著者
榛葉 繁紀
出版者
日本大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

近年、生活リズムの乱れが、肥満やメタボリックシンドロームのリスクファクターであることが疫学調査より明らかとなってきた。我々は、サーカディアンリズムのマスターレギュレーターである転写因子Brain and Muscle Arnt like protein1(BMAL1)が脂肪細胞の機能を調節することを報告した(Shimba et al PNAS 2005)。また、メタボリックシンドローム患者の脂肪組織においてBMAL1機能の異常が報告されており、さらにはSNP解析によりBMAL1機能不全と糖尿病ならびに高血圧発症との関係が疑われている。これらの結果は、BMAL1が代謝調節に積極的に関与していること、さらにはその機能異常がメタボリックシンドローム発症へと通ずることを示唆している。そこで本研究ではBMAL1機能の異常とメタボリックシンドローム発症との関係を明らかとすることを目的として、BMAL1ノックアウト(KO)マウスの解析を行った。雄性C57B1/6JマウスならびにBMAL1 KOマウスを通常あるいは高脂肪食下において5週間飼育した。常法に従い、インスリン感受性、耐糖能ならびに血液生化学検査を行った。遺伝子発現の変化はGeneChipを用いて解析した。通常餌飼育下においてBMAL1 KOマウスは野生型マウスに比較して低体重の傾向を示したが、高脂肪食給餌により野生型マウス以上に著しい体重の増加を示した。またそれに伴い脂肪肝、高コレステロール血症ならびに顕著な皮脂の分泌を示した。またBMAL1 KOマウスの耐糖能は、通常ならびに高脂肪食飼育下のいずれにおいても低下を示した。また各組織における遺伝子発現の変化はこれら表現系を支持するものであった。以上の結果よりBMAL1の機能異常が、メタボリックシンドローム発症へのリスクファクターとなることが示唆された。
著者
平野 俊二 塩坪 いく子 山口 正弘 苧阪 直行 室伏 靖子 清水 御代明
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1987

本研究は人および動物の環境への適応機制に関する心理学的研究である。入力情報の処理から高次の概念獲得、目標定位行動に至る諸側面について、比較的・発達的要因を含めた検討を重ねた。1.視覚入力情報処理(1)乾はパタンの表現と構造化に関して強調と競合による可塑的神経回路網の計算理論を提案した。与えられた2次元画像強度デ-タから画像生成過程を産出する並列多段階モデルである。(2)苧阪は空間周波数パタンの感受性に及ぼす中心・周辺視処理システムの促進と抑制の効果、および、漢字、かなの読書における有効視野面に相互作用が働くことを明らかにした。2.概念の獲得(1)清水は言語文脈による概念の獲得を検討した。母語にない概念を言語文脈のみによって獲得することの困難をはじめ、既知の概念をあてはめようとする傾向、反証事例は必ずしも有効に用いられないが、定義を与えられると獲得可能となることが示された。(2)室伏はチンパンジ-に図形パタンと数字による物、色、数の符号化訓練後に、さまざまな対象について般化テストを行い、高次力デゴリ-としての概念の形成が色、物、数の順に難かしくなることが分った。3.目標定位(1)塩坪は目標定位に及ぼす発達的要因を調べた。10ヶ月乳児に手伸ばしと這行による対象選択を求め、反応は異なっても共通の特徴がみられること、対象の空間的配置や呈示順序が選択に影響することが見出された。(2)山口は目標定位と選択行動に関わる神経機構について、上丘損傷ラットの回りこみ行動を解析した。走行中の目標定位は損傷後も保持されるが間隙により再定位を要するとき、損傷の阻害効果が顕著となることが示された。(3)平野はラットの音刺激継時非見本合せで海馬損傷の影響を検討し、刺激差小、刺激間間隔大のときに障害が認められることを示した。
著者
武部 貴則
出版者
横浜市立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

人びとの健康行動の持続的誘発には、対象属性に応じたコミュニケーションが重要である。広告医学という新規概念を提案し、デザインやコピーライティングなどといった、わかりやすく、人々に影響を与える広告的視点を取り入れることで、生活する人々の行動変容を実現するコミュニケーション研究を進めている。本研究では、広告医学の基礎概念実証を目指し、運動量の増加を目指した介入施策を複数デザインし、それらによる歩行量の増加を実証した。本年度における成果を礎に、今後も広告医学の概念に基づくアイテム開発・実証実験を継続していくことで、疾病予防に大きく寄与する独創的なコミュニケーション手法が生み出されるものと期待される。
著者
白崎 良演 中村 浩章 羽田野 直道 町田 友樹 長谷川 靖洋
出版者
横浜国立大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

我々は、2次元電子系がメゾスケールの大きさである場合、強磁場下で系のネルンスト係数に量子振動が見られる(量子ネルンスト効果)ことを平成17年度から平成18年度にかけて線形応答理論を用いた理論計算で示していた。平成18年度にフランスのグループ(Bhenia, et. al. ESPCI, Paris)から、ビスマス(Bi)単結晶のネルンスト係数およびエッチングスハウゼン係数の測定結果が発表され、ネルンスト係数の量子振動が現実の系で示された。我々はこの実験結果の検討を行い、試料の3次元性の効果を取り入れた理論拡張を行った。我々は磁場中の3次元バリスティック系を考え、運動の自由度を磁場に垂直な2次元面内の自由度と磁場に平行な自由度に分け、2次元面内の運動成分は有限サイズのバリスティックなものと見なしてネルンスト係数を考察した。その結果、3次元系でもネルンスト係数の量子的な振動が現れ、ネルンスト係数のピークは弱磁場側に尾を引く左右非対称の形を持つことが分かった。この形はBiの実験結果と一致する。このように、量子ネルンスト効果が3次元系において理論・実験両面から確認された。一方、Biのネルンスト係数のピークは実験値が理論値に比べ非常に大きい。この原因の理論的解明は今後の課題として残っている。我々は量子ホール系における輸送係数の基本関係に関しても考察を行った。従来、電気伝導度テンソルの非対角成分の磁場微分と対角成分との間では線形な関係式が提案され、研究が進められていた。我々は線形応答理論を用いて量子ホール系の輸送係数を理論・解析的に導出し、成分間の関係が非対角成分の磁場微分と対角成分の二乗が比例する非線形な関係であることを示した。この理論では、電子の不純物散乱により、ランダウ準位近傍の電子状態密度がローレンツ型になると仮定している。我々はGaAsによる実験結果を用いて、数テスラ程度の磁場のもとでこの関係が良く成立していることを確かめた。
著者
大串 隆之 内海 俊介
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

セイタカアワダチソウの成長パタンの季節動態が、日米両国間および各国の地域間でも大きく異なることがわかった。日本の圃場では日本産のセイタカの方が米国産のセイタカよりも植物サイズと葉数がいずれも3倍以上であった。さらに、植物の成長期間は滋賀と佐賀の圃場では8月中旬には完了したが、北海道の圃場では9月以降まで続いた。主な植食者の個体群動態は、日米両国間および各国の地域間でも大きく異なることがわかった。セイタカヒゲナガアブラムシの出現パタンと密度は圃場間で異なった。佐賀と滋賀の圃場ではアブラムシの密度のピークは6月上旬であったのに対し、北海道では9月下旬から10月上旬にかけてピークを迎えた。さらに、北海道では他の地域に比べて、密度は10倍以上も高かった。アワダチソウグンバイは佐賀と滋賀では高い密度であったが、北海道では全く見られなかった。滋賀では9月上旬にかけて密度のピークが見られたが、佐賀では6月下旬から10月上旬にかけて同程度の密度で推移した。グンバイの食害を受けた葉の割合は、滋賀では6月から7月下旬にかけて急激に増加し80%に達した。一方、佐賀では6月下旬に早くも食害率は100%に達した。食害率が高くなると植物の枯死が見られ、グンバイによる食害はセイタカの定着後の最大の死亡要因であることが示唆された。グンバイ以外の葉食者の食害は、滋賀では6月上旬から増加し、10月中旬にはピークに達したが、その時点でも食害率は12%程度であった。これに対して北海道では季節が進むにつれて食害率は増加し、最終的に40%近くになった。日米の比較によって、米国のミネソタとカンサスでは植食生昆虫の種多様性は日本に比べて高く、逆に南部のフロリダでは植食生昆虫の種多様性と密度は米国北部および日本に較べて低かった。
著者
森山 聡之 武藏 泰雄 西山 浩司 渡辺 亮一 和泉 信生 森下 功啓 山口 弘誠 中北 英一 島谷 幸宏 河村 明 牛山 素行 松尾 憲親
出版者
福岡工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

分散型多目的市民ダムをスマート化し、水資源確保と洪水制御を行う雨水グリッドとするために、(1)降雨量測定装置としての雨水タンクの検証を行い、雨量計としては利用可能なものの、雨水タンクが砕石充填方式の場合は圧力センサーを水位計として使用しない方が良いことを示した。(2)防災クラウドによる雨水の見える化として、センサーノードとゲートウエイの安定化を計った。(3)豪雨発生診断をSOMを用いて行ったが、予測精度はあまり高くないことが判明した。セキュリティー向上として、 OpenVPNを用い暗号化となりすまし防止を行った。(4)無線回線の安定化を図るためにLoRaWANを検証、良好な結果を得た。
著者
稲月 正 谷 富夫 西村 雄郎 近藤 敏夫 西田 芳正 山本 かほり 野入 直美 二階堂 裕子 高畑 幸 山ノ内 裕子 内田 龍史 妻木 進吾 堤 圭史郎 中西 尋子
出版者
北九州市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

在日韓国・朝鮮人と日系ブラジル人との生活史の比較分析からは(1)「移民」第1 世代の多くは周辺部労働市場に組み込まれたこと、(2)しかし、移住システム、資本主義の形態などの違いが社会関係資本の形成に差をもたらし、それらが職業的地位達成過程や民族関係(統合)の形成過程に影響を与えた可能性があること、などが示されつつある。また、在日韓国・朝鮮人の生活史パネル調査からは、(1)1990 年代後半時点でも見られた祖先祭祀の簡素化やエスニシティの変化が進んでいること、(2)その一方で 「継承」されたエスニシティの持続性自体は強いこと、などが示された。
著者
下山田 真
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

豆乳は一般的には濃縮によって粘度が上昇し、やがて流動性を失うものと考えられており、これまで濃縮についてはあまり検討されてこなかった。しかしながら濃縮のメリットを考慮すると豆乳をどこまで濃縮できるのかについて検討することは重要なことと考えられた。そこで、豆乳を減圧下にて蒸発濃縮し、粘度と濃縮度の関係を明らかにすることを試みた。本年は、国産大豆および輸入大豆を用いた2種類の市販無調整豆乳を試料とし、エバポレーターを用いて蒸発濃縮を行った。また濃縮条件として豆乳を加熱する湯浴の温度を3つに変化させて、各々の影響について解析することとした。その結果、固形分濃度の上昇とともに豆乳の粘度に指数関数的な上昇がみられた。そこで、粘度の常用対数に対してプロットし直してみると、2つの豆乳ともに粘度上昇は2本の直線で表すことが可能であった。さらにエバポレーターの湯浴温度を55℃から65℃、75℃と上昇させると低濃度側の回帰直線は温度に依存せずほぼ同様であったのに対して高濃度側の回帰直線は温度の上昇とともに上方へ移動することが分かった。つまり豆乳を濃縮した際の粘度変化は単純に指数関数的な上昇を示すのではなくて、2段階の挙動を経て変化することが明らかとなった。また品種や温度条件によって2本の回帰直線の交点の位置は影響を受けることが示された。今回用いた豆乳試料の場合、55℃の比較的低温の蒸発濃縮条件下で固形分濃度25%程度までは濃縮可能であることが分かった。
著者
福島 哲仁
出版者
福島県立医科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

中国北京にある中国予防医学科学院(現中国CDC)との共同研究は、フィールド予定地域において重症急性呼吸器症候群が流行したため、平成15年度から中断している。引き続き問題となった鳥インフルエンザなど新たな感染症発生にも影響を受けたため、中国予防医学科学院との共同研究は、中断のリスクが大きいと判断した。現在は、フィールド地を中国湖北省襄樊市及びその周辺に変更し、長期的に安定して共同研究が可能な武漢大学公衆衛生学院の譚 曉東教授との共同研究に切り替えた。今年度、新たなフィールド地域住民のナイアシン摂取状況とパーキンソン病発生状況に関する予備調査を開始し、襄樊市周辺の農村地域でトウモロコシ生産地域のパーキンソン病有病率が極めて低いという結果を得つつある。この結果をふまえ、現在、襄樊市及びその周辺地域において10万人規模の悉皆調査を計画中であり、ナイアシン低摂取地域において、本当にパーキンソン病有病率が低いのかどうか、さらに詳しい栄養調査によって、パーキンソン病発症に関連した環境要因について引き続き検討していく予定である。この疫学調査と並行して、仮説を裏付けるために実験室レベルの研究も進めており、これまでの疫学的分析と合わせて一定の到達点を整理しレビューとしてまとめた。この結果は、すでに雑誌に掲載されているが、体内に摂取されたナイアシンは、体内でNADH合成に使われるが、分解過程で脳を含め全身の組織でニコチンアミドが遊離し、メチル化が生じる。このメチル化されたニコチンアミドがミトコンドリアの呼吸鎖酵素複合体complex Iを直接的に、あるいはミトコンドリアDNA破壊を介して間接的に傷害し、神経細胞の脱落を招くのではないかと考えており、これを裏付ける結果を得つつある。実験室レベルの研究と中国における悉皆調査をさらに進め、表題にある仮説の検証を行っていきたいと考えている。
著者
坂出 祥伸 大形 徹 大庭 脩
出版者
関西大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

私たちは、上記の課題について、哲学・医学・古文字学の三方面から二年かけて研究した。私たち三名の研究者が毎週1回集まって(引書)を読み、その注釈と翻訳を行った。また私たちは2年間に5回の研究発表会を開いた。第1回1993年9月11日京大会館 猪飼祥夫「脈書」と「引書」の性格第2回1993年11月4日京大会館 工藤元男睡虎地泰簡「日書」に現れた治病・鬼神関係資料をめぐって第3回1994年10月22日近つ飛鳥博物館 永田英正 長城守備隊の勤務第4回1994年11月20日京大会館 大形徹 新出土資料より見る鬼と気の問題第5回1995年1月29日京大会館 坂出祥伸 出土医書にみえる自然リズムにもとづく治病・養生 大庭脩 武威早灘坡王杖簡冊の復原 以上の共同研究によって、私たちは以下のような新しい知見を得た。1)張家山出土<引書><脈書>には早くも、天・地の気の運動と人間の身体の気の運動とを同調させれば、長生が獲得できるという考えが説かれている。2)<引書><脈書>には、疾病の原因として、気の流れの不調が挙げられている。しかし、鬼による病因論は、これらの資料には見えない。3)馬王堆漢墓医書と同様に、張家山出土医書も、鍼による治療はまだ記述されていない。それらは灸による治療を記述しているに過ぎない。また、これらの資料には、十二経脈に関する祖型的記述は見えているが、しかし、それらはまだ五臓と関係づけられていない。
著者
小林 カオル
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

リファンピシンによる小腸P-糖タンパク(MDR1)の誘導には、核内受容体であるpregnane X receptor (PXR)が重要な役割を果たしており、小腸には他の臓器と比較してPXRが多く発現していることが知られている。しかし、小腸よりもPXRが高発現している肝臓ではMDR1の誘導は認められない。それに対し、MDR1と同様にPXRを介してリファンピシンにより誘導されるCYP3A4の場合、肝臓と小腸の両方で誘導が認められる。このようなMDR1のPXRを介した小腸特異的な誘導がどのようなメカニズムで起こっているのかは不明である。本研究では、リファンピシンによるMDR1の誘導がヒト大腸がん由来細胞のLS180で認められるのに対し、ヒト肝ガン由来細胞のHepG2細胞では認められないことを明らかにした。この二つの細胞株にはともにPXRが発現しておりリファンピシンによるCYP3A4の誘導は認められる。そこで、この二つの細胞株を比較することによりMDR1のPXRを介した小腸特異的な誘導メカニズムの解明について検討を行った。まず、MDR1遺伝子のレポータージーンアッセイを行うことにより、転写開始点より上流-7970/-7011の領域がLS180細胞におけるMDR1遺伝子のリファンピシンによる転写活性化に重要であることを明らかにした。さらに、cDNAサブトラクションによりLS180細胞には腸管に発現していて肝臓に発現していない転写因子epithelial-specific ets factor (ESE-3)が多く発現していることを明らかにした。また、HepG2細胞にESE-3を導入することにより、リファンピシンによるMDR1遺伝子の転写活性化が認められることが明らかとなった。ESE-3に対するsiRNAを用いてLS180細胞のESE-3をノックダウンしたところ、リファンピシンによるMDR1 mRNA誘導の低下が認められた。これらの結果より、LS180細胞において認められたリファンピシンによるMDR1の誘導には、PXRに加え、ESE-3が重要な役割を果たしていることが示唆された。さらに、ESE-3を発現しているLS180細胞を用いて、21種の化合物によるMDR1 mRNAの誘導とMDR1レポーター活性の上昇との関係を調べたところ、有意な正の相関が得られた。これらの結果より、LS180細胞はPXRとESE-3を共に発現しており、この細胞を用いたMDR1 mRNAの誘導とMDR1レポーター活性の上昇は、小腸特異的なP-糖タンパクの誘導を予測し得る可能性が強く示唆された。
著者
及川 佑介
出版者
東京女子体育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

李想白の活動は組織的関与と技術的関与に別けてみることが出来る。彼は大日本バスケットボール協会を1930年に設立し、その運営の中心を担い、李想白の組織的関与は多岐に及んでいた。彼の技術的関与は、自チームの指導のほか、『指導籠球の理論と実際』(1930)、協会の機関誌『籠球』などの執筆活動を通して技術や戦術の紹介を行っていた。李想白は先のことを見据えながら活動していたことがわかる。そして、彼の組織的関与と技術的関与により、当時の我が国の発展はなるべきしてなったと考えられる。しかし、競技的なバスケットボールが急速に広まった裏には、遊戯的なバスケットボールの姿が薄れて行ったことを忘れてはならない。
著者
田坂 恭嗣
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

養液栽培ジャガイモの根域環境と生育の関係を調査した結果、養液温度を下げることで塊茎を誘導できることが分かった。養液温度 27℃、23℃、17℃の3つの処理区で養液栽培を行ったところ、17℃処理株の生育は地上部、地下部とも劣っていたが、わずか2週間で地下部ストロンが伸びたうえ、茎の基部には異常な塊茎が誘導された。これらの結果は、根域の環境制御する方法で植物体の生育の調整や、塊茎形成を誘導できる可能性を示唆している。
著者
飯島 一誠 野津 寛大 庄野 朱美
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、その大半が40歳までに腎不全にいたるAlport症候群男性患者を対象として、アンチセンス核酸によるエクソンスキッピングを利用して、重症型変異を軽症型変異に修復することを目指す世界で初めての分子治療法開発の基礎となる研究である。アンチセンス核酸によりエクソンスキッピングを誘導できることを患者の培養細胞レベル及び患者と同じ変異を持つモデルマウスで確認することができ、今後、ヒトへの応用に発展させる予定である。
著者
志村 考功 渡部 平司 細井 卓治
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

急速加熱処理による液相エピタキシャル成長法により単結晶GeSn細線を非晶質基板上に形成し、それを用いた電界効果トランジスタとフォトダイオードを試作し、その特性を評価した。トランジスタ特性より求めた正孔の電界効果移動度はピーク値で423 cm2/Vsに達した。また、フォトダイオードについては光通信で用いられている波長1.55 μmの光に対して良好な光応答を確認することができた。
著者
カーン カレク 北島 道夫
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

子宮内膜症はエストロゲン(E2)依存性の慢性炎症性疾患である.内膜症には不明な点が多く,その病態をひとつの因子で一元的に説明することは困難である.私どもは過去3年間(H21-23),内膜症でのLPSとマクロファージ(Mφ)の役割について検討を重ねてきたが,内膜症の病態を説明する仮説として,生得免疫を司るLPSとTLR4を介した「bacterial contamination hypothesis」に至った.内膜症の月経血においては,非内膜症コントロールに比して有意に大腸菌(E. coli)のコンタミネーションが多く,内膜症の月経血あるいは腹水中ではエンドトキシン(LPS)濃度が有意に高いことが認められた(Fertil Steril 2010 ; 94 : 2860-3).また, TLR4を介した内膜症の増殖では, LPSとストレス蛋白であるHsp70との分子クロストークが存在することを見いだした(7^<th> FAOPS Congress,台北, 2011).また, LPSとE2が協働的にERおよびTLR4を介してマクロファージが惹起する局所炎症を誘導することを報告した(第55回日本生殖医学会,徳島市, 2010)
著者
石井 公成 森 博達 金 文京 瀬間 正之 奥野 光賢 師 茂樹 董 志翹 鄭 在永 崔 鈆植 馬 駿
出版者
駒澤大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、変格漢文について研究している日本・韓国・中国の専門家たちが参加し、メールの交換や毎年開催した国際研究集会を通じて研究を推進してきた。その結果、古代の日本と韓国における変格漢文の多様なあり方が明らかになり、『日本書紀』や聖徳太子の作とされる三経義疏には、これまで報告されていた用例よりはるかに多い変格漢文の用例が見られることが知られた。これは、『日本書紀』の各部分の著者たちや三経義疏の著者を判定するうえで、きわめて有益な発見である。さらに、新羅の変格漢文についても様々な発見をすることができ、日本への影響と日本への違いを明らかにすることができた。
著者
武部 貴則
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

われわれは、マウス細胞とヒト細胞とを特定条件下で培養を行うことにより、マウスmRNAがヒト細胞に受け渡されていることを見出した。本研究では、われわれが世界で初めて発見した異なる細胞種間の直接接触を介したmRNAの伝搬機構の解明を通じて、細胞の運命を転換するための全く新たな細胞操作技術を構築する。今後、遺伝子編集を伴わない安全かつ安定な細胞を創出できるばかりか、未解明な細胞間相互作用に関わるさまざまな生命現象、例えば、正常幹細胞とニッチ間相互作用、ガンと間質間の相互作用など 、近年着目されている多細胞間相互作用に関する研究を全く新たな視点から切り込むための基盤原理へと昇華する可能性がある。