著者
勾坂 馨
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

血痕を抗Aまたは抗Mで感染後, 種々の温度で熱処理した後, この血痕に感作抗体と対応する血球(A型またはM型)を加え, 二重結合反応を起こさせたところ, 抗M, 抗Aとも140°C・20分処理では抗体活性に変化がなく, 150°C・30分処理では抗体活性がやや低下し, 160°C・20分処理により抗体活性はほとんど失活した. 一方, 熱処理した感作血痕を熱解離し, 解離液の凝集素活性を調べたところ加熱温度上昇ともに解離液の凝集素活性は低下し, 140°C・10分の熱処理によって解離液の凝集活性は0となった. これらの検査でIgGとIgMとの間に著差は認められなかった. 感作血痕を種々の濃度のホルマリン(ホ)またはメルカプトエタノール(メ)で処理した後, 前出の二法により抗体活性を検討した. IgM抗A抗体感作血痕をホで処理した場合濃度25%まで抗体活性の維持が認められ, メ処理では2%まで活性維持が認められた. また, ホまたはメ処理後の血痕を熱解離し, 解離液の凝集素活性を検討すると, 二重結合法と同様な成績が得られた. 一方, ウサギIgG抗M抗体感作血痕では, IgGのホに対する耐性はIgMと同様であるが, メに対しては25%処理まで抗体活性を維持し, IgMと著しい差異を認めた. 一般に免疫グロブリンは高熱やある種の薬物の処理によって活性を失うことが知られている. 熱抵抗性に関しては, 本実験では70°Cの加熱によってIgG抗体活性は失活したが, 抗体抗原複合物の状態のIgG・IgMとも150°C・20分まで抗体活性を維持するのが認められた. この事実は抗体は抗原と結合することによって構造上の変化が生じ, それが抗体の熱抵抗性を発揮させるものと推測される. 薬物処理では, とくにメ処理した場合, 抗原結合状態のIgG・IgMはfreeな状態の抗体に比較すると著しく高い薬物耐性を呈した. これも熱抵抗性の場合と同様に, 抗原と結合した抗体に構造上の変化が生じたものと推測される.
著者
高前田 伸也
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

FPGAがもつオンチップメモリや再構成可能ロジックなどのリソースを最大限活用し最大性能を達成する,マルチパラダイム型高位設計フレームワークの実現に向けて研究を行った.研究代表者が以前より開発を進めている,プログラミング言語Python上のドメイン固有言語として実装したハードウェア設計ライブラリVeriloggenをベースとして,逐次処理,ストリーム処理,レジスタ転送レベルの3つの異なるパラダイムを持つ高位合成コンパイラを実現した.また,本フレームワークをバックエンドとして用いて,ディープニューラルネットワークを主な対象とした,データフロー型ハードウェア・コンパイラの開発に取り組んだ.
著者
神保 充
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

サンゴより褐虫藻の獲得に関わるレクチンを探索した。シゲミカタトサカのレクチンは,褐虫藻の形態を変化させる。これは,褐虫藻表面の糖脂質に結合して引き起こされると示唆される。また,トゲクサビライシレクチンは,共生可能な褐虫藻の誘引を行うことがわかった。一方,ウスエダミドリイシレクチンは,褐虫藻の取込みに関与していることがわかった。これらより,サンゴによる褐虫藻取込み機構は少なくとも2段階で引き起こされることがわかった。
著者
小正 裕佳子 木村 真三
出版者
獨協医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-07-19

原子力災害による被災者への最も大きな影響として、放射性物質による長期の汚染が予測される地域への居住制限が挙げられる。特に帰還困難区域、居住制限区域の高齢者を中心に、心身のストレスによる苦悩や体調悪化(難聴、認知症等)が報告されており、本研究では、こうした高齢者が今後の人生を再構築していくかに必要なエビデンスを構築することを目指している。方法としては、初めに、原発事故被災高齢者が希望と尊厳のある暮らしを取り戻すことができるよう、質的手法により(1)終の住処として安住できる環境に必要な条件、(2)条件が達成される見込みと時期、(3)現在に至るまでの健康状態、について網羅し系統的に分類すること、を目標としている。平成28年度は、対象者の選定が適切かどうかの検討を行うのに時間を要し、同意を得られた人に対して予備的に聞き取りなどを行った。また、背景情報として必要な文献の収集などを同時並行で実施した。平成29年度は、対象となる65歳以上の高齢者のうちの一部で、避難指示が解除された地域に帰還した人への質的調査を開始した。その中で、現在に至るまでの健康状態については、震災・原発事故発生後に、これまでにかかったことがなかったような病気になったと回答した人が複数みられ、その他にも様々な自覚症状があった。一方、避難指示区域の再編や住宅の整備、家族の事情などにより対象となる高齢者が転居しているケースも多いことから、追跡可能な対象者を再度設定して調査を順次行っていく。
著者
長友 朋子 中村 大介
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

これまで共同研究を行ってきた研究協力者とともに、焼成温度分析を行い、土器や瓦から窯技術の差異を示す。また、胎土分析と考古学的分析により流通範囲を解明することで、技術拡散か器物流通かの区分を明確にする。朝鮮半島では初期窯の事例が少ないので、窯と窯焼成陶器が判明する中国資料を参考に、焼成温度から窯構造を推定したい。一方、窯構造や土器の研究は、日韓両国でそれぞれ蓄積されているものの、専業化と政体との関係については、陶邑窯や新羅の慶州など、大規模な窯群で考慮されるのみで希薄である。窯を単なる技術伝播ととらえるのではなく、政体との関連に注目し、窯技術拡散と土器生産体制の変質を解明する。
著者
安田 孝子 島田 三惠子 大見 サキエ 巽 あさみ 矢野 忠 笹岡 知子
出版者
浜松医科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

つわり妊婦に対するツボ刺激のつわり症状の改善への有効性を明らかにすることを目的として,県内の病院の妊婦外来で同意の得られた妊娠16週までの妊婦48名(68名配布,回答率77.4%)を対象として,つわり症状尺度,東洋医学健康状態,属性等で構成される質問紙調査を実施した。このうち,同意の得られた妊婦12人を対象として,ツボの指圧を1回10分間連続3日間,実施した。その結果,48名の対象者の属性の年齢は30.5±4.4歳,身長158.2±5.3cm,体重51.4±7.8kgであった。1.つわり症状尺度:北河のEmesis Indexを一部改変し,悪心,嘔吐,食欲不振,唾液分泌,口渇の症状の各項目の0点〜3点を点数化し,合計点が15〜11点は重症,10〜6点は中等度,5〜4点は軽症と分類した。各項目は,悪心2.1±0.9点,嘔吐1.2±1.2点,食欲不振1.6±1.1点,唾液分泌1.2±0.9,口渇1.0±0.9であり,悪心が最も多く,1日に5〜10回感じている状態である。合計点は7.1±3.5点であり,治療を要するほどではないが,中程度の不快な症状を抱えながら日常生活を送っていると考えられた。2.東洋医学的身体の状態:明治鍼灸大学式東洋医学健康調査票による妊婦の身体状態は4つのタイプに分類された。(1)胃虚型(胃腸症状が強い),(2)肝熱型(イライラや胸脇が苦しいなどが強い),(3)痰湿型((1)に不眠多夢などが加わった),(4)は(1)〜(3)以外の型であった。48人中(1)は19人(39.6%),(2)は18人(37.5%),(3)は5人(10.4%),(4)は6人(12.5%)であった。従って,つわりのある妊婦に共通して用いるツボは内関,中?であり,タイプによって,足三里,胃兪,太衝,百会,膈兪,豊隆,太白などを組み合わせることが適切であると考えられた。3.ツボ刺激の効果:ツボ刺激は,腹式呼吸と印堂,内関,全息律つぼ群の3ヶ所のツボの指圧を1回10分間,連続3日間実施した。12人の妊婦のうち,11人の有効データを分析した。つわり症状尺度のスコアは,ツボ刺激の実施前5.0±4.6点,実施3日後3.3±2.8点となり,有意(paird t-test,p<0.01)に低下した。従って,ツボ刺激がつわりのある妊婦の症状改善に効果があることが示唆された。
著者
淺間 一 田中 宏和 井澤 淳 近藤 敏之 矢野 史朗
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-07-10

四肢の欠損した患者や統合失調症の患者は,自分の身体への所有感が低下することや自分の運動に対して主体感が持てなくなり,健常者と比べて脳内身体表現が変容していることが知られている.本年度はこの身体所有感や運動主体感が脳内身体表現の変容に対してどのように影響を与えるのか定量的に評価し,数理モデルの構築を行った.具体的には,健常者に対してラバーバンド錯覚という現象を起こした上で,身体所有感と運動主体感がそれぞれ感じられない条件で,脳内身体表現がどのように変化するか調べた.その結果,被験者が能動的に動くことで,運動主体感は増し,ラバーバンド錯覚で呈示する腕の映像が実際のものと異なる時には,身体所有感が低下することがわかった.次に脳内身体表現の変容に対して,身体所有感と運動主体感が与える影響を定量的にモデル化した結果,対象とする被験者の数回の試行データを用いることで,変容がどの程度進むかを推定することができるようになった.またこのような知見を実際のリハビリテーションに応用可能なプラットフォームとして,バーチャルリアリティ環境の運動介入システムの実装を行った.これは使用者の腕の運動と筋活動を計測し,それをリアルタイムで使用者にフィードバックするシステムである.このシステムを使うことで,実際に使用者が行っている運動とは異なる結果を返したり,あえて運動を過剰に表示することで,運動を誘導することができることが分かった.
著者
庄司 翼
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

植物由来の天然物は古来より医薬、嗜好品、染料として利用されてきた。特に、12,000種類余の構造が知られるアルカロイドは、多くの有用生理活性物質を含んでいる。我々は、低ニコチンタバコ品種に利用されてきた遺伝子座にERF型転写因子が存在することを解明した。この転写因子はインドールアルカロイド合成のマスター遺伝子ORCA3と高い相同性を示す。マスター遺伝子を利用した次世代代謝工学が期待される。
著者
渡辺 茂 村山 美穂
出版者
慶應義塾大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

本研究では,1)ヒトで好奇心との関連が報告されているドーパミンD4受容体遺伝子多型領域の鳥類での解析,2)D4拮抗薬投与による好奇心の低下の検討、により行動特性の遺伝的側面からの解明を目指した。鳥類ではエキソン1領域にアミノ酸のプロリンをコードするCCNの反復配列が存在し、種間、種内で反復数に差があることを見いだした。個体の行動データがあるカササギ、カケス、ハトで遺伝子型を調べた。プロリン反復領域をPCR増幅して、ABI3100シーケンサー(アプライドバイオシステムズ)を用いて、BigDye V3.1キット(アプライドバイオシステムズ)によるdye terminator法で塩基配列を解析した。その結果、カラス、カササギ、カケス、オウム、ハトはそれぞれ3,3,3,3回反復遺伝子を持っており、種内多型は見いだされなかった。好奇心の強い種としてセキセイインコを用い、新奇刺激に対する接近行動を好奇心の指標として薬理実験を行った。D4拮抗薬としてはL-745,870を用い、0.1mg/Kgから0.2mg/Kgを筋肉内投与した。その結果、拮抗薬投与により、有意な接近行動低下が見られた。なお、一般活動性には薬物投与の効果は見られなかった。このことから、D4が鳥類においても好奇心に関係することがわかった。しかし、多くの種で種内の遺伝子多型が見られなかったため遺伝子多型と好奇心との関連は十分に解明されなかった。
著者
岡 浩太郎 チッテリオ ダニエル 舟橋 啓
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

細胞内のエネルギー代謝を制御する新規なセカンドメッセンジャー候補としてMgイオンに注目した研究を進めて来ている。本年度は特にエネルギー代謝の変動を把握する系の確立を目的とし、神経細胞ミトコンドリアの挙動とその集積・移動の解析を、ミトコンドリア膜電位とミトコンドリア内ATP濃度の蛍光イメージングを併用して調べた。従来ミトコンドリア活性を評価するためにミトコンドリア膜電位のイメージングが行われてきたが、我々の研究から、ミトコンドリア膜電位とミトコンドリア内ATP濃度は必ずしも強い正の相関を持つわけでないことが判明した。またこれらの2つのパラメータをミトコンドリアの融合と分裂時にも追跡することに初めて成功した。この成果は古くなったミトコンドリア機能がどのようにリフレッシュされるのかを考える上でも大いに貢献するものとである。また細胞内でのMgイオンの役割の生理的な意味について、本年度は特に細胞分裂の際に一過的に細胞内でのMgイオン濃度が上昇するという知見を得ることに成功した。細胞が分裂する際、ヒトでは全長2メートルにもおよぶゲノムDNAからコンパクトに凝縮した染色体が作られ、2つの細胞に正確に分配される。半世紀以上前、細胞に大量に存在するMgイオンがゲノムDNA凝縮の鍵となりうることが提唱されたことがあったが、当時は細胞内Mgイオン濃度を測定する手段が無かったため証明されぬまま忘れられてた。本年度は細胞分裂の際にMgイオン濃度が一過的に上昇することを示すとともに、Mgイオンが負の電気を帯びているDNA同士の反発を弱め、染色体の凝縮を促進していることを明らかにできた。本研究によって、実際にMgイオンが細胞のなかで染色体の凝縮にかかわっていることが初めて証明できた。
著者
西山 宗六 中村 俊郎
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

基礎疾患を有さない貧血女性37名(年齢22.3±4.3歳)を対象に種々の貧血マーカーと亜鉛動態との関連を検討した結果、女性の亜鉛欠乏性貧血の診断基準は、(1)ヘモグロビン12.0g/dl以下、赤血球数380×10^4/mm^3以下、総鉄結合能(TIBC)380μg/dl未満の正球性正色素性貧血、(2)血清亜鉛の低下は必ずしも認めない、(3)正球性正色素性貧血を呈する他の疾患を除外する、(4)亜鉛欠乏と同時に鉄欠乏を伴うことが多い、とすることが妥当であると考えられた。つぎに上記診断基準を満たす中年女性の貧血患者への亜鉛投与による結果から、亜鉛欠乏性貧血の頻度と治療法を検討した。農村地区住民15,459名(男性7487名、女性7972名)に貧血検査を行ったところ、男性でヘモグロビン13g/dl以下、女性でヘモグロビン12g/dl以下の貧血患者は男性の7.0%、女性の14.1%であった。上記診断基準を満たす亜鉛欠乏性貧血が疑われる患者は貧血者男性の54.2%(全体の3.8%)、女性の41.1%(全体の5.8%)であった。これらの貧血患者を鉄投与群(n=15)、亜鉛投与群(n=21)、鉄と亜鉛投与群(n=16)に分けて8週間治療したところ、鉄と亜鉛投与群のみ有意の貧血の改善を認めた。亜鉛投与群では血清鉄100μg/dl以上、フェリチン40ng/dl以上を有したものは亜鉛単独での貧血の改善が見られた。したがって亜鉛欠乏性貧血の治療は(1)フェリチン40ng/dl以上の患者では亜鉛製剤34mg/日、(2)フェリチン40ng/dl未満では亜鉛製剤34mg/日、鉄製剤100mg/日の投与が妥当であると考えられた。
著者
森 功次
出版者
山形大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

本年度は、主に現象学的アプローチから研究を進めるとともに、批評実践の場面に積極的に関わることで批評家や芸術家たちと議論を行なった。論文としては、2015年3月刊行の『サルトル読本』に「芸術は道徳に寄与するのか――中期サルトルにおける芸術論と道徳論との関係」という論文を寄せた。また、2015年3月に「前期サルトルの芸術哲学――想像力・道徳・独自性」という題目で東京大学に博士論文を提出した。学会発表としては、7月に日本サルトル学会にて「サルトル研究における哲学研究者の役割」というタイトルで発表した。9月には、露光研究発表会にて「芸術作品は非現実的なものである」というテーゼについて:初期サルトルにおける芸術作品の存在論的身分と美的経験論」というタイトルで発表した。この発表の内容は、さらに議論を改訂・追加したかたちで、1月の科研会議、「表象媒体の哲学的研究――画像の像性と媒体性の分析を中心に」(基盤C、研究代表者:小熊正久)でも発表した(この内容はのちに科研の報告書として出版される論文集に採録予定となっている)。12月には、第9回KoSACにて『美術手帖』の第15回芸術評論で第1席を受賞したgnckの評論文「画像の問題系 演算性の美学」の合評会で評者を務めた。また3月には第11回KoSACにて岡沢亮修士論文「人々の実践としての芸術/非芸術の区別:法・倫理・批評領域に焦点を当てて」合評会の評者をつとめた。雑誌記事としては、6月に「失礼な観賞」、『エステティーク』、p. 72-76.を執筆した。さらにアウトリーチ活動として、11月に名古屋のアートサークル「ロプロプ」が主催するArts Audience Tables 、オーディエンス筋トレテーブル#06にて、「多元化するアートワールドを考える:関係性の美学、地域アート、芸術的価値」というタイトルでレクチャーを行った。また2月には、展覧会「オントロジカル・スニップ」(HIGURE17-15cas)のトークイベントに登壇した。
著者
加藤 みち子
出版者
公益財団法人中村元東方研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、天道念仏、天道神社、そして天道信仰を一貫した視座でとらえて、その背後にある「天道」観念の思想史的位置づけについて検討した。天道神社と天道念仏の関するフィールドワークによって、両者の分布地域がほとんど重ならないこと,および、いずれも修験道の分布と密接なかかわりがあることが見出された。また天道念仏は単なる太陽信仰ではなく、修験道・道教・陰陽道・仏教の複雑な習合信仰であることが明らかになった。そして、天道神社およ天道信仰のルーツはいずれも大陸との関連を示す表徴があることがわかった。
著者
坂田 年男 角 俊雄 宮崎 充弘 笹渕 祥一 栗木 哲
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

統計学におけるテンソルとは高次元配列データのことであり, 行列データの拡張概念である。テンソルを最も基本的な階数1のテンソルの和にあらわすときの最小の長さをそのテンソルの階数という. さらに特定の階数を持つテンソルの集合が正の測度をもつとき典型階数と呼ばれる。本研究は(m,n,p)型の3-テンソルの典型階数について研究を行い、絶対正則テンソル, 絶対列充足階数テンソル、正則な双線形写像, 行列式イデアルなどの概念と結び付けて、典型階数が複数存在するか単一に存在するかの問題に対する解答を部分的に与えた。また、行列型正規分布の平均の片側検定に対する相似検定の研究も併せて行い構成した。
著者
川上 憲司 望月 幸夫 森 豊
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

換気検査には従来より ^<133>Xeガス、 ^<81m>Krガスが使われているが、入手に予約を必要とし、緊急検査に間に合わない。 ^<99m>Tc-エロゾル吸入検査も換気検査の代用とされるが、エロゾルの粒子径が大きいため、疾患肺では換気分布を表さない。^<99m>Tc-テクネガスは、 ^<99m>Tcを炭素の微粒子に標識し、換気分布に近いガス分布を得る放射性医薬品として開発された。本研究では、テクネガスの粒子径、捕集効率、生体における挙動、および種々肺疾患における臨床応用などについて検討した。テクネガスの粒子径は、電顕で計測した結果、大部分が20〜30nmφであったが、一部これらの粒子が魂状となって、100〜200nmの粒子を形成していた。テクネガス発生装置内の炭素るつぼに、 ^<99m>Tc-パーテクネテート溶液(300MBq/0.1ml)を入れ「るつぼ」を高熱で昇華することにより、微細炭素粒子を作成、これに ^<99m>Tc-が標識される。テクネガス生成後、粒子は次第に沈澱するので10分以内に吸入することが望ましい。血液中放射能は吸入後2時間において、吸入量の0.2%/1血液、尿中放射能は、24時間後においても4.96%であった。肺におけるテクネガスの生物学的半減期は135時間で肺のイメージは、24時間後においても安定していた。肺の被曝量は0.04Gy/37MBqであった。肺疾患例におけるテクネガスの分布は ^<81m>Kr分布に類似していたが、閉塞性病変の強い症例では、中枢気道に過剰に沈着し、スポット形成がみられた。しかし、未梢気道にも分布しており、換気分布の評価は可能であった。
著者
比嘉 充 遠藤 宣隆 垣花 百合子
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

REDシステムを構成するモノリシック発電セル用の新規イオン交換膜はポリビニルアルコール(PVA)系ブロック共重合体から作製し、これらの膜は膜抵抗、イオン選択性において市販膜より優れた基礎性能を示した。また市販イオン交換膜を使用した大型RED発電装置は模擬海水として0.5MNaCl、模擬河川水として0.02MNaClを使用した場合、最大出力17.8W、出力密度0.45 W/m2を示した。この時の海水および淡水の供給圧と溶液流量から算出したポンプ電力は2.76 Wとなり、これより、15.1 Wの実効出力が得られた。この結果よりRED発電システムとしては将来のエネルギー源として期待できる。
著者
白鳥 世明
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

米国のハーバード大学およびMITのグループにより液体を滑らせる撥水・撥油現象として2011年にSLIPSが報告された。続けて申請者らは2013年に透明性と自立性、撥水性、撥油性を兼ね備えたGel-SLIPSという滑液膜を考案した。 ②しかし、いずれの膜も室外環境における風雨に耐えうる機能に乏しいため、本研究では、生物の表皮の代謝のメカニズムを模した生体模倣により自己修復機能を付与することを検討する。初年度は生体における擦り傷の治癒および外表皮の代謝のメカニズムを人工系に取り入れ、申請者らが見出した滑液膜表面(Gel-SLIPS)に 自己修復機能の発現を試みた。樹木の表皮や植物の葉の表面には無数の配管(道管、師管、葉脈)によるネットワーク構造が巡らされ、樹皮の部分的な破損、水分の欠如に対応して徐々に再生していく。本研究ではこうした植物の再生機構のバイオミメティクスを推進している。具体的には葉脈のナノ構造をナノファイバーで作製し、それを薄膜に埋め込んだNano Composite構造を作製た。(1)温度による相転移を活用した固体→液体変化 を活用し、また、(2)表面の液膜、もしくは固体膜の欠損による「液体/固体界面」での拡張係数の変化を活用することで、部分的に物質が欠損した表面への物質移動を促進させる。葉脈類似の構造に関しては、申請者らが確立してきたポリマーのナノファイバー構造を用いて推進している。申請者らは上記の概念をそれぞれ2016年に学術雑誌ACSNano等に発表した。本研究ではこの概念を 滑液膜表面に適応した。その結果、より自己修復性に優れた薄膜を得ることができようになった。
著者
三浦 則明 桑村 進 一本 潔 馬場 直志 花岡 庸一郎 高見 英樹
出版者
北見工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

補償光学(AO)は、地球大気ゆらぎの影響による観測像の劣化を実時間で補正する技術である。本研究では、京都大学飛騨天文台の 60cmドームレス太陽望遠鏡で多目的に使用できる AOの設計を行った。また、補償が有効に働く視野を広げるためのマルチコンジュゲート補償光学系(MCAO)の開発も進めた。MCAOの光学設計には上空ゆらぎ層の高さの情報が必要である。ここでは、従来夜の観測で二重星を用いて開発されてきた SCIDAR技術を太陽観測にも適用できるように修正した。この方法を用いて、飛騨天文台の上空ゆらぎ層の高さを測定した。さらに、上空波面センサの開発し、MCAO装置を太陽観測に適用した。
著者
ムサジャノワ ジャンナ
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

甲状腺乳頭癌は一般的には予後良好な疾患であるが、一部の症例に再発、転移をきたすため、そのポテンシャルを有する症例の拾い上げが重要である。予後を規定する有力な因子としてBRAF変異とTERT promoter変異を二つ持つ腫瘍は予後が悪いことが報告された。本研究ではこれらの分子マーカーと形態学的形質との関係を明らかにし、日常の甲状腺がん病理診断学に汎用できる高悪性度の組織像を明らかにする。日本人とカザフスタン人の甲状腺がんを同一基準で比較することで、ヨード摂取量や人種の違いによる甲状腺がんの組織像の多様性による影響も評価する。分子異常をエビデンスとした高リスク乳頭がんの形態学的特徴を定義づける。