著者
鳥谷 真佐子
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、1.研究力向上を導く戦略策定のための研究力分析指標提案、2.研究戦略策定・実施プロセスモデル提示を試み、大学における研究戦略策定・実施方法を体系化することにある。研究力分析に関わる組織、研究力分析を研究戦略に活かすプロセス、研究戦略実施に関する調査を行った。参考としてイギリスの研究評価制度の調査を行ったが、イギリスでは指標を用いた評価はピアレビューを行う際の参考としてのみ用いられていることが明らかになった。指標による評価は、被評価側の偏った行動を誘起しやすいため、自機関の分析のための指標利用と、研究機関への資金配分のための指標利用は、厳密に区別する必要がある。
著者
等々力 英美 大屋 祐輔 高倉 実 大角 玉樹 青木 一雄 佐々木 敏 勝亦 百合子
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

沖縄野菜を主体とした沖縄型食事介入による 1-2 年間の無作為割付比較試験を行った。 対象者は横浜東京在と沖縄在住の 40-60 歳代夫婦、合計 61 1 名であった。伝統的沖縄食事パターンによる短期の介入の後に、継続する情報介入を行うことで、血圧の減少が持続していた。薄味の食事摂取による集中的な教育効果と、情報介入による長期の働きかけの組み合わせは、減塩を含めた食事指導の有効なツールの1つになりうると考えられた。
著者
猪上 淳 飯島 慈裕 高谷 康太郎 堀 正岳 榎本 剛 中野渡 拓也 大島 和裕 小守 信正
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

北極の温暖化増幅に関して、低気圧活動の役割に着目した観測的・数値的研究を実施した。(1)シベリア域の低気圧活動の変動は、水蒸気輸送過程を通じて水循環・河川流量の変動に影響を与えるとともに、夏季北極海上の海氷を減少させる特有の気圧配置を左右する要素であること、(2)冬季バレンツ海やベーリング海の低気圧活動の変化は、近年の北極温暖化および海氷減少に影響する一方で、中緯度での厳冬を引き起こし、その予測には中緯度海洋の変動が鍵であること、(3)北極海航路上の強風や海氷の移流を精度よく予測するには、高層気象観測網の強化が必要であること、などを明らかにした。
著者
佐々木 恵彦 小島 克己 丹下 健 井出 雄二 八木 久義
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1991

これまでマングローブ林を農地開発した場所や開拓地で第四系海成堆積物を起源とした酸性硫酸塩土壌が問題となってきた。しかし農地開発や土木工事の規模が大きくなるにつれ、第三系堆積岩を起源とする酸性硫酸塩土壌の生成も顕在化してきた。本研究により、酸性硫酸塩土壌の母材となるパイライトを含む第三系堆積岩が、これまで問題となっていなかった場所も含め、広く日本に分布することがわかった。インドネシア東カリマンタン州やタイ南部でパイライトを含む第三系堆積岩を発見し、これまで第四系堆積物のみが問題となっていた熱帯地域においても、今後開発にともない第三系堆積岩を起源とする酸性硫酸塩土壌が問題となる可能性があること明らかにした。常磐自動車道の建設地で露出した古第三系堆積岩からは酸性化により特徴的にマンガンの溶出が起こり、植栽された樹木にもマンガンの過剰障害が顕著に現れた。このような強酸性土壌には低pHに対する耐性だけでなく、マンガン過剰に対する耐性が植栽樹木に要求される。このため比較的マンガン過剰に耐性があると考えられるシラカンバを用いて、マンガンによる障害の発生機構を調べ、光合成系に障害が発生することがわかった。熱帯産マメ科樹木のAcacia mangiumとA.auriculiformisは、低pHやマンガン、アルミニウムの過剰に対して耐性が大きく、熱帯での酸性硫酸塩土壌による荒廃地の森林再生に有効な樹種であることがわかった。さらなる耐性をもつ新樹木の作成にむけて、A.mangiumとA.auriculiformisの組織培養系を確立し、さらにA.mangiumの細胞培養系を用いて低pHとマンガン過剰に対する細胞レベルの反応を明らかにした。また高マンガン耐性細胞系の選抜をおこなった。これらの研究を基盤にして、酸性土壌に起因するストレスに対する耐性機構を解明し、また新たな耐性の付与を行い、荒廃地への造林樹種の開発と森林再生を目指して研究を進めて行く。
著者
本郷 宙軌
出版者
琉球大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は次の3つの計画から構成されている.計画1:過去のサンゴ礁生態系の復元(最終氷期以降のサンゴ礁試料を用いて,過去のサンゴ礁生態系を復元する.とくに,サンゴ礁生態系の成立維持に関わった重要な生物(以下,鍵種)を発見する.).計画2:現在のサンゴ礁生態系の評価(過去100年間を対象に,地球温暖化と人為影響を受けたサンゴ礁生態系の現状評価を行う.).計画3:将来のサンゴ礁生態系の予測(将来の地球温暖化と人為影響下におけるサンゴ礁生態系の予測を行う.).・計画1の実施状況:南西太平洋におけるサンゴ礁生態系の鍵種発見についての成果を国際誌に公表した.また,西インド洋におけるサンゴ礁生態系の鍵種発見についての成果をまとめた.さらに,これまで進めてきた3つの海域(北西太平洋と南西太平洋,インド洋)の鍵種の生物地理が明らかとなったため,国際誌に投稿した.・計画2の実施状況:沖縄県石垣島のサンゴ礁生態系を対象に現状評価を行なった.過去15年間のサンゴの被度の低下が,高水温と頻繁に来襲した台風による影響であることが明らかとなった.また,人間活動に伴う陸域からの赤土流出も影響していることも明らかとなった.この成果は国際誌に公表した.・計画3の実施状況:琉球列島(沖縄本島と石垣島,久米島,奄美大島,徳之島)のサンゴ礁生態系を対象に将来予測をおこなった.石垣島を対象とした例では,将来の海面上昇と台風の強度の増大に注目したところ,鍵種が減少している西海岸では今後,サンゴ礁生態系の成立が困難になる可能性が高いことが明らかとなった.この成果は国際誌投稿に向けて準備中である.
著者
水之江 郁子
出版者
共立女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

カトリック国アイルランドでは、学校教育にも教会が様々に関与し、強い影響を及ぼしてきた。20世紀初頭のイギリスに対する抵抗を経て、勝ち得た共和国においても、女性の生き方に制約や抑圧を加える面が大きかった。しかし、一方でイギリスに比べても早い時期に男性と対等な高等教育を受け、混乱期に立ち上がり、強く戦った女性たちも少なくない。その中の著名な1人の一族で、日本では閉鎖的な印象を与えてきた女子修道会運営の中等教育の場に入って、社会正義と公正さを大切に、闊達な生き方で周囲を魅了したシスターシーヒーの女子教育への貢献などを理解し、本来修道会が目指す外部社会に対しても開かれた考え方を認識させられた。
著者
河崎 衣美
出版者
筑波大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

屋外環境に曝される石造文化遺産に初期に付着する微生物のうち、初期対応の必要性が高いと考えられる地衣類について修復材料を適応した際の文化遺産建造物基材に対する定着挙動を調査した。基質強化が施された試験体への地衣類の付着は撥水処置のみ施された試験体と比較して著しく少ないことがわかり、基質強化処置の重要性が明らかとなった。基材の化学的劣化の要因となる地衣類の二次代謝産物の有無を分析する方法を構築した。
著者
明石 行生 安倍 博 仲嶌 亜弓
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

実務環境において日常生活をおくるヒトにLEDを用いた光制御を施したときに生体リズムに及ぼす影響を調べるために合計10名の被験者が参加したフィールド実験を行った.実験の結果,朝と夜の光制御を行った場合の方がそうでない場合に比べて,ヒトの生体リズムの位相は前進し,振幅は増幅すること,朝の覚醒度が向上することを明らかにした.これらの実験結果と体内時計の光受容機構に関する最新の知見に基づき,生体リズム障害を予防・緩和し,学習・就業時の覚醒度を向上する光制御システムを構築した.
著者
亀山 充隆
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

細粒度ダイナミックリコンフィギャラブルVLSIの小型化,高性能化,低電力化のため,多値Xネット,マイクロパケット転送方式,多値電流モード回路技術,不揮発ロジックなどを駆使したアーキテクチャを検討した.これにより,メモリ・演算部の転送に伴う遅延や消費電力の減少やコンフィグレーション/コントロールメモリサイズの減少を達成することができた.さらに,より少ないハードウェアリソースにより任意の論理関数を実現でき,マルチプレクサを用いたラッチ機能を活用することにより記憶要素としても動作できるという特長を有する,2入力マルチプレクサを構成要素とする新しいセル構成も提案することができた.
著者
森谷 尅久 藤本 憲一 角野 幸博 平松 幸三
出版者
武庫川女子大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

家庭機能の外部化は、都市化と密接に関係する。都市への人口集中が、必然的に住宅価格を引き上げ、一家の居住面積を縮小した。結果的に家庭が果たしていたある部分が、外部化されていく。家庭機能の外部化が進行するということは、都市が拡大された家庭の役割を果たすことを意味する。家庭機能の外部化の進行は、経済発展と深く関わっている。戦後の急速な工業化社会の中で、第一次産業従事者が減り、代わりに第二次・第三次従事者が増大していった。まず食事機能の外部化を歴史的にみると古代から中世にかけては、花会の宴・歳賀の宴が盛んになっている。花会は梅・桃・桜・ハス・萩・菊の宴が主流であるが、遠出して野趣を味いながら一日を過ごすことも多くなった。その後、日本の宴会はいっぽうで確実に外部化が進み、多様化を示すとともに、また内在化も確実に定着しはじめている。現代の外食産業については、ファーストフードに代表されるが、その多様化も急速に進行中である。また宿泊機能の点ではなく、わが国におけるホテルの歴史は幕末の開港とともに始まった。神戸、横浜、長崎などの開港場には外国人の居留地が整備され、商用で訪れた外国人のための宿泊施設が、外国人の手によってつくられた。わが国のホテルは、外国人の旅行客をもてなす施設として誕生したため、一般には「洋風の宿泊施設」として理解されている。しかしその概念規程ははなはだ曖昧であり、このことは、ホテルの多様化をもたらしたと同時に、ホテルという用語の混乱を招く結果ともなった。さらに、ホスピタリティ機能の外部化について病院は、戦後、高度経済成長にともなう都市化の進行につれて、家庭で行えない療養の場として、急速に需要を延ばした。現代の日本人は、大多数が病院で生を受け、半数以上が病院で生を終える。病院は、日本人にとって実に身近な存在になっている。入院が驚くべき出来事ではなくなるにつれ、病院は家庭の延長としてとらえられるようにもなった。以上、本年度は食事・宿泊・ホスピタリティ(療養)の三つの家庭機能について、その外部化を考察した。
著者
端崎 圭一
出版者
金沢大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

最近のパソコンでは,DVDの映画を英語字幕を出しながら容易に視聴でき,また,映像に合わせてその字幕を読みながら音声を録音することができるようになった。この方法を用いると,英語の音読指導がより効果的にできるのではないかと考えた。本研究の目的は,実際に映画を用いて音読を生徒に試みさせ,初期の音読から終期の音読の変化を生徒の自己評価をもとに検証することであった。授業は,2年の選択授業で実施した。生徒数は,前期34名,後期30名であった。場所はコンピュータ教室。Windows XP搭載のパソコンを使用。使用したソフトは,Windows標準のサウンドレコーダとパソコン附属のDVD再生ソフト。授業回数は14回。映画は『ハリーポター(賢者の石)』を使用。最初の2回で,生徒は,読んでみたいセリフのある場面を8つ選んだ。3回目以降は,1回の授業につき自分で選んだ一つの場面をDVDを観ながら録音を何度も試みた。音声をファイルとしてポートフォリオ化し,いつでも聞き直せるようにした。毎回,表計算ソフトを用いて自己評価に取り組ませ,時系列で評価を見渡せるようにした。最終3回は全員に同じ場面に取組ませ,友人同士協力して行わせた。生徒の自己評価を通して言えることは,初期の音読では,何よりも教科書の学習では経験できない速さに難しさや戸惑いを感じている生徒がほとんどであるどいうことである。しかしながら,それでやる気をなくすことはなく,むしろ生徒意欲の高まりをひしひしと感じることができた。それは,映画の中にある本物の力,自分でやってみたい場面を選べた喜びに起因すると考える。回を重ねるに従って,スピードや英語らしい音に慣れてくると同時に,より上手になりたいという思いも強く感じることもできた。最終段階では,「どうやって本物に近いものになるか」「今は少しだけはっきりと,英語らしい発音で話せるような気がする」「他の場面でのセリフの成果もあった」など自己学習の成果がはっきりと見て取れた。
著者
村田 正行
出版者
埼玉大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

移動度の変化をホール係数測定により実験的に評価するために、集束イオンビーム加工を利用したホール測定用電極の作製を行った。サンプルの直径が非常に細い点とビスマスが大気中で酸化しやすいという点から、ナノワイヤー側面に局所的な電極を取り付ける事は非常に多くの困難を要する。そのため、ビスマスナノワイヤーにおけるホール測定の結果は、これまで報告されていなかった。そこで、本研究では研磨と集束イオンビーム加工を利用して、石英ガラス製の鋳型中に配置されたビスマスナノワイヤーに対してナノスケールのホール測定用の局所電極を作製した。このように作製した直径700nmのビスマスナノワイヤーを利用してホール係数の測定に成功し、キャリア移動度の評価を行った。ナノワイヤーにおけるホール係数の測定は世界で4例目、ビスマスナノワイヤーに関しては初めての結果となった。また、直径160nmのビスマスナノワイヤーのゼーベック係数の温度依存性を測定したところ、これまでの直径200nm以上のサンプルでは現れなかったゼーベック係数の上昇が観察された。これまでの研究では、ワイヤー直径を小さくすることによりキャリアの平均自由行程が制限され、キャリア移動度が減少するために、ゼーベック係数は徐々に低下する傾向があった。しかし、直径160nmのビスマスナノワイヤーの測定結果は、予想される温度依存性よりも上昇し、50K程度で極値を持つような温度依存性が得られた。理論計算によると直径200nm以下ではバンド構造が変化することにより、ゼーベック係数が変化すると予想されている。このようにビスマスナノワイヤーにおけるゼーベック係数の上昇を世界で初めて観測した。
著者
黄 孝春 四宮 俊之 CARPENTER Victor L. 神田 健策 荒川 修
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

この研究は日本と中国におけるりんご産業の棲み分け戦略に関する基礎的調査(2年間)プロジェクトであるが、初年度は主に中国のりんご産地を調査したのに対して、次年度は大連と青島の両都市でりんごの消費状況について視察した。それとは別に青森産りんごの中国での販売状況を把握するために2007年1-2月に青島でアンケート調査を実施した。これは地元の業者・片山りんご園の協力をえて百貨店マイカル青島で同社のりんごを購入した顧客を対象に行ったものである。また中国のりんご生産と消費事情に関する情報交換を目的に初年度に中国のりんご産業に詳しい地元関係者を呼んでシンポジュウム、次年度に中国陜西省果業管理局、中国西北農林科学技術大学との共催で日中りんご技術フォーラムを開催した。日本と中国のりんご産業の現状と課題を品種開発、栽培、貯蔵、加工、流通、政策など様々な視点から比較し、交流を図った。また青森県のりんご関係者(生産者、商人、行政担当者)を呼んで計3回りんごトークを実施し、青森りんご産業が直面している課題を討議した。研究チームは以上の活動を通してそれぞれの専門領域から与えられた研究課題について分析し、その成果を研究報告書にまとめられているが、研究代表者はそれを踏まえて青森りんご産業が輸出産業として位置付ける必要性を提言し、そして輸出産業として成功するために知的財産権を活用したブランド化戦略の追求が急務であることを指摘した。
著者
金 セッピョル
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本年度は、主な調査対象であるNPO法人「葬送の自由をすすめる会」において、初めての会長交替による変化が著しく現れた年であった。その変化を捉えるために、既存のメンバーと新しく加わったメンバーとを分けて、インタビュー調査、各種集まりでの参与観察を行った。新しい会長は、今年61才で、70~80代が中心メンバーになっていた会の中では若い世代に属する。また、いわゆるポスト団塊世代であり、これまでの戦争体験者、団塊世代の会員たちとは異なる方向性を持っているようである。既存の会の方向性が、画一的な葬法や家制度、葬式仏教への反発と脱却だったとしたら、新会長が掲げる方針は、より合理主義に基づいている。このような方針に対して既存のメンバーたちが見せる反応や対応を調べると同時に、新しい方針に賛同して集まってくるメンバーたちに対してインタビューおよび、ライフヒストリー調査を行った。既存の世代の特徴が、①遺骨を「撒く」ことにこだわること、②国家・家・仏教といった既存の葬送を大きく形づける社会関係の拒否、③「個」の追求にあるとしたら、現段階で考えられる新しい世代の特徴は、①遺骨を「撒く」ことにこだわらないこと、②当たり前となった「個」である。彼らは、国家、家制度、仏教などが目に見える形で社会全般を支配していた頃とは違い、「個」という考え方が前提となっている時代に生まれ育った。従って既存の世代のように、ある意味、過激な形でそれまでの社会関係を否定する必要はなく、遺骨を「撒く」ことにこだわらないのではないか、という暫定的な結論が導出された。
著者
山内 健 坪川 紀夫
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

カーボンナノチューブ(CNT)は機械的強度に優れ、高い導電性と熱伝導性を有しているため、LSI配線への応用が期待されている。しかし、CNTは分子間力により凝集するため分散性に乏しく、ハンドリングが困難である。そこで、熱応答性高分子に着目して、熱応答性高分子をCNTにグラフトすることで、CNTへ熱応答性を付与でき、水中において低温では親水性により分散、高温では疎水性相互作用により凝集するスマートナノ材料の合成を検討した。得られた複合ナノ粒子は体温と同様の40℃程度の熱に応答して、溶媒中で分散と凝集を繰り返すことを見出した。さらにCNTは赤外光照射により発熱する性質を持つことを利用して、赤外光レーザーを照射してCNTを加熱することで、集積体の形成について検討した。その結果、赤外光レーザーによる局所加熱で、CNTを集積して、さらに2次元に配列することに成功した。
著者
三宅 尚
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

広島県江田島市において,山火事や植生の歴史記録と,水源地堆積物の微粒炭や花粉の記録との対応関係を調べることで,微粒炭や花粉の堆積様式を明らかにした.大きな微粒炭の堆積様式は山火事の大きさとそこからの距離によって説明でき,大きな微粒炭は近隣で起きた山火事の指標になることが分かった.山火事を契機とする植生変化は,集水域が山火事で焼けた水源地でのみ,花粉情報として記録されていた.本研究は,微粒炭・花粉記録から過去の山火事やそれに起因する植生変化を復元する際の基礎情報となるだろう
著者
一戸 渉
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

〈和学〉とは近世期の日本に発生した、日本の古き文物をめぐる学問および、その学問に基づいて行われた文芸創作をも含んだ、多様な実践のことを指している。本研究では、さまざまな機関が所蔵する一次資料の調査と研究とを通じて、18世紀日本における〈和学〉という知的実践の史的展開を総合的に解明しようとしたものである。本研究の成果として、近世期の和学者たちの知的な交流のありようや、伝記に関する新たな知見を多く得ることができた。
著者
松尾 ひとみ
出版者
静岡県立大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

先天性心疾患の手術後に水分制限を受けたこどものストラテジーの構造を明確化し、口渇の苦痛を緩和するケアモデルの開発を目指して、6〜12歳の先天性心疾患で手術をうけたこどもを対象にグランデッドセオリーを用いて行った。その結果、水分制限を受けたこどものストラテジーの構造は、2つの次元「飲みたい-飲みたくない」、「飲める-飲めない」に沿って、6つのコアカテゴリーが点在する構造と、その構造を統合し<ちょうどいい飲水量の感覚>のコアカテゴリーが出来るという構造であった。ストリーラインは、こどもは術後、早期から<飲みたい時・飲みたくない時がある>と常に口渇が発生する訳ではないと気づいていた。同時に、<病院だと喉が渇かない>と、口渇の原因に環境温や活動量が関与すると冷静に分析できるまでに至っていた。やがて、食事の開始時に医療者から水分制限の説明をうけ、<測らないと飲めない>と飲水量を測定する未経験の飲水方法に困惑していた。こどもは、限定された範囲に飲水量を納める様々な試行錯誤の過程から、<大切に飲む>という口渇をコントロールし飲水する独自の戦略を開発していた。しかし、水分制限が緩和していく段階毎に、医療者と保護者に<飲むと悪いことが起こる>というメッセージを送られ、こどもは<飲みたいけどガマンする>と恐れ、少な目に飲水を自粛していた。こどもは、このような水分制限のある生活体験を約2週間経過すると、体験が蓄積し、こどもに<ちょうどいい飲水量の感覚>が芽生え、身体に必要な飲水量の目安が感覚で掴めるようになっていた。
著者
間島 隆博 高玉 圭樹 渡部 大輔 小林 和博
出版者
国立研究開発法人 海上技術安全研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

大規模災害に憂慮される帰宅困難者の輸送システムとして、路線網を自動構築する手法を研究した。ネットワーク成長法により初期路線集合を生成し、1つの路線を1つのエージェントと見立てたマルチエージェントシステムにより路線網を構成する手法を開発した。本手法はベンチマーク問題で最良の解を出力することに成功した。さらに、首都圏を対象とした大規模な問題に対し、複数の輸送モード(バス、水上バス)が混在した路線網を実用的な計算時間で出力できることが確認できた。また、コミュニティー抽出法を応用した初期路線集合の生成法、ハブスポークネットワークのハブとなる停留所の最適位置を求める手法も開発し、その特性を把握した。
著者
荻原 理 神崎 繁 納富 信留 FERRARI Giovanni BRISSON Luc
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

G. Ferrari, S. Obdrzalekを招き、東北大学にてシンポジウム「プラトンの神話」を開催した。『国家』第10巻の「エルの神話」における<あの世での、これから生きる生の選択>についての英語論文を国際プラトン学会大会(慶應義塾)で発表し(審査有)、改訂版を電子ジャーナル誌PLATOに掲載した(査読有)。『法律』第10巻の、死後の魂の再配置の話についての日本語論文をギリシャ哲学セミナー大会(専修大学)で発表し、同セミナー『論集』に掲載した。『法律』のこの話が置かれた文脈(宗教法)についての英語論文をシンポジウム「自由と国家―プラトンと古典的伝統」(オクスフォード大学)で発表した。