著者
小林 奈美
出版者
北里大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

認知症高齢者用繰り返し転倒予測尺度(FRAT-D)を用いた、効果的な予防対策を検討した結果、転倒予防運動、転倒予防電子センサー類の使用、転倒アセスメントツールの使用、布団の使用、安全用具の着用が有効であることが示唆された。この尺度は認知症高齢者にのみ有効であり、適用は認知症の診断を受けた高齢者に限るべきである。
著者
柳原 正治 深町 朋子 明石 欽司 辻 健児 朴 培根
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究においては、韓国における近代ヨーロッパ国際法の受容過程、および、わが国における近代ヨーロッパ国際法の受容過程、を主たる検討課題とした。そのなかでも、とりわけ、わが国における受容は成功し、韓国においては失敗したと一般にいわれることは正しいのか、正しいとすれば、どのような理由に基づくのか、という点を主たる検討対象とした。そのなかで、「華夷秩序」のなかの、中国と「藩属国」である韓国との関係をどのように捉えるか、韓国は中国にとって"peers"(同僚)であったのか、「厚往薄来」という朝貢の原則が実際の場面で守られていたのか、という点が、一つの重要な争点であることが、研究代表者が基調報告を行った、ハワイ大学韓国研究センター主催の国際シンポジウム(2003年7月23日-27日)のなかでも、あらためて確認された。この点は、2003年12月6日に韓国釜山で行われた、研究分担者と海外共同研究者が一堂に会した研究会の場でも、議論の対象となった。韓国側の海外共同研究者の中でも韓国をpeersと見ることには否定的な研究者がいることが確認された。この争点の解明には、日韓の研究者だけではなく、中国の研究者も交えて行うことが必要であることについて、日韓の研究者の間で一致した。それとともに、21世紀における、新しい日韓関係のあり方、さらには、新しい国際法秩序の中における両国の役割についても、両国の研究者の間で率直なかたちで議論がなされた。そのなかで、厳密な法律論に固執するのではなく、未来を見据え、大局的な問題解決の方式を考えるべきではないかという、提案もなされた。
著者
土居 文人
出版者
神戸市立工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

日本で最初に出版された和語の語源辞書、松永貞徳『和句解』(1662年刊)の研究及び近世に執筆・出版された語源研究書・語源辞書の研究を行った。『和句解』は、見出し語が近世初期に出版された易林本系の節用集(横本『二躰節用集』のグループに属する節用集)から和語を抄出して立項したものであることを証明した。また、『和句解』の語源説に吉田神道の語源説が影響していることを、清原宣賢〈後抄本〉『日本書紀抄』所載の語源説との比較から証明した。また、『和句解』の「日常用語を含めた和語を網羅的に収集して見出し語として立項し、和文の語釈(語源説)を記す」記述形式が、中世の辞書と歌学書の記述形式の総合であると指摘した。
著者
柳原 正治 辻 健児 明司 欽司 李 黎明 韓 相熙 深町 朋子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

近代国際法はヨーロッパ諸国間の関係を規律するものとして歴史の場に登場した。他方で、東アジアには秦の始皇帝以来、伝統的な華夷秩序が妥当しており、独自の「国際秩序」が2000年近く続いていたことになる。19世紀中葉から後半にかけて非ヨーロッパ国としてヨーロッパ国際法を受容せざるを得なかった中国や韓国や日本は、伝統的な華夷秩序と近代ヨーロッパ国際法との相克をいかに理論的に、かつ実践的に解決していくかという課題を背負っていた。本研究は、この課題に3ヶ国がそれぞれどのような形で取り組んでいったか、その試みは成功したといえるか、3ヶ国に「受容」の違いがあるとすればそれはなにに起因するか、という問題に正面から取り組んだものである。本研究ではまず、わが国の国立公文書館、外務省外交史料館、国立国会図書館憲政資料室など、韓国の奎章閣など、そして、中華人民共和国清華大学所蔵の「王鉄崖文庫」の史料群の収集に努めた。また、19世紀東アジアにおけるヨーロッパ国際法の受容について、3ヶ国の学者たちがどのような研究をこれまで行ってきたかの、研究動向の詳細な分析を行い、合わせて、詳細な文献目録を作成した。それとともに、近代国際法の受容と伝統的な華夷秩序の相克の具体的・個別的な事例の検討も行った。すなわち、近代ヨーロッパの「勢力均衡」と東アジア的な「均衡」・「中立」・「鼎立」の関係、近代ヨーロッパ国際法上の諸概念の翻訳の問題、近代ヨーロッパ国際法上の具体的な制度の受容の一つのケースとしてのわが国における「領海制度」の導入過程、華夷秩序の儒教原理と朝鮮の「自主」の問題、1899年の韓清通商条約を契機として清国と韓国の両国関係を華夷秩序のなかの関係として捉えることの是非の問題、日本における自立した国際法学の成立、などの諸問題について、研究成果を挙げることができた。
著者
山口 雄仁 渡辺 哲也 岡田 伸一 鈴木 昌和 川根 深
出版者
日本大学短期大学部
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本課題研究は大きく分けて,1.数式を含む文書の光学的文字認識(OCR)システムの開発と2.OCRされた文書の日本語による自動読み上げシステムの開発から構成される。それぞれについて,研究成果の概要は以下の通りである。1.については,(1)日本語・英語両方の文章から数式領域を正確に切り出す技術の確立,(2)数学記号認識の精度を大きく向上させる新たな特徴抽出法の研究や数学記号用認識辞書の整備,(3)認識結果をLa TeXを含む様々なファイル形式で出力する技術の開発などを行い,高度な理数系専門書でも精度よくOCR出来るようになった。また視覚障害学生でも,音声操作でOCRが出来るような環境を用意した。2.については,(1)La TeXで書かれた文章を汎用エディターに読み込み,それを文章解析して数式部分を日本語できちんと理解出来るように音声出力する,Windows汎用画面読み上げソフトウェアに対応した音声マクロを開発し,(2)評価実験を通してその音声マクロの読み上げ法や操作環境の改良を行った。その結果,ある程度理数系の専門知識がある学生であれば,容易に音声で理数系文書の内容が理解出来るようになった。以上の2つを組み合わせれば,墨字で印刷された理数系専門書に音声で十分アクセスすることが出来,理数系視覚障害学生が自立的に墨字文書を読む道が開けたと言える。これは,今後1と2が一体化したより汎用な「数式自動読み上げシステム」を開発する上で,重要な指針を与えるものである。
著者
阿部 清彦
出版者
関東学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、重度肢体不自由者のコミュニケーションを支援するために、視線によりコンピュータを操作したり、文字などを入力する視線入力システムについての研究が行なわれている。視線入力システムを使用するには、画面に表示されたアイコンを視線で選択するだけでなく入力を決定する必要がある。本研究課題では、ユーザの視線と意識的な瞬目(随意性瞬目)を自動検出することにより、視線と瞬目のみで一般的なパソコンを操作するシステムを開発した。このシステムは、市販のビデオカメラとパソコンから構成されており、汎用性が高く安価である。
著者
箕浦 幸治 今村 文彦 今泉 俊文
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では,砂の堆積現象が最も広範囲に現われた869年貞観仙台沖地震津波による堆積物運搬の様式を粒度組成及び堆積相から類推し,津波による流れの水理学的実体を理解するための初期条件を求める堆積学的検討を行った。また,静岡県南伊豆町入間において東海地震津波によって形成された丘陵状の集積土砂堆積物も研究対象とし,堆積物運搬過程の検討を行った。申請設備備品であるレーザー回折式流度分析装置による粒子組成解析結果からは,貞観津波堆積層を構成する砂層の明瞭な陸側細粒化現象が検出された。この現象は堆積物の移動と集積を試行する水槽実験装置の再現結果と調和しており,堆積層の細粒化様式が溯上津波のエネルギー散逸を反映する重要な基準として扱い得る可能性が示されるとともに,水理学的結果と堆積作用の理解から,我が国において特に顕著な災害を及ぼした貞観地震津波・東海地震津波による破局的な流れの堆積学的作用が明らかにされた。この基準は,海岸とその後背平野の成り立ちを理論的に理解する自然地理的条件を与え,更に海岸平野に於ける都市・産業基盤整備に不可欠の知識を与えるものと期待される。また,タイ南西部海域において採取した堆積物試料を用いて古生物学的解析を行い,津波前後での底生有孔虫群集の変化を明らかにするとともに,引き波によって生じた混濁流が海底に津波の痕跡を残しうることを示した。したがって,海域における堆積物掘削により,津波発生の履歴を知ることが出来る。平成19年7月にイタリア・Perugiaで開催されたIUGG総会において,これらの結果を津波災害と堆積現象の実例として紹介し,注目を集めた。
著者
舘鼻 誠
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

安芸国の中世武士団小早川氏の領域(安芸東南部)には、中世の石塔(宝篋印塔・五輪塔)が無数に残る。本研究はこうした石塔を歴史資料として活用するため、残欠に至るまで一つひとつ調査を行い、所在位置や原位置の確認、個体数の把握、各部寸法や特徴など、今後の研究に必要な基本データを収集したものである。調査地点は6 市町・279 箇所にわたり、確認した石塔は、宝篋印塔339 基、五輪塔1042 基、一石五輪塔487 基に及ぶ。旧三原市域を除けば、初めて実施された石塔の悉皆調査であり、その意義は極めて大きい。
著者
桑野 良一
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2007

光学活性リン化合物PhTRAPがキレート配位したルテニウム錯体を不斉触媒として、2,6-および2,7-二置換ナフタレンの触媒的不斉水素化を試みたところ、最高92%eeの光学活性テトラリンが得られた。この不斉触媒を用いてキノリンの不斉水素化を試みたところ、通常予想されるピリジン環ではなくベンゼン環が選択的に還元され、光学活性5,6,7,8-テトラヒドロキノリンが最高84%eeで得られた。
著者
中神 潤一 蔵野 正美 安田 正實 吉田 祐治 田栗 正章 種村 秀紀 辻 尚史
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

ファジー推移のマルコフ決定過程への導入は千葉大学計画数学グループ[蔵野正美、安田正實、中神潤一、吉田祐治(北九州市立大学)]の主要研究課題で1991年より始められている。本研究課題は、動的ファジーシステムの最適構造についてファジー演算から導出される数学構造の意味付けを深めることにより、最適停止問題・ゲーム理論等に応用できる具体例の作成を通じて、ファジー理論の本来の要請である頑健性構造の解明に研究を拡大することを目標とした。科研費の内示当初より、共同研究者である吉田祐治教授(北九州市立大学)と共同の本格的な科研費研究集会を千葉2回九州2回と交互に4年間に渡って毎年開催する運びとなった。13年度は北九州市立大学、14年度は千葉大学、15年度は千葉大学、最終年度の16年度は北九州市立大学で科研費研究集会「不確実性下での数理決定とその展望」を開催、18件の発表が好評のうちに行われた。最新の研究成果の発表に対する討論と貴重な情報の交換が得られ大変有意義であった。このような交流は境界領域としての学問を進めていく上でぜひ必要と考えている。本研究課題において、裏面に記載した研究成果を含む10編の査読付き論文を作成した。国際Proceedings及び報告論文は17編、国内外の研究発表は29件になった。以上の研究成果は、今後の研究の発展と共に、国際シンポジウム等で積極的に発表し、国際的に評価された学術専門誌に投稿しその評価を受ける予定である。最近ザデーが提唱しているパーセプション(認知)の概念をファジー集合の新しい解釈として、ファジー値をもつ最適停止問題に適用した論文を発表した。これに続く論文としてマルコフ決定過程に適用した論文を作成中である。またファジー選好順序を動的決定過程に取り入れて、人間的決定を考慮した人工知能等の定式化を試みている。次年度以降の研究目標の一つとしたい。また、最後になりましたが、計算機・図書関係の整備等への補助金の支給に感謝致します。
著者
丸山 文裕 馬越 徹 (1985) 馬越 徹 竹花 誠児 JOE Hicks 山崎 博敏 山下 彰一 HICKS JOE E.
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

本研究は、ドーア(Ronald P.Dore)教授の「学歴病(Diploma Disease)」仮説を、アジアの現状に即して検討することであった。すなわち、学歴獲得競争は後発工業国ほど激しく、それゆえに学校教育は本来の教育機能よりも選抜機能を強め、一種の病的症状を呈するという考え方である。われわれは東アジア(中国,韓国),東南アジア(フィリピン,インドネシア,マレーシア,タイ)の各国を対象に検討を重ね、次のような結論を得た。1.アジア各国では、教育機会は拡大しているにもかかわらず、なおそれを上回る上級学校進学要求が根強く存在している。特に大学への進学要求はますます高まっており、競争は激しさを増している。このため、学校教育のすべての段階で「試験」のための教育という圧力にさらされている。」2,国家・社会は、その経済発展政策において、大学卒のマンパワーをますます必要としており、高等教育の拡大に力を入れているが、雇用市場の方は、大卒者を十分に吸収できる条件が必ずしも整っているとはいえない。そのため、大卒失業者が出ている国もある。また、大学教育の内容(カリキュラム)が、社会の要求に合わず、大学と社会の間に不適合現象がみられることが多い。3.いわゆる「学歴病」の克服に、明確な処方箋を発見した国は今のところ見当らないが、上記のような問題を改善するために、各国とも、1)高等教育制度の多様化、2)教育内容・教授法の改革、3)教員のスタッフ・デベロップメントの強化、4)入試制度の改善、5)高等教育財源の増大、などに懸命に取組んでいる。
著者
井上 民二 ABANG A.Hami LEE Hua Seng 市岡 孝朗 山岡 亮平 永益 英敏 加藤 真 湯本 貴和 HAMID Abang.A LEE HuaSeng 寺内 良平 HAMID Abang 山根 正気 市野 隆雄
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

1.植物フェノロジー調査:林冠調査区の樹木、つる、着生などの植物に個体識別コードをつけ(約600本)、花芽形成から開花、結実にいたる繁殖ステージと、展葉の生長ステージの記録を月2回、1992年から4年間継続しておこなった。その結果、展葉には多くの種でかなりの周期性がみられることが明らかになった。非一斉開花期の開花は年中を通してあまり変化がないが、3-4月ごとにやや多いこともわかった。また1996年2月から半年にわたって起こった一斉開花では、モニターしている樹木550個体のうち381個体(69.3%)、種数にして192種のうち66種(34.4%)をはじめとした189属402種の開花の開始から終了までを記録した。2.昆虫個体群トラップ調査:林冠調査区の4ヵ所(林床、中木層17.4m、高木層35m、および林冠ギャップの地上部)に誘蛾灯(UVライト)による採集を月1回、1992年から4年間継続しておこなった。4年間に採集した昆虫の総数は500万頭に及ぶ。その採集標本の同定と結果の解析を現在、行っている。3.動植物共生系調査:1996年2月から始まった一斉開花で107属160種の植物について送粉者を確認した。そのほとんどは、これまで4年間に開花の記録がない種である。その結果、マレー半島部では、アザミウマによって花粉を媒介されるとされていたShorea属は、サラワクでは甲虫、とくにハムシ類によって花粉媒介されることが明らかになった。この一斉開花以前に、Lambirで鳥媒であるとされてきたのは、228種の樹木のうちのGanua sp.(Sapotaceae)1種のみ(Momose & Inoue 1994=しかも間違い)、3種のヤドリギ(Loranthaceae)(Yumoto 1996)、7種のショウガ(Zingiberaceae)(Kato 1996,酒井 修士論文)に過ぎず、しかも送粉者はクモカリドリ2種(Nectariniidaeの1亜科)にほぼ限られていた。しかし、今回の一斉開花でDurio3種(Bombacaceae)、属未同定ヤドリギ(Loranthaceae)、Tarenna1種(Rubiaceae)、Madhuca1種、Palaquium2種(ともにSapataceae)が新たに鳥媒であることが確認され、送粉する鳥もクモカリドリ4種、タイヨウチョウ1種(Nectariniidae)、ハナドリ2種(Dicaeidae)、コノハドリ1種(Irenidae)、また盗蜜/送粉者としてサトウチョウ(Psittacidae)の関与が明らかになった。コウモリ媒は以外と少なく、Fagraea1種(Loganiaceae)が確認されたに留まった。さらにGanua sp.(Sapotaceae)では、リス/ムササビ媒というまったく新しい送粉シンドロームが見い出された。これは花弁と雄ずい群が合着し、肉厚の器官を成し、それ自体、糖度15%と甘い報酬となっている。花蜜は分泌しない。花弁/雄ずい群が花床からすぐに離脱するのにかかわらず、雌ずいは非情に苦く、落下しにくい。リスとムササビが頻繁に、かつ執拗に訪花し、花弁/雄ずい群を外して食べるうちに、前肢や口のまわりに花粉をつけるのが観察された。また、フタバガキ科などの突出木を中心に種子散布と種子捕食の過程の調査を行った。4.植物繁殖システム・遺伝構造調査:フタバガキ科Dryobalanopsis属、Shorea属植物とショウガ科植物のDNAサンプルの採取を終了し、現在分析中である。5.動植物標本管理と分類学:これまでの4年間で採集できなかった植物の花と果実の標本を今回の一斉開花で得ることができた。昆虫標本も、送粉者、種子捕食者を中心に整備が進んだ。6.研究成果の出版:調査結果は現在順調にそれぞれの学術雑誌に投稿され、出版されている。年度末に英文の報告書を出版する予定である。
著者
百原 新 工藤 雄一郎 沖津 進
出版者
千葉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

最終氷期から現在までの栽培植物を含む植物群の分布域変遷におよぼした人為的影響を明らかにすることを目的に,全国の遺跡調査報告書に記載されている種実類や葉などの大型植物遺体出土記録をデータベース化した.国立歴史民俗博物館に収蔵されている,全国の遺跡発掘報告書を閲覧・入力し,約63,000件の大型植物遺体データが得られた.その結果,カジノキなどの栽培植物やコナギなどの雑草類の大陸から日本への伝播時期や,スギやイチイガシ等の有用樹種の日本の中での地理分布変遷が明らかになった.
著者
大西 広 田上 孝一 瀬戸 宏 松井 暁
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の多くの部分は研究代表者・分担者が所属する社会主義理論学会の協力を得た。特に中国の研究者との交流を重視し、2013年12月に12名の中国人研究者を招き、「中国特色社会主義の行方と理論問題」の主題で第四回日中社会主義フォーラムを開催した。2015年4月には中国人研究者1名を招き講演会「『さあ「資本論」を読んでみよう』について」を開催した。2016年3月には四名の中国人研究者を招き、「中国社会主義の多様性」を主題に第五回日中社会主義フォーラムを開催した。いずれも社会主義理論学会と当科研費プロジェクトの共催である。参加者・集会報告などはいずれも社会主義理論学会HPに掲載されている。
著者
今井 喜胤
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

一般的手法により、左回転の光を出す円偏光発光(CPL)発光体、右回転の光を出すCPL発光体を得るには、有機合成的手法を用い、分子構造のどこかに、それぞれ右手と左手の関係にある不斉炭素([R]および[S])などの導入が必要である。本研究では、有機合成的手法をできるだけ回避し、光学活性な発光性分子を、各種物性を有する有機あるいは無機マトリックス中にドーピングすることにより、光の回転方向の制御に成功した。
著者
岡本 仁宏
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究においては、公益法人の政治活動規制の規範はどのようであるべきかについて探求している。このため、本年度に至るまで、持続的に、第一に、日本NPO学会において、諸外国での規範の状態に関して、積極的に学会報告やセッション形成を行い、関連の研究者と交流しつつ知見を深めてきた。第二に、公益認定制度の実態と、その問題点の把握を行ってきた。さらに、第三に、時事的に関連する問題、特に公益法人制度と比較対象として重要な特定非営利活動法人制度も含めて、生起する諸問題に対して積極的に実態把握に努め、適宜その成果を発表してきた。これらの過程での研究成果については、別途成果リストを参照されたい。主たる知見としては、政治活動の概念における、選挙活動とそれ以外の活動を類型化したうえで、それぞれの特に英米法諸国における非営利公益団体に対する規制内容を把握した。具体的には、一般的には選挙活動に対する厳しい規制がなされている。しかし、それ以外のアドボカシー、ロビーイングについては一定の規制をしつつも緩やかに執行されているということができる。日本では、法人類型によって、この規制に大きな差異が存在しているが、その正当性については、十分に検討されていないことが明らかになった。なお、当初の研究計画にあった全国の公益認定等委員会(都道府県の場合には正式には合議制機関)及び行政庁に対する調査は、2018年度に持ち越されることになった。この理由は2017年度にも関係するが、2017年9月から大阪府の同委員会の委員長に就任したことから、業務との関係で、知見が深まっていることと職務上の守秘義務との関係で調査についての慎重な取り扱いが必要になったことによる。2018年度は最終年度に当たることから、これらの条件を踏まえつつも、計画された調査を実施し、さらにこれまでの学会報告を含めて成果としてまとめて公表していく予定である。
著者
堤 千絵
出版者
国立科学博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

さまざまな環境に進出し多様化を遂げた植物の大部分が菌と共生し,植物の陸上への進化には共生菌が重要な役割を果たした可能性が指摘されている.本研究では,地上から樹上へと進化した着生植物に着目し,着生植物の進化に伴う共生菌の遺伝的分化,各菌が植物の生育に与える影響を調査した.ラン科クモキリソウ属の着生種フガクスズムシと地性種クモキリソウでは,菌根菌が遺伝的にわずかながら異なり,菌により植物の発芽率やプロトコーム分化率が異なることから,菌の分化が生育場所の分化に関与していると推定された.ツツジ科の一部の分類群でも分子系統解析や菌の比較を行った.
著者
原田 俊太
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

熱エネルギーと、電気エネルギーの相互変換を可能にする熱電変換材料は、エネルギー有効利用の観点から、注目を集めている。最近の研究で、量子井戸構造による電子の閉じ込めによって、飛躍的に熱電変換特性が向上する事が理論的に予測されている。本研究ではSiC結晶の積層欠陥形成を制御することにより、バルク半導体中に量子井戸構造を形成することを目的としている。窒素ドーピングによる結晶成長により、六方晶SiC結晶中に立方晶型の積層欠陥が導入された。立方晶SiCは六方晶SiCよりもバンドギャップが小さいため、形成した積層欠陥は量子井戸となり、バルク結晶中に量子井戸構造を形成することに成功した。
著者
宮野 公樹 森 怜奈 梅山 佐和 鈴木 望
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

複雑化する社会的、技術的課題解決の必要性に伴い、“異分野融合”を謳った様々な研究や研究プロジェクト等は数多く存在する。しかしながら、安易に“異分野が集結しただけで融合”と主張しているものがほとんとではないか? 本研究では、効果的な融合・越境を創出するための知的基盤を得ることを目標とし、研究者コミュニティに着目しての本質的理解と理論モデルを検討し、それを仮説とした調査研究の項目創出を行った。
著者
村上 昌弘
出版者
共立女子大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

【目的】岩海苔(Porphyra pseudolynearis)は独特な香りと風味を有し、海苔類の中でも高級なものとされている。乾岩海苔を焙焼後、温水に浸漬すると海苔の旨味成分である5'-IMPが急激に増加し、旨味が増すことが知られており、これにはアデニリックデアミナーゼ(ADase)の関与が示唆されている。また、高温処理によっても乾岩海苔中のADase活性は消失せず、酵素学的にも興味深い。本研究では、ADaseの安定化機構の解明を最終目的とし、ADaseの単離・精製法、さらに酵素の大量抽出法について検討を加えた。【方法】試料の乾岩海苔は、西伊豆土肥産のものを使用した。トリス酢酸緩衝液で抽出した酵素液にADase活性が認められたので、以下の方法により精製を試みた,すなわち試料に、リン酸カリウム緩衝液を加えてホモジナイズし、遠心分離した。透析・脱塩後、弱陰イオン交換体であるCellulose phosphate樹脂で処理し、0.45M〜1.0M KClを含む緩衝液によるリニアグラジエント法により分画した。次に、5'-AMP agaroseによるアフィニティークロマトグラフイー、続いてButyl Toyopear1650Sによる疎水クロマトグラフィーを行った。【結果】Cellulose phosphateカラムクロマトグラフイーの結果、ADase活性はKCl濃度0.5M付近に回活性画分を限外濃縮し5'-AMP agaroseを用いるアフィニティーカラムクロマトグラフィーに付したとKCl濃度0.2M付近に回収された。さらに硫安濃度1.5M〜0MまでのButyl Toyopear1650Sを用いる疎グラフィーに付した結果、硫安濃度1.3M付近に活性があり、5'-AMPを基質とした酵素反応試験の結果にADase活性が認められた。ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、銀染色をした結果、薄い複数のバされたが、その中でも濃かった6万付近のバンドがADaseであると推測された。