著者
天野 恵美子
出版者
秋田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

海外市場において広く受け入れられ、各国固有の食文化との相互作用の中で独自の変容を遂げてきた日本食の「普及と現地食文化との融合過程」を明らかにするため、1980年代から北米および中国市場で事業を行ってきた複数の食品企業のマーケティングについて文献調査および現地ヒアリング調査を行った。市場参入に際して、現地市場(生活習慣や商慣習等)に精通している事業者と共同でマ十ケティング活動を行い、製品開発・販売段階においては現地の食嗜好や食習慣を調査し、現地消費者に受容されるよう適応化(マーケティング戦略の変更・修正)努力を行っていた。また市場開拓・普及期においては、「異文化・外来食」として知られていない食品そのものの認知度を高める地道なプロモーション活動や調理方法などについての啓蒙活動など、新規市場参入ゆえに必要となるマーケティング努力もあった。注目すべきは、食品企業が市場拡大を見据えて、「外来食」に対して先入観のない子ども世代の味覚形成にはたらきかけ、「次世代の顧客獲得」を目指すマーケティング活動を積極的に展開してきたことであり、日本食を提供する従来型の飲食店だけではなく、海外出店を加速させてきたコンビニエンスストア(CVS)が、日本の食(おにぎり、弁当、寿司、おでん等)を紹介する有力なチャネルとして現地に定着し、日本食普及の1大拠点となってきているということである。こうしたマーケティング手法やCVSの動向については、今後も継続的に検証・分析していく必要がある。以上、文化伝播・交流経路としての食品企業のマーケティング研究を通じて、食の異文化接触と受容、普及にともなって生ずる現地食文化との融合、現地食文化の変容という国際化時代の食の今日的位相を検証した。
著者
高橋 恵子
出版者
聖心女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

目的:親しい人間関係の発達を理解する代表的な理論である「愛着理論」と「ソーシャル・ネットワーク理論」を理論的・実証的に吟味した上で,両者を統合する理論として筆者が構築してきた「愛情の関係モデル」を提案し,妥当性を実証的に検討することをねらいとしたものである。研究の内容:ステップ1は2理論の基本的な相違を明らかにした上で,先行研究を概観し,人間関係は愛着をその一部として含むソーシャル・ネットワークとして捉えることが有効であるという立場から,筆者の「愛情の関係モデル」を提案した。「愛情の関係モデル」は,個人が持つ複数の重要な他者からなる親しい関係の性質を正確に記述し,さらに,個々人の複雑な関係のネットワークを類型化して個別の特徴をとらえて見ようというものである。ステップ2では「愛着理論」の測定具(Strange Situation Procedure,Doll Play,Attachment Interview,Attachment style)をわが国で使用する場合の問題を検討し,「愛情の関係モデル」の測定具(愛情の関係スケール,ARSと絵画愛情の関係検査,PART)を提案した。ステップ3では幼児から高齢者までの研究協力者から得た実証的な資料について4つの研究をした。最後に,愛着の機能を認めたうえで,それをソーシャル・ネットワークの中に位置づけることの大切さ,しかも,ソーシャル・ネットワークの個人差を記述することを可能にした「愛情の関係モデル」の重要さ,について論じた。
著者
中川 淳司 福永 有夏 ORTINO Federico LENG Lim Chin LALLAS Peter FELICIANO Florentino MAGRAW Daniel PLAGAKIS Sofia
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、近年利用件数が急増しているWTO(世界貿易機関)の紛争解決手続および投資紛争の仲裁による解決手続における透明性の確保をめぐる理論的問題点を整理するとともに、実務上の課題となっている透明性確保・向上のための諸方策の導入可能性について、内外の国際経済法研究者・市民団体の代表者が共同で検討し、これらの紛争解決手続における透明性の確保に関する将来の方向性を明らかにすることを目指すものである。平成20年度と平成21年度には、2度の国際研究集会(Society of International Economic Law設立大会(平成20年7月、ジュネーブ大学)、アジア国際法学会第2回研究大会(平成21年8月、東京大学))において「国際貿易紛争・国際投資紛争の解決における透明性」をテーマとするパネル・セッションを開催し、本研究のメンバー全員が各々の担当する研究テーマについて報告を行った。平成22年度は前年度および前々年度の研究成果を踏まえ、メンバー間でさらに意見交換を行ったうえで各メンバーが研究の最終成果を英文の論文として取りまとめる作業を行った。本報告書執筆時点でFlorentino Feliciano氏を除くすべてのメンバーおよびDaniel Magraw氏が主催する国際環境法センター(ワシントンDC)の研究員であるSofia Pragakis 氏から論文の原稿が提出されている。Feliciano氏の原稿提出を待って研究代表者とDaniel Magraw氏が共著でIntroductionを執筆し、Transparency in International Trade and Investment Dispute Settlementという表題の英文の編著として刊行する予定であり、現在ケンブリッジ大学出版会との間で刊行に関する交渉を進めている。研究成果の詳細は上記近著に盛り込まれたとおりであるが、以下で簡単にその概要を述べる。(1)WTO紛争解決手続および投資紛争仲裁手続における透明性とは、(i)紛争解決手続の公開、(ii)紛争解決に関連する文書(当事者の提出書面および解決結果(WTO小委員会報告及び上級委員会報告、投資紛争仲裁判断)の公開、の2点によって判断される。(2) これらの紛争解決手続における透明性は、国内裁判所や他の国際裁判(例えば国際司法裁判所)に比べると低いが、いわゆる国際商事仲裁よりは高い。この点は、(i)紛争の当事者の性格(前者はWTO加盟国同士、後者は投資受入国政府と外国投資家)、(ii)扱われる争点の性質(ともに貿易・投資に関する国家の規制の合法性が争われる一方、紛争の真の争点は私企業の利害に直接関連する事項であること)、(iii)紛争の最終解決に至る過程で紛争当事者の妥協による法廷外解決の可能性が排除されていないこと、などの特性にその根拠が求められる。(3)他方で、いずれの紛争においても国家の規制の合法性が争われ、その結果は当該国の経済社会生活に大きな影響を及ぼすことから、紛争当事国国民や市民団体の紛争に対する関心が高く、この点からこれらの紛争解決手続きの透明性を一層高めるよう求める要求が出てくる。(4)(2)で挙げた諸特性と(3)で指摘した要求を勘案し、両者の均衡点を求めることが必要であり、WTO紛争解決手続、投資紛争仲裁の各々について、扱われる争点の性質や当事者の特性の考慮(特に、投資紛争仲裁における外国投資家の営業秘密保持への配慮)を行いながら、透明性の一層の向上策を提案する。ただし、研究メンバーの中には、WTO紛争解決手続について、争点によってはむしろ輸入国の国内裁判所による解決(そこでは高度の透明性が保証されている)を優先させるべきであり、WTO紛争解決手続の透明性を高めることには消極的な見解を述べた者もいる。
著者
松浦 健二
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

WEB上のコミュニティ空間に、実世界での動作を伴う身体スキルの情報を蓄積し、それを活用する支援環境を設計および構築した。本研究を通じて、個人の身体スキルがコミュニティ空間を媒体として他者に伝播し、コミュニティに属する個人のスキル学習につながる様子が観測された。この中で、身体スキルを表現するには、各種のセンサを用いたメディア処理を適正に実装する必要があり、技術開発も実施した。
著者
玉野 和志
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

資本主義世界経済の転換の下で,各国の都市政策には,グローバル・シティ・リージョンズなどの議論にみられるように,国境を越えて結びつき,成長地域を形成していくことが求められている.本研究では,日本の都市と都市政策において,そのような動きがどの程度具体的に進んでいるかを検証した.検討の結果,1970年代以降そのような必要に駆られた欧米と比べると,日本においてそのような戦略が求められるのは90年代後半以降の比較的最近のことであって,そのためかそのような成長戦略の必要性がまだ十分には認識されていないことが明らかになった.この点は現在の日本経済を考える上でも,興味深い点であり,さらなる検討が求められる.
著者
与謝野 有紀
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.24, pp.191-205, 1996-03

本研究の目的は、郵送調査の回収率をめぐるいくつかの問題に実証的な検討を加えることである。第一は、郵送調査において回収率を上昇させるといわれるテクニックの検討であり、ここでは特に、「返信用封筒への切手の貼付」および「督促ハガキの送付」の効果について検討した。第二は、調査票回収にみられるパターンの同定であり、大きく特徴の異なる二地域(都市一農村)における、回収パターンの類似性の有無を問題にした。第一の点に関しては、「切手貼付」が欧米の研究で示されている効果を持たないこと、その一方、督促ハガキ送付の効果が大きいことを示した。後者に関しては、特徴の異なる二地域においても、回収のハザード率には同型のパターンがあり、回収率の差はこのパターンの単純な比例関係の反映であることを明らかにした。ハザードおよびハザード問の関係の同定には、イベントヒストリー分析を援用した。
著者
黒川 雅幸 三島 浩路 吉田 俊和
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.32-39, 2008
被引用文献数
1

本研究の主な目的は,小学校高学年児童を対象に,異性への寛容性尺度を作成することであった。小学生を対象とするので,できる限り少ない項目数で実施できるように,6項目からなる尺度を作成した。休み時間や昼休みによく一緒に過ごす仲間の人数を性別ごとに回答してもらったところ,同性の仲間が1人以上いて,異性の仲間も1人以上いる児童の方が,同性の仲間が1人以上いて,異性の仲間がいない児童よりも,異性への寛容性尺度得点は有意に高く,妥当性が示された。また,異性への寛容性尺度得点には性差がないことも示された。同性の仲間が1人以上いて,異性の仲間も1人以上いる児童の方が,同性の仲間が1人以上いて,異性の仲間がいない児童よりも,級友適応得点は有意に高く,異性との仲間関係が級友適応に影響する可能性が示された。<br>
著者
船木 麻由 西垣 桂 齊藤 明紀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IA, インターネットアーキテクチャ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.460, pp.167-172, 2009-02-26

PC端末を並べた教室で全端末を常時稼働させると電力を無駄に消費する.逆に原則電源オフで使うときだけ利用者が電源を投入するという方式だとOS起動の待ち時間が生じ,利便性が低下する.そこで,端末室の利用状況に応じて自動的に端末の稼働台数を増減させるシステムを開発した.管理サーバは端末状態を監視し,起動済みの空き端末の台数が指定数を保つように,余分な空き端末を停止したり,不足分の端末を起動したりする.端末室の講義使用時や昼休みなど利用者が多く来室することがあらかじめ分かっている場合には,その数分前に一時的に指定数を増やすことにより,過渡的な新規来室者増加にも対応できる.
著者
多田 學 天野 宏紀 神田 秀幸 金 博哲
出版者
島根医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

近年、本態性(老人性)痴呆症の発症や病態のメカニズムが明らかにされるにつれ、脳機能低下を予防させるために、より早期に精神機能の低下の兆候を特定することに注目が集まってきている。従来我が国において実施されてきた痴呆症対策は、痴呆がある程度のレベル以上に進行してしまっているため、改善が極めて困難な状態の痴呆症に対する医療・リハビリテーションによるケアであった。そこで、我々は島根県H町在住の初老期以降(50歳以上)の地域住民について、二段階方式診断法を用いた軽症痴呆症の評価法及び脳活性化対策の有効性を検討し、次のような結果が得られた。1)性・年代別かなひろいテスト得点では、女性において加齢による得点の低下が見られた。2)本研究では二段階方式診断法を用いて参加者58名のうち前痴呆8名、軽症痴呆4名であった。3)かなひろいテストの得点とMMSの得点との相関係数は0.6868で、正の相関が認められた。4)脳活性化対策実施後で60歳代男性を除いて全ての性・年代別で教室前のかなひろいテスト得点を上回った。5)脳活性化対策の継続実施は教室前の状態に比べ痴呆状態を改善しうることが明らかになった。特に、対策開始後2年間継続によって、かなひろいテスト平均得点の上昇がピークに達することが分かった。6)ライフスタイル調査では、重点対策前と対策開始1年後で参加者の日常生活に、ADLや対外的な行動に大きな割合の変化は無かった。7)参加者の痴呆に関する意識では、対策開始後1年でアンケートに14名全てが「自分は痴呆にならないと思う」と回答した。
著者
河崎 哲嗣
出版者
京都府立嵯峨野高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

現在,青少年の「理数・科学技術離れ」が巌然と存在し,青少年の学力低下や理数系進学者数の減少も深刻な社会問題になっている。日本の数学教育研究においては,後期中等教育及び高等教育分野での研究が盛んでないこともあり,高等学校と大学との連携や科学・技術分野との融合を意識した研究はほとんどなされていない。このような現状認識に鑑み本研究は,理系分野への進学を目指した中学・高校生を対象にし,大学との連携も意識した新しい高等学校(中等教育学校)数学単元の開発を将来の最終課題としている。今回の取り組みでは,大学・企業団体を中心にして催されているソーラーボートコンテストへの出艇を目指し,中学・高校生の科学・技術への興味・関心を高める活動に焦点を充てた。2007年5月26日東京大学工学部キャビテーションタンク棟にて,流体力学の考えとソーラーボート製作のノウハウを享受された。また,8月25日には第11回クルーレスソーラーボート大会先端技術部門に参加し,船体の模擬実験として工夫を試みた。新たな船体製作は,京都教育大学木工室を拠点とし現在も改良工夫中である。また,京都教育大学安東茂樹教授から中学・高校レベルにおけるボート製作資料及び指導を受け,今後も生徒自身が制作でアイデアを加味できるように改良を続けていく。次に,数学からのアプローチとして,位置や距離の把握を地球規模で捉える内容を扱ったテキストや船体構造に向けての空間把握の簡単な認識調査を行った。前半のテキストについては,京都府立嵯峨野高等学校第1学年自然科学系統20名対象に「シンガポール〜学校までの距離測定」として冬休みの課題とした。また後半の認識調査の結果は,数学Iの空間図形への応用の中で行い2面角の理解が育成されていない問題点が明確になった。これらの内容は,http://www2.hamajima.co.jp/~mathenet/wiki/index.php?NetaTaneMenuでも公開しており,また12月7日キャンパスプラザ京都において,京都高大連携研究協議会主催の第2分科会「高大数学教育の接続の可能性を具体的実践から探る」,続いて3月24日近畿大学理工学部において数学教育学会春季年会Organized Session Bの両会で一部発表を行った。さて先進技術であるGPS機能を取り入れたマイコン制御を駆使したプログラミング教材は,京都教育大学附属高等学校山田公成氏から援助を受け模擬実験を重ね概ね完成している。京都教育大学附属高校の情報の授業の中で基礎実験として取り入れる方向として発展拡大していく。今後生徒の数学への興味・関心を高め,数学の学習内容の理解の増進を図ることを基本としつつも,大学数学(工学系及び技術)を意識した教材を提供し,更に広めたいと考える。従って今回は1年で区切りをつける研究ではあったが,次年度以降も研究開発を続け成果報告を行う計画である。
著者
ヨーナス・シューベルグ 荒木 健治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.35, pp.91-95, 2007-03-29
被引用文献数
1

我々は日本語の謎掛けを自動的に生成するシステムを提案する。本システムは謎掛けスタイルの駄酒落を生成するが、使用する辞書によって、生成される結果は様々でおる。謎掛けのためのヒントを生成するための情報源として Web を用いた。生成された謎掛けの一部を人手による評価を行った。システムが生成した謎掛けは人間が作成したものより評価が低かったが、下品な言葉の辞書を用いた場合の方が、普通の言葉の辞書を用いた場合よりも評価が高いという結果が得られた。生成された謎掛けの約30%は、文法的な誤りや、その他の要因のため意味を理解できないものであった。We present a system for generating wordplay jokes in Japanese, which generates riddle style puns. By using different lexicons, different results can be achieved. Web searches are used to generate hints for the riddles. A subset of the generated riddles is evaluated manually. Using a naughty word lexicon gave funnier riddles than using normal words, though computer generated riddles in general were less funny than human generated riddles. Many computer generated riddles contain broken grammar or in other ways fail to make sense.
著者
仲村 洋子 羽生 京子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.37-51, 2003-03-31

和服着装時における着崩れについて究明したのが本研究である。和服は、洋服と異なり着付けることによって形づくるものである。和服を着た時でも、日常の立ち居ふるまいとまったく異なるわけではないので、当然動きに伴った変化が起きる。つまり着崩れが生じる。この着崩れの要因の一つとして、着物のサイズと体格・体型との不一致があると想定し探ることを目的とした。従来より平面構成学演習の授業において、身体の各部を採寸し割り出し法によって算出した寸法を用いて縫製した試着衣と、一年次にほぼ標準寸法で縫製したゆかたを着装して比較実験を行ってきた。今回は、着装後に階段の昇降といった一定の動作を加えて、着装直後と動作後に撮影した写真による観察と、被験者自身の着心地といった感覚面から着崩れの状態を把握することを試みた。被験者をJIS規格を参考にして、S、MおよびL・LLサイズの3グループに分けて、被験者である学生自身の報告を参考にしながら比較検討した。結果として、S・Mサイズについては、ゆかた、試着衣いずれも問題とするほどの目立った着崩れは認められない。その若干の変化は、階段の昇降といった下半身の動きによって生じた現象であるにもかかわらず、裾の部分が広がることだけでなく上半身の衿の交差の形状にも見られる。違いが顕著に現れたのはLLサイズである。標準寸法のゆかたは、着装条件そのものを満たすことも困難であり着崩れを論ずる以前の問題となった。一方、試着衣については着装状態もほぼ満足できるとともに、着崩れについてもS・Mサイズと同程度になった。今回の着装実験によって、LLサイズといった極端な例ではあるが、予測通り、着崩れは体格・体型といった身体に合わせたものがより少ない事を確認した。
著者
宇都宮 京子 稲木 哲郎 竹内 郁郎
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

3年間の研究期間のうち、1年間は、「呪術」という概念の意味を確認するために、それぞれの研究者が分担して、購入した民俗学、宗教学、社会心理学、哲学の領域の書籍を検討し、また、必要に応じて地方にも情報集めに行った。2年目は、1年目で得た情報に基づいて調査を行った。3年目は、それらの結果を整理しつつ分析を行い、総合的見解と今後の課題とをまとめた。2年目の調査においては、1)宗教的伝統に基づいた行為、儀礼、儀式、2)民俗学などの著書に記されている言い伝え等、3)真偽が疑われつつもマスコミなどで時々取り上げられる超常現象、4)いわゆる慣習に基づいた諸行為、5)意志決定に際して、示唆を得るための呪術的行為などの様々な項目について、学歴や職種や地域によって見解の相違が見られるかどうかを調らべることにし、その対象地域は杉並区と荒川区とした。そして、調査結果の単純集計をとり、さらに、呪術的要素と説明変数(地域性・性別・年齢層・学歴・職種・危機体験の有無・科学観など)とのクロス集計をとった。以上のような調査結果の検討を通して、人々の生活の中には、現在も伝統、慣習、宗教などさまざまな要因と結びついて、非合理的と思われる要素が多様なかたちをとって深く染み込んでいるということがわかった。そして、科学的に説明されていなくても、社会的に通用している呪術的要素は多々あり、生活の中における「合理性」の意味をあらためて問う必要性を感じた。同時に、今回の調査を通して、初めは外すつもりであった地域に根ざす文化的要素が意外と重要な意味をもっていることに気づいた。今回は、杉並区と荒川区という東京都の2区でしか調査をおこなえなかったため、地域差についての一般的な結論を出すことはできなかったが、今後、より広い地域で調査をおこない、地域にもとづく文化的要素と呪術的要素との関係の考察を進めていきたいと考えている。
著者
河〓 豊
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.436-432, 2004-12-20
著者
境田 英昭 小久保 秀之 山本 幹男 平澤 雅彦 河野 貴美子 町 好雄
出版者
国際生命情報科学会
雑誌
Journal of International Society of Life Information Science (ISSN:13419226)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.276-282, 2000-03-01

気功は、中国の心身鍛練方法の一種と言われている。その気功練習者の身体からある周期に変調された放射赤外線が検出されたという報告がある。さらに、その周期は呼吸周期と一致するという報告もある。著者らは、放射赤外線を検出する装置を自作し実験を行った。この放射赤外線検出装置においても放射赤外線に呼吸周期と一致する周期が測定された。また、放射赤外線は皮膚表面温度と深く関係しているので、皮膚に直接温度センサを付けた実験も行われた。このセンサにおいても呼吸周期と一致する周期が測定された。また、他の分野で、皮膚表面温度から呼吸数を推定する研究報告がある。本研究によって、気功時における放射赤外線の変調は、呼吸の変化が皮膚表面温度の変化として表れたことに起因すると示唆された。
著者
久保 啓太郎 金久 博昭
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

(研究1)長距離選手および短距離選手における筋腱の力学的特性と跳躍能の比較 陸上長距離選手15名、陸上短距離選手15名を対象にして、下肢筋群(膝伸筋群、足底屈筋群)の筋厚、等尺性最大筋力、筋活動水準およびtwitch特性、腱の力学的特性、跳躍能(SJ,CMJ,DJ,連続ジャンプなど)を測定した。筋厚、最大筋力、活動水準は、長距離選手群が短距離選手群よりも有意に低い値を示した。電気刺激中の最大張力までの到達時間(筋の収縮速度を示す)は、速筋線維を多く有すると思われる短距離選手は短く、逆に遅筋線維を多く有すると思われる長距離選手は長かった。腱の力学的特性については、膝伸筋群において短距離選手が伸びやす<、足底屈筋群において長距離選手が伸びにくい傾向を示した。跳躍能についてはいずれにおいても長距離選手が短距離選手よりも有意に低い値を示した。現在は、上記の結果をもとにして投稿論文を作成中である。(研究2)陸上長距離選手における筋腱の力学的特性と跳躍能のシーズン毎の変化 陸上競技長距離選手15名(箱根駅伝常連校のメンバー)を対象にして、休養期(2月)、トラック(スピード)練習期(5月)、鍛錬期(9月)の3回にわたり、下肢筋群(膝伸筋群、足底屈筋群)の筋厚、等尺性最大筋力、筋活動水準およびtwitch特性、腱の力学的特性、跳躍能(SJ,CMJ,DJ,連続ジャンプなど)、規定速度における走行中の酸素摂取量を測定した。最大筋力、活動水準、跳躍能には、有意な変化は観察されなかったが、9月における走行中の酸素摂取量が低<なる傾向を示した。その他の項目については、現在分析をすすめている。