著者
犬童 愛祐美
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.504-505, 2017-10-20 (Released:2018-04-01)
参考文献数
1

日本消防検定協会は国内で唯一の消防用機械器具の検定機関である。消火器一つをとっても,その機能や種類はさまざまであり,化学の知識を生かす場面は多い。私が進路として化学を選択したきっかけから,化学の知識がどのように消防に役立ち,消防機器の検査に活かされているか,消火器を例に化学科出身者としての目線で紹介する。
著者
蛭田 美紅 三宅 諭
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.864-871, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
9

福島第一原子力発電所事故により原発周辺地域は帰還困難区域に指定され、今でも多くの避難者は福島県内外で避難生活を続けている。避難者と受入先市民との間にトラブルも発生しており、原発避難者の今後の生活を考える上で、避難先住民との対立関係を解消することが求められる。本研究は、いわき市小名浜地区の市民および避難者にアンケート調査を行い、対立の要因と対立解消に向けた課題を明らかにしている。トラブルが発生するのは新しい生活が始まるタイミングに多いことを明らかにした。また、避難者と市民の意識対立の要因として、不満や忌避感が負の影響を与えていることを明らかにした。さらに、避難者と避難者の近くに住む市民は積極的な交流に消極的であるのに対し、離れて暮らす市民は避難者の受入に積極的であることが明らかになった。
著者
服部 夏実 森中 遥香 光本(貝崎) 明日香 沼澤 聡
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第45回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-180, 2018 (Released:2018-08-10)

【目的】オランザピンに代表される多元受容体作用抗精神病薬(MARTA)は、神経学的な副作用が少ないことから、統合失調症の治療薬として広く使用されているが、体重増加や高血糖等の副作用を生じることが問題となっている。体重増加は、主に5-HT2CやH1受容体の遮断作用が食欲増進ペプチドであるグレリンの分泌を促すと説明されている。一方、最近、視床下部領域における酸化ストレスが、インスリンやレプチンの作用を減弱させ、肥満や糖尿病を引き起こすという説が提唱された。そこで本研究では、オランザピンが視床下部に酸化ストレスを引き起こすことにより体重増加や高血糖を招くという実験的仮説を立て、これを検証した。【方法】Balb/c雄性マウスにオランザピン(25 mg/kg, i.p.)を投与し、3, 6, 12, 16時間後に視床下部を採取した。また、オランザピン(5~50 mg/kg, i.p.)を投与し、3時間後に視床下部、海馬、皮質を採取した。酸化ストレスの指標として、Heme oxygenase-1 (HO-1)発現レベルをRT-PCR法で検討した。【結果・考察】オランザピン(25 mg/kg)投与3, 6時間後において、有意なHO-1発現レベルの上昇が認められた。このようなHO-1誘導は、高血糖・糖耐性を生じることが明らかになっている用量(10 mg/kg)でも認められた。同様の条件下、海馬および皮質のHO-1レベルは変化しなかった。このことから、オランザピンは視床下部特異的に酸化ストレスを生じることが示唆された。今後、オランザピンが酸化ストレスを生じるメカニズムについて検討を進める。
著者
武内 正典 茨木 邦夫
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.579-581, 1990-10-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
8

Experiments in our laboratory have shown that steroid therapy commenced immediately before the operation prevents the functional deficit caused by silicone cuffs applied to intact sciatic nerves in rats. A further study showed that epineurectomy alone caused no significant functional deficit. In this experiments when compression was applied after removal of the epineurium the same dose of steroid used in our previous experiments proved unable to prevent the functional deficit.In intact nerves, it is probable that the trauma of cuff application caused edema of the intraneural pressure in the segment under the cuff and thus neuronal injury. The maximum injury and edema would occur in the epineurium, which can be prevented by steroid administration. Following epineurectomy edema of the perineurium and endoneurium resulted in a similar pressure increase that was not prevented by the steroids.
著者
小池 孝子 野﨑 葵 定行 まり子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 69回大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.77, 2017 (Released:2017-07-08)

目的 現代の住まいにおける和室の使われ方を分析することにより、今後の住宅内における和室のあり方について検討をおこなう。方法 女子大学生を対象に、自宅における和室の有無、室配置、和室での生活行為について質問紙調査により分析する。調査対象者数は489人である。結果 対象とした女子大学生の自宅のうち和室がある家は69.1%であり、東京都では51.0%にとどまった。 住居形態別では、戸建て住宅では70.9%、集合住宅では63.8%の住宅に和室があった。和室の配置の形式は、廊下のみと接する独立間、他の室と連続する続き間、室の一部のみが畳敷きとなっている和洋室の3つに大別され、それぞれの割合は30.1%、67.6%、2.3%となっており、特に集合住宅では続き間が多くなっている。和室の使用目的では、独立間は個室としての使用が多いが、玄関脇の独立間などでは客間としての使用もみられる。続き間はリビングと連続するものが大半を占め、多目的室、寝室としての使用が同程度あり、団らん室、家事室としての使用もみられた。和室を含む住宅内で女子学生が行う行為では、和室では個人的行為のほか家事手伝いなどさまざまな行為が行われているが、行われている行為そのものが少なく、和室があまり利用されていないことがわかった。
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.125, no.1, pp.Cover01_01-Cover01_02, 2016-02-25 (Released:2016-03-22)
参考文献数
1

層状堆積岩層を切って崩壊地―ガリー―土石流錐の一連の地形が形成されており,その下端は多角形土のみられるクレーター底(写真右端)に張り出している.斜面頂部(写真左端)にも多角形土が広がる.これらの景観より,高緯度に広く存在する「氷に富む表層(永久凍土)」からなる谷頭部で(融解?)侵食が発生し,土石流の流下によりガリーを発達させ,斜面基部に堆積するという地形変化が最近も起こっている可能性がうかがえる.崖錐表面は季節的なドライアイス層で覆われて白っぽくみえる.HiRISEのホームページにGulick(2014)による本画像の紹介記事がある.写真の左右幅は約5 km.(写真提供:NASA/JPL/University of Arizona;説明:松岡憲知)
著者
神田 隆
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.11, pp.2439-2445, 2017-11-10 (Released:2018-11-10)
参考文献数
10

四肢末梢のしびれ感や感覚・筋力低下を主症状とするニューロパチーは,日常診療で頻繁に遭遇する病態であるが,診断や治療に難渋することが多く,苦手とする先生方も多い疾患群である.本稿では,近年,病態の解明や治療法の開発で進歩がめざましい自己免疫性ニューロパチーを取り上げ,急性3疾患・慢性4疾患に焦点を絞って概説する.本症は,基本的には治療介入可能な病態である.従来の副腎皮質ステロイド,免疫グロブリン大量静注療法(intravenous immunoglobulin:IVIg),血漿浄化療法の3つに加えて,各種免疫抑制薬や生物学的製剤の有効性に関する知識が蓄積されており,治療の選択肢はかつてない広がりをみせている.しかし,末梢神経軸索は一旦障害を受けて軸索変性に陥ると,その再生には長期間を必要とし,軸索変性から神経細胞体の破壊に至れば,不可逆的な機能脱落に至る.治療オプションが広がった今こそ,免疫性ニューロパチーに関する知識を最新のものとし,早期診断から治療に結び付けていただきたいと念願する.
著者
堅田 明子 東原 和成
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.124, no.4, pp.201-209, 2004
被引用文献数
3 3

数十万種類とも言われる多種多様な匂い物質を識別する嗅覚受容体は,多くの創薬の標的となっているGタンパク質共役型受容体ファミリーに分類され,その中でも最大の多重遺伝子群を形成している.近年,筆者らはクローブ様の香りを呈する匂い物質,オイゲノールを認識するマウス嗅覚受容体mOR-EGの単離同定を起点とし,嗅覚受容体の薬理学的解析を行ってきた.培養細胞で匂い応答を効率よく測定できるアッセイ系を確立し,mOR-EGの匂いアゴニスト・アンタゴニストのスクリーニングを行った結果,閾値が数百nM~数百&micro;Mにわたる22種類のアゴニストと,阻害活性の異なる3つのアンタゴニストを同定した.次に,匂いリガンド結合様式を解析するため,ウシロドプシンのX線結晶立体構造を鋳型にmOR-EGの三次元立体モデルを構築し,リガンド結合シミュレーションを行った.リガンドとの相互作用が予測されたアミノ酸に部位特異的変異を導入して匂い応答性を解析したところ,膜貫通領域3,5,6番目に存在するアミノ酸残基が匂い認識に特に重要であることが明らかとなった.これらの結果から,嗅覚受容体は匂い分子の微妙な構造的エピトープの違いを,特に疎水的相互作用を介して識別することで,様々な匂いリガンドを広範囲の親和性で認識していることが示唆された.得られた結合様式をもとに単一アミノ酸変異を導入し,匂いリガンドの親和性を予測どおり変化させるという受容体デザインにも成功した.生物が多種多様な匂い物質を識別する嗅覚システムの分子基盤が明らかになったのと同時に,今まで製薬会社などでオーファン受容体スクリーニングから排除され軽視されてきた嗅覚受容体が,Gタンパク質共役型受容体の薬理学的構造生物学的研究を行う上で格好なモデル受容体となることを強く示唆している.<br>
著者
高田 里惠子 Rieko TAKADA
雑誌
桃山学院大学人間科学 = HUMAN SCIENCES REVIEW, St. Andrew's University (ISSN:09170227)
巻号頁・発行日
no.6, pp.67-96, 1994-01-30

Man kritisiert oft den Opportunismus von Kenji Takahashi (1902~ ), der wahrend der Kriegszeit Ubersetzer und Kommentator der Blut-und-Boden-Literatur war und sich dann plotzlich in einen energischen Hesse- und Kastner- Forscher verwandelt hat. Aber Takahashis Identifikation mit dem Pazifisten Hesse oder dem Widerstandskampfer Kastner ist unreflektiert. In der vorliegenden Arbeit gilt meine Analyse indessen nicht seiner unverschamten >Verwandlung<, sondern seiner inneren Kontinuitat: Takahashi war seit seiner Gymnasiastenzeit ein Anhanger der deutschen Kultur und Bildung. Dabei ist bemerkenswert, da〓 er sich als Germanist immer darum bemuht hat, die deutsche >hohe< Literatur in Japan zu popularisieren, was eigentlich dem elitaren Wesen der deutschen Bildung widerspricht. Takahashi versuchte durch seine offentlichkeitswirksame Tatigkeit, ob als Nazi-Sympathisant oder als Hesse-Ubersetzer, die gesellschaftliche Funktion der japanischen Germanistik zu legitimieren, die sich in der 20er Jahren als rein universitare Disziplin etabliert und dabei allmahnlich Au〓enkontankte zur japanischen kulturellen Offentlichkeit verloren hatte. Im "Fall Kenji Takahashi" verkorpert sich der Gegensatz zwischen Popularisierung und Akademisierung der deutschen Literatur in Japan, der heute noch zu beobachten ist. Takahashi versteht sich (komischerweise!) als kritischer Intellektueller. Seinen Memoiren zufolge stellte er sich als Elite-Gymnasiast gegen die Erwartungen seines Vaters: statt als Jurist eine gute Karriere ins Auge zu fassen, studierte er Germanistik. Dieser gegen das Prinzip des modernen Japan revoltierende Antikarrierismus bedeutete fur ihn eine kritische Einstellung zum Establishment, das die Literatur einfach fur etwas Nutzloses halt. Takahashi hat die deutsche Kultur und Bildung als Gegenmittel gegen die unmenschliche Zivilisation sowie die moderne kapitalistische Gesellschaft hochgeschatzt. Seine falsche Selbstverstandnis verfuhrte ihn zur unkritischen Bewunderung der deutschen Kultur. Gerade Takahashis (subjektiv) ehrlicher Wille hat ihn opportunistisch gemacht. In diesem Sinne reprasentiert seine Komodie zugleich die Tragodie des modernen Japan.
著者
山口 亮祐 宮本 礼子
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.567-577, 2018-12-01 (Released:2018-12-06)
参考文献数
36

共感は, 認知的共感と情動的共感に分類され, それぞれが補足し合って共感機能を担っている。本研究では, 同一刺激だが異なる教示条件を用いて, 認知的共感と情動的共感の神経基盤の相違点を明らかにすることを目的とした。右利きの健常成人女性16名を対象に快感情が喚起される顔写真を見る条件 (情動的共感) と, 提示された人の感情を想像する条件 (認知的共感) を施行中の脳活動を, 機能的磁気共鳴画像法を用いて検討した。その結果, 情動的共感に特有の活動として両側下頭頂小葉が賦活し, 感覚情報を基にした感情面のミラーリングの関与が示唆された。一方, 認知的共感に特有の活動として左下前頭回が賦活し, 表情の意図を推測する活動の関与が示唆された。下頭頂小葉, 下前頭回ともにミラーニューロンシステムの一部であり, それぞれの共感には同システム上の異なる部位が関与し, 共感機能を担っている可能性が示唆された。
著者
酒井 朗 碓井 彰
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.774-779, 1999-07-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
15
被引用文献数
3

マスク材を表面に部分的に形成して成長を行う選択横方向成長方法により,転位密度の少ない高品質窒化ガリウムが得られた.成長手法として八イドライド気相成長を用いたが,成長初期の段階で安定なファセット構造が出現し,成長モードが変化することに対応して,転位がその伝播方向を変えることが断面透過電子顕微鏡観察で見い出された.窒化ガリウム中の転位構造とその挙動を詳細に観察し・選択横方向成長による転位削減機構を探る.
著者
Masanao ICHIMATA Atsushi TOSHIMA Fukiko MATSUYAMA Eri FUKAZAWA Kei HARADA Ryuzo KATAYAMA Yumiko KAGAWA Tetsushi YAMAGAMI Tetsuya KOBAYASHI
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.22-0533, (Released:2023-10-17)

Retroperitoneal hemangiosarcoma (RPHSA) is a rare tumor in dogs with a poorly understood prognosis after surgery. The objectives of this study were to investigate the clinical features and prognosis of canine RPHSA that had undergone surgical resection. In this single-center, retrospective cohort study, we reviewed the medical records of dogs that had undergone surgical resection for retroperitoneal tumors and received a histopathologic diagnosis of HSA between 2005 and 2021. The median progression-free survival (PFS) and overall survival (OS) were 77.5 days and 168 days, respectively. In the present study, canine RPHSA had an aggressive biological behavior similar to visceral HSA. Further studies in larger canine populations are needed to evaluate the efficacy of adjuvant chemotherapy.
著者
松原 文
出版者
立教大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-04-01

「アーサー王物語」は13世紀初頭、古仏語作品からの翻案によりドイツ語圏に導入された。13世紀半ば以降は、いわゆる「古典」作品の持っていた作品構造は崩され、韻文から散文への流れも見られる。形式の変化と同時に内容も変容し、騎士の自己陶冶とアーサー王宮廷の繁栄への収斂性はなくなり、奇想天外な冒険が繰り返される。本研究は、ヴォルフラムの『パルチヴァール』が後代の詩人たちに新たな取り組みの一つの足掛かりとなったと考え、作品間の比較を行う。個性の誕生という切り口で人物像を、受容者の意識変化という切り口で諧謔性を分析する。