見出される炎症誘導ペプチド配列を決定した.
著者
丹野 孝一 中川西 修 根本 亙
出版者
東北医科薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ストレプトゾトシン誘発性1型糖尿病モデルマウス(STZマウス)では血糖値の上昇に伴い疼痛閾値の低下が認められた。STZ投与後14日目における疼痛閾値の低下はAT1受容体拮抗薬のロサルタンによって抑制された。STZマウスの脊髄後角においてアンジオテンシン (Ang) ⅡおよびAng変換酵素 (ACE)の発現量は上昇していた。さらに、ACEはグリア細胞ではなく、神経細胞特異的に発現していることが確認された。以上の結果より、STZマウスでは脊髄後角の神経細胞におけるACEの発現量増加に起因し産生量が増加したAng ⅡがAT1受容体に作用し、糖尿病性神経障害性疼痛を引き起こしていることが示唆された。
著者
安藤 興一 高橋 千太郎
出版者
独立行政法人放射線医学総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

放射線医学総合研究所・重粒子線がん治療装置を利用し,麻酔下において炭素線(290MeV/u,5mm-Spread out Bragg Peak)を,マウス頭頂部(8週令:C57BL)から5mmまで均一に局所照射を施した。炭素線30Gyを照射し,照射3ヶ月後にwater-mazeを用いた記憶・学習障害の解析を行ったところ,記憶獲得過程の障害および作業記憶(短期記憶)の障害が認められた。また病理組織学的解析により,照射群において海馬CA1-3領域の神経細胞が39-49%減少していることが判った。一方,胎児期にX線1.5Gy被ばくした場合においても,生後8週令において空間認知障害が誘発されたが,その障害は一様ではなく,軽度,中度および重度の学習障害群に大別された。重度の記憶障害群について病理組織学的検討を行ったところ,海馬神経細胞層(CA1-3領域)に異所性細胞群が高頻度に認められた。また異所性細胞群が認められた海馬領域では,記憶に重要な役割を持つアセチルコリン(acetylcholine)受容体の特異結合の減少が生じていたことが判明した。以上の結果より,放射線脳局所照射モデルおよび胎児期放射線被ばくモデルは,ともに学習・記憶に重要な役割を担っていることが知られている海馬領域の特異的変化が生じていたが,その高次脳機能障害のメカニズムは異なることが判明した。また記憶・学習障害は,海馬神経細胞の減少や異所性細胞の出現により,海馬内の神経情報伝達の阻害が生じている可能性があり,そのことが放射線による記憶・学習障害の要因であることが推察された。また,シュードウリジンやメラトニンなどのビール含有成分がマウス全身照射による造血器・腸管障害を防護することが判明したので,これらの成分による放射線能機能障害に対する防護効果について検討している。
著者
中村 友紀
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究課題は、近代初期イングランド復讐劇による民衆心性への影響を明らかにすることを目指すものである。成果としては以下2点がある。1.数多く制作されジャンルを形成した復讐劇作品群が共有していた常套的様式の表象としての作用とは、ルネサンス的という文化的ムーブメントに位置付けて検証すると、個人主義的な自己のアイデアを表現するものと考えられる。復讐劇は、個人の概念を人々に明示する点で、近代的概念の媒体といえる。2.イングランド社会に見られた、演劇以外の他の芸術や娯楽、媒体における表象と復讐劇の関連性を見出し、それらの表象が、特に美学的・倫理的側面で、人々の近代的心性の形成に影響力を持ったと結論づけた。
著者
鈴木 道雄 川崎 康弘 住吉 太幹 中村 主計 倉知 正佳
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

拡散テンソル画像による検討の結果、統合失調症患者では、前頭葉と視床、側頭葉とを連絡する白質線維束の統合が障害されており、その一部が陰性症状の成立に関与することが示唆された。自己と他者の評価課題による機能的磁気共鳴画像(fMRI)により、前頭前野、大脳正中構造、後頭頂小葉などの機能変化が、統合失調症における自己意識の障害に関連することが示唆された。病初期の患者を対象とした構造的MRIにより、前部帯状回の構造変化が統合失調症の顕在発症に関与することが示唆された。
著者
萱間 真美 木下 康仁 小松 浩子 グレッグ 美鈴 麻原 きよみ 青木 裕見 高妻 美樹 福島 鏡 青本 さとみ 根本 友見 石井 歩 松井 芽衣子 瀬戸屋 希 野中 幸子 海老原 樹恵 早坂 弘子 前田 紗奈 三河 聡子 木戸 芳史 佐々木 美麗 山田 蕗子 古賀 郁衣 奥 裕美 三浦 友理子 松谷 美和子
出版者
聖路加国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

質的研究方法は、医療を受ける人や携わる人の経験を当事者の言葉を生かして説明することができる可能性を持つ。統計を用いた量的な研究と比べると経験者が少なく、論文を出版する際に査読ができる査読者や、この方法を理解している編集委員も少ない。よい論文を出版することができるためには、論文の出版に携わる人たちへのガイドラインの提供が必要である。本研究は海外での調査、研修や国内でのセミナー開催を通じてこの課題に取り組んだ。多くの査読委員、編集委員が研修に参加し、知識を共有することができた。
著者
上神 貴佳 陳 柏宇 堤 英敬 竹中 治堅 浅羽 祐樹 朴 志善 成廣 孝
出版者
國學院大學
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2019・2020年度は全体会合を3回、台湾チームとの会合を1回実施し、そのほかにも複数回の個別ミーティングを実施した。まず、2019年6月に全体会合を開催し、データベース構築のためのフォーマット作成、作業チームの編成について議論した。同年10月の全体会合では、北東アジアを中心に、各国の政治制度、政党政治の基本的な配置を確認した。これらを受けて、同年11月にフォーマットの素案を提示し、研究チームの了承を得た。しかし、試行的な文献調査などの結果から、北東アジアと東南アジアでは、政党の成り立ちや組織の有り様が異なることが判明した。そこで、組織構造だけではなく、オンライン上の選挙戦略の有無や類型を捉えるべく、新たに項目を追加した。また、2020年1月の台湾チームとの会合においては、現地インフォーマントの協力を得るべく、その来日に合わせて実施した。その後、新型コロナウィルス感染症に起因する渡航制限のため、海外出張の中止など、作業に大きな制約が生じた。困難な状況ではあったが、北東アジアを先行させてデータ収集を進め、同年10月には、全体の進捗状況を確認するためのオンライン会議を実施した。前後して、東南アジア政治の専門家を招聘し、改めてフォーマットの妥当性について確認した。なお、アジアの政党発展を理論的に説明する枠組み論文の執筆については、2019年度に合計9回、個別の会合を実施した。本科研の関連業績のうち顕著なものとして、日韓台の比較政党政治に関する論考、日本政治に関する論考がそれぞれ海外の有名学術出版社から出版された(分担執筆)。
著者
菅原 一真 山下 裕司 廣瀬 敬信
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

糖尿病は比較的頻度の多い疾患であるが,難聴の進行は患者のQOLを大きく低下させる。糖尿病に伴う難聴については以前からの詳細な形態学的研究が行われているが,難聴を予防する方法は明かでない。本研究では糖化ストレスに曝露された内耳において生成される終末糖化産物(AGEs)に着目して,研究を計画している。2020年度までに,糖尿病モデル動物を用いて,内耳においてAGEsが生成される時期や部位,その条件について検討した。その結果,聴覚障害を生じる前より内耳血管条へのAGEsの生成が観察された。さらに,AGEsの生成と炎症性サイトカイン,酸化ストレスと内耳微小血管の動脈硬化の関係についても検討を行った。AGEsの生成後に組織学的に血管障害が明らかになってきていることから,血管障害の原因としてAGEsの関与が疑われた。更にAGEs阻害物質メトホルミンを用いて,糖尿病に伴う難聴の予防が可能かどうか検討した。2021年度は,メトホルミンの内耳におけるAGEs産生を抑制する機序を明らかにする目的で,in vitroモデルを用いて実験を追加する予定である。
著者
峯 昇平
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

PET(ポリエチレンテレフタレート)を主とするプラスチック廃棄物は、重大な環境問題である。近年、PETを原料にまで分解できる酵素「PETase(ペターゼ)」が発見され、資源リサイクル実現可能な酵素として注目されている。PETを効率的に酵素分解するには、PETが酵素に分解されやすい形状に変化する65℃以上で反応を行う必要がある。しかしながら、PETaseは熱に弱く、35℃以上になると活性を失う。そこで、本研究では、65℃以上で高活性を有する耐熱性PETaseを作製することを目的とする。
著者
山室 真澄 戸野倉 賢一 平塚 健一 横石 英樹
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

ジブチルアミンを誘導体化試薬としイソシアネート群を分析する方法を構築し、イソシアネートを使用する工場付近の屋外大気を測定したところ、ヘキサメチレンジイソシアネートが検出された。ダイヤモンドの微粒子を固定した直径5mmの研磨棒をモータで回転させ、ポリウレタンに押し付けて削り取る実験を行った結果、発生量はわずかだが73番のイオンを確認できた。SafeAir芳香族イソシアネートバッジ(検知限界はTDIで0.6ppb、MDIで0.4ppb)を協力者に合計50送付して日常生活で柔軟剤に遭遇して症状が悪化する状況にバッジを設置してもらったところ、全ての場合においてイソシアネートは検出されなかった。
著者
櫻井 義秀
出版者
北海道大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-04-01

櫻井班の目標は、①カルト被害からの回復にかかる臨床的貢献ということで事例研究を研究会で行うこと、②カルト相談の実務家研修の開催と一般市民対象の啓発的公開講座等の開催、③「カルト被害からの回復」に係る書籍の刊行である。研究代表者の櫻井が、2013年8月から2014年2月まで香港中文大学にてサバティカル研修を行っていたために、約半年間研究会等を実施することができず、研究協力者に任せることになった。そのため、①については1回程度、②についても1回程度の実施回数の不足があった。しかしながら、③については、研究会における講演者に原稿を依頼し、代表者の櫻井の分と合わせて3本の論文、研究協力者によるカルト臨床の専門家インタビューに基づく事例集が数本完成予定であり、2014年中の原稿集約を目指している。なお、研究代表者による単著『カルト問題と公共性-裁判・メディア・宗教研究はどう論じたのか』北海道大学出版会、A4全334頁を2014年2月に刊行した。2年目の総括として、臨床家や実務家による研修・研究会の開催は非常に有意義であり、カルト問題の解決は裁判による司法的解決に加えて、臨床家によるカウンセリング・自助グループによるケアの重要性が再認識された。また、精神科医、学生相談の臨床家の事例研究から、「回復への足がかり(resilience)の多様なあり方を直接的に学べたことは大きな収穫だった。また、これは類型化や定式化を目指す社会科学と個性記述的・問題解決的な臨床的実践との差異をも自覚するものとなり、研究者と実務家の連携の重要性を再認識することになった。
著者
高橋 敏夫
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、日本近代・現代の「怪物」表象の特色・意義についての研究である。「怪物」とはなにか。「怪物」とは、怪物を嫌悪し恐怖する秩序によってうみだされる。「醜悪」「恐怖」「不快」「汚れ」「グロテスク」といった怪物の印象は、怪物がもたらすものだとしても、つねに「誰かにとって」の印象だということである。さまざまな秩序を統合する社会体制は、独特な認知の体系、価値体系、経済体系、政治体系、時間と空間の体系、身体体系等から成り立っており、それらの諸体系の複雑な組み合わせによって、「正体のわからない」「あやしい」「異なるもの」とされたとき、はじめて異能を有する怪物が誕生する。したがって、怪物表象の研究は、怪物が出現する体制秩序の認知から身体にいたる体系を明らかにするだろう。怪物表象の出現する場である文学・映画などは、そのときどきの体制秩序の体系をうっしだすとともに、他方でそうした体系を変形する装置でもある。いいかえれば、怪物を生み出す体系をあらわにすると同時に、怪物を生み出す体系を変更していく方向を示すものにもなっている。この両者を怪物表象をつうじて考えることを、わたしの怪物研究の目的としたい。本研究があつかう時代および対象は、文学における「怪物」表象が「貧困」や「悲惨」などの表象とともにあらわれた1895(明治28)前後にはじまり、それから100年の後、ホラー小説が大量に出現し、そのなかに「怪物」「悲惨」「残酷」などの表象があふれだす1995年前後までである。
著者
坂田 利家 吉松 博信 桶田 俊光 渡辺 建彦
出版者
大分医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

糖尿病および肥満糖尿病における代謝異常が脳機能にどのように影響するかを神経ヒスタミン系を指標として解析し、以下の結果が判明した。1)糖尿病モデル動物であるSTZ糖尿病ラットおよびZucker obese ratでは神経ヒスタミンが低下していた。2)レプチンは視床下部神経ヒスタミンの代謝回転を増加させた。3)レプチンの摂食抑制作用は神経ヒスタミンの枯渇化によって減弱した。レプチンの摂食抑制作用の約50%は神経ヒスタミンによって調節されていることが判明した。4)レプチン受容体に異常のあるdb/dbマウス、それにob遺伝子異常によりレプチンが欠如しているob/obマウスでは視床下部ヒスタミンおよびtMH含量が低下していた。Zucker obese ratと同様にレプチンによる神経ヒスタミンの賦活化作用が脱落した結果と考えられた。5)食事誘導性ラットでは体重増加が少ない早期から内臓脂肪蓄積が認められ、血漿中性脂肪値が増加していた。血糖値、インスリン値は後期に上昇し、インスリン抵抗性の出現が脂肪代謝異常に遅れて出現することを示唆している。血中レプチンは肥満早期に増加し、肥満発症後期にも増加していた。6)摂食抑制性の神経ペプチドであるCRHはヒスタミン神経系を賦活化した。摂食促進性のNPYは神経ヒスタミンには影響しなかった。インスリン抵抗性発症因子であるTNF-αも神経ヒスタミンには影響しなかった。7)神経ヒスタミンは脳のGLUT1 mRNA発現を促進した。飢餓状態での脳のGLUT1の発現亢進には神経ヒスタミンが関与していた。8)神経ヒスタミンは中枢性にインスリン分泌を制御していた。9)神経ヒスタミンは中枢性に脂肪組織の脂肪代謝を制御する作用を示した。その作用様式は脂肪分解の亢進と脂肪合成系のACS mRNAとGLUT4 mRNAの発現制御によっていた。神経ヒスタミンの脂肪分解作用は脂肪組織に分枝している交感神経活動促進作用によっていた。10)ヒスタミンの基質であるヒスチジンの投与で神経ヒスタミンの代謝回転とHDC活性が亢進した。ヒスチジンの末梢および脳室内投与で摂食抑制が観察された。ヒスチジンの末梢投与で交感神経系を介した脂肪分解反応が促進された。11)遊離脂肪酸のオレイン酸はヒスタミン系を促進することが示唆された。12)神経ヒスタミンは学習機能に促進的に作用した。糖尿病状態でのヒスタミン機能低下が学習機能低下につながる可能性が示された。以上、糖尿病でみられる脳機能異常の可能性について神経ヒスタミンを指標に解析し、神経ヒスタミンの動態には血糖値、インスリン値だけでなく、レプチンやアミノ酸、脂肪酸など種々の代謝成分が関与していることが判明した。またそれらの情報を受けたヒスタミン神経系は食行動を調節するだけでなく、脳内の糖代謝や自律神経系を介する末梢の脂肪代謝調節に積極的に関与していることも明らかになった。
著者
野村 隆士 千田 隆夫
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

典型的なカベオラは,細胞膜上で直径80nm前後の陥凹構造を持ち,脂質ラフトと同様にコレステロール/スフィンゴ脂質に富む膜ドメインである.カベオラは,細胞内シグナル伝達,エンドサイトーシス・トランスサイトーシス等の物質輸送に関与すると考えられている.研究代表者は,カベオラのクラスタリング機構の研究を行っている過程で,ラフトに親和性を示す分子としてCD13を同定した.数種のラフト分子は,生細胞において,リガンドまたは抗体で架橋するとカベオラへ移動することから,CD13も同様に抗体を用いて架橋したところ,カベオラへ移動することが判明した.CD13はヒトコロナウイルス-229E(HCoV-229E)のレセプターであることから,HCoV-229EがCD13を架橋し,抗体と同様にカベオラに運ばれる可能性が考えられた,この可能性を検討したところ,HCoV-229EはCD13を架橋し,細胞膜上をカベオラに運ばれることが光顕的,電顕的に明らかとなった.次に,HCoV-229Eの細胞内侵入経路としてカベオラが利用される可能性について検討した.その結果,(1)HCoV-229Eの細胞内侵入は膜コレステロール量に依存すること,(2)siRNAを用いてカベオリン-1(カベオラ構成タンパク質の一種)をノックダウンすると感染効率が落ちること,が明らかとなり,HCoV-229Eは,侵入経路としてカベオラを利用することが判明した.今後,ウイルスエンベロープとヌクレオカプシドを別々の蛍光色素で標識したウイルスを作製し,両蛍光色素の動態をリアルタイムに解析することにより,ウイルスエンベロープの膜融合局在,virus genomeの放出局在を時間軸を持って検討することができると考えている.
著者
今西 規 木村 亮介 瀧 靖之 竹内 光
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

ヒトの顔形状はかなり強く遺伝的に規定されているため、原理的にはゲノム情報から顔形状を予測できるはずである。そこで本研究では、ゲノム情報に基づいてヒトの顔形状を予測するためのソフトウエア「ゲノム・モンタージュ」の作成をめざす。まず、合計3000人以上のデータを使ったゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施する。次に機械学習による解析を実施し、その有効性を評価する。さらに、GWASと機械学習の長所を融合させた解析を試み、従来の表現型予測の精度を超える新手法の開発をめざす。