著者
Yu Nakajima Takashi Tsukamoto Yohei Kumagai Yoshitoshi Ogura Tetsuya Hayashi Jaeho Song Takashi Kikukawa Makoto Demura Kazuhiro Kogure Yuki Sudo Susumu Yoshizawa
出版者
Japanese Society of Microbial Ecology · The Japanese Society of Soil Microbiology
雑誌
Microbes and Environments (ISSN:13426311)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.89-97, 2018 (Released:2018-03-29)
参考文献数
43
被引用文献数
17

Light-driven ion-pumping rhodopsins are widely distributed among bacteria, archaea, and eukaryotes in the euphotic zone of the aquatic environment. H+-pumping rhodopsin (proteorhodopsin: PR), Na+-pumping rhodopsin (NaR), and Cl−-pumping rhodopsin (ClR) have been found in marine bacteria, which suggests that these genes evolved independently in the ocean. Putative microbial rhodopsin genes were identified in the genome sequences of marine Cytophagia. In the present study, one of these genes was heterologously expressed in Escherichia coli cells and the rhodopsin protein named Rubricoccus marinus halorhodopsin (RmHR) was identified as a light-driven inward Cl− pump. Spectroscopic assays showed that the estimated dissociation constant (Kd,int.) of this rhodopsin was similar to that of haloarchaeal halorhodopsin (HR), while the Cl−-transporting photoreaction mechanism of this rhodopsin was similar to that of HR, but different to that of the already-known marine bacterial ClR. This amino acid sequence similarity also suggested that this rhodopsin is similar to haloarchaeal HR and cyanobacterial HRs (e.g., SyHR and MrHR). Additionally, a phylogenetic analysis revealed that retinal biosynthesis pathway genes (blh and crtY) belong to a phylogenetic lineage of haloarchaea, indicating that these marine Cytophagia acquired rhodopsin-related genes from haloarchaea by lateral gene transfer. Based on these results, we concluded that inward Cl−-pumping rhodopsin is present in genera of the class Cytophagia and may have the same evolutionary origins as haloarchaeal HR.
著者
野口 卓也 京極 真
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.54-63, 2019-02-15 (Released:2019-02-15)
参考文献数
28
被引用文献数
2

本研究の目的は,ポジティブ作業に根ざした実践のプログラム(POBP)を開発し,適用方法を検討することであった.研究方法は2段階の手順を踏み,手順1で作業に根ざした実践に精通する作業療法士3名で学習教材を作成し,手順2でPOBPを精神障害者6名に実施した.効果指標はポジティブ作業評価15項目版(APO-15),ポジティブ作業の等化評価(EAPO),一般性セルフ・エフィカシー尺度を用い,解析はベイズ推定による一般化線形混合モデルで行った結果,手順1で学習教材が33種類作成され,手順2でAPO-15のエンゲージメント,EAPOのポジティブ作業の2因子で効果を認めた.POBPは精神障害者の幸福の促進に寄与する可能性があると示された.
著者
角野 康郎
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.2004, 2020 (Released:2020-12-31)
参考文献数
64

湧水域は特有の環境と生物相を有し、生物多様性保全の観点からも重要な湿地である。近年、外来水生植物の湧水域への侵入と分布拡大の事例が報告され、生態系被害が危惧されている。本調査では、日本の湧水域における外来水生植物の侵入と定着の実態を明らかにすることを目的に、北海道、東北地方南部、南九州をのぞく全国 26都府県の湧水河川ならびに湧泉 201カ所を調査した。そのうち維管束植物が生育していたのは 165地点で、沈水形で生育していた陸生植物も含め 69種が記録された。この結果に基づき、在来種も含め、湧水域における水生植物相の特徴を考察した。外来種は 20種が 114地点から確認され、我が国の湧水域に広く侵入・定着している実態が明らかになった。オランダガラシ(広義)、オオカワヂシャ、コカナダモが多くの地点で確認されたほか、イケノミズハコベ、オオカナダモ、キショウブが 10カ所以上の地点で確認された。これら外来水生植物の生態リスクには湧水特有の環境が関係していることを論じるとともに、今後の課題について考察した。
著者
小川 俊輔
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.78-93, 2023-09-30 (Released:2023-10-31)
参考文献数
26

現代において,人は神の声を聞くことができるのか.できるとすれば,それはどのように可能なのか.本論文はこの問いに答えようとする.主な考察の対象は日本のカトリック教会である.旧約聖書や現代小説には,神が人間に語りかける場面,神と人間とが直接ことばを交わす場面が繰り返し描かれてきた.しかし,聖書,教会文書,カトリック司祭の著述などによれば,現代を生きる私たちは神の声を物理的な音声として聞くことはできない.他方,聖書は聖霊の働きによって書かれたものであり,それがミサ聖祭において朗読されるとき,それは現存する神が直接会衆に語りかけているのだ,と教会は考える.そして,信徒が聖書,特に福音書を理解できるよう,教会そして司祭は様々な努力を払っている.その具体的な方法の1つが,司祭による福音書の解説,すなわち「説教」である.ミサにおける「説教」は司祭だけが行うことができると定められている.「説教」の他,「聖変化」や「ゆるしの秘跡」など,司祭は教会から様々な権能を与えられている.それらはいずれも神と人間(一般信徒)のコミュニケーションを媒介する役割を担っている.司祭はそのことにより招来する権威性に自覚的である必要がある.
著者
大澤 啓志 新井 恵璃子
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.337-343, 2016 (Released:2017-03-16)
参考文献数
60
被引用文献数
1

花木であるアジサイの植栽利用に関わる文献類の渉猟を行い,その植栽に対する嗜好の時代変遷を考察した。また,観光対象としてのアジサイ寺の成立時期について,文献・ヒアリング調査を行った。嗜好の時代変遷では,鎌倉時代頃から庭への植栽が普通となり,江戸時代にはアジサイの栽培・増殖法も記された出版物が発刊されるとともに,「花が多数群れ咲く」ことへの嗜好の萌芽が認められた。明治以降も庭への植栽は普通に行われており,またセイヨウアジサイの輸入が始まり,公園等に群植がなされていた可能性もあるものの,直ぐには今日のようなブームにはならなかった。この間,「アジサイと社寺」の関わりを示す資料が認められた。そして 1960年代以降になって明月院 (神奈川県鎌倉市) に群生するアジサイが多くの人の目に止まり,これまでには無かった新たな観賞価値がアジサイに付与され,今日的な嗜好が確立されたと考えられた。各地で植栽される観賞用の緑化植物の一つであるアジサイについて,「庭の花木」を経て「社寺の花」という文化を底辺に持ちつつ,今日の「群生する花の美」の価値が生じた過程を明らかにした。

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著者
熊谷 雄治
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
臨床薬理 (ISSN:03881601)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.367-368, 2006-11-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
6
被引用文献数
1
著者
櫻田 春水
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.22, no.Suppl2, pp.5-25, 2002-04-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
36

12誘導心電図における持続性単形性心室頻拍の診断は, wide QRS頻拍から, 変行伝導を伴う, あるいは副伝導路を伝導する上室性頻拍を鑑別することによりなされる.房室解離があれば心室頻拍と診断できるが, 不明瞭なときはQRS波形から鑑別する.その際, V1誘導の形状から, 右脚ブロック型, 左脚プロック型にわけ, そのV1やV6の形状から鑑別する方法が一般的である.その他, 北西軸の電気軸, 左脚プロック+右軸偏位, 胸部誘導におけるQRS波形のconcordanceがみられる場合や, 胸部誘導のすべてでR (r) S型QRSがない所見なども心室頻拍を疑わせる.薬剤を用いる鑑別法もあるが, ベラパミルは心室頻拍例や副伝導路例の血行動態を悪化させるため禁忌である.ATPの急速静注が役に立つこともあるが, 副伝導路が疑われる例には控えた方がよい.また, 身体所見, 病歴や内服抗不整脈薬の内容の聴取も診断に役立つことを忘れてはならない.
著者
赤川 学
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.4-13, 2017 (Released:2020-03-09)

本論文は、性の多様性に関して以下のことを論じた。 第一に、セクシュアリティの社会学の問題構成は、多様である性が、いかにして、なぜ、性別二元制や異性愛主義に収斂するのかという問いであるとともに、doing gender / undoing gender、性の脱アイデンティティ化/再アイデンティティ化、脱医療化/再医療化が同時発生する現象を読み解くことにあるとした。 第二に、性差や性の社会・歴史・文化・言説的構築を強調する構築主義を理論的構築主義と、性に関わる言説を社会問題を構築するクレイム申し立て活動と捉える方法的構築主義とを区別した上で、両者を実践する英国の歴史社会学者ジェフリー・ウィークスの理論的変容を整理した。それは、性が社会や政治によって構築されるという〈受動性〉から、セクシュアリティを生きる人々が社会関係や親密性を再構築する〈能動性〉への転換である。 第三に、ウィークスの議論に刺激されつつ、英米における同性婚やシヴィル・パートナーシップの合法化を可能にする言説のレトリックを確認した。合法化を求める人たちは、異性愛カップルと同じ権利を要求する権利のレトリックに加え、家族形成や社会に対するコミットメントを強調する責任のレトリックを併用することで、保守派を取り込むことに成功した。 第四に、日本の同性婚をめぐる議論では、少子化対策という文脈が強く、やがて生殖や養育を生きる人と、そうでない人との間の「正義」や「平等」の問題が浮上しうることを指摘した。
著者
富澤 崇
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.2020-003, 2020 (Released:2020-04-02)
参考文献数
18

テクノロジーの進歩,制度改革,社会構造や価値観の変化を受け,薬剤師の職務内容や範囲,薬剤師の需給バランスが変わっていくと考えられる.したがって,薬学部出身者としての職業人生を豊かなものにするためには,将来に向けたキャリアデザインが必要である.しかしながら,薬学生・薬剤師はキャリアデザインの必要性を感じていないのではないだろうか.そこには,キャリア教育を充実させる意識が大学に欠けていることが根本的な原因として考えられる.その解決のためには,自己を知ること,労働市場を知ること,労働とは何か,キャリアとは何かなどを学習するためのカリキュラムを構築すること,薬剤師のキャリアに関する研究を推進すること,そしてキャリア教育の必要性を認知させるために,学会やメディアを通じて大学教員に啓発活動を行うこと,があると考えられる.
著者
友田 明美
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1-7, 2020-02-25 (Released:2020-03-04)
参考文献数
23

近年,児童虐待と「傷つく脳」との関連が脳画像研究からわかってきた.例えば,暴言虐待による「聴覚野の肥大」,性的虐待や両親のDV目撃による「視覚野の萎縮」,厳格な体罰による「前頭前野の萎縮」などである.虐待を受けて育ち,養育者との間に愛着がうまく形成できなかった愛着障害の子どもは,報酬の感受性にかかわる脳の「腹側線条体」の働きが弱いことも突き止められた.こうした脳の傷は「後遺症」となり,将来にわたって子どもに影響を与える.トラウマ体験からくるPTSD,記憶が欠落する解離など,その影響は計り知れない.しかし,子どもの脳は発達途上であり,可塑性という柔らかさをもっている.そのためには,専門家によるトラウマ治療や愛着の再形成を,慎重に時間をかけて行っていく必要がある.一連のエビデンスについて社会全体の理解が深まることで,大人が責任をもって子どもと接することができ,子どもたちの未来に光を当てる社会を築くことに少しでもつながればと願っている.
著者
中山 哲夫
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.115, no.6, pp.605-611, 2012 (Released:2012-09-06)
参考文献数
14
被引用文献数
1

感染症対策にワクチンの果たしてきた役割は大きく, ワクチンで予防できる疾患はワクチンで予防する基本的な方針で欧米は積極的にワクチン政策をすすめてきた. 一方, わが国では種痘禍, ジフテリア・百日咳・破傷風 (DPT) の事故, 麻疹・風疹・ムンプス (MMR) スキャンダルと予防接種に関する訴訟が続き積極的な予防接種政策を執ることができなかった. ワクチンメーカーも新規ワクチン開発や外国からの導入もなく空白の十数年が経過し, その間欧米においては1990年代にはインフルエンザ桿菌ワクチン (Hib), 結合型肺炎球菌ワクチン (PCV) が開発され日本発の無細胞型百日咳ワクチン (DTaP) をベ-スに多価ワクチンの開発と積極的に予防接種政策を推し進めてきた. ワクチンの品目, 制度の違いからワクチンで予防できる疾患 (vaccine preventable diseases: VPD) の流行が制圧できずワクチンギャップとして問題視されてきた. 最近になって2008年にはインフルエンザ桿菌ワクチン (Hib), そして2010年春から小児用の結合型肺炎球菌ワクチンが使用できる様になった. わが国の予防接種政策が立ち遅れた原因は何か, そしてこれからの予防接種対策について考えてみたい.
著者
日笠 志津
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.68-82, 2013-09-30 (Released:2013-11-02)
参考文献数
53

Japan used to be an agricultural country, which traditional agricultural method has been organic farming. Health of farmers, environmental preservation and fertility existed at that time. The fact that the introduction of agrichemicals and fertilizers has rapidly expanded production output must be appreciated. On the other hand, environmental pollutions, occurrence of health hazards and food pollution became aggravated. Consumers of organically-grown vegetables often believe that these products are healthful and taste better than conventionally-grown vegetables. However, the vegetable quality like the nutrient content and the organoleptic characteristics are unproven. The purpose of this study is to examine the vegetables quality that farmers cultivated. We obtained lettuces, komatsunas ( Japanese mustard spinaches ) and spinaches from farmers in a few prefectures, and then performed nutritional values and the sensory assessment tests on each vegetable.1 ) In samples cultivated in multiple prefectures for this study, the difference caused by various cultural conditions showed no significant differences in terms of moisture, ash content, minerals, vitamins and free amino acids contents. The data did not show any nutritional superiority of organically grown agricultural product.2 ) “The overall evaluation” in lettuces, komatsunas and spinaches was the most strongly associated with the “taste” among “appearance”, “aroma”, “texture” and “taste”. “Aftertaste” was closely related to “The overall evaluation of taste”. These results suggest that cultivation technique is an important factor to grow vegetables of good quality.3 ) The quality in komatsunas shows that the difference of the variety had stronger effect than the difference between the cultivation techniques did.4 ) For each of the 3 years, the spinach that the same producer organically grew scored highly in almost every parameter of the sensory test. The results suggest that cultivation technique is likely to contribute vegetable quality.
著者
HIDEAKI KANZAWA-KIRIYAMA AIKO SASO GEN SUWA NARUYA SAITOU
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
Anthropological Science (ISSN:09187960)
巻号頁・発行日
vol.121, no.2, pp.89-103, 2013 (Released:2013-08-27)
参考文献数
55
被引用文献数
18 23

We investigated mitochondrial DNA haplogroups of four Jomon individuals from the Sanganji shell mound in Fukushima, Tohoku district, Japan. Partial nucleotide sequences of the coding and control region of mitochondrial DNA were determined. The success rate of sequencing increased when we analyzed short DNA sequences. We identified haplogroups from all four samples that were analyzed; haplogroup frequencies were 50% (n = 2) for N9b and 50% (n = 2) for M7a2. Haplogroup N9b has been previously observed in high frequencies in the other Tohoku Jomon, Hokkaido Jomon, Okhotsk, and Ainu peoples, whereas its frequency was reported to be low in the Kanto Jomon and the modern mainland Japanese. Sub-haplogroup M7a2 has previously been reported in the Hokkaido Jomon, Okhotsk, and modern Udegey (southern Siberia) peoples, but not in the Kanto Jomon, Ainu, or Ryukyuan peoples. Principal component analysis and phylogenetic network analysis revealed that, based on haplogroup frequencies, the Tohoku Jomon was genetically closer to the Hokkaido Jomon and Udegey people, than to the Kanto Jomon or mainland modern Japanese. The available evidence suggests genetic differences between the Tohoku and Kanto regions in the Jomon period, and greater genetic similarity between the Tohoku Jomon and the other investigated ancient (Hokkaido Jomon, Okhotsk) and modern (Siberian, Udegey in particular) populations. At the same time, the Tohoku and Hokkaido Jomon seem to differ in sub-haplotype representations, suggesting complexity in Jomon population structure and history.