著者
宮崎 大介 向井 孝彰 前田 有希 村上 進 宮崎 剛
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

インテグラルイメージング方式による3次元像表示と半球凹面鏡による空中像表示、回転ミラーの全周囲走査の組み合わせによる、全周囲から観察可能な空中3次元像形成技術の研究を行った。表示像には、光学系の収差による像の歪みや、光放射方向の不適切さによる像の欠けなどの問題があった。そこで、光学系中にスクリーンを配置して投影像を撮影し、光学シミュレーションと比較して、像形成の特性を解析した。また、凹面鏡の形状を計測し、光学シミュレーションに測定結果を適用することで、精度の高い光学系の設計を行った。試作システムにより全周囲から観察可能な3次元空中像の形成を行い、提案手法の有効性を確認することができた。
著者
石綿 良三 根本 光正 山岸 陽一 萩野 直人
出版者
神奈川工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

流体力学は重要な学問の一つであるが、関連する現象は一般の予想に反するような動きをしたり驚くような現象も多く、科学入門書やテレビ番組などで取り上げられることが多い。しかし、多くの原理の説明は間違っている。本研究では誤情報の拡散メカニズムの解明とその拡散防止を目的とした。科学入門書と物理学教科書を中心に調査し、調査書籍は600冊、1005項目であり、原理を誤認識している項目は248項目(24.7%)であった。著者が他書を鵜呑みにして確認を怠っていることが最大の原因と考えるが、他にも多く原因がある。誤認識の拡散を防止するためには、個人ではなく学会などの専門家集団による組織的な活動が有効である。
著者
安中 尚史 守屋 友江 笹岡 直美 中原 ゆかり 石井 清純
出版者
立正大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究はハワイに現存する日系仏教寺院を中心に、年度ごとに地域や宗派を変え、研究代表者・研究分担者の専門性に応じた役割を定め調査・研究に取り組む。特に先行研究などで取り上げられた 資料の内容を精査してリスト化し、本研究で体系化した新出・未整理資料や文化財が有する情報と対比することによって、日系人移民社会の中における仏教と僧侶の新たな関係性や、日本の宗派組織の中におけるハワイ布教の位置づけ、ハワイの信徒と日本の寺院との繋がりなど、宗派・寺院・僧侶・信徒の結びつきについて解明することを目的とする。
著者
高橋 知音 荻澤 歩 茂原 明里 辻井 正次 手塚 千佳 戸田 まり 仲島 光比古 橋本 しぐね 藤岡 徹 藤田 知加子 森光 晃子 山本 奈都実 吉橋 由香
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では感情認知能力、社会的文脈と感情や意図を読み取る能力、社会的適切さや暗黙のルールの理解を多面的に評価する「社会的情報処理能力検査バッテリー」を開発した。それぞれの課題について信頼性、妥当性についてある程度の根拠が得られた。これは、自閉症スペクトラム障害のある人の社会性を評価することができる我が国初めての検査バッテリーと言える。報告書として音声刺激CDを含む実施マニュアルも作成した。
著者
中澤 公孝 西村 幸男 荒牧 勇 野崎 大地
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は「ヒトの中枢神経が有する障害後の再編能力を解明すること」を最終目的とし、①パラアスリートの脳の構造的・機能的再編を明らかにすること、②モチベーションが脳構造と可塑性に与える影響を明らかにすること、を大目した。当該年度は前年度に引き続き、下肢切断と脊髄損傷の研究を継続するとともに、先天性上肢欠損、高次脳機能障害、脳性麻痺を対象とした研究を実施した。下肢切断に関しては、断端周囲筋を収縮させる際の同側運動野の活動が運動経験に関連して増大することが明らかとなった。この結果は、パラアスリートに観察された同側運動野の活動を説明するものであり、高レベルの義足操作に同側運動野活動が貢献することを示唆する。脊髄損傷者の脳構造・機能解析も進み、完全対麻痺者において特異的脳部位の構造的特徴が明らかとなった。この結果は、障がい後の代償反応と使用依存的可塑性発現によって説明することができる。先天性上肢欠損は一例ではあるが、先天的障害に対する代償反応としての下肢支配領域の特異的拡張を見出し、学術的価値が高いことから国際誌に掲載された。高次脳機能障害者に対しては上肢トレーニングに伴う機能的変化と脳構造・機能の変化を縦断的に調べた。その結果、上肢機能改善と共に脳支配領域の拡張、半球間抑制の低下、皮質脊髄路興奮性の上昇などを認めた。脳性麻痺については、パラリンピック金メダリストの解析を進め、水泳トレーニングによる脳再編、脊髄反射の関与に関する新たな知見が得られたことから学術的価値が認められ、国際誌に掲載された。
著者
安田 従生 谷岡 利裕 中澤 公孝
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

これまで、酸化ストレスと酸素摂取能力(体力レベル)の関連性は、侵襲的な方法(血液、筋組織等)で評価されてきた。その間、唾液等を用いた非侵襲的な方法も試みられていたが、精度の高い定量的分析が困難であった。しかしながら、近年、唾液を用いた非侵襲的な方法でミトコンドリアDNAコピー数の検出が高い精度で可能になりつつあり、学校体育・スポーツ現場で応用できる機会が到来している。その点で、DNA損傷・修復能力と酸素摂取能力に基づいた唾液中ミトコンドリアDNAコピー数の定量化により、生徒の体力レベルやストレス耐性を迅速にかつ簡易的に特定することができれば、部活動水準を至適レベルで設定することが可能となる。
著者
藏本 龍介 清水 貴夫 東 賢太朗 岡部 真由美 門田 岳久 中尾 世治
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

・2015年度:メンバーのこれまでの研究内容を共有すると同時に、「宗教組織の経営」という問題をいかに共通の枠組みで分析しうるか議論した。・2016年度:前年度の議論を踏まえ、経済人類学者(住原則也氏)、宗教社会学者(白波瀬達也氏)を招き、シンポジウムを開催した。そしてその成果を『「宗教組織の経営」についての文化人類学的研究』(2017年、南山大学人類学研究所)として刊行した。・2017年度:前年度までの議論を踏まえ、「宗教と社会」学会(2017年6月)において、宗教社会学者(西村明氏)をコメンテーターとして招き、「宗教組織の「経営」についての民族誌的研究」と題するテーマセッションを開催した。
著者
亀長 洋子 飯田 巳貴 西村 道也 宮崎 和夫 黒田 祐我 櫻井 康人 堀井 優 佐藤 健太郎 高田 良太 澤井 一彰 齋藤 寛海
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

多文化が交錯する世界である中近世の地中海世界を、東洋史・西洋史の共同研究として再考した。中近世のグローバリゼーションのなかで、アラブ、マグリブ、トルコのイスラーム諸勢力、ビザンツ、西洋カトリック諸勢力、ユダヤ教徒などが地中海世界の各地で政治、経済、宗教、社会の様々な面において対峙する様相を各研究者は個人研究として進め、その成果を海外研究者の協力も得つつ互いに共有した。それにより研究者たちは西洋史・東洋史のいずれにも偏らない視野を育くみ、一国史観を超えた歴史叙述を充実させた。その成果を含んだ研究報告書を作成し多くの研究者に配布し、また共同研究の成果を公開シンポジウムの形で広く人々に公開した。
著者
長坂 猛 田中 美智子
出版者
宮崎県立看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

睡眠の内容と、翌日のパフォーマンスに関するデータ(情報の処理能力、疲労度、眠気)の相関を調べることによって、睡眠と翌日の活動についての評価を試みる。日常的な生活の中で測定を実施し、心拍や唾液中のホルモン物質の変動から、翌日のパフォーマンスを推測することをめざす。
著者
BUSTOS Itzel
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は、抗PD-L1抗体を腫瘍溶解性ウイルス表面に発現させることにより、ウイルスにPD-L1発現細胞への指向性を付加するだけでなく、免疫チェックポイント阻害剤としての機能を付加した画期的な新規ウイルスを開発することを目的とした。抗PD-L1抗体遺伝子ベクターの構築に成功したが、目的のウイルス(HF10αPD-L1)の作成には至っていない。マウス扁平上皮癌SCCⅦの両側側腹部腫瘍に対するHF10と抗PD-L1抗体との併用により、両側の腫瘍に対して強い抗腫瘍効果を示した。この抗腫瘍効果の増強には腫瘍への免疫細胞の浸潤の関与が示唆された。
著者
シェラス ヨアン
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

亜鉛含有率が高くアスタキサンチンを含む食品の、ヒトの睡眠における効能を調べた。120名の健康な被験者にランダム化・二重盲検・プラセボ対照にて並行群間比較試験を行い、アクティグラフで夜間活動を12週間記録した。試験は、亜鉛含有率の高い食品が睡眠導入を改善し、睡眠の質を高めると示した。この成果をもとに睡眠の質を向上させるサプリメントを開発し、株式会社富士フィルム ヘルスケアは「オキシバリアすっとねリッチ」として商品化した。さらに、研究結果の分子構造を理解するためのマウス実験を行い、亜鉛投与により活発化するニューロン群を特定した。これらのニューロンを刺激すると亜鉛投与に類似して睡眠量が増加した。
著者
杉野 駿
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-04-25

本研究はフランス啓蒙主義の哲学者ドゥニ・ディドロの美学理論である「理想的モデル」論を、その生成と同時代の理論との関係に着目しながら検討する。「理想的モデル」とは『百科全書』の項目「ADMIRATION」から『俳優に関する逆説』までおよそ20年間かけてディドロが様々な文脈において使用しつつ彫琢した概念である。この概念を中心に展開された理論は、深源をプラトン哲学に持ちながらも、観念論と唯物論の弁証法のなかでの「判断」の契機の特異な位置づけを浮き彫りにする点で18世紀の美学理論のなかでも特筆すべきものである。本研究は、この理論の美学的達成と同時にその政治的含意をあきらかにすることを目指す。
著者
大西 彩子
出版者
甲南大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-02-01

本研究では認知の歪みの修正という観点からのいじめ防止対策について検討するため,一般的な反社会的行動に関する選択的道徳不活性化(SMD)といじめに関する選択的道徳不活性化(SMDB)に着目し、それらがいじめの傍観経験、制止経験、加害経験、被害経験とどのように関連するのかを明らかにすることを目的とした。調査は,公立定時制高校の1~4年生12クラス260名を対象とした。その結果、いじめの加害および傍観行動と被害経験には、一般的な反社会的行動に関する認知の歪みであるSMDといじめの認知の歪みであるSMDBが関連していることが示された。
著者
田中 圭介 河内 亮周 安永 憲司 小柴 健史
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、インセンティブの設計を様々な暗号技術 (電子署名・相手認証・ブロックチェーン技術) に拡張することである。このため、研究課題を2つ設定し、各課題に対して研究期間を大きく3つに分けている。課題(A)の既存暗号技術に対するインセンティブ設計では、合理的証明にもとづいた委託計算で利用されている報酬の技術的な設定手法を電子署名や相手認証などへ応用し、さらにその手法をその他の技術へ適用可能な形へ一般化させる。課題(B)のブロックチェーンに対するインセンティブ設計では、ブロックチェーンに対して適切にインセンティブを設定する手法を考案し、そのインセンティブの設定を、課題(A)で発展させたインセンティブの技術的設定手法で実現する。課題(A)に対しては、今年度は2018年度までに行った第1フェーズ「インセンティブ設計技法に関する調査と研究」で得られた知見を活用し、第2フェーズ「インセンティブを用いた電子署名・相手認証のモデルと技術の設計」を行った。今年度は特に、これらの要素に密接に関わるSecure Message Transmission (SMT)と呼ばれる要素に着目し、複数ある通信路がすべての敵に支配されたとしても、合理的な敵を考える場合には、安全に通信を行うことができることを示した。課題(B)に対しては、今年度は2018年度までに行った第1フェーズ「ブロックチェーンに関する調査と研究」で得られた知見を活用し、第2フェーズ「インセンティブを用いたブロックチェーンのモデルと技術の設計」を行った。典型的なproof-of-workにおいてはハッシュ関数の特定の要件を満たす値を出力するような入力を見つけることが行われている。これはある種の計算問題を解くことに対応しており、この問題を別の計算問題に置き換えたときのインセンティブ設計についての可能性についてに考察を行った。
著者
三浦 要
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

古代ギリシア快楽主義の検討を通じ,特に,原子論者デモクリトスの快楽主義が一般的解釈に反し倫理的理論として肯定的に評価できること,同じ快楽主義のキュレネ派との相違点が顕著であるエピクロスの規範的倫理学説が,個人の閉じた生での幸福の実現を目標にしているかぎりで公的倫理の基礎を与えない点で限界を有すること,そして,快楽と人間とが親和的であるという快楽主義的洞察が真理であるからには,快楽主義が個人倫理の源泉を考える上で依然として有効性をもっていることを考察した。
著者
鈴木 裕明 青柳 泰介 福田 さよ子 高橋 敦 馬 強
出版者
奈良県立橿原考古学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

三次元レーザー計測を駆使した木製樹物の調査研究によって、古墳時代王権中枢では中期段階までのコウヤマキ大径木の大量消費によって、後期に入ると中小径木利用が主体となり、そのなかで良質な材は大規模古墳に、質の劣る材は中小規模古墳に供給されていた実態を明らかにした。また古墳時代王権中枢の木材生産・流通の把握を目的として、奈良盆地東山間部の遺跡出土針葉樹残材の調査研究を実施し、針葉樹製品の製作が山間部で行われ、盆地へ供給された状況を確認した。さらに古代中国・朝鮮半島の木材資源と王権との関わりについて関連資料の調査も実施し、中国では漢代には王権中枢周辺地域で有用木材の枯渇が始まっている可能性を指摘した。
著者
MOLNAR LEVENTE
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2020-04-24

本研究は、二人のハンガリー出身の映画作家、ヤンチョー・ミクローシュとタル・ベーラの空間表象をめぐりモダン・シネマにおける映画的表象を中心的な問題としている。作家論を超えて、モダン・シネマの文脈まで展開するためには、二人による作品のほかには同時代の中央・東ヨーロッパの映画にみられる空間表象を確認し、多岐にわたる先行研究を精読し、整理する。最終的には、本研究は映画において「何が語られているのか?」や「作家のメッセージは何なのか?」、「描写されたことはどういう意味なのか?」などの意味論もしくは解釈学的とは違う、つまり「如何にして表象されているのか?」という観点から映画的表象を論じる。
著者
高橋 弘毅 黒木 由夫 白鳥 正典 千葉 弘文 工藤 和実 黒沼 幸治
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は急性肺障害でのToll様受容体(TLRs)の役割を明確にし、肺コレクチン、SP-Aによる抑制効果を臨床薬に応用する基盤的研究である。ブレオマイシン(BLM)投与SP-A ノックアウトマウスは野生型よりも死亡率が高く、肺内炎症性サイトカイン産生が増強された。BLM刺激でラット肺胞マクロファージから炎症性サイトカインが誘導され、SP-A添加で有意に抑制された。sTLR2遺伝子導入HEK293細胞では、BLM刺激でNF-kBが誘導された。BLMはsTLR2と直接結合し、それはSP-Aで阻害された。以上より、BLM誘導シグナルはTLR2依存性で、肺コレクチンはその阻害効果をもつことが示された。
著者
北川 克己
出版者
大阪大学
雑誌
国際共同研究加速基金(帰国発展研究)
巻号頁・発行日
2018

セントロメア特異的なクロマチン構造とその機能を決定する重要な因子の一つに、ヒストンH3の一種であるCENP-Aタンパクがある。このCENP-Aがセントロメアだけではなく、染色体上のDNA損傷部位に局在することが報告された。我々のグループはCENP-AはDNA損傷部位の中でもDNA二重鎖が切断された部位に局在することを明らかにした。我々は、また、ヒト培養細胞を用いてCENP-Aの細胞内レベルを低下させると放射線感受性が上昇することを明らかにし、それにより、CENP-AがDNA損傷応答において重要な役割を果たしていることが示唆された。我々はCENP-AがDNA二重鎖切断部位に局在することによって特異的なクロマチン構造を形成し、ネオセントロメア様の複合体を形成し、スピンドルチェックポイントを活性化させるという仮説を検証するために、DNA損傷時特異的にCENP-Aに結合するタンパク質をIPマススペクトロメトリーにより同定した。
著者
小林 亜子
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、フランス革命期に採択された公教育組織法が革命戦争による併合地や姉妹共和国にどのように施行されたかを明らかにしようとするものである。これらの問題については、刊行史料が存在しないためフランス本国においても未解明であったが、本研究では未刊行の重要な史料群を発見し、それらの分析から、革命後半期の総裁政府期に成立した公教育組織法が併合地にも施行され、併合地や姉妹共和国の教育状況が本国に詳細に報告されていたことを解明した。さらに、総裁政府期の共和国と革命戦争をめぐる近年の革命史の研究動向とも関わる新たな知見を導き出し、フランスの国際シンポジウムで報告し、日本でも国際研究集会を主催した。