著者
福永 真衣 石村 典久 石原 俊治
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.74, no.10, pp.572-580, 2021 (Released:2021-11-29)
参考文献数
48
被引用文献数
1

セリアック病は小麦などに含まれるグルテンにより惹起される自己免疫疾患であり,十二指腸や空腸を中心とした慢性炎症により,腹痛,下痢といった消化器症状のみならず,抑うつなどの多彩な症状を呈する.欧米諸国では有病率が1%程度とされるが,日本を含むアジア諸国では極めて稀と考えられており,疫学調査はほとんど行われていなかった.われわれは健常成人を対象に調査を行い,日本人における有病率は0.05%程度である可能性を示した.セリアック病の発症にはHLA-DQ2, 8といった遺伝的要因と,小麦の摂取量などの環境要因が影響している.診断は抗組織トランスグルタミナーゼIgA抗体(tTG抗体)測定および十二指腸生検による組織学的評価により行われ,基本的な治療はグルテン除去食である.小麦摂取量の増加を背景に今後日本においても増加する可能性があり,注目すべき疾患である.
著者
久田 信行 金原 洋治 梶 正義 角田 圭子 青木 路人
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.31-45, 2016-12-31 (Released:2016-12-31)
参考文献数
45
被引用文献数
6

わが国における,場面緘黙(選択性緘黙)の診断,治療,教育における捉え方について概観した。DSM-5から不安症群に移動したことで,場面緘黙の理解と成人例への注目が促進されるものと推察した。場面緘黙を多く診察しているK小児科の実践を基に,初診時の対応など重要な観点を示した。特に,発話以外の行動や動作に関連する諸症状について検討した。場面緘黙の出現率については,議論のあるところであるが,わが国で最近行われた大規模調査を紹介し,あわせて,学校での対応について述べた。その調査では,小学校段階で,男児0.11%,女児0.20%,全体で0.15%の出現率であった。最後に,国際保健機構(WHO)のICFと,そこから派生したWHODAS2.0を紹介し,場面緘黙の場合,生理レベルや個人レベルの問題もさることながら,社会参加のレベルの問題へ,当事者視点の研究も含めて接近していくことの重要性を論議した。
著者
菅沼 慎一郎
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.265-276, 2013 (Released:2014-03-03)
参考文献数
21
被引用文献数
3 1

「諦める」は多くの人が日常的に体験することであるが, 心理学における一貫した定義はこれまでなく, その否定的側面が報告されることが多かった。本研究の目的は, 青年期における「諦める」の構造を明らかにし, 仮説的に定義すると共に, 「諦める」ことの精神的健康に対する機能に関する示唆を得ることである。後青年期(22~30歳)の男女15名を対象に, 過去の諦め体験に関して半構造化面接を行い, 29エピソードを得た。修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて分析した結果, 11の概念と3つのカテゴリーが生成された。青年期における「諦める」は, 達成・実現を目指して努力してきた<諦めた内容>に関して, 目標の達成・実現困難度の認識という<諦めたきっかけ>を契機に, 目標や望みの放棄という<諦め方>に至る。これに基づき, 「諦める」は, 「自らの目標の達成もしくは望みの実現が困難であるとの認識をきっかけとし, その目標や望みを放棄すること」と定義された。「諦める」は否定的な側面のみならず, 建設的な側面を有しており, そこに「諦める」という概念の独自性があること, 精神的健康に対して多様な機能を有することが示唆された。
著者
松永 寛明
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.86-102, 2000 (Released:2017-03-30)

This study analyzes the relationship between the abolition of punishment in public space and social changes in Japan. Penal system in Edo period functioned to maintain the status order and then punishing people in public was indispensable to restore broken status order because symbolic event of violence to the offender's body revived social consciousness of the large social distance between offender and victim. Modernization and collapse of status order in Meiji period forced feudal penal system changed. Punishment vanished from public place because of Ritsu-ryou system introduced. The system was soft on criminals but it is not very important. Behavior and consciousness of intellectuals and statesmen who aspire to rationalize penal system represented a more important factor that they reflected changing social order; punishment in public space had been invested with a "punishment" meaning for rigid status order existing and it became a cruel behavior when status order collapsed. As a consequence, the feudal relics had been abolished in twelve years.
著者
佐藤 洋一郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.87, no.10, pp.732-738, 1992-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

最近, 縄文時代遺跡の発掘により日本へのイネの伝来がこれまで定説とされていた年代よりももっと古いことがわかってきた。それにしてもイネはどこからきたのか米に携わるものにとって永年の疑問である。著者は, これまでの一元説に対し, 遺伝学の立場から検証し, 南北二元説という新しい考えを発表している。
著者
野谷 あやめ 森本 祥一
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 2015年秋季全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.140-143, 2015 (Released:2016-01-29)

日本の芸能産業は,『アイドル』と呼ばれる歌手や役者,タレント,モデルなどが席巻しており,独特な市場を構成している.これらのアイドルが所属している事務所の経営は,熱狂的なファンによって支えられているが,行き過ぎたファンが事件を起こすこともあり,そのマネジメントが課題となっている.よって本研究では,多くのファンを魅了し,芸能界に強い影響力を持つジャニーズ事務所をケースとして,アイドルとファンの関係を,事務所経営の視点からコミュニケーション手段ごとにリレーションシップ・マーケティングに基づいて分析し,理想的な関係について考察した.
著者
富田 直樹 仲村 昇 岩見 恭子 尾崎 清明
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.143-152, 2013 (Released:2013-11-21)
参考文献数
32

2011年10月から2012年3月までに日本全国14県17ヶ所において,渡り・越冬中のオオジュリンで,尾羽の形成不全(以下,尾羽異常とする)の個体が頻繁に観察された(5,541個体中767個体,13.8%).尾羽異常個体は,ほとんど幼鳥であった(97.3%).尾羽異常の形態は,以下の3型のいずれかに明確に分類された;虫食い状欠損型(45.9%,約1 mmの穴が数ヶ所開いている状態や,羽枝が途中で溶けたようになり,その先が欠損している状態),成長異常型(14.5%,伸長か不全の2種類で,正常羽と比較して,伸長で5.0±3.0 mm(平均±標準偏差)長く,不全で5.8±3.1 mm短かった),及びこれらが同時に観察される複合型(39.6%).虫食い状欠損型は尾羽中央3対に,成長異常型は中央2対に高頻度で観察された.その他ホオジロ科鳥類3種,ホオジロE. cioides(91個体中4個体,4.4%),カシラダカE. rustica(229個体中3個体,1.3%),及びアオジE. spodocephala(1,066個体中16個体,1.5%)でも同様の異常が少数例観察された.
著者
永井 栄一
出版者
保健医療学学会
雑誌
保健医療学雑誌 (ISSN:21850399)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.75-82, 2021-04-01 (Released:2021-04-01)
参考文献数
50

要旨 握力測定において,その測定法と測定条件は測定値に影響を与える.握力測定において測定方法と測定条件が,握力へどのような影響を与えるのか,文献レビューを通して概括する.握力測定における測定方法と測定条件が,測定値に与える影響が明らかになれば,信頼性・妥当性の高い測定が可能となり,評価や治療効果の判定を正確に行うことが可能となる.
著者
深井 宣男
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.25-31, 2017 (Released:2018-07-25)
参考文献数
11

オオコノハズクOtus lempiji の齢の識別について論じた.栃木県内での鳥類標識調査で捕獲された個体の写真を用いて羽衣を比較した結果,風切や尾羽,初列大雨覆の色彩と長さなどで齢を識別できる可能性が高いことがわかった.すなわち,風切や尾羽は,幼鳥では幅が狭く先細りする形状であるのに対し,成鳥では幅が広く先端は丸い形状であった.また,第一回冬羽の幼鳥では初列大雨覆が淡色で,次列大雨覆の先端より短いのに対し,成鳥では暗色で,次列大雨覆の先端と同程度までの長さがあった.幼鳥は,秋にこれらの羽を換羽しないため,生まれた翌年の繁殖期までは齢の識別が可能だと考えられた.
著者
井上 和子
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.1983, no.84, pp.17-44, 1983-11-15 (Released:2010-11-26)
参考文献数
14
著者
Yuichi Kurita Takumi Okumura Ryota Imai Tomohiko Nishigami So Tanaka Takanori Taniguchi
出版者
Fuji Technology Press Ltd.
雑誌
Journal of Robotics and Mechatronics (ISSN:09153942)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.612-621, 2023-06-20 (Released:2023-06-20)
参考文献数
31

Total knee arthroplasty (TKA) is the primary treatment for knee osteoarthritis. However, TKA is highly likely to result in prolonged chronic postoperative pain. The one-foot-one-step walking style is likely to induce fear of movement because of pain, leading to catastrophic thinking about the actual activity and consequently limiting movement. The aim of this study is to develop a system to induce the sensation of stair climbing through the interaction of the visual and kinesthetic senses. By controlling the amount of movement of the foot and the point of view in virtual space, the system can present a visual image of stair climbing even when the patient steps in a fixed position. This system enables easy motor imagery intervention even for early postoperative patients who have difficulty with the actual stair climbing movement. The clinical intervention experiment confirmed that the smoothness of the knee joint motion during descent was improved by intervening with motor imagery during stair ascent and descent for TKA patients.
著者
望月 修
出版者
社団法人 日本流体力学会
雑誌
日本流体力学会誌「ながれ」 (ISSN:02863154)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.133-142, 2005-04-25 (Released:2011-03-07)
参考文献数
2
著者
Naoko Sawada Koki Nakanishi Tomoko Nakao Tatsuya Miyoshi Masaaki Takeuchi Federico M. Asch Roberto M. Lang Masao Daimon
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Reports (ISSN:24340790)
巻号頁・発行日
pp.CR-23-0076, (Released:2023-10-18)
参考文献数
16

Background: Although accurate assessment of right ventricular (RV) morphology and function is clinically important, data regarding reference values for echocardiographic measurements of the right ventricle in the Japanese population are limited.Methods and Results: The World Alliance Society of Echocardiography (WASE) Normal Values Study was conducted to examine normal echocardiographic values in 15 countries. Using the WASE study database, we analyzed 2-dimensional echocardiographic parameters of RV size and systolic function in 192 healthy Japanese individuals and compared them with those obtained from 153 healthy American individuals. In the Japanese population, the absolute values of RV dimensions were smaller for women than men, although the difference disappeared after the data were adjusted for body surface area. RV dimensions, RV length and RV area were smaller in the elderly, but age did not affect RV systolic function. The absolute value, but not the adjusted value, of RV size tended to be smaller in Japanese than American individuals for both sexes. For men, RV systolic function parameters were lower in the Japanese population. This trend was not seen in women.Conclusions: The present study identified normal reference values for RV size and systolic function in a healthy Japanese population. Sex, age, and race had a significant impact on RV size; however, this trend was weak for RV systolic function.
著者
梅野 淳嗣 松本 主之 中村 昌太郎 飯田 三雄
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.1233-1242, 2010 (Released:2011-11-07)
参考文献数
74
被引用文献数
6

Collagenous colitisの診断と治療について概説した.本症は慢性の水様性下痢と大腸粘膜直下の膠原線維帯の肥厚を特徴とし,中年以降の女性に好発する.原因として遺伝的要因,薬剤(プロトンポンプ阻害薬,非ステロイド性消炎鎮痛薬,アスピリン,チクロピジンなど),自己免疫疾患,腸管感染症,一酸化窒素などが示唆されている.本症の内視鏡所見は,正常あるいは毛細血管の増生などの非特異的所見にとどまることが多いが,mucosal tearsと呼ばれる幅の狭い縦走潰瘍がみられることもある.本症の診断基準は臨床症状および病理組織学的所見よりなり,薬剤が関与する場合にはその薬剤の中止のみで改善することもある.治療薬として,アミノサリチル酸製剤,ステロイド,免疫抑制剤などの有効性が報告されている.
著者
森口 佑介 渡部 綾一 川島 陽太 中村 友哉 森本 優洸聖 石原 憲 土谷 尚嗣
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第86回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.SS-013, 2022 (Released:2023-07-07)

主観的で現象的な「○○であるという感じ」を意識と呼ぶ。近代心理学を創設したヴントやジェームズは,意識を心理学のテーマとしたが主観的な意識は実証主義を目指した心理学から排除されてきた。しかし近年は計算論的アプローチの導入や脳活動計測技術や心理学的実験パラダイムの発展により,主観的な意識を客観的な行動や脳活動と結びつける取り組みが進められてきた。これらの取り組みにより神経科学や工学,心理学等複数の分野にまたがる学際性を持つ重要なテーマとして意識の研究が進められている。本シンポジウムでは様々な視座から意識の理解・解明に挑戦している5人の若手研究者が,現在最前線で意識研究を行っている土谷と議論する。川島は意識の神経相関とその階層性,中村は錯視の時間形成,森本は知覚処理と運動・決定に関する処理の分離,石原は身体と外環境のインタラクションの熱力学的定式化,渡部は意識の発達について話題提供する。本領域のトップランナーである土谷を迎え,現在の心理学研究は意識に迫ることができるか,また迫るためには何が必要かを皆さんと一緒に考えたい。
著者
谷口 綾子 川村 竜之介 赤澤 邦夫 岡本 ゆきえ 桐山 弘有助 佐藤 桃
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_309-I_316, 2013 (Released:2014-12-15)
参考文献数
13

本研究では,運動着(ジャージ・スウェット)の日常的な着用が大学内の景観と授業態度に与える影響を定量的に明らかにするため,運動着での登校が学内の景観イメージにネガティブな影響を及ぼす,運動着での登校と授業態度との間にネガティブな関係が存在する,との二つの仮説を措定し,筑波大学の学生を対象としたアンケート調査により検証した.その結果,運動着での登校は大学内の景観イメージに「似合わない」とネガティブな影響を及ぼすこと,運動着で登校している学生は遅刻や居眠りをする度合いが高いなど授業態度との間にネガティブな関係が存在することが明らかとなった.また,公共交通で通学する学生の方が,そうで無い人と比べ運動着登校経験が少ないこと,運動着登校経験がある人の方が運動着登校にポジティブな意見を持つことが示された.