著者
田中 利幸 池田 思朗 大関 真之
出版者
京都大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-06-28

医学班や天文班などと協力して,圧縮センシングを活用して,MRIや超長基線電波干渉計において少数の観測データから画像を再構成する方法を開発した.MR分光画像法(MRSI)によってマウスに注入されたブドウ糖の代謝の時空間ダイナミクスを非侵襲的に可視化した研究成果の事例では,注入されたブドウ糖が体内に広がり,腫瘍組織で嫌気的に代謝され乳酸が産生されていく様子を見ることができる.圧縮センシングを使わない撮像法では一枚の画像の観測にも数時間を要し,時空間ダイナミクスの計測は不可能であるが,提案手法では間引き観測により体内の生化学反応の時空間ダイナミクスを非侵襲的に可視化できることを示した.
著者
竹村 彰通 駒木 文保 清 智也
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

Vladimir VovkとGlenn Shafer によるゲーム論的確率論は以下の著書でその基礎が与えられた.Glenn Shafer and Vladimir Vovk. Probability and Finance:It's Only a Game! Wiley, New York, 2001そこでは,Skepticとよばれる賭をする人と,Realityとよばれる賭の結果を定める人の,二人のプレーヤーの間のゲームを設定することにより,ゲームの結果として確率が定まることが示されている.注目すべきは,測度論無しに,大数の強法則,中心極限定理,重複対数の法則,さらに数理ファイナンスにおける価格付けの諸公式,などが証明される点にある.竹村は,竹内啓,公文雅之との共同研究を通じて,ゲーム論的確率論に関する新たな結果を得ている.これらはtechnical reportとして発表されていたが,研究発表に示すように国際雑誌に刊行の段階となっている.また竹村はShafer氏およびVovk氏とも共同研究を進めており,以下の研究成果を得た."The game-theoretic martingales behind the zero-one laws", by Akimichi Takemura, Vladimir Vovk and Glenn Shafer. Techinical Report METR 08-18, March 2008.この研究では,測度論の諸仮定をおくことなく,コルモゴロフの0-1法則などの0-1法則の一般的な形をゲーム論的枠組で示している.
著者
能登 真規子
出版者
滋賀大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、現代の身元保証の実情を捉えるために、過去20年間の裁判例を分析し、わが国の企業に対する調査を実施した。調査によれば、現在も74.8%の企業が身元保証制度を採用していた。他方で、身元保証の意味合い、用いられ方には、裁判例の分析からも調査結果からも、多様性が確認された。身元保証法(1933年制定)による身元保証人の責任限度の規律は独特で、その責任の有無と責任額を裁判所の裁量に委ねているが、このしくみは関係者を安心させるに至っておらず、改新の必要がある。
著者
佐藤 潤也 松本 裕行 松原 洋 吉信 康夫 松本 耕二 谷川 好男
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

(1)形式群に付随するBernoulli多項式に対してdistribution relationを与えることが出来た.(2)自然数kを固定したとき,1,2,・・・,kに対するk乗剰余が全て異なるような素イデアルの存在を考えることは,符号理論への応用の観点から重要であることが知られている.本来,この問題は,初等整数論で述べられた有理素数に関する問題であったが,べき剰余記号を用いて言い換えることにより,問題の本質が浮き彫りとなり,有理数体のアーベル拡大における素イデアルの問題に帰着され,本研究において,部分的な解決がなされた.すなわち,k【less than or equal】7に対して,(I)上記の素イデアルは存在する.さらに,(II)正の密度が存在し,クロネッカー式密度を計算することができる.以上から,条件を満たす素イデアルが無限に多く存在することが分かった.証明には,類体論とチェボタレフの密度定理を用いる.また,k=3の場合には,イデアル群として特徴づけられることを示した.k【less than or equal】7と言う条件は,本質的な条件ではなく,kを具体的に一つ与えれば,同様の結果を導くことができる.(3)符号理論における未解決問題の一つ:『法3pの乗法群において,位数p-1をもち,(p-1)/2乗が-1と合同であるが,2を生成しない整数が存在するか?』が,本質的に平方剰余記号の第2補充法則と同値であることを証明し,肯定的に解決した.
著者
菅野 仁
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

先天性溶血性貧血(CHA)の病型診断は治療法の選択に重要である。本研究では原因不明のCHA50例の全エクソーム解析を実施し、新規病因遺伝子としてATP11Cを同定した。ATP11Cの単一塩基アミノ酸置換は赤血球膜脂質二重層を介したホスファチジルセリン(PS)の能動輸送障害を引き起こし、赤血球表面に露出したPSが貪食目印分子となり、血管外溶血の原因となる。脱水型遺伝性有口赤血球症(DHSt)の二例にPIEZO1遺伝子変異を同定した。DHStは術後重症血栓症を併発することから脾摘術が禁忌である。今後、PIEZO1異常症の遺伝子検査により、CHA症例の脾摘術適応を確実に診断することが可能になった。
著者
伊藤 敞敏
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

Lactobacillus acidophilusグループ乳酸菌は、ヒト腸管の中から見出される乳酸桿菌の中の主要なものであり、プロバイオティク系の乳酸菌として、発酵乳の製造に使用されることが多くなってきている。しかしこの菌は一般的に牛乳中での生育が緩慢であるため、発酵に長時間を要する。そこでその原因解明と対策法の構築を目的として研究を行った。ヒト腸管由来のアシドフィルスグループ菌株の中から、L.acidophilus6株およびL.gasseri4株を用いて牛乳中での生育性を比較した。乳中での生育性と菌体外プロテアーゼの発現を追跡したところ、菌体外に作り出すプロテアーゼの活性の高い菌が乳中での生育性の良いことことが認められた。牛乳中では低分子窒素化合物が不足しているため、L.acidophilusは自らのプロテアーゼによって乳タンパク質を分解することが必要であり、このようなプロテアーゼ活性の強い菌株が牛乳中での生育も良好であるものと考えられた。そこで低分子窒素化合物として、カゼインを食品添加物グレードのタンパク分解酵素である、プロテアーゼP,プロテアーゼNおよびデビトラーゼの3種のプロテアーゼで分解し、牛乳に添加した結果、いずれの分解物も有効であったが、特にプロテアーゼPによる分解物を牛乳に添加することによって、アシドフィルス菌の生育を大幅に向上させることが出来た。このことから、牛乳に少量の低分子窒素化合物を追加することによって、プロバイオティクとしてのアシドフィルスを含む発酵乳の製造時間を短縮することができることが示された。一方、ヨーグルト製造の主要菌であるStreptococcus thermophilusとL.acidophilusを混合して培養することによって、菌株によってはL.acidophilusの生育が促進されるもののあることを見出した。そこで山羊乳及び牛乳の両方についてL.acidophillus5菌株とS.thermophilus1菌株について各個に混合培養を行ったところ、特に生育の促進される組み合わせのあることを見出した。この両菌株は相互に補い合って生育を助長し合っていることが考えられ、このような組み合わせによって、発酵乳製造を容易にすることが可能となった。
著者
土田 真二
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度は、調査船「かいれい」によるマリアナ海溝の調査航海(平成29年5月5日-25日)に参加し、マリアナ海溝における魚類の生息限界に関する情報を得るため、ミニランダー(自己浮上式カメラシステム)を投入し、データの取得を行った。ミニランダーの投入は、計3回実施した。1回目および、2回目は、ミニランダーに搭載したトランスポンダによる音響測位の結果から、それぞれ水深8146mおよび7498mに設置されたことを確認した。3回目は、SeaBird社製CTDプロファイラー(SBE-19)の圧力センサーにより計測し、8178mに設置されたことを確認した。1回目は、連続撮影続として6時間24分19秒に渡る海底の映像を記録した。ヨコエビ類などを確認することはできたが、魚類は確認できなかった。2回目は、インターバル撮影とし、3時間毎に59分54秒の映像を記録した。8シーケンス、21時間59分54秒に渡る撮影に成功した。ヨコエビ類やアミ類とともに、マリアナスネイルフィッシュがランダー着底後の3時間39分に出現し始め、撮影終了まで多数確認された。最大、1フレームに6個体確認でき、餌となるマサバに螺集したヨコエビ類を捕食する行動も記録された。3回目もインターバル撮影とし、3時間毎に52分54秒の映像を記録した。12シーケンス、33時間52分54秒に渡る撮影に成功した。ランダーが着底すると、ヨコエビ類がすぐに餌のマサバに螺集し、周辺を遊泳するアミ類も記録された。ランダー着底後、17時間36分53秒に、マリアナスネイルフィッシュの映像を捉えることに成功した。その後最終シーケンスまで出現したが、すべて1フレームに最大1個体しか確認できず、外見から判断できる肝臓の形態から、同一個体であると判断した。これにより、圧力センサーによって深度計測された魚類の最深記録となった。
著者
小山 隆太
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2016-06-30

神経発達障害を含む脳疾患の非侵襲的な治療法として、運動の有効性が注目されている。しかしながら、運動を行動に反映する分子細胞生物学的メカニズムの解明は後手を踏んでいる。そこで、我々は、母体免疫活性化(MIA)によって子に生じるMIA関連性行動異常に運動が有効な可能性と、その分子細胞生物学的メカニズムを明らかにすることを目的とした研究を行った。ウィルス感染を模倣したMIAを誘導するため、妊娠マウスにpoly(I:C)を投与した。その結果、このマウスより産まれた仔では、社会性の低下や常同行動の顕在化、そして不安行動の増加などのMIA関連性行動異常が成体期に顕れた。そして、これらのMIA関連性行動異常は、飼育箱に車輪を入れ、自発的に30日間運動をさせることによって抑制された。本研究では、歯状回顆粒細胞層の軸索である苔状線維の興奮性シナプスに着目した。その結果、MIA群では、発達期におけるシナプス除去が阻害される結果、成体期においてコントロール群よりもシナプス数が上昇していた。さらに、このシナプス数の上昇は運動によってコントロールレベルにまで低下することも明らかになり、運動による積極的なシナプス除去機構が働く可能性が示唆された。そこで、貪食によってシナプス除去を行うマイクログリアの動態に着目した。まず、発達期において、MIA群の海馬CA3野では、マイクログリアによるシナプス貪食がコントロール群より低下していた。さらに、成体期においてもMIA群のシナプス貪食は低下していたが、運動を行うことにより、シナプス貪食はコントロールレベルにまで回復した。なお、運動による効果はマイクログリア活性化を抑制するミノサイクリンの投与で阻害された。以上の結果は、成体期の運動による神経回路再編成に、マイクログリアが関与する新規メカニズムを提唱するものである。
著者
神戸 悠輝 宮田 篤郎 栗原 崇
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

うつ病患者の3割は既存の抗うつ薬に耐性を示す難治性うつ病である事から,異なる作用点を持つ薬剤の創出は急務である.ミトコンドリア変性タンパク質ストレスレスポンス (UPRmt) はミトコンドリア内におけるタンパク質の品質管理システムであり,アルツハイマー病やパーキンソン病への関与が報告されているが,うつ病にUPRmtが関与するか否かについてこれまで検討されていなかった.申請者は,うつ病モデルマウスの脳においてUPRmtマーカータンパク質の発現が増強するとともに,UPRmtには抗うつ,抗不安作用がある可能性を明らかにした.すなわち,UPRmtは有用なうつ病治療薬ターゲットとなりうる可能性がある.
著者
野口 侑記
出版者
兵庫医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

Bispecific T-cell Engager(BiTE)を用いた新しい評価系で腫瘍内微小環境を模式的に再現し、それを用いて約1300種類の既存薬からリンパ球賦活効果のある薬剤のスクリーニングを行ったところ、テトラサイクリン系抗菌薬デメクロサイクリン(DMC)が検出された。DMCはリンパ球の分裂を促す量的効果と、抗腫瘍効果を示すサイトカインの産生を増強する質的効果を共に持っていた。さらにマウスモデルでin vivoでの効果も検証したところ、PD-L1阻害薬にDMCに追加したグループで有意に腫瘍増大が抑制されることが示され、末梢血中に腫瘍特異的リンパ球の割合も有意に上昇していた。
著者
近藤 康生 延原 尊美 松原 尚志 佐々木 猛智 栗原 行人 中尾 賢一 菊池 直樹
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

日本沿岸海域に分布する軟体動物の現生種(トリガイ, タマキガイ, ダンベイキサゴ, キサゴ)およびそれらの祖先種4系統のペアについて比較した結果,子孫である現生種の化石記録は,(1)更新世ジェラシアンからカラブリアンにかけての寒冷化期に,(2)分布域北縁付近に現れる;(3)子孫種は温帯性であるのに対して,祖先種は亜熱帯性であり,(4)祖先種に比べて大型である;(5)子孫種は祖先種に比べて沿岸寄りに分布する,という傾向が明らかとなった。これらは,現在,日本列島南岸に分布する貝類の一部がこの気候寒冷化期に分布域北縁付近の沿岸域で種分化したことを示唆する。
著者
松浦 勝久
出版者
東京女子医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

成体マウス心臓より単離したSca-1陽性心筋前駆細胞を用いて細胞シートを作成し、心筋梗塞マウス心臓へ移植したところ、心臓機能の経時的な回復が観察された。Sca-1陽性細胞は可溶性VCAM-1を発現し、可溶性VCAM-1はその受容体であるVLA-4を介して血管新生、心筋保護、Sca-1陽性自身の遊走・生着を促進し、細胞シート移植のよる心臓機能回復を調節していることが明らかとなった。
著者
吉川 泰司 今西 悠基子 福嶌 五月 秦 広樹
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

骨格筋芽細胞シートおよびiPS細胞由来心筋細胞シートの臨床応用可能な凍結保存方法に関して探索を行った。その結果、ガラス化凍結された骨格筋芽細胞シートは保存後もシートの形態や機能の維持していた。また、心筋梗塞ヌードラットに保存後の細胞シートを移植した後に心機能改善効果が認められた。また、iPS細胞由来心筋細胞を凍結保存後にも心筋細胞純度は凍結前とほぼ同じ結果を再現でき、同期拍動する心筋細胞シートを作成できた。さらに心筋梗塞ヌードラットに移植し、凍結心筋細胞を移植しても非凍結心筋細胞と同程度の有効性を有することを確認した。
著者
永田 真 三浦 典之 本間 尚文 林 優一 崎山 一男 Danger Jean-Luc
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

サイドチャネル攻撃への耐性を有し、高度に電磁波セキュリティを保証する暗号VLSI技術を確立した。具体的には、(1)暗号コア近傍に接近する電磁界マイクロプローブをオンチップで検知するサイドチャネル攻撃センサの回路技術、(2)暗号コア近傍における電磁界マイクロプローブとサイドチャネル攻撃センサの結合の電磁界シミュレーション及びセンサ回路の動作シミュレーション手法、(3)暗号コアから漏洩するサイドチャネル情報を用いて暗号コアを認証・真正性を確認する技術の開発に成功した。また、半導体集積回路の試作チップを用いたプロトタイプシステムを構築し、研究成果の効果を実証した。
著者
村上 哲明 林 蘇娟 大槻 涼 山本 薫
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

シダ植物には有性生殖を二次的にやめて、胞子を通して親と遺伝的に全く同一なクローンを生産する生殖様式(無配生殖)を獲得したものが少なからず存在する。しかし、シダの無配生殖種にも遺伝的な多様性が見られる。本研究では、無配生殖種であっても近縁な有性生殖種と交雑をする能力を高いレベルで(有性生殖種の約20%)維持していること、さらに遺伝的分離も数%程度起こして遺伝的に多様な子孫を生産していることを明らかにした。
著者
斉藤 まなぶ 足立 匡基 中村 和彦 大里 絢子 栗林 理人 高橋 芳雄 吉田 恵心 安田 小響
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

発達障害の有病率及び併存率の推定:平成26年4月から平成28年10月までに健診に参加した全5才児3804名(月齢平均:63カ月)を解析の対象とした。一次スクリーニングは2923名(76.8%)から回答を得た。二次検診の対象児は607名(20.8%)であった。最終的に希望者31名を含む440名が二次健診に参加した。ASDの診断については、さらに補助診断検査としてASD診断を受けた対象者に後日ADI-RまたはADOSを施行した。その結果、自閉症スペクトラム障害(ASD)が3.30%、注意欠如・多動性障害(ADHD)が4.95%、発達性協調運動障害(DCD)が5.54%、知的障害/境界知能(ID/BIF)が3.33%であった。また、ASDではADHD合併が60.0%、DCDの合併が61.1%、ID/BIFの合併が40.0%であった。疫学調査における使用尺度の妥当性の検討:AD/HD-RSの内的整合性(N Takayanagi, et al. 2016)、ASSQ短縮版の5歳児適用における妥当性(足立ら、2016)を検証した。リスク因子の検討:得られた疫学データからロジスティック回帰分析を行い、ASDのリスク因子は出生体重2500g未満と父親の高齢が有意な結果となった。バイオマーカーの検討:ASD群でIGF-1、VLDL-Cho、VLDL-TGに有意な性差があった。バイオマーカーとASD、ADHD症状との関連性はIGF-1が実行機能の問題、VLDL-Choが相互的対人関係の問題、VLDL-TGが社会性、想像力、対人関係の問題と負の相関があったGazefinderを用いた注視点検査では、5歳のASD児は興味のある映像への注視は長く、興味のない映像への注視は短いことが確認された。
著者
稲垣 朋子
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、離婚後の親権行使及び面会交流のあり方を、共同親権制度を視野に入れつつ再検討を行った。その際には、共同親権が認容されない(されるべきでない)単独親権の場合においては、子の福祉をいかなる方法で保障していくべきかという側面にも目を向けた。ドイツ法を比較対象としながら、共同親権制度下での親権行使及び面会交流の態様と、単独親権制度下でのそれらとの溝が何であるかを裁判例及び実態より明らかにし、日本における離婚後の共同親権のあり方を考察した。
著者
石井 晃
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

実験ですでにHeck反応、鈴木・宮浦カップリング反応などを起こすと報告されている硫化GaAs(001)基板にPdを吸着させた触媒について第一原理計算によってその構造と電子状態を明らかにした。その結果は実験と一致するものが多く、硫黄は基板とPd基板をより強く吸着させる役割と、Pd原子の原子価をゼロに近づける役割を果たしていることがわかった。同様の計算を、最近北海道大学薬学研究科のグループによって発見された硫化金基板上のPd触媒についても行い、Pdの原子価がやはりゼロ価に近いことと、硫黄がやはりPdと金基板との結合を強くする役割を担うことを確認した。同様の結果が、本研究と同時に行われた硫化GaN(0001)基板上のPdについても実験と我々の計算で報告されているので、この種の硫化基板上のPd触媒はある程度普遍的な性質を持っていることが示唆される。これが今後のさらなる研究で明らかにされていくことが望まれる。
著者
矢島 安朝 伊藤 太一 古谷 義隆 本間 慎也 佐々木 穂高 鈴木 憲久
出版者
東京歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

近年、インプラント治療患者の年齢層が高齢化により口腔癌の好発年齢に一致してきている。「field cancerization」という概念より、常に慢性炎症の環境下にあるインプラント周囲上皮は、発癌のリスクが高いと考えられる。この仮説をもとに我々は、4NQOを用いた自然発癌モデルラットを使用し、インプラント周囲口腔粘膜と癌の相関性について検討した。6ヶ月間の4NQO投与によってインプラント周囲上皮の発癌は認められなかったが、対象群と比較して、N/C比の増大や異型核分裂などの細胞異型が多く見られた。この結果から、インプラント周囲上皮は発癌リスクが高い可能性が示唆され、さらに長期的な観察によって明らかになると考えられた。
著者
中村 康則 青木 茂治
出版者
日本歯科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

口腔カンジダ症患者から分離したC.albicans K株の1×10^7〜4×10^7cellsを4週齢の雌雄SDラットに1回静脈接種することにより四肢に関節炎を発症せしめ、外観症状(腫脹,発赤,歩行異常)の経過を観察すると共に関節部骨の形態変化について検討した。1.経過観察:(1)発症率には性差はなく、接種菌量の増量にほぼ依存して発症頻度も高くなった。(2)発症の時期は菌接種後2〜4週に集中したが、2ケ月以降に遅発する例や再発例もあった。(3)発症部位は諸々の関節に及ぶが、中でも足根部,膝,助骨,肘の頻度が高かった。また、一個体で複数部位に発症する例が約4割あり、接種菌量が増量すると発症部位の総数も増加した。(4)外観症状の回復には平均2週間位を要したが、数日間の軽症例や長期間持続するものもいた。 2.骨形態変化:(1)関節炎部位の軟X線写真からは骨の膨隆,骨吸収斑の他、関節面の凹凸もみられた。骨吸収斑は未発症の骨にも同様にみられた。(2)それら部位のCMR写真からは軟X線所見を裏付ける骨造生像や骨吸収窩像の他、皮貭骨の菲薄化、骨梁の減少も観察された。この造生骨の形成過程を踵骨の例でみると、外観症状の出現から4日位で針状の未熟骨が部分形成され、その数日後には桿状骨となり骨辺縁を取巻いていた。この間に投与した硬組織時刻描記剤テトラサイクリンの骨蛍光分布は造生骨が顕著であり、石灰化が活発であることが示された。そして、この骨変化は外観症状が顕著なもの程、高度でかつ永続した。(3)病理組織標本からは旺盛な骨芽細胞が造骨している一方で、破骨細胞の出現による骨吸収窩像がみられたが、これらの所見は関節周囲の強裂な炎症に起因すると思われた。以上の成績から、本真菌によるラット関節炎は多発性であること、遅発や再発も起こること、骨に対しては新生骨の造生と骨吸収斑の変化が主であり、これらの骨病変は自然治癒しにくいことが示唆された。