著者
上條 祐司 青山 俊文
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、腎障害動物モデルに PPARαアゴニストを投与することで、糸球体および尿細管保護効果を示すか検討し、ヒトへの臨床応用の前段階としての有益な基礎情報を得ることを目的とした。2011 年に腎内 PPARαの活性化が蛋白尿による尿細管毒性を抑制できること、2012 年には、ラット Thy1 腎炎において腎内 PPARα活性化により糸球体腎炎の病勢が抑制されることを発表した。これらの研究成果から、 PPARα活性化は腎細胞保護に有益であることが示唆された。
著者
中井 孝章 松島 恭子 篠田 美紀 長濱 輝代 三船 直子 小伊藤 亜希子 清水 由香
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、幼老統合ケア及びそれに基づく世代間交流の効果を、3年間にわたって大阪市内の特定地域での多世代交流会、高齢者と子どもの複合施設(宅幼老所)、地域住民の居場所、認知症高齢者施設において総合的に調査研究した結果、子どもは生活習慣や他者(特に、高齢者)への共感能力が身につき、高齢者は生き甲斐と自尊心が生まれるとともに、母親の子育て支援に対しても社会的祖父母力を発揮できることが実証された。
著者
西山 要一 植田 直見 桐野 文良 野尻 忠 早川 泰弘 今津 節生 東野 治之 関根 俊一 望月 規史 成瀬 正和
出版者
奈良大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

携帯型蛍光X線分析装置、据付型蛍光X線分析装置、X線回折装置、X線透過撮影装置など多種の分析器機・調査機器を活用して真鍮製考古資料・美術工芸品の成分分析等を行った。三重・大宝院所蔵大般若経八巻(紺紙金字経)の詳細な科学分析、および平安~江戸時代の紺紙金字経・同断簡の分析などによって、経典写経における真鍮泥使用の広がりを把握し、その宗教的・技術的・経済的な意味を歴史上に位置付けることを試みた。また古代~中世の京都・平安京跡、岩手・平泉遺跡、近世の奈良・奈良町遺跡、和歌山城跡などの出土銅合金・真鍮資料・鋳造資料を悉皆的に科学分析し、各遺跡・各時代における真鍮製品の実態を把握した。美術工芸資料調査では、長谷寺・九鈷鈴(中国・元時代)、當麻寺・螺鈿玳瑁螺鈿唐草合子(朝鮮・高麗時代)の将来品の分析を行い真鍮が使われていることを確認した。この種の日本製真鍮製品が見当たらないことから、真鍮の利用に日本と両国の間では様相を異にすると考えられる。近世には日本絵画の彩色に真鍮泥が使われる諸例を明らかにしつつあり、江戸時代以降の広範な真鍮利用の実態が判明しつつある。史料学調査では、日本・韓国の真鍮関連の古記録の探索の中で、新たに朝鮮の「三国史記」に真鍮関連の記載を見いだし、その真鍮史上の位置付けを試みている。さらに、韓国の真鍮資料を同国の分析科学者の協力を得て科学分析データおよび記録データの収集を行った。紀元前より真鍮製品(ローマコインなど)が存在するヨーロッパの諸例のデータも研究協力者の助力を得て収集し、日本の真鍮製品との共通性と差異、西アジアに発するとされる真鍮の起源とその伝来の道(ブラスロード)と歴史の一端を垣間見ることができた。これらの研究成果は、昨年度報告と同様に2019年度研究成果(冊子)にまとめ、日本文化財科学会大会(2020年7月)などで公表の予定である。
著者
関根 一希
出版者
立正大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

オオシロカゲロウは同調的な一斉羽化をし, 大量発生に至ることもある河川棲の水生昆虫である。これまで, 本種はオスとメスからなる両性個体群とメスのみの雌性個体群が認められる地理的単為生殖種であること, また, 日本各地に分布する雌性個体群は, 西日本の個体群に起源する単為生殖系統によって維持されていることを明らかにしてきた。さらに, 両性個体群であったとしても, 両性生殖系統と単為生殖系統とが同一河川内に生息することもあり, このことは東日本である福島県・阿武隈川や埼玉県・荒川の個体群において明らかとなってきている。両系統が生息する河川内では, 一斉羽化の時間帯にずれが生じており, 単為生殖系統のメス個体は, 両性生殖系統のオスやメス個体よりも比較的早い時間に羽化することも明らかになってきた。これまで, カゲロウ類の一斉羽化の適応的意義としては, 仮説1. 交尾相手発見の容易さ説と仮説2. 捕食者の飽食説が挙げられていた。オオシロカゲロウの雌性個体群では, 交尾相手のオス個体はいないことから, 仮説1は当てはまらないが, 同調的な羽化は認められる。したがって, オオシロカゲロウの一斉羽化では, 捕食者による被食を頭打ち, つまり飽食させることで, 羽化個体の生存率および繁殖成功率を上げるといった仮説2が主な適応的意義であると考えられる。しかし, それではなぜ, 両性生殖系統と単為生殖系統とが同一河川内に生息する場合に, 一斉羽化の時間帯にずれが生じてしまうのか。本研究ではオオシロカゲロウを研究対象とし, カゲロウ類の一斉羽化はなぜ生じるのか, といった適応的意義について新たな解釈「繁殖干渉相手からの逃避説」を得ることを目的とする。
著者
板垣 雄三 永田 雄三 斯波 義信 佐藤 次高 湯川 武 後藤 明
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1988

本研究計画は最終年度にあたり、総括班の連絡と調整のもとに研究活動のとりまとめが行なわれた。具体的には1.研究会の開催:公開性を原則とし、研究班組織にとらわれず、また研究分担者以外の研究者も参加した多様な形式の研究会が組織され成功した(3年間に191回)。とくに総括班の機能性を発揮して、クウェ-ト危機、地震、都市環境に関するセミナ-など現実の問題に即応した研究会がもてたことも成果のひとつである。2.第2回国際会議(中近東文化センタ-との共催 12月27〜29日)を開催し国際共同研究を充実させた。3.成果の流通:共同研究の新しいモデルとして、研究分担者や関連研究者に研究成果を迅速に公開することを目的とした出版活動も順調に行われた。3年間の出版物は231点になる。4・成果の公開性:特に今年度は研究成果の社会的還元のために、大学院生・学部学生を対象としたサマ-・スク-ル(7月23〜27日)を、一般市民を対象とした講演会を各地(仙台・大阪・福岡など)で開催した。1991年2月11〜12日の「大学と科学」公開シンポジウムー都市文明イスラ-ムの世界ーにも全面協力した。2.全体の研究活動のとりまとめとして全体集会(12月1〜2日)を開催し、共同研究・比較研究の総括がなされた。また、招へいしていたDale F.Eickelman、Hassan Hanafiの両氏より国際的見地からの評価ととりまとめに対する助言をうけた。3月23日には本研究のしめくくりの研究会を予定している。5.新たな理論枠組みに基づく研究成果のとりまとめとして、研究分担者全員および関連研究者が執筆に当たる『事典「イスラ-ムの都市性」』、『イスラ-ム都市研究史ー歴史と展望』、『イスラ-ム都市から世界史をみなおす』等の刊行が準備されている。
著者
後藤 明 板垣 雄三 松原 正毅 佐々木 高明 板垣 雄三
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

1.平成3年度調査研究実施計画にもとづき、学術調査の対象国をアメリカ合衆国にしぼり、同国の地域研究機関の研究実績面、組織・行政面の情報集積・解析・評価をおこなった。2.研究実施のための計画作業わが国における新しい「地域研究」の組織上の、また研究方法上の推進体制に関して国立民族博物館においておこなっている調査研究の作業の進行と密接に連携しつつ、本研究組織としては、欧米諸国における「地域研究」の歴史と現状に関する事前サ-ヴェイをさらに深化させるべく集中的討議をおこなうとともに、この学術調査の実施上の重点目標の確点、調査項目の調整、調査対象機関の選定、それとの連絡態勢の確立、調査対象機関における協力者との事前の協議など、計画の具体化をすすめた。3.研究遂行のための現地調査実施の概要1)現地調査のための派遣者(2名)研究分担者 板垣雄三(東京大学名誉教授)研究協力者 竹下典行(文部省学術国際局研究機関課課長補佐)2)現地調査のための派遣期間:平成3年11月5日〜16日(12日間)3)おもな訪問機関および応接者ワシントンDC(1)ジョ-ジタウン大学現代アラブ研究センタ-/イブラヒ-ム・イブラヒ-ム所長およびマイケル・ハドソン教授(2)ジョ-ジ・ワシントン大学政治学部/バ-ナ-ド・ライク教授(前学部長)(3)中東研究所/ロバ-ト・キ-リ-理事長(4)スミソニアン研究機構ウイルソン・センタ-/ロバ-ト・リトワク国際研究部長(5)アメリカン大学国際学部(SIS)/ルイス・グッドマン学部長およびシェリフ・マルディン教授マサチュウセッツ州ボストン(6)マサチュウセッツ工科大学アガカ-ン計画/バ-ブロ・エック部長(7)ハ-バ-ド大学中東研究センタ-/ウイリアム・グレアム所長(8)ハ-バ-ド大学国際開発研究所/大木正光研究員(前外務省中近東二課長)ニュ-ヨ-ク市(9)社会調査研究所/ジャネット・アブ-ルグド教授およびエリック・ホブズボ-ム教授(10)コロンビア大学中東研究所/グレゴリ-・ゴ-ズ3世助教授(11)社会科学研究所(SSRC)/メアリ-・マクドナルド事務局員4.観察結果および収集された情報資料にもとづく研究作業本研究組織としては、調査実施から得られた知見を整理・分析・評価する作業をすすめつつ、調査研究のつぎの段階の準備にとりくんでいる。本年度の調査にかぎっていえば、アメリカ合衆国においては、世界諸地域の地域研究がしばしば政策形成・実施のための応用研究に引き寄せられ基礎研究としての系統性と持続性に欠ける結果となってきたことへの反省が全般的につよく生じており、教育の次元からの再建・再編への動きが看取される。わが国における総合的な地域研究の組織化への志向は、そこで大きな関心を呼んでいる。
著者
板垣 雄三 黒田 壽郎 佐藤 次高 湯川 武 友杉 孝 後藤 明
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1988

イスラムの都市性を比較の視点から検討しその総合的解明を目指す本研究において、総括班は共同研究の実をあげるために、研究全体の活動の相互の連絡・調整に当たった。即ち、互いに関連する研究班の合同研究会やセミナーの開催、研究成果の発表のための出版活動、海外の研究者・研究機関との交流などに努めた。具体的には、1.研究会の開催:個別研究班を統合した合同研究会、外国人招聘研究員Anouar Abdel-Malek, Nurcholish Madjid氏を中心とした国際セミナー、在日中のMochtar Naim, Abdallah Hanna, Mahmud Hareitani, EmileA. Nakhleh氏を招いた研究集会や公開講演会を開催した。これにより、個別研究の枠を超えた情報交換を実現し、国際的共同研究を進展させ、成果を広く社会に還元することに努めた。2.成果の流通:研究成果を研究分担者全員が随時共有するため、ニューズレター「マディーニーヤ」(創刊準備号〜15号)、研究報告シリーズ(1〜23号)、研究会報告シリーズ(1〜7号)、Monograph Series(No.1〜8)、広報シリーズ(1〜2号)を出版し、国内外の研究者・研究機関に配布し、研究連絡網を確立した。3.総括班副代表の後藤明をアメリカ合衆国に派遣し、本研究活動に対する当地の研究者の協力を要請するとともに、関係学会、研究機関との研究協力態勢の確立につとめた。4.来年度開催予定の国際シンポジウムにむけて、数次にわたる準備連絡会議をもち、各セクションのテーマの設定、招聘研究者の選定などの作業を行った。すでに第二次サーキュラーを内外の研究者に配布した。以上の諸活動により、イスラム世界の都市性についての研究視角が明確化し、都市研究における新たな参照テーマとしてイスラム圏の都市研究の重要性が広く認識され、活発な比較研究を刺激・促進する結果を生んだ。
著者
狭間 節子 橋本 是浩
出版者
大阪教育大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

主要な研究成果は、次の3点に要約できる。(1)ジオボード(格子点)を使った数学的活動の特性を明確にし、その特性を活かした小・中・高校の数学的活動の枠組みを決定し、教材策定を行った。ジオボードの活動は、ボード上の図形間の関係についての子どもの気づきや疑問から出発し、分析、分類を通して関係を精密にし、推測を検証・精錬し、一般化及び形式化に至る数学化の過程であり、特に、関係の分析は、総合・統合を介する分析として、次の点を明確にした:(1)全体的・直観的把握から分析へ (2)図形の外部との関係へ広がる分析(3)移動や拡大・縮小と結びつく分析 (4)ジオボードから格子点へ広がる分析(5)長さ、面積などの連続量を、点や線分の数などの分離量に結びつける分析(2)上記の特性を活かした数学的活動の枠組みを設定し、素材開発と教材策定を行った。【小学校 低・中学年】実際的操作や観察を基に形を動的に全体的・直観的に捉え、分類する活動・形づくりと形の変形(★) *周一定な図形の面積(★)【小学校 高学年〜中学校 前期】分析・分類により推測を検証・精錬し、一般化へいたる活動*図形の等周変形 *正方形くずし(★)*フェアリ-数列 ・ピックの定理の発見的アプローチ(★)【中学校 後期〜高校】格子点を使った関係の一般化、形式化、及び局部的な論理的構成の活動*等周変形とピックの定理 *オイラーの定理を用いたピックの定理の証明上記*印の題材は素材開発にあたり、★印は授業実践によって検討、検証した。(3)実践では、ジオボードの数学的活動は、手(実際的操作)と目(イメージ)と頭(思考)と口(言語表現・伝達)が同時に働く、認知的・情意的両面からの子どもの"whole brain"の活動として検証された。トランプ型「ジオカード」考案により、分析・分類を手軽に興味ある活動にした。グループ活動による成果も大きく、また次の課題意識へつながるオープンエンドの様相を呈したことは注目に値する。
著者
須藤 遙子
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2015-04-24

1年目の2015 年度は、史料調査・資料調査を主に行った。まず、京都の国際日本文化研究センターにて1950-60 年代の『キネマ旬報』を全て通読し、自衛隊協力の可能性のある戦争映画、航空映画などの記事をコピーし、リスト化した。これにより、戦争映画約180本、航空映画約50本を抽出、新たに5本の協力映画を発見することができた。ただし、現時点では全く視聴できていないので、引き続き調査を進めて視聴を実現できるよう努力する必要がある。また、本研究では2年目に行う予定としていた、米国メリーランド州カレッジパークにある米国立公文書館での調査を、不完全ながら2015年10月10日-15日まで行うことができた。これは、科研費基盤研究C「1950年代の米国による映画広報政策と日本の防衛広報の結節点についての実証的研究」(研究期間:平成27年度~平成29年度)の調査として、2015年10月9日-23日までワシントンとニューヨークを訪れた際、本研究に関わる部分に関しても米国立公文書館で同時に調査を行ったためである。この結果、USIS(米広報文化交流局)による反共を目的とした世論工作を詳述した報告書の一次資料を確認し、コピーすることができた。この報告書を確認したところ、確かに高倉健主演の『ジェット機出動 第101航空基地』(小林恒夫監督、東映、1957)を含む少なくとも5本の映画にアメリカが関与した事実は判明した。しかし、残念ながら他の4本の映画のタイトルは記述されておらず、さらに関係資料をあたって作品を特定する必要がある。筑紫女学園大学現代社会学部への着任が決まり、特別研究員としての研究は1年で終えることとなるが、引き続き先述の基盤研究Cと連動させながら、本研究を進めていく所存である。
著者
大田 典之 藤野 裕士 後藤 幸子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

免疫細胞に対する代表的な鎮静薬であるベンゾジアゼピン系薬物の影響を解析する過程でヒトとマウスの細胞に対する影響を評価した。ヒトのマクロファージの細胞株であるTHP-1とマウスの単球マクロファージ細胞株であるRAW264用いた解析を進めた。ベンゾジアゼピンの代表として水溶性の鎮静薬であるミダゾラムを用いた。ミダゾラムはLPSによってTHP-1, RAW264に生じる炎症性サイトカインの分泌と副刺激分子の発現が抑制された。ミダゾラムの作用分子であるGABA受容体ともう一つの作用分子であるTSPOの関与を解析した。TSPOの分子を欠損させた細胞株を作成してTSPOの関与を分子レベルで明らかになった
著者
松元 賢
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

我が国の食用アスパラガス病害の90%以上は植物病原菌による病害で、中でも、アスパラガス茎枯病は一旦罹病するとその根絶は極めて困難であるにも関わらず、食用アスパラガス種内には病気に強い品種が見つかっていない。アスパラガスでは耐病性品種の育成が強く望まれているが、本植物は多年生で交雑しにくく、品種育成には多大な年数がかかり、かつ、アスパラガス品種内には耐病性形質が存在しないなど、耐病性品種育種のハードルは極めて高い。申請者らの研究チームは、日本産アスパラガス植物の一種であるハマタマボウキと食用アスパラガスとの交雑種が、茎枯病に耐性があることを世界で初めて明らかにした。研究対象となるハマタマボウキは、日本固有種の一種で九州北部沿岸のみに自生する希少種であるため、生息域は限定的で非常に狭く、本植物の病害記載が存在しないことから、病害に強い植物であると認識されていた。しかし、近年の現地調査と昨年度の病害調査から、罹病化したハマタマボウキを発見しており、複数種の植物病原菌類によって複合的に感染している背景を明らかにした。これらの結論は、従来のハマタマボウキがもっている病気に強いという認識を覆すことを示唆した。同様に、ハマタマボウキ自生地近隣は、九州の食用アスパラガスの大生産地であることから、アスパラガス属植物間の相互感染による新規病害の発生や病害の進展化、希少種の生息域の減少が懸念される。さらに、ハマタマボウキの持つ耐病性のポテンシャルから、育種研究を目的とした乱獲や国外への流出が耐病性品種の育種の障害となる可能性が示唆される。そこで、本年度は、ハマタマボウキの植物病原菌によって発生する病害の生物的防除を目的に、ハマタマボウキの根圏に生息する微生物を分離し、根圏微生物の拮抗性を利用した生物的防除の可能性について検討した。
著者
荒木 良太
出版者
摂南大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

精神症状に使用される漢方薬である加味温胆湯は、マウスにおいて抗うつ様作用と細胞外セロトニン量増加作用を示した。こうした加味温胆湯の作用は構成生薬の竹ジョ*を除くことで消失した。しかしながら、竹ジョ*単体では細胞外セロトニン量増加作用が見られなかったことから、細胞外セロトニン量増加作用には、竹ジョ*と他の生薬との組み合わせが重要であることが示唆された。また、精神症状に対して用いられる多くの漢方薬においてセロトニン5-HT1A受容体刺激作用が認められた。以上の結果から、精神症状に用いられる漢方薬の多くは、セロトニン神経系を介して薬効を発揮している可能性が示された。(ジョ*は竹かんむりに如)
著者
田中 光一
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

成人の脳では、γ-アミノ酪酸(GABA)はGABA_A受容体に結合し、神経細胞を過分極する抑制性神経伝達物質として知られている。しかし、幼弱な脳、あるいは成人の脳でも視交叉上核、外傷後の神経細胞に対しては、脱分極作用を示し、興奮性神経伝達物質として働くことが知られている。このGABAの持つ脱分極作用は、神経系の発達、概日リズムの形成、外傷後の脳損傷および回復過程になんらかの役割を果たしていると考えられているが、その機能的役割は不明である。最近、GABAにより脱分極する神経細胞には、Cl^-を細胞外へ汲み出すK^+-Cl^-共輸送体(KCC2)が発現していないため、細胞内Cl^-濃度が高く保たれ、Cl^-の平衡電位が静止膜電位より脱分極側にシフトしていることが示された。本研究では、K^+-Cl^-共輸送体を過剰発現させることにより、細胞内Cl^-濃度を制御し、GABAの脱分極作用のみを抑制するマウスを作成し、いままで全く実験的証拠のなかったGABAの神経興奮性作用の機能的役割を個体レベルで解明する。本年度は、平成13年度に作成した生後直後からK^+-Cl^-共輸送体(KCC2)を過剰発現しているマウスの表現型を解析した。KCC2過剰発現マウスは,野生型に比べ、自発運動量の低下が観察された。また、概日リズムの光による同調能にも異常が観察された。現在これらの表現型が、KCC2を過剰発現させたことによる抑制性ニューロンの抑制能の増強によるものかどうか、形態学的、電気生理学的により詳細な解析を進めているところである。
著者
佐伯 由香 城賀本 晶子 谷川 武
出版者
愛媛大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は、2交替勤務をしている看護師を対象に、ストレスや睡眠状態に及ぼす経耳道光照射の影響を検討すること、また、エッセンシャルオイルによって注意力が向上するか否か検討することである。20名の看護師を経耳道照射を朝行う群、夜実施する群、そして何もしない群に分け、照射をおおなう場合は4週間行った。注意力は精神動態覚醒水準課題(PVT)を使用し、主観的評価としてアテネ睡眠評価尺度、気分・感情を評価するPOMS2を使用した。その結果、いずれの評価指標においても有意な変化は認められなかった。ペパーミントの香りを吸入するとPVTの反応時間が有意に短縮した。このことは注意力が向上したことを示している。
著者
米田 美佐子 藤幸 知子 竹内 円雅
出版者
東京大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2020-10-27

ニパウイルスは1998年にマレーシアに初めて出現した新興感染症ウイルスである。2001年 以降バングラデシュを中心にほぼ毎年発生しており、その致死率は70~90%と非常に高いた め対策は急務である。申請者はこれまでに、フランス、アメリカ、バングラデシュ等の共同 研究者と共にニパウイルスの病原性発現機序に関する研究やワクチン開発を行ってきた。本 研究計画では、ニパウイルスの流行地であるバングラデシュにおいて、我々が開発した迅速 診断法を用いて流行ウイルス株の検出を試みる。また、検出されたウイルスの遺伝子解析に より、流行株の特性、病原性に関与する遺伝子配列の探索を試みる。
著者
吉田 真吾 上嶋 誠 中谷 正生 加藤 愛太郎 小河 勉
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

最近,種々の構造探査により,縦波速度(Vp),横波速度(Vs),電気比抵抗などが同一断面上にマッピングされるようになってきた.それら観測可能なVp, Vs,電気伝導度,Qなどから,どのような物質がどのような状態にあり,どのような破壊・摩擦特性をもっているのか推定できるようになることを目指し,室内実験によりVp, Vs,電気伝導度などと,破壊・摩擦特性を様々な条件下で同時測定できる装置を開発した.同時測定が必要なのは,間隙の形状や連結性に依存する物性パラメターは,(特に高温で間隙水が存在する場合,化学反応が活発なので,)温度・圧力を与えても一意に定まるとは限らないからである.高温高圧下で岩石の電気伝導度を測定する場合,金属ジャケットで岩石試料を覆うことになる.そのような状態で岩石試料の伝導度を求めるのに,金属ジャケットを主に流れてきた電流と試料中心部を流れてきた電流を分離し,それぞれガードリングとセンター電極で測定するガードリング法を用いる.ガードリングに流れ込む電流とセンター電極に流れ込む電流を計算し,適切な配置を検討し,昨年度,ガードリングモジュールを設計・製作した.さらにその測定システムを用い,日高変成帯主帯の泥質変成岩類などの測定を行った.ガードリングを用いても金属ジャケットを用いる影響を完全には取り除けないので,見かけ抵抗から試料の真の電気伝導度を算出する補正係数を数値解から求めた.温度は室温から25℃ごと250℃まで,圧力は10MPaから250MPaまで,周波数は周波数1Hz~1MHzまで変化させて測定した.日高変成帯泥質ホルンフェルスの電気伝導度は黒雲母片岩などに比べ非常に高い.一定圧力のもとで,このホルンフェルスの比抵抗は温度上昇とともに増加し,75℃近傍で最大値をとり,その後減少することがわかった.
著者
入谷 明 三宅 正史 内海 恭三 細井 美彦
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

一卵性多子生産は一つの受精卵から数多くの同一遺伝子構成の個体を複製するという点で、胚の効率生産のみならず、遺伝的検定材料としての利用面に貢献できるものと思われる。しかし胚発生の過程において細胞は増殖と分化を繰り返して個体に発生する。胚の単離割球が個体に分化発生するためには全能性(個体への発生能力)を保持しているか、人為的に賦与させる必要がある。マウス胚では2細胞期の胚ゲノムの活性化が起こり、4細胞期胚の個々の単離割球全てには個体への発生能力がみられていない。しかし羊では8細胞期胚の単一割球の発生能力が報告されている。本研究ではウシとヤギ胚の初期胚の単離割球の発生能を調べると共に、それらの1卵性多子生産を試みた。胎児部と胎盤部に発生する部分に分化した胚盤胞期胚を均等に2分離して1卵性双生児は容易に作出された。金属刃での顕微操作で90%以上の確立で分離され、ウシでは60%以上の受胎率と20対以上の産子が得られた。8細胞期由来2割球(2/8)からはヤギではウサギ卵管中で37%の胚盤胞が得られ、4個の移植から1頭の産子が得られた。ウシでは同様にして20%の胚盤胞が得られた。他にウシでは初期分割期胚の回収が困難なため体外受精由来胚が実験に供され、1/8割球と2/8割球の胚盤胞への発生能はウサギ卵管中で20%であった。ヤギやウシでの1/8〜と2/8細胞の胚盤胞への発生能が認められたので、2/8細胞に1/2〜1/4細胞又は1/8細胞を集合させて2/8細胞の胚盤胞期以後の発生能を改善しようとした。さらに1/8細胞に未受精除核卵母細胞を電気融合させて、受精卵を再構成させた。ヤギ及びウシとも体内受精発育卵及び体外受精発育卵を材料として、8細胞からの割球の単離、融合用の除核卵母細胞の調整、及びそれらの電気融合、再構成胚の胚盤胞期への発生能の検定など一連の基礎技術が開発され、ヤギ・ウシ胚とも胚盤胞が得られているので今後の一卵性8つ子の生産が期待させる。
著者
溝上 雅史 杉山 真也 村田 一素 鈴木 善幸 伊藤 清顕
出版者
独立行政法人国立国際医療研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

IL28B遺伝子の転写蛋白インターフェロンλ3 (IFN-λ3)の測定法を新規開発し、患者末梢血単核球をex vivo刺激で得られた上清や血清のIFN-λ3が良好なPeg-IFN/RBV併用療法効果予測が可能で本法の臨床的有用性を証明した。また、BDCA3陽性樹状細胞はC型肝炎ウイルスを認識し、toll-like receptor 3を介してIFN-λ3を産生することを示した。
著者
堀下 貴文 佐多 竹良 大倉 暖 堀下 玲子
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

難治性の神経障害性疼痛の症状の一つである冷感アロディニアに対する新たな鎮痛薬として、TRPM8受容体をターゲットにした薬物開発に貢献するため、神経障害性疼痛に対する鎮痛薬として使用されているデュロキセチンを含むいくつかの抗うつ薬のTRPM8受容体に対する影響を電気生理学的に解析した。抗うつ薬は濃度依存性にTRPM8受容体機能を可逆阻害的に抑制し、これらの抑制効果はPKCを介さないものであった。また、TRPA1に対するガバペンチンの影響解析も行い、一部PLCを介してガバペンチンがTRPA1機能を増強させることを発見した。これらの結果はTRPM8受容体機能抑制機序を解明する鍵になると考えられる。