著者
玉置 尚司
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.163-168, 2008 (Released:2009-10-15)
参考文献数
22

ムンプスはパラミクソウィルス科に属するムンプスウィルスによって引き起こされる小児に好発する全身性急性感染症である。唾液腺の両側性の疼痛, 腫脹が主症状で, 小児では軽症に経過する疾患であるが, 年齢が高くなるほど症状が強く出やすい。中枢神経に親和性のあるウィルスで, 無菌性髄膜炎を伴いやすいが, 脳炎に陥り後遺症を残すような例は稀である。数パーセントの割合で一過性の難聴を来すといわれている。しかし, 重要なのは片側性の非可逆性の高度感音性難聴を残すことで, 従来考えられていたよりその頻度は高く, 3,500例に1例の割合で起こると推計されている。本来ワクチンで予防可能な疾患であるが, わが国では1990年前後にMMRワクチンの副反応による無菌性髄膜炎が頻発したという不幸な歴史があるため, ムンプスワクチンの接種率は低くその流行を阻止できていない。今後, より積極的な接種による集団免疫率の向上が望まれる。
著者
村津 裕嗣 水野 耕作
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.91-94, 1989-11-01 (Released:2012-11-20)
参考文献数
7

We have experienced two cases of entrapmentneuropathy of the suprascapular nerve in three accessory nerve palsy.CASES. Three patients were refered to our clinic because of a dropped shouldor, inability to abduct the shoulder, and wasting of the upper trapezius. Among those, two cases showed moderate to severe pain in the shoulder region which was inproportionally strong as part of the symptoms of accessory nerve palsy.Case 1: A 28-year-old woman had a biopsy of the neck which was followed by increasing pain in the shoulder region. Five menths after the biopsy, an abduction support was employed to prevent dropping of the shoulder girdle. The symptoms gradually alleviated within five months after the abduction support had been applied.Case 2: A biopsy in the neck of a 23-year-old woman was followed by severe pain in the shoulder region. Five months after the biopsy, an accessory nerve was sutured, and the suprascapular transverse ligament was excised to decompress the suprascapular nerve. Five days after the operation, the pain in the shoulder was decreased dramatically.Discussion: On the basis of our experiences, entrapment neuropathy of the suprascapular nerve occurs at the scapular notch, having been presumably caused by insufficiency of the upper trapezius due to accessory nerve palsy. We conclude that this is one of the pathogenesis of the unexplained pain in the shoulder region caused by accessory nerve palsy.
著者
久保田 明子 青木 睦 高岩 義信 飯田 香穂里 兵藤 友博 小沼 通二 後藤 基行 清原 和之 菊谷 英司
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2017-06-30

日本学術会議所蔵の歴史的資料について、(A)資料を用いた研究(日本の学術体制史研究)と(B)アーカイブズ学にのっとった資料整備を行うことが研究の計画であるが、本研究は特に(A)と(B)を別々に行うのではなく、日本の科学史等当該分野の研究者とアーカイブズ学を専門とする研究者が互いの知見や成果を相互に活用しながら共同で実施する試みである。
著者
井之上 寿美 河野 芳美 河野 千佳 白木 恭子 塩田 睦記 雨宮 馨 中村 由紀子 杉浦 信子 小沢 愉理 北 洋輔 小沢 浩
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.356-358, 2022 (Released:2022-10-13)
参考文献数
10

神経発達症児の血清亜鉛値について健常児の参照値と比較検討した.血清亜鉛値を測定した学齢期の神経発達症児63名(男児49名,女児14名)を患者群とし,先行研究において年齢分布が一致する380名の健常児のデータを用いて解析を行った.その結果,患者群のうち19名(30%)が亜鉛欠乏症,また39名(62%)が潜在性亜鉛欠乏,亜鉛値正常は5名(8%)であり,血清亜鉛値は健常児の参照値と比較して有意に低値であった(p<0.001).患者群の診断内訳では,ADHD(36名,54%)と自閉スペクトラム症(22名,39%)の2疾患が大部分を占めたものの,血清亜鉛値は疾患間で有意な差はなく(p=0.32),性差も認められなかった(p=0.95).神経発達症児は亜鉛欠乏傾向にあると考えられ,疾患や性別による血清亜鉛値の明らかな違いはなかった.
著者
岡部 沙麗 元木 康介
出版者
日本消費者行動研究学会
雑誌
消費者行動研究 (ISSN:13469851)
巻号頁・発行日
pp.202410.005, (Released:2023-12-20)
参考文献数
44

近年、社会的・学術的に性的マイノリティに関する研究の重要性は増している。性的マイノリティとは、性的指向や性自認におけるマイノリティを指し、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィアなどが含まれる。消費者行動研究においても、多様性・公平性・包括性の観点から、性的マイノリティは注目を集めている。本稿は、性的マイノリティに関する近年の消費者行動研究を体系的にレビューすることで、最新研究動向と今後の方向性を示す。既存研究は、性的マイノリティ消費者に関する研究、性的マイノリティが登場するマーケティング刺激に関する研究に大別できる。前者の研究群では、異性愛者と比較した性的マイノリティ特有の消費者行動が扱われている。後者の研究群では、広告を主な題材として、異性愛と比較した同性愛イメージの影響を検討している。今後の研究展望として、多様な性的マイノリティ・異性愛消費者と性的マイノリティ消費者の相互作用・広告以外のマーケティング活動における性的マイノリティ・中長期的な影響等が挙げられる。
著者
伊東 祐郎
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.4-16, 2019-09-30 (Released:2019-09-30)
参考文献数
23

本稿は,日本の社会が外国人の受け入れに際して常に問題となる日本語教育についてこれまでにとってきた政策を概観し,日本語教育の捉え方,在り方等を考察するものである.最初に留学生の受け入れに関わる政策と日本語教育の発展に言及し,その後,入管法改正後に増加した生活者としての外国人に対する日本語教育の需要の拡大とその多様化を紹介する.グローバル化社会で求められる日本語とその教育は言語政策の視点からどのように位置づけられるべきか,また実現のためのビジョンはどのように描かれるべきかについて論じる.
著者
Takanori Ohata Nozomi Niimi Yasuyuki Shiraishi Fumiko Nakatsu Ichiro Umemura Takashi Kohno Yuji Nagatomo Makoto Takei Tomohiko Ono Munehisa Sakamoto Shintaro Nakano Keiichi Fukuda Shun Kohsaka Tsutomu Yoshikawa
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
pp.CJ-23-0356, (Released:2023-10-31)
参考文献数
43
被引用文献数
1

Background: Despite recommendations from clinical practice guidelines to initiate and titrate guideline-directed medical therapy (GDMT) during their hospitalization, patients with acute heart failure (AHF) are frequently undertreated. In this study we aimed to clarify GDMT implementation and titration rates, as well as the long-term outcomes, in hospitalized AHF patients.Methods and Results: Among 3,164 consecutive hospitalized AHF patients included in a Japanese multicenter registry, 1,400 (44.2%) with ejection fraction ≤40% were analyzed. We assessed GDMT dosage (β-blockers, renin-angiotensin inhibitors, and mineralocorticoid-receptor antagonists) at admission and discharge, examined the contributing factors for up-titration, and evaluated associations between drug initiation/up-titration and 1-year post-discharge all-cause death and rehospitalization for HF via propensity score matching. The mean age of the patients was 71.5 years and 30.7% were female. Overall, 1,051 patients (75.0%) were deemed eligible for GDMT, based on their baseline vital signs, renal function, and electrolyte values. At discharge, only 180 patients (17.1%) received GDMT agents up-titrated to >50% of the maximum titrated dose. Up-titration was associated with a lower risk of 1-year clinical outcomes (adjusted hazard ratio: 0.58, 95% confidence interval: 0.35–0.96). Younger age and higher body mass index were significant predictors of drug up-titration.Conclusions: Significant evidence-practice gaps in the use and dose of GDMT remain. Considering the associated favorable outcomes, further efforts to improve its implementation seem crucial.
著者
佐藤 佑太郎 太田 経介 松田 涼 濵田 恭子 髙松 泰行
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.76-83, 2023-06-20 (Released:2023-06-20)
参考文献数
46

【目的】進行性核上性麻痺患者の病棟内歩行の自立度と歩行機能,バランス機能,全般的な認知機能および前頭葉機能との関連性を検討し,抽出された項目のカットオフ値を算出することを目的とした。【方法】進行性核上性麻痺患者86名を対象とした。歩行機能,バランス機能,全般的な認知機能および前頭葉機能が病棟内歩行自立と関連するかを多重ロジスティック回帰分析で検討し,抽出された項目をreceiver operating characteristic curve(ROC)にてカットオフ値を算出した。【結果】歩行自立に対してバランス機能評価である,姿勢安定性テストとBerg Balance Scale(以下,BBS)が関連し(p<0.01),カットオフ値は姿勢安定性テストで2点,BBSで45点であった。【結論】進行性核上性麻痺患者における病棟内歩行自立可否には姿勢安定性テストやBBSの包括的なバランス機能が関連することが示唆された。
著者
柴 静子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第61回大会/2018年例会
巻号頁・発行日
pp.10, 2018 (Released:2018-09-07)

【研究の背景および目的と方法】本年3月末に公示された新高等学校学習指導要領では、「政治や経済,社会の変化との関係に着目した我が国の文化の特色、我が国の先人の取組や知恵、武道に関する内容の充実、和食、和服及び和室など、日本の伝統的な生活文化の継承・創造に関する内容を充実したこと」が改訂の眼目とされている。発表者が平成26年度に行った広島県と山口県の高等学校の家庭科教師を対象とした調査では、その時点で既に95%の教師が、「家庭基礎」や「家庭総合」において,「衣食住の文化や様式について授業をしたことがある」と答えていた。それらは,浴衣の着装やたたみ方・帯の結び方の実習、外部講師による着付け講習、刺し子のコースターやランチョンマットの製作、日本の伝統文化である着物や風呂敷についての解説、備後絣や柳井縞についての解説、着物解き布のはぎれを使用した小物製作などであった。これらは生徒の興味を喚起する実践であるが、上記の指導要領改訂の際に考慮された、「先人の取組と知恵を知り、社会的・歴史的視点から衣生活文化を継承・発展させる」という視角から見ると、再考の余地があるように思われる。全国を見廻すと、かつて生糸や絹織物の名産地であった埼玉県秩父市や群馬県伊勢崎市においては、総合的な学習として「銘仙」を取り上げている小・中学校がいくつかある。伊勢崎市立境北中学校においては、「伊勢崎銘仙によるふるさと学習」が中学2年生の衣服分野と絡めて実践されている。平成 26年度は、家庭科の授業で、伊勢崎銘仙について専門的知識を有する外部講師を招き講話をしてもらったこと、および数多くの銘仙を準備し、実際に着用してよさを実感させたこと、さらには他地域のものと比較ができるように、多様な伊勢崎銘仙を展示するといった環境づくりをしたこと、その結果、生徒は感動し、興味関心は高まった、という報告がなされている。このように「銘仙」に焦点を合わせて、衣生活の伝統と文化に関する学習が実践されていることは、この着物への国内外からの注目が高まっている今日、意義深いことと考える。銘仙は、大正期から昭和戦後期にかけて、長期にわたり大衆向け着物として衣生活を支配した、歴史的・社会的に見て特別な意味をもつ着物である。そのように考えると、銘仙についての学習は、特定の地域に限定されるものではなく、着物の文化に関する学習として広く全国の学校に普及させる価値があると思われる。そこで本研究においては、銘仙の実物収集と考察、国内外の関連文献の検討およびはぎれ布を使用した教材見本の製作を通して、銘仙に焦点を当てた衣生活の伝統・文化の学習の創造に向けての基礎的資料を提供することを目的とした。【結果】1.銘仙の五大産地として、伊勢崎、秩父、足利、桐生、八王子が認められているが、これらに限定されず日本全国で生産されており、中には品質に相当問題があるようなものまで流通していた。2.1932年までの銘仙生産量は、伊勢崎が他の地域を圧倒していた。伊勢崎銘仙の特徴は「併用絣」にあり、他地域の銘仙に比べて色の鮮やかさで抜き出ている。伊勢崎銘仙には「馬首印(マーク)」や「正絹マーク」が付けられており、収集した着物や羽織、反物や洗い張りの中にも、このようなマークが見られるものがある。3.銘仙の大きな特徴は、アール・ヌーボーやアール・デコの影響を受けた、まるで絵画といってもよいデザインにある。ボストン美術館、ミネアポリス美術館などの海外の美術館には、相当数の銘仙が収蔵されているが、それらのデザインの多くはこの範疇に入る。4.近年、海外のコレクターが銘仙を収集し、写真・図を中心とした大型本を出版するなど、活発化している。色鮮やかで大胆な模様の伊勢崎銘仙(併用絣)が数多く取り上げられているが、収集した銘仙の中にも類似のデザインのものがある。5.本研究から、銘仙は、国際的、歴史的、社会的、文化的要素を入れて教材化することが可能であることが示唆された。
著者
野口 昭治 赤松 洋孝 福地 孝啓
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2006年度精密工学会秋季大会
巻号頁・発行日
pp.275-276, 2006 (Released:2007-03-04)

近年ではエアコン,無停電電源装置(UPS)等で電流制御のためにインバータ(可変電圧・可変周波数制御装置)が多く使われている.インバータの近くで使用されている冷却用ファン内の軸受に電食が発生する現象が多発している.インバータによる高周波ノイズによって微弱電流が発生してしまい,長期間に渡って軸受内に電流が流れることが原因とされている.電食に関する研究は、鉄道車両用軸受を対象に多く行われてきたが、小型玉軸受を対象とした研究はほとんどない。そこで本研究では、高周波電食が起こる原因を究明することを最終的な目的とし,高周波環境で軸受を回転させた場合の軸受特性を調べ、小型玉軸受693を対象に無通電高周波電食の基礎実験を行った。