著者
鳥飼 宏之
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

爆薬で形成された爆風を用いて消火を行う方法を爆風消火という.本研究では,爆風消火を地震後の同時多発火災や広域林野火災のような通常消防では消火困難な火災に対する強力な減災手段として利用することを考え,その消火特性を微小爆薬を用いた爆風消火実験から明らかにする.特に爆薬を空中起爆した場合,地上では反射衝撃波が形成されるため,地面直上で爆薬を起爆するより火炎の消火効果が高くなる可能性がある.更に,光学的な流れの可視化手法と高速度カメラを用いて空中起爆による爆風消火の消火機構を解明する.最終的には,空中起爆による爆風消火の消火範囲を予測可能とするスケール則を明らかにする.
著者
松島 俊明 金森 克洋 大照 完
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.354-361, 1985-08-15 (Released:2010-08-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1 4

早稲田大学のプロジェクトチームは, 楽譜を読み, 10本の指と両足で電子オルガンを演奏する知能ロボットWABOT-2を開発した.このロボットは, 人間と人工の声で会話することができる.この論文では, 楽譜のデータ構造に基づいた高速の専用ハードウエアによる検出と, 楽譜の知識を利用したアルゴリズムを用いて, 印刷楽譜だけでなく, インスタント・レタリング楽譜も約15秒で認識できる本ロボットの視覚システムについて報告する.印刷楽譜の自動認識については, すでに幾つかの報告があるが, ロボット肩上に設置されたカメラで, 譜面台上に無造作に置かれて湾曲・変形した楽譜を実時間で読み取らなければならないという演奏ロボットの目として十分に使用できるシステムはない.視覚系の出力はロボットの手に直接渡されるため, 演奏不能な不正データの出力は許されない.したがって本システムでは楽曲規則および楽譜のもつ冗長性を利用して, 識別結果の矛盾と不協和音の検査をすると共に, その誤り訂正および補間を行い, 音楽的により正しい認識結果を得ている.3パートからなる童謡程度の市販エレクトーン楽譜1枚について, 処理速度15秒以内, 認識率ほぼ100%の結果を得ており, 実時間演奏ロボットの視覚系としての機能を充分達成することができた.
著者
中筋 直哉
出版者
日本都市社会学会
雑誌
日本都市社会学会年報 (ISSN:13414585)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.16, pp.29-47, 1998-07-25 (Released:2011-02-07)
参考文献数
38
被引用文献数
1
著者
松原 康介
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.1007-1014, 2021-10-25 (Released:2021-10-25)
参考文献数
32

本研究では、フェルナン・プイヨンの自伝『石叫ぶべし』(荒木亨訳)の精読から、プイヨンの参画内容を抽出・整理し、既往研究とも突き合わせながら文脈的に再構成することで、マルセイユ旧港復興の経緯と形成空間の特徴を明らかにする。まず旧港地区の形成と空間的特徴、老朽化の問題を既往研究より概括する。続いて、戦災の状況と、戦後市政におけるマルセイユらしい混乱の中でプイヨンが「追放」されるまでの経緯を戦史、政治史を踏まえて明らかにする。更に、石材ルートの確保やル・トロネ修道院等、地域の歴史的建築の調査を経て、プイヨンが主導権を握っていく過程を建築史も踏まえて明らかにする。その上で、計画論とファサード図を踏まえて、最終的に実現された旧港空間が、いかなる特徴を体現しているかを検討する。プイヨンは、先行計画を無理に否定することもなく、自らは柔軟かつ抑制的に6つの低中層住宅からなるファサードの計画に留めた。それが多様性を活かすプイヨンの計画論であった。南へ向かっては旧港、ひいてはノートルダム・ドゥ・ラ・ギャルドを臨み、北に向かっては斜面地の歴史的建築物が見え隠れする地中海的ヴィスタは、こうして実現されたのであった。
著者
多和田 眞一郎
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.58-68, 2004-08-31 (Released:2017-08-31)

This paper provides a general description of the phonological history of Okinawan language, mainly focusing on its palatalization and affricative changes. The outline of this paper is as follows; (1) Did the affricative change of */ki/ occur during the 16th century? (2) The affricative change of */ti/ already occurred in the beginning of the 16th century, prior to that of */ki/. (3) It appears that the affricative formation of */gi/ and */di/ occurred slightly later than that of */ki/ and */ti/. (4) The palatalization of */-ika/ had already occurred in the beginning of 16th century. (5) The affricative formation of */ita/ occurred in the beginning of 16th century. (6) The palatalization of */iga/ occurred in the beginning of 16th century. (7) The palatalization of */ida/ must have occurred during the 16th century.
著者
姫野 誠一郎 松尾 直仁 鈴木 継美
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.31-39, 1989-01-31 (Released:2010-06-28)

マウスの飼育環境が,個体数増加や行動にどのような影響を及ぼすかを調べるため,実験室内でマウスを自由に繁殖させながら長期間飼育することのできる「populationcage」を製作した。「populationcage」は,openfield(1m×1.5m)とそれに接続した多数の小ケージとから成る。4週齢のICR系マウスの雌雄各4匹ずつを導入し,以後約20週間にわたって自由に繁殖させ,総個体数,性・年齢別個体数構成,出生・死亡数,及び種々の行動について観察を行なった。本研究においては,餌の供給量や居住空間を変化させ,個体群の大きさを制御する要因の解析や,密度増加に伴うマウスの行動変化等について検討した。餌を十分に摂取させた場合,総個体数の増加はほぼ直線的であった。その際,哺育仔総数の増加に伴い,他の哺育仔に押しのけられて授乳されずにいる新生仔の死亡率が著しく増加した。餌の供給量を制限した場合,マウスの総個体数は180匹に達して以降全く増加せず安定した。居住空間を様々な広さに変化させた場合,openfieldに出て来て授乳を行なったり,あたかも壁を越えようとするようにマウスが跳び上がったり等の特徴的な行動が観察されたが,それらの行動が初めて観察された日の個体数密度は,いずれの広さの場合においてもほぼ同じ値であった。
著者
不二門 尚 洲崎 朝樹
出版者
日本眼光学学会
雑誌
視覚の科学 (ISSN:09168273)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.89-94, 2019 (Released:2019-12-25)
参考文献数
19

軸外収差抑制のコンセプトの累進多焦点コンタクトレンズ(MFCL),および近視性の網膜像のボケを誘発する設計の同心円型多焦点MFCLが,光学的な近視進行抑制法として注目されている。CLは眼鏡と比較して,眼球運動の影響を受けないため,網膜像を理論通りにコントロールできる利点がある。MFCLの近視進行抑制率は,30%程度と報告されている。累進低加入度の累進MFCLを用いたパイロット臨床研究で,近視進行抑制が可能であることが示されたが,その機構は軸外収差理論では説明できず,調節反応量は少ないことから,調節努力軽減の機構が働いている可能性が示唆された。近年被写界深度を深めるコンセプト(extended depth of field; EDOF)のコンタクトレンズでも,臨床研究で近視進行抑制の効果が示されており,調節努力を少なくする設計のMFCLが近視抑制効果をもたらしている可能性がある。
著者
林 真一郎 和田 圭二
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.136, no.10, pp.791-797, 2016-10-01 (Released:2016-10-01)
参考文献数
34
被引用文献数
3 3

This paper discusses the influences of common source inductance in power converter circuits. Common source inductance is the source-side inductance inside a power module, and it shares common circuit parameters with both the gate drive and power circuit. Therefore, common source inductance will influence the switching characteristics of the module. No paper has yet addressed the relationship between common source inductance and switching characteristics such as surge voltage and switching loss. In order to improve the switching characteristics during turn-off operations, this paper presents a design procedure with respect to common source inductance. In addition, experimental results rated at 500V, 40A are shown.
著者
的場 輝佳 真部 真里子 原 知子 坂本 宏司
出版者
関西福祉科学大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

京都の老舗料亭の料理人、管理栄養士・医師とコラボして、高齢者が好む“おいしい”嚥下食を設計し、高齢者が好む調理法(レシピ)を提言するとともに、嚥下食のおいしさの原理を以下のように明らかにした。そのポイントは、「変化を持たせる」ことで、複数の食材を同時に調理するのでなく、個々の食材ごとにその特徴を生かして“五色、五味”のバランスにも配慮して、飽きない料理に仕上げることである。
著者
上田 昌宏
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.2022-029, 2023 (Released:2023-04-15)
参考文献数
5

2020年からのCOVID-19の感染拡大に伴い,教育は大きな転換期を迎えた.薬学教育においても,対面授業が大きく制限され,薬学部教員の多くが,慣れないオンライン教育の実施を余儀なくされた.このため,薬学部教員は,全くノウハウがない中でそれぞれが独自に取り組みを行う必要に迫られた.2020年度内から教育系の学会では,オンライン教育の実施に関する情報共有の場が設定された.しかし,その多くは,成功体験や構築例の報告であり,意図せぬ小さな失敗や間違い(しくじり)を共有する機会は限られていた.そこで筆者は,薬学部教員を対象として,オンライン教育における「しくじり」およびその対策に関する調査を実施した.その結果,9名のしくじり先生から,報告を受けた.本稿では,しくじり先生の経験談を紹介することで,オンライン教育における「しくじり」を振り返る.今後の教育に活用し,良い点は継続し,改善すべき点は良くすることで質の高い教育を実践するためのPDCAサイクルを進める一助になることを期待している.
著者
Koji Muro Naohiro Toda Shinya Yamamoto Motoko Yanagita
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.583-589, 2021-02-15 (Released:2021-02-15)
参考文献数
20
被引用文献数
3 4

Novel treatments with rituximab or direct-acting antiviral agents (DAAs) were expected to improve the clinical outcomes of hepatitis C virus (HCV)-associated cryoglobulinemia in the last decade. Recently, however, persistent cases of cryoglobulinemia have been reported, and the ideal approach to treating such cases has not been established. We herein report a case of the successful treatment of HCV-associated cryoglobulinemic glomerulonephritis with rituximab, DAAs, occasional plasmapheresis and long-term steroid, with the patient's renal function and proteinuria improving over the long term despite serologically persistent cryoglobulinemia. This case suggests the efficacy of combination treatment with rituximab, DAAs, occasional plasmapheresis and long-term steroid for persistent cryoglobulinemia.
著者
荒金 英樹 巨島 文子 神山 順 豊田 義貞 堀 哲史 松本 史織 八田 理絵 仁田 美由希 山田 圭子 樋口 眞宏 山口 明浩 草野 由紀 関 道子 永見 慎介 華井 明子 竹浪 祐介 森野 彰人 樹山 敏子 和田 智仁 村田 篤彦
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.1095-1100, 2015 (Released:2015-10-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1

京都では食を支える地域作りを目的に様々な連携体制の構築に取り組んでいる。医科歯科連携体制として「京都府口腔サポートセンター」、京都市山科区での多職種連携を目指した「山科地域ケア愛ステーション」、京都府、滋賀県での食支援を目的とした「京滋摂食嚥下を考える会」を紹介する。京滋摂食嚥下を考える会では地域連携の基盤として嚥下調整食共通基準の導入と独自に作成した「摂食・嚥下連絡票」を提案、京都府基準として関連職能団体等の承認を得た。この基盤を背景に、地域連携を促進するため、研修会や調理実習を各地で開催している。また、京料理をはじめとした京都の伝統食関連産業の団体と連携し、介護食を地域の食文化と発展させる活動も展開している。平成27年度からは京都府医師会などの職能団体の協力のもと、府内各地での多職種、施設間連携を促進させるため、市民向けの食支援相談窓口を設置、府民の食支援と啓蒙活動を計画している。
著者
藤沢 彰
出版者
日本芝草学会
雑誌
芝草研究 (ISSN:02858800)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.58-62, 1994-10-31 (Released:2010-06-08)