著者
井上 春緒
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2015-04-24

本研究は北インドの古典音楽であるヒンドゥウターニー音楽におけるペルシャの影響を、14世紀から18世紀に書かれたペルシャ語音楽書の記述を基に明らかにするものであった。ペルシャ語音楽書を使い、前近代における北インドの音楽文化交流の歴史に焦点を当てた本研究は、インド音楽の文化史研究としては、これまでにない新しい領域を開拓するものであった。本研究ではまず、ペルシャで書かれたペルシャ語音楽書を読み、ペルシャのリズム理論イーカーゥの分析をおこなった。イーカーゥの理論が体系化される上ではアラビア音楽書の影響があることがわかったため、アラビア語音楽書を書いた、アラブの哲学者についても研究し、彼らのリズム理論の特徴を分析した。次にインドで書かれた音楽書を取り上げ、それらのリズム理論の内容を分析した。特に重要であったのは、18世紀後半のインドで書かれたリズム理論が、ペルシャのリズム理論の用語で翻訳され説明されていることであった。このことから、音楽書の上では18世紀以降に本格的にペルシャのリズム理論がインドのリズム理論に影響を与えているということがわかった。また、本研究では当時のペルシャとインドのリズム理論の特徴をそれぞれ、「組み替え型」と「分割型」と定義付け、それらの特徴が現在のヒンドゥスターニー音楽のリズム演奏とどのような関係にあるのかを分析した。その結果、タブラーのソロ演奏の前奏部にあたるペーシュカールの中に両者の特徴を見ることができた。これによって当時の音楽文化交流の痕跡を、現在の音楽を通して跡付けることができた。
著者
鞍谷 文保 吉田 達哉
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

シンバルは薄板円板状の打楽器で,ブロンズの薄板円板をシンバル形状に成形する成形工程と音質を調整する音質調整工程(ハンマリング加工,音溝加工)を経て製品となる.本研究では,シンバルの音質に大きな影響を及ぼす成形加工後のベル(シンバル中央の膨らんだ部分)の形状とハンマリング加工に注目し,それらがシンバル音に及ぼす影響を明らかにする.最初に,音響放射効率を用いてシンバルの振動と放射音の関係を調べ,ベルサイズにより放射音特性が異なる理由を検討する.次に,ハンマリング加工後のシンバルの振動・放射音の変化予測法を提案し,それを用いてハンマリング加工によりシンバルの振動・放射音特性が変化する理由を検討する.
著者
佐藤 俊樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

(1)ウェーバーの因果分析の方法は「適合的因果」として知られているが、これは19世紀後半のドイツ語圏で最も重要な統計学者の一人であるヨハネス・v・クリースの方法論的研究を社会科学に導入したものである。(2)v・クリースはすでに因果を反事実的に定義しており、かつそれを確率論の枠組みを用いて同定している。したがって、彼の「適合的因果」は現在の統計的因果推論の原型にあたるものである。それゆえ、ウェーバーの因果分析もその枠組みも共有している。(3)ウェーバーのもう一つの、より有名な方法論である「理解社会学」もまた、他のやはり有名な統計的推論の理論であるベイズ統計学の枠組みを用いて再構成できる。
著者
戸田 幹人
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

振動励起状態の分子におけるエネルギー再配分は、化学反応における基本的な過程の一つである。本年度は、振動エネルギーの再配分を研究するのに最も適しているファンデルワールス系のうち、特に希ガス・ハロゲン分子の三体系を対象に、振動エネルギーの再配分過程のシミュレーションおよび解析を行なった。この系は3自由度系であり、そのポアンカレ断面は4次元である。4次元の断面は直接に視覚化できない。そのため、この系の時間発展に関する研究は、これまでほとんど成されてこなかった。本研究では、ポアンカレ断面の3次元空間への射影・切断を通じて解析を行なった。当初の計画では、量子論・古典論の両方についてシミュレーションを行なう予定であったが、ポアンカレ断面の視覚化に時間がかかったため、古典論についてのみシミュレーションを行なった。解析の結果次のことがわかった。希ガス・ハロゲン分子の三体系において、遠方から希ガス原子をハロゲン分子に衝突させる。この時、希ガス原子の入射角度が直角または直線の場合、直接的な散乱過程が存在する。これに対して、斜め方向から衝突する場合、希ガス原子は一旦ハロゲン分子とゆるい結合状態を作る。この際、衝突方向のエネルギーの一部は回転運動を励起する。このあと、回転運動と振動運動の共鳴によって、希ガス原子の再解離がおこる。以上の結果が、どこまで量子論で対応しているか興味がある。特に、希ガス原子を軽い原子から重いものまで変えることによって、カオスにおける量子古典対応を調べることができる。これは今後の課題である。
著者
笹倉 万里子 山崎 進
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

高度情報社会においては,個人が多彩な情報の恩恵を享受する環境が必要である。しかし,情報はただ提供されるだけで役立つものではなく,個人がその情報を用い行おうとする目的と合致して初めて役に立つものである。本研究では,情報の十分な量が提案されている状態から,要求に合致したものを探し出し,目的を達成するための要因を決定していくための環境を,「ある要求が定まっているときに,ある状況と知識を仮定して,目的の要因を推定していく」過程とみなし,それをコンサルタントと捉えこのコンサルタント機能の実現を目指した。具体的には以下の研究を行った。1.矛盾解消推論とその関連の研究状況と知識に内在する矛盾を解消するメカニズムを構築し,それに基づいて,コンサルタント機能の基礎となる説明推論を確立した。一般論理プログラムにおける理論を確立し,また,それを拡張論理プログラムで展開している。実際の応用例についても検討した。2.視覚化とヒューマンインタフェースに関する研究コンサルタント機能ヒューマンインタフェースとして,説明推論の過程を視覚化する技法を確立した。円の包含関係を用いて論理プログラムを表現する手法を提案し,同様の手法で推論の過程を表現する手法を提案した。3.分散環境でのコンサルタント機能に関する研究推論を分散環境で展開できる体系を確立した。また,分散環境において,説明推論の過程を視覚化する技法についても検討した。分散環境への応用として,自動並列化コンパイラにおいて自動並列化を支援するためのシステムを説明推論を用いて構築する例を提示した。また,分散環境における矛盾解消推論の応用例を検討した。
著者
寺尾 裕
出版者
東海大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

流体中円柱のVIMを用いた発電装置で、低速流中の基礎研究を行った。これは流体中左右に振動する振子で、円柱上部にフープ式発電装置を組み込んだ。本システム性能把握のため、小型模型を製作、またその計測に新制作のData Loggerで、発電量とフープ運動を計測した。これより円柱の発電効率の良い配置を見出すことができた。またフープ式発電装置と、振動円柱は2重振子を構成し、その振子運動は強非線形復元力下での大振幅運動となる。その解析のため新たな振子運動方程式を構築、数値解析を行い、この運動系にはカオスが発生する発生領域が分かった。またカオス発生を制御すれば高性能の発電性能を発揮できる可能性がある。
著者
小川 健二
出版者
株式会社国際電気通信基礎技術研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

ヒトは,自らの身体状態のイメージ(身体像)を脳内で動的に推定しており,さらに自己の身体像は他者認知の基盤ともなっていると考えられる(ミラーニューロンシステム仮説).また身体像は,日々変化する環境,あるいは身体や道具の特性に適応する必要があり,このためには運動指令や環境変化を予測可能な脳内の内部モデルの学習が不可欠である.そこで本研究は,このような身体像の基盤となる内部モデルの神経表象を明らかにするため,ヒトが2種類の感覚運動変換に適応した後の脳活動を機能的磁気共鳴画像法(functional MRI)で計測し,それぞれの変換条件を表象する脳部位の特定を試みた.先行研究から,ヒトは複数の運動スキルを同時並行的に学習可能な点が示されているが,これは個々のスキルに対応した複数の内部モデルが脳内に獲得されているものと考えられる.実験ではジョイスティックを使った視覚トラッキングを用い,実験参加者は2種類の相反する回転変換(+90度または-90度)に同時適応した.そして,運動中のfMRI活動に対してマルチボクセルパターン分析(MVPA)を用い,変換条件が識別可能か検討した.また回転変換条件と,低次の運動キネマティクスとの違いを明示的に区別するため,2種類のターゲット軌跡パターンを設け,異なる変換条件と軌跡パターンの組合せに対する識別器の汎化精度を調べた.結果から,感覚運動野,補足運動野,および小脳前部の活動パターンを使って回転変換の識別が可能であった.本研究から,感覚運動関連野および小脳で異なる感覚運動マッピングが表象されていることが明らかとなった.
著者
太田 紘史
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

研究計画に則り、心脳問題への学際的アプローチを図った。そのために、(1)心的状態と神経状態の多層的構造の機能主義的分析と、(2)機能主義と調和する心身問題の形而上学的研究を行った。(1)心と脳の多層的構造の機能主義的研究心身問題で根本的な問題になる意識について、その認知神経基盤の連続的かつ多層的な機能的分析を遂行した。一般に機能主義的な物理主義は、意識を共時的-通時的な面で多層的な機能的クラスターとして分析しようとする。そこで当研究者は、意識の統一構造を明確化する分析を提案し、そのように分析されて得られた個々の意識的状態をある種の表象として分析する理論を提案し擁護した。さらにそれが、認知神経科学における意識の相関項(Neural Correlates of Consciousness : NCC)の知見とどのように調和しうるかについて検討し提案した。(2)心身問題の形而上学的研究上記のような、心を因果的役割によって分析する機能主義に基づいた物理主義を擁護・展開するために、形而上学的な心脳問題の研究を行った。とりわけ、機能主義的な物理主義を反駁するとされる一連の思考実験と形而上学的見解について、検討を行った。それらには具体的には、中国国家論証、逆転地球、知識論証が含まれる。当研究者は、それらがどのように論理的欠陥を抱えており、そしてそれが哲学と認知神経科学の総合的な機能主義理論を反駁しないのかについて提案した。
著者
岡野 訓尚
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究の目的は, マルチエージェント系を含む通信が中心的な役割を果たす制御糸を対象に, 通信路を介して伝達される情報や, 制御対象の動特性を表すモデルに不確実性がある場合を想定し, これらの不確実性がシステムの挙動に及ぼす影響を理論的に解析することである. 昨年度までに, システムの安定化(または合意)を達成するために必要/十分な通信ビット数と通信障害の発生確率の限界を導出し, これらの安定化限界が不確実性によってどう変動するかを明らかにした. 本年度の主な成果は以下の2点となる.(1)昨年度に構築したシステムモデルを, より一般的な枠組みに拡張し現実的な問題設定に近づけた. 具体的には, 制御対象のモデルについて, これまで既知としていたアクチュエータ側のパラメータにも不確かさがある場合を扱えるようになった, さらに, 通信される情報の不確実性についても, ある期間に集中的に通信障害が発生する場合を表現できるように障害の発生モデルを一般化した.(2)システムの安定性に加え, 収束速度についても解析を行った. Markov Jump Linear Systemsの結果を基に, 状態の収束速度が, ある行列のスペクトル半径で評価できることを示した. これにより, 安定化限界を満たしている場合にっいても, 不確実性が収束速度をどの程度悪化させるかを評価することができるようになった.以上の成果の一部を, 学術論文誌や国際学会に投稿し2編の採録が決定したほか, European Control Conference (7月, Zurich, Switzerland)にて発表を行った. 本発表はBest Student Paper Award Finalistとして選出される評価を受けた.
著者
大河内 美紀
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

アメリカにおけるデパートメンタリズムの議論を中心に、解釈の多元性に関する検討を行った。1990年代(ブッシュ政権)以降、合衆国においては行政権の拡大が指摘されており(James P. Pfiffner)、オバマ政権期に分割政府状況に至ると議会と大統領との対立はさらに顕著になった。そうした問題意識から、合衆国では、立法に署名する際に大統領が一種の解釈宣言を行う署名時声明を素材として、解釈権の所在が論じられたり(S. Kelley)、立法府はいったん制定された法律の執行に口を挟むべきではないとするanti-aggrandizement principleの見直しの指摘(Simon Hansen)などが登場してきている。これらの議論は、国家機関の間における「公的な」憲法解釈権の配分をめぐるものであり、まさにデパートメンタリズムの現れたものと言える。しかし、留意すべき点が2点ある。第一に、これが厳格な三権分立を統治の基軸とする合衆国における現象であるという点である。無論、日本においても機関訴訟のような形で国家機関間の権限配分が問題となる場面は存在する。しかし、立法-行政の間の責任と協調をベースとする議院内閣制の日本において、合衆国におけるデパートメンタリズムのような形で解釈の多元性が表出することは例外的と考えられる。第二に、これらが憲法解釈が最終的に確定される局面、いわばラストワードの場面における対立であることである。しかし、ラストワードの場面は憲法解釈の表層にすぎず、その解釈の正統性はより下位の層における解釈によって支えられているとみるべきである。ポピュリスト立憲主義はラストワード以外の場面に光を当てる可能性を持つ議論であるものの、なお、それを自覚的には論じておらず、それがポピュリスト立憲主義の限界となっている。
著者
宮本 一夫
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

1941年、日本人研究者によって調査された中国遼東半島の上馬石貝塚の遺物実測や写真撮影を行い、発掘調査報告書を刊行するための基礎作業を行った。調査地点や層位関係を基に、出土土器の相対的な年代関係を、型式学的に明らかにした。これにより、遼東半島新石器時代から初期鉄器時代までの、ほぼすべての土器編年を明らかにした。そして、BII区が遼寧式銅剣段階であることを明らかにし、その実年代が西周後期から春秋期にあることから、弥生開始の実年代が前8世紀にあることを検証した。さらに、土器の圧痕分析や土器製作技術の分析から、無文土器時代の文化内容が遼東に起源することを明らかにした。
著者
山本 博文 藤井 純子 安田 正成 岡本 拓夫 外岡 信一郎
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

若狭湾地域に位置する福井県高浜町薗部の海岸低地において,津波によって形成されたと考えられるイベント砂層が見出された.薗部地区におけるコアリングおよびトレンチ調査により,深さ1m以浅のイベント砂層は海岸から550m以上内陸まで分布し,海岸の砂と同様のよく円磨された岩片を特徴とし,ところによっては貝殻,有孔虫,ウニのトゲなどの生物遺骸を含んでいた.また砂層基底部には明瞭な浸食が認められ,砂層中にはリップアップクラストがみられた.この砂層の堆積年代としては,上下の泥炭質層の14C年代測定結果からすると,14~16 世紀頃と推定された.
著者
宮寺 良平
出版者
関西学院高等部
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2017

チョコレートゲームの変形である、チェスのRookを動かす問題に関して、後手必勝の公式を発見して、The 20th Japan Conference on Discrete and Computational Geometry, Graphs, and Games(JCDCG3 2017)の査読を通過して、“Two-Dimensional Maya Game and Two-Dimensional Silver Dollar Game”として発表した。また、確率的においてパスカルの三角形に似た分数列を作り出す一般公式を発見し、同じJCDCG3 2017の査読を通過して、“Pascal-like triangles and Fibonacci-like sequences”として発表した。これら2つの内容は、Springer社の雑誌に2つの論文として投稿した。チョコレートゲームのGrundy数がニム和と同じになる場合に関しては、証明を簡略化して、Integers誌に投稿した。なお、この論文はコーネル大学の論文収録サーバーに、Grundy Numbers of Impartial Chocolate Bar Games arXiv : 1711.05035として登録された。また、チョコレートゲームにおいて、3つの方向からカットできる問題において、後手必勝位置を公式として表して、Integers誌に投稿した。この論文もコーネル大学の論文収録サーバーにImpartial Triangular Chocolate Bar Games arXiv : 1711.04954として登録された。また、チョコレート問題と数学的に同値で有名な問題であるWythoffのゲームにおいて、一回のパスを許す場合の、後手必勝ポジションの公式を得て、Integers誌に投稿した。この論文もコーネル大学の論文収録サーバーにWythoff's Game with a Pass arXiv : 1711.04960として登録された。
著者
田中 祐次 西原 陽子
出版者
東京女子医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

いくつかの患者、家族そして医師の間の会話文を解析した。そして、データを分析するためのいくつかのデータマイニングを組み合わせることができる統合環境のプロトタイプを完成させた。
著者
橋本 祐子
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、法と感情の関係性について探求する「法と感情(law and emotion)」という新たな研究領域に着目する。学際的な研究領域である「法と感情」研究の全体像を把握したうえで、「法と感情」研究の重要な思想史的源泉の一つをスコットランド啓蒙思想に求め、特に道徳感覚―正義―法の関係性について重点を置きつつその現代的意義を探求することをめざすものである。平成31年(令和元年)度においては、前年度に引き続き、英米圏における「法と感情」研究の最新の動向を把握し整理するために文献を収集、精読し検討を行った。その成果として、現代の「法と感情」研究の全体像を描き出し、その法哲学上の意義に関して考察を行う論文の執筆作業に取り組んだが、残念ながら完成までには至らなかった。一方で、現代の「法と感情」研究の思想史的源泉として大きな影響力を有しているA. スミスの共感理論を手がかりとして、刑罰制度と応報感情の関係について検討を行った成果を、"Retributive Emotion and Criminal Justice"として、7月に開催されたIVR法哲学・社会哲学国際学会連合(International Association for the Philosophy of Law and Social Philosophy)世界大会(ルツェルン大学・スイス)のワーキング・グループにおいて報告を行った。また、2020年度日本法哲学会学術大会統一テーマ企画の責任者として、本研究の内容とも密接な関連性を有するシンポジウム「法と感情(仮)」を企画し、他の報告者らと準備研究会を2回(10月、12月)実施し、法哲学における「感情」の位置づけに関して議論を深めた。
著者
森内 健行
出版者
東京農工大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究は環境にやさしい次世代モバイル用エネルギー源として,光合成バクテリアを利用し,光エネルギーのみで持続的発電が行える,長寿命,マイクロバイオ燃料電池の実用化へ向けたプロトタイプの開発とその性能評価を目的としている.本年度は特にマイクロバイオ燃料電池の出力向上および長寿命化に向け,以下の研究を実施した.(1)電池の高出力化に向け,C-MEMS(Carbon-Micro Electro Mechanical Systems)技術を用い多孔質カーボン電極を作成し,マイクロバイオ燃料電池に適用し性能評価を行った.多孔質カーボン電極を用いることで,2.14μW/cm^2と従来研究と比較して8倍の高出力化を行うことができた.(2)電気化学測定の一つである,サイクリックボルタンメトリー(CV)を用い,ポリアニリン電極の酸化還元電位,及び,ポリアニリンによる細菌からの電子抽出を評価した.ポリアニリン電極の酸化還元電位は標準水素電極(SHE)に対して,+0.3V付近を示した.実際にポリアニリン電極を細菌溶液(シアノバクテリア+リン酸緩衝液)中に入れ,CV測定を行ったところ,細菌を入れる前と後で,+0.45V付近における酸化電流が大幅に増加していることが確認できた.これより,ポリアニリンによる細菌からの電子抽出を実験的に検証することができた.(3)電池の長寿命化に向け,培地還流システムの試作,及び,その評価を行った.本研究では細菌から電子を抽出することで発電を行っており,発電に伴い細菌の活性が低下し,電池寿命が短くなるという問題があった.そこで,電池内の細菌を循環させることで,活性の高い細菌から持続的に発電を行える培地還流システムを提案し,電池に適用した.培地還流システムを用いることで,従来研究と比較して3倍以上の長寿命化を達成でき,本システムの有効性を示すことができた.
著者
新留 徹広
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

神経幹細胞は未分化状態を保持したまま増殖・継代することができる自己複製能および中枢神経系を構成するニューロンとグリアに分化することができる多分化能を併せ持つ細胞と定義されている。神経幹細胞を中枢神経系の再生医療へ応用するにあたり、神経幹細胞を目的に合わせて適切な割合でニューロンとグリアに分化させることが重要である。神経幹細胞の分化過程には増殖因子・サイトカイン等の細胞外環境因子とクロマチン修飾・転写因子群が遺伝子転写を調節する細胞内在性プログラムが複雑に相互作用していることが明らかになりつつあるが、未だに不明な点が多くその詳細な分子機構の解明が急がれる。本研究では神経幹細胞からニューロンへの分化の割合が培養日数に制御されている現象を見出した。さらに、ディファレンシャルディスプレイ法を用いてIAP2を同定した。レトロウイルスによるIAP2強制発現が13 DIV神経幹細胞のニューロンへ分化する割合を増加させたことから、13 DIV神経幹細胞におけるIAP2 mRNAの高発現量はインダイレクトな結果ではなくIAP2自体が神経幹細胞からニューロンへの分化を促進する因子であることが示唆された。なお、IAP2がアストロサイトへの分化抑制機能を合わせ持つか否かについては検討中である。また、20 DIV神経幹細胞へのIAP2強制発現はニューロンへの分化能に影響を与えなかったことより、20 DIV神経幹細胞ではIAP2を介したニューロン分化促進シグナルを減弱させる強いニューロンへの分化抑制機構やアストサイトへの分化促進機構の存在が推測される。本研究は神経幹細胞からニューロンへの分化過程においてIAP2が関与する新たな分化制御機構の存在を示すものである。今後、その詳細な分子メカニズムの解明により、神経幹細胞を用いた中枢神経系における再生医療の発展に貢献することが期待できる。
著者
豊川 裕之 草間 朋子 板井 悠二
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

体脂肪量を超音波皮脂厚計によって、被計測者に侵襲を与えることなく、推定する方法の確立を図っている。その推定値の誤差を規定するために、【^(40)K】計測法(ヒューマン・カウンタ法)とNMR診断法の人体断面像から脂肪量を推定する方法を基準として、超音波皮脂厚計法の推定誤差が約5%以内であることを明らかにした。NMR画像はまだイメージスキャナーで面積計算ができないので、目下、PC98型コンピュータで処理するソフト・ウェアの開発中である。したがって、【^(40)K】計測値だけを較正値として超音波皮脂厚法の誤差を算定した。その算定に用いた資料は、【^(40)K】法の68名(男34名,女34名)、超音波皮脂厚法の68名(【^(40)K】と同じ対象)の7ケ処の計測値である。なお、NMR画像は7名分の資料が得られている。体脂肪量;F(kg)=【α_1】・【X_1】+【α_2】・【X_2】+【α_3】・【X_3】+……+βただし、【α_1】,【α_2】,【α_3】・・・:性・・年齢別に推定される定数β:【α_1】・【α_2】・・に同じ【X_1】,【X_2】・【X_3】・・・:各部位C1,2,3,・・・)の皮脂厚値である。これに、性・年齢別に実測値を用い、(1)【^(40)K】計測値に近似させる、(2)変量(X)の数をなるべく少くすることを条件として検討した結果男性:F(kg)=0.556(上腕部皮脂厚)+0.094(腹部皮脂厚)-7.961(推定誤差:4.4%)であることがわかった。女性(30歳以下,30歳より上にわけた)についても2変量で約5%の推定誤差で推定できることがわかった。今後は、例数をふやし、性・年齢別の体型の変化にも注意を払った推定式を目標に改善を続けたい。
著者
丸茂 美惠子 川上 央 入江 寿弘 篠田 之孝 小沢 徹 三戸 勇気 竹田 陽子 三浦 雅展 渡沼 玲史
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

日本舞踊において自己研鑚過程の若い演者への教育支援を想定し、「技」の巧拙の判断の根拠となる身体重心の置き方や安定性について動作解析することを目的に置いた。モーションキャプチャ並びに床反力計を用いて身体重心並びに圧力中心点との関連を解析した結果、腰が入った演者は身体重心の垂直方向の標準偏差が小さいこと、前後・左右方向の身体重心と圧力中心のずれが小さいことが明らかとなった。また、独自の解析によって得られた身体重心に着目した可視化システムや、サーボアクチュエータ及び3DCGを用いた動作教示システムなど有用な教育支援システムの構築につながった。