著者
林 綾乃 深井 和吉 小林 征洋
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.209-212, 2020 (Released:2020-05-21)
参考文献数
12

症例は28歳男性,製造業.昼食時琵琶湖の小鮎あめ煮®を2尾摂取直後に胃痛が出現し,胃薬を内服した.1時間後に顔面に瘙痒伴う発赤が出現し,呼吸困難となり救急搬送された.食材について皮膚テスト,血清検査による原因検索を行った.皮膚プリックテストでは琵琶湖のコアユ・エビ・カニ・イカに陽性を示し,一般的なアユや他の魚類は陰性であった.抗原特異的IgEではエビ・カニ・ダニ・ガ・ユスリカ・ゴキブリに陽性を示したが,rGad c 1(タラパルブアルブミン),rPen a 1(エビトロポミオシン)の各アレルゲンコンポーネントは陰性であった.またELISAではコアユ・アユ・マサバの抽出液およびマサバパルブアルブミン・マサバコラーゲンの反応はみられなかった.以上より琵琶湖のコアユによるアナフィラキシーと診断した.琵琶湖のコアユによるアレルギーは本症例が初めての報告である.コアユ特有の原因抗原が存在する可能性が考えられた.
著者
岡本 圭介 野城 智也
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.86, no.781, pp.1013-1021, 2021 (Released:2021-03-30)
参考文献数
20

This study typifies the transformation of the profession of architect through interviews with professional cross-border architects, who have recently attracted attention in the United States. The social background referred to in this study refers to changes in laws and regulations due to inclusive changes in the financial industry, and the increasing importance of management theory with the spread of design build contracts. Further, since the profession of architect is not codified in Japan, this paper refers to all those who contribute in the form of brain labor to the social implementation process of space. Chapter 2 first summarizes the design-build research conducted in the United States. The architects interviewed two companies that are involved in the Architect-Led Design-Build business. In addition to confirming the merits of both the clients and business operators, the institutional barriers and operational issues are also clarified. In Chapter 3, the business model that helps develops both the design and development industries is defined as an Architect-Led-Developer ; further, and James Petty's discussions on the Architect-Led-Developer business are presented. In addition, we interviewed the companies and obtained data. Financing issues and development policies, amongst other issues that consider public interest were discussed. Chapter 4 summarizes the changes in financing methods and analyzes the case studies of companies that are conducting investment-type crowdfunding businesses in Portland. We analyzed four case studies, including a developmental and operational project ensure affordable housing and commercial stores in cooperation with Non-Profit-Organization. Through examples, we confirmed that architects contribute to the construction of a regional investment ecosystem. In Chapter 5, the business models of platform operators are organized into three types: centralized B2C type, centralized P2P type, and decentralized P2P type. By analyzing the limitations of the current laws and regulations and the government's response, we analyzed the global practices for a decentralized society. In conclusion, we categorized the analyzed cases and proposed the social significance of architects as subjects who comprehensively model designs.
著者
藤岡 洋保 佐藤 由美
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文報告集 (ISSN:09108017)
巻号頁・発行日
vol.447, pp.109-118, 1993-05-30 (Released:2017-12-25)
被引用文献数
3 3

This paper shows how the concept of "space", which was first developed in, Germany in the late 19th century, was introduced into and developed in Japan, analyzing the articles on the four major Japanese architectural magazines between 1887 and 1960. Until the 1920s, the word kukan (space) had rarely been used in them. The concept of "space" began to be developed in the 1930s. From the 1950s on, it has been utilized by Japanese architects, especially the team led by Kenzo Tange. Their, move implies that at that time modern rationalism began to gain ground in many Japanese architects' thoughts.
著者
小坪 遊 大橋 和典 高藤 晃雄
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.71-76, 2004 (Released:2005-06-15)
参考文献数
11
被引用文献数
6 6

近畿地方から発見され,新種として記載されたミツユビナミハダニの食性,発育速度および増殖能力を調べた.本種はナス科植物,特にナス属で高い生存率を示し,ナス科のスペシャリストであることが示唆された.また,卵から成虫までの雌の発育期間は8.85日,内的自然増加率は0.321/日であり,重要な農業害虫であるナミハダニやカンザワハダニを上回り,これまでに報告されたTetranychusの中で最も高い増殖力を有していた.これらは本種がナス科作物の重要害虫になる可能性があることを示唆している.
著者
堀 和明 清水 啓亮 谷口 知慎 野木 一輝
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.193-203, 2020-05-01 (Released:2023-02-19)
参考文献数
19

石狩川下流域には自然短絡で生じた小規模な三日月湖が多数分布する.本研究では調査者自身が容易に扱える,エレクトリックモーターを取り付けたゴムボートおよびGPS付き魚群探知機を用いて,5つの湖沼(ピラ沼,トイ沼,月沼,菱沼,伊藤沼)の測深をおこない,湖盆図を作成した.また,表層堆積物を採取し,底質分布を明らかにした.すべての湖沼で水深の大きい箇所は河道だった時期の曲率の大きな湾曲部付近にみられた.ピラ沼や菱沼,伊藤沼の湾曲部では内岸側に比べて外岸側の水深が大きく,蛇行流路の形態的特徴が保持されている.一方,トイ沼北部や月沼は最深部が外岸側に顕著に寄っておらず,全体的に水深や湖底の凹凸も小さい.このような特徴は埋積開始時期の違いを反映していると考えられる.すべての湖沼でシルトや粘土による埋積が進んでおり,特にピラ沼と菱沼の水深の大きな地点では有機物を多く含む細粒土砂が表層に堆積していた.
著者
金子 和広 冨士田 裕子 横地 穣 加藤 ゆき恵 井上 京
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.31-41, 2022 (Released:2022-06-28)
参考文献数
38

1. 北海道新篠津村の石狩泥炭地内に残存する小規模な湿地では,1960年代以前に掘削された排水路の影響で乾燥化が進行しており,保全のために2006年から毎年,5月から8月の期間に湿地への灌漑用水の導水が行われている.導水が与えた影響を評価するため,導水以前,導水初年,導水開始13年後の地下水位と植生を比較検討した.2. 導水期間中の地下水位は,導水初年・13年後においていずれの地点でも導水以前から平均で30 cm程度上昇した.地下水位の変動パターンは地形によって異なり,窪地では導水期間中に水位が湛水状態を保った一方,窪地以外の地下水位は最高でも地表面から20 cm以下だった.3. 導水開始13年後の植生について,窪地では草本層でヨシを主とする湿生在来種が優占し,導水以前に出現した非湿生外来種のオオアワダチソウが消滅した.窪地以外では,高木層で優占したシラカンバの大半が枯死した場所があったものの,草本層に占める湿生種の割合は50%未満で窪地よりも低く,湿地の乾燥化後に侵入したと考えられるワラビやオオアワダチソウが多くの場所で増加した.4. これらの結果から,地形・地下水位・植生は密接に関連することが示された.窪地では導水がもたらす湛水状態が湿生植物の優占する群落の維持や復元に十分効果的であったが,窪地以外での地下水位上昇は,湿地保全の観点からは十分な水準に達していないと結論付けられた.
著者
清水 浩 戸谷 吉博
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.104-109, 2022 (Released:2022-05-25)
参考文献数
24

地球規模のCO2問題が叫ばれる中,光合成微生物による化学物質や燃料の環境調和型生産の重要性が注目されている.シミュレーション,代謝フラックス解析,進化工学といったシステムバイオロジーの手法による多様な光環境における藍藻(シアノバクテリア)の光合成システムに関する最近の研究成果を解説する.
著者
阪下 暁 尾本 篤志 大村 知史 角谷 昌俊 大下 彰史 木村 雅喜 浦田 洋二 福田 亙
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.121-127, 2017-06-30 (Released:2017-09-06)
参考文献数
20

症例は24歳女性.指趾末梢のチアノーゼ,レイノー現象,疼痛を認めて当院を受診した.高度の末梢循環不全とCRP上昇,赤沈亢進,Dダイマー上昇を認めたが自己抗体はすべて陰性であった.足底の皮膚生検で中型血管にフィブリノイド壊死を伴う血管炎を認めた.皮膚以外に臓器障害を認めず皮膚動脈炎(CA)と診断した.プレドニゾロン40㎎/日の投与にて皮膚症状は著明に改善した.末梢循環不全の原因としてCAを考慮する必要がある.
著者
渡辺 啓 松尾 玲 井上 裕基 安達 謙太郎 野田 章
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.287-294, 2012-12-20 (Released:2014-12-20)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

メーク落としに求められる重要な特徴は,「メーク落とし効果」と洗い流し後の「さっぱり感」である。しかしながら,これら2つのを要素を満たすメーク落とし製品は市場には存在しなかった。これは,従来技術ではこれらの要素はトレードオフの関係にあったためである。われわれは,この課題を解決するために,「メーキャップとのなじませ」と「洗い流し」の間に存在する「水を加える」という行動に着目し,界面活性剤の溶存状態変化を,相平衡図上で界面化学的に検討した。その結果,「メーキャップとのなじませ」時には洗浄力の高い逆ミセル油溶液であり,水を加えると,両連続構造を経由して,「洗い流し」が容易なミセル水溶液に相転移する特異な系を見出した。このような系を実現するためには,①HLB (親水性-親油性バランス) を釣り合わせ,界面活性剤低濃度領域に存在するO/W領域を縮小すること,②極性の油を添加し,相平衡図の中央付近に出現することの多い高粘性の液晶相を消去すること,が重要であることが明らかになった。逆ミセル油溶液をクレンジングオイルとして用いると,「メーク落とし効果」は非常に良好で従来のクレンジングオイルと同程度であり,「さっぱりさ」は皮膚上への油の残留がきわめて少ないためクレンジングローションと同程度であるという特徴を有していた。この高性能クレンジングオイルは,クレンジングオイルによるメーク落としプロセスを界面化学的に詳細に検討することで,トレードオフの関係にあった要素を両立させたものである。
著者
野村 英樹
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.5, pp.1116-1121, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
2
被引用文献数
5
著者
河角 龍典 加藤 政洋
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.144-145, 2012

嘉手納基地ゲート前に建設された「ビジネスセンター」の地形景観をGISを用いて復原し、都市計画との関連性について検討する。
著者
森田 航
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

化石資料の中でもっとも豊富であり、現生種と化石種の類縁関係を推定する鍵となっている大臼歯、特に上顎大臼歯間の形態の違いに着目し解析を行った。資料には国内外の博物館や大学が所蔵する標本を用いた。CTスキャンを行い3次元モデルとして再構成し定量的な比較を行った。その結果、ヒトと現生類人猿は全体として共通する大臼歯間変異のパターンを持っていることが示された。しかしその中でもヒトでは特殊化の程度が大きく、遠心舌側咬頭の顕著な退縮傾向を持つことがわかった。またケニアから出土した未記載の大臼歯についても解析を進め、概ねこれまで知られている中新世化石類人猿と同じく祖先的な形態を保持していることが分かった。
著者
伊藤 拓 竹中 晃二 上里 一郎
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.162-171, 2005-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
47
被引用文献数
11 2

多くの抑うつの心理的要因が提唱される中, 抑うつの心理的要因の共通点や抑うつを引き起こす共通要素についての検討はほとんどなされていない。本研究では, この点に着目し, 従来の代表的な抑うっの心理的要因である完全主義, 執着性格, 非機能的態度とネガティブな反すうの関連を明らかにするとともに, 完全主義, 執着性格, 非機能的態度からうつ状態が引き起こされる上で, ネガティブな反すうが重要な共通要素として機能しているかを検討した。大学生 (N=191) を対象とした8ヶ月間の予測的研究を行った。その結果,(1) 完全主義, 執着性格, 非機能的態度という異なる抑うつの心理的要因は, 共通してネガティブな反すう傾向と正の相関があること,(2) これらの心理的要因が高くても, うつ状態が直接的に引き起こされるわけではなく, ネガティブな反すう傾向が高い場合にうつ状態が引き起こされることなどが示された。以上のことから, 完全主義, 執着性格, 非機能的態度という異なる抑うつの心理的要因からうつ状態が引き起こされるメカニズムには, ネガティブな反すう傾向が共通要素として介在していることが示唆された。
著者
Mutsuko INUI Shuto KOJIMA Yoshiya NAGATSUMA
出版者
Japan Association of Mineralogical Sciences
雑誌
Journal of Mineralogical and Petrological Sciences (ISSN:13456296)
巻号頁・発行日
pp.221219c, (Released:2023-10-04)

Albite porphyroblasts occur in schists in higher-grade zones of the Sanbagawa metamorphic belt, Japan. In this study of pelitic schists from the Nagatoro area of the belt, various microstructures in albite porphyroblasts were identified and indicate that grain size reduction of the albite porphyroblasts occurred after their formation. Schists with recognizable porphyroblasts contain fine grains of albite aligned in the matrix. In comparison, schists without recognizable albite porphyroblasts contain lenticular aggregations of albite grains in quartz-rich layers that suggest grain size reduction of the original porphyroblasts. These observations suggest that the absence of albite porphyroblasts does not necessarily indicate different pressure, temperature, or chemical conditions but can instead be explained by grain size reduction of albite porphyroblasts during deformation.
著者
福井 謙一
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.8, pp.394-400, 1965-08-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
73
被引用文献数
1
著者
村木 克彦
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.121, no.3, pp.143-151, 2003 (Released:2003-02-25)
参考文献数
50
被引用文献数
1 1

Ca透過性およびCa活性化イオンチャネル(Ca関連イオンチャネル)は,平滑筋や内皮細胞をはじめ,あらゆる細胞に発現するイオンチャネルである.Ca関連イオンチャネルは,その活性化がCa流入を引き起こすことから,またその活性化にCaを必要とすることから,細胞のCa動態と密接に関係すると予測される.種々の平滑筋細胞を用いて検討を行ったところ,平滑筋に存在する細胞膜受容体の活性化にともないイノシトール三リン酸が産生されると,Ca活性化Kチャネルの抑制とCa活性化Clチャネルの活性増強が観察された.一方,内皮細胞のCa関連イオンチャネルとCa動態の関係についても検討を加え,虚血時に細胞から遊離される細胞障害性脂質のパルミトイルカルニチンが特定の細胞膜受容体を活性化し,その結果,内皮細胞のCa動態変化と,それに引き続きCa活性化Kチャネルの活性亢進を引き起こすことを明らかにした.また内皮細胞にCa動態変化をもたらすと報告されていた脂質メディエーターのスフィンゴシン1リン酸の新規機能−Ca透過性カチオンチャネルの活性化作用−を見出した.さらに平滑筋·内皮細胞間のギャップ結合を介した平滑筋による内皮細胞の膜電位制御と,内皮のCa動態への効果を明らかにした.これらの結果は,いずれも平滑筋や内皮細胞のCa動態とCa関連イオンチャネルの密接な連関を示す証拠であり,平滑筋や内皮細胞の生理機能を理解する上で,極めて重要である.