著者
篠田 謙一 安達 登 百々 幸雄 梅津 和夫 近藤 修
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

近世アイヌ人骨122体を対象としてDNAを抽出し、ミトコンドリアDNAの解析を行った。最終的に100体からDNA情報を取得し、アイヌ集団の成立の歴史の解明を試みた。解析の結果は、北海道のアイヌ集団は在来の縄文人の集団にオホーツク文化人を経由したシベリア集団の遺伝子が流入して構成されたというシナリオを支持した。また同時に行った頭蓋形態小変異の研究でも、アイヌは北海道の祖先集団に由来するものの、オホーツク人との間の遺伝的な交流を持っていた可能性が示された。
著者
伊藤 均 Harsojo
出版者
日本食品照射研究協議会
雑誌
食品照射 (ISSN:03871975)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1-2, pp.29-32, 1998-09-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
3
被引用文献数
1

Escherichia coli O157: H7 is a rapidly emerging food-born pathogen which has been linked to outbreaks of hemorrhagic diarrhea in Japan, USA or many European countries. From this study, two strains of E. coli O157: H7 were isolated from beef and chicken meats in each one sample of 4 replicates. Some of the biochemical characteristics of these isolates were different from type strain IID959. These isolates could grow quickly at 10°C on cultivation of nutrient agar. D10 value of these isolates were obtained to be 0.06kGy in 0.067M phosphate buffer suspension which were highly sensitive than D10 value of 0.12kGy on type strain IID959. On the irradiation effect of type strain IID959 in ground beef, D10 value was obtained as 0.26kGy at fresh condition and 0.46kGy at frozen condition, respectively. From these results, necessary dose for elimination of E.coli O157: H7 was decided as 1.5kGy for fresh meats and 3kGy for frozen meats.
著者
井上 雅 横山 光彦 石井 亜矢乃 渡辺 豊彦 大和 豊子 公文 裕巳
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.359-362, 2011 (Released:2011-09-15)
参考文献数
11

尿管結石の疝痛発作に対して芍薬甘草湯を投与し,その臨床的有用性を非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)と比較検討した。対象は尿管結石患者25名で,11名に対し芍薬甘草湯5.0gを内服させ,コントロール群として,14名にNSAIDsを内服させた。内服時,内服後15分,30分,60分にNRS(numerical rating scale)を用いて比較検討した。NRSは0点を全く痛みなし,10点を最も強い痛みとした。結果は芍薬甘草湯内服群では内服時NRSは6.7 ± 2.3点で,内服後15分で3.4 ± 3.5点と有意に軽減した。NSAIDs内服群では内服時8.3 ± 1.8点で,内服後15分では7.0 ± 1.9点と有意な鎮痛効果は認めたが,鎮痛効果は芍薬甘草湯の方が有意に優れていた。その他の時点においても同様の結果で,芍薬甘草湯は尿管結石の疝痛発作に対して即効性があり,NSAIDsよりも有意に鎮痛効果を認めた。
著者
米元 佑太 京極 真
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1752, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】理学療法には多様な専門領域のあり方や関係を基礎付ける学問的基盤となる機能をもつメタ理論がない。その弊害は,理論や方法を選択するための基準が不明瞭となり,「どのような理学療法がよい理学療法か」という問いに答えうる価値判断の基準が存在しない点にある。本論の目的はこの問題を解消する理学療法のメタ理論を構築することであった。【方法】本論では,メタ理論工学を用いた理論研究を行った。理論構築の方針は,異なる立場からも了解可能な原理になるように論証することであった。その方針のもと,①全ての理学療法に共通する理路の整備,②理学(physical)=身体の原理的基礎付け,③それらに立脚した介入プロセスの提示を行った。【結果】①全ての理学療法に共通する理路原理的に考えると,実践とは「ある状況と目的のもとで確率的に遂行される」といえる。これを「実践の原理」とよぶ。状況や目的と全く関係ない理学療法や,実践し終える前から事後の状態を確定できる理学療法はないことから,理学療法は例外なく実践であるといえる。そのため,実践の原理は全ての理学療法に共通する理路であるといえる。②身体の原理的基礎付け哲学史を通覧すると,本論と同型の目的をもつ理路に現象学的身体論がある。主な論者であるフッサール,ハイデガー,メルロ=ポンティらの最も原理的な理路を抽出すると,身体とは主観と客観が同時に成立する場であり,人間の存在可能性の根拠であり,世界と人間を繋ぐ媒体として働き,情状性=気分と相関的に構成される対象でもある,と再構成できる。これを踏まえ,本論では「身体は超越論的主観性において気分相関的に構成された媒体であり,それは世界と主体を繋ぐものであると同時に,可能性を担保しつつ制約する構造である」という「身体の原理」を定式化した。③介入プロセスの提示①と②をふまえると,理学療法は主体の可能性を確保することを目的として実施されるといえる。したがって,理学療法は「何らかの状況で,対象の可能性の確保を目的として,身体に介入することであり,その有用性は事後的に決まる」と定式化できる。これを臨床に落とし込むと,1.身体の原理に基づく評価,2.対象の可能性の確保に向けた行動計画立案,3.理学療法介入の実践,4.有用性の検討の4ステップで表現できる。①~③で構成されるメタ理論を「原理に基づく理学療法(Principle Based Physical Therapy:PBPT)」と命名した。PBPTの価値判断の基準は「対象の可能性の確保」であり,それに寄与しているかどうかで理学療法の成否を判断できる。【結論】立場が異なっても了解できる理路を構築することによって,あらゆる理学療法を基礎付けるメタ理論を開発できた。良い理学療法とは何かという問いに対して,PBPTは目的を達成できる理学療法が良い理学療法であると答えることができる。

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著者
文部省 編
出版者
文部省
巻号頁・発行日
vol.教師用 第4, 1941
著者
児島 博紀
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.36-47, 2015 (Released:2016-05-19)
参考文献数
34

本稿は、J. ロールズによるメリトクラシーへの批判的視点を検討することで、機会の平等をめぐる議論に従来と異なる視点を提供することを試みる。機会の平等を論ずる際、しばしば自由と平等という理念的対立が強調され、ロールズは平等の側に位置づけられる。これに対し本稿は、平等主義の理論的困難をふまえつつ、むしろロールズの主張には自由の観点が見出せることを指摘し、最終的に平等な自由の再定義の必要性を主張する。
著者
岡田(有竹) 清夏
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.216-229, 2017 (Released:2019-02-07)
参考文献数
74

Sleep plays a significant role in the developmental processes of infants. However, in modern society, our bedtimes tend to be delayed and our nocturnal sleep time shortened. This night-centered lifestyle or shortened nocturnal sleep time has not only affected the sleep-wake rhythm of infants, but also carries the risk of physical and mental dysfunctions, such as neurological development, behavioral problems (internalizing and externalizing problems), depression symptoms, and obesity. It is necessary for parents and caregivers to fully understand the importance of sufficient sleep for infants for development of the brain and physical and mental functions, as well as the importance of creating an environment that will be able to promote a healthy sleep-wake rhythm in infants.
著者
杉原 知道
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.167-173, 2016 (Released:2016-06-18)
参考文献数
45
被引用文献数
5 4
著者
篠田 謙一 神澤 秀明 角田 恒雄 安達 登
出版者
一般社団法人 日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.127, no.1, pp.25-43, 2019 (Released:2019-06-26)
参考文献数
42
被引用文献数
5 5

佐世保市下本山岩陰遺跡から出土した2体の弥生人骨の核ゲノム解析を行った。これらの人骨は,遺跡の地理的な位置と形態学的な研究から縄文人の系統を引く西北九州弥生人集団の一員であると判断されている。しかし,次世代シークエンサを用いたDNA解析の結果,共に縄文系と渡来系弥生人の双方のゲノムを併せ持つことが明らかとなった。これらの人骨の帰属年代は弥生時代の末期にあたる。本研究結果から,この時期には九州の沿岸地域でも,在来集団と渡来した人々との間で混血がかなり進んでいたことが明らかとなった。このことは,これまで固定的に捉えられていた渡来系弥生人と西北九州弥生人の関係を捉え直す必要があることを示している。また本研究によって,古人骨の核ゲノムの解析で得られたデータは,このような混血の状況を捉えるのに有効であることも示された。今後,北部九州の弥生人骨のゲノム解析を進めていけば,日本人の成立のシナリオは更に精緻なものになることが期待される。
著者
酒井 正樹
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.26-32, 2012-01-31 (Released:2012-10-17)
参考文献数
8
被引用文献数
3

私は,ながらく岡山大学で教鞭をとり,退職後も現在特命教授として教育に従事している。しかし,それもそろそろ終わりになりつつある。それで,これまで自分がやってきた講義のなかで,学生からよく出た質問や学生が陥りやすい誤りなどについて,書き残しておきたいと思っていた。かって十数年前,私が本誌編集長をしていたとき,大学での講義について,指導方法や教材などを紹介してもらう欄を企画したことがあった。そういうものを復活してもらえないかと考えていた折も折,私たちの学会で教育の向上をはかるための議論がおこってきた。そこで,黒川編集長と相談のうえ,ここに書かせて頂くことになった。
著者
矢田 真城 魚住 龍史 田栗 正隆
出版者
日本計量生物学会
雑誌
計量生物学 (ISSN:09184430)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.81-116, 2020-06-01 (Released:2020-07-21)
参考文献数
63

When a causal effect between treatment and outcome variables is observed, effects on the outcome are of interest to investigate the mechanisms among the outcome and treatment. Indirect effect is defined as the causal effect of the treatment on the outcome via the mediator. Direct effect is defined as the causal effect of the treatment on the outcome that is not through the mediator. In this paper, we discuss the estimation of direct and indirect effects based on the framework of potential response models focusing on the 4-way decomposition. Direct and indirect effect estimations are illustrated with two examples where the outcome, mediator, covariate variables are continuous and categorical data. Moreover, we discuss the estimation of clausal effects and the effect decomposition in the settings that include confounder of mediator and outcome affected by treatment, multiple mediators, or time-varying treatment in the presence of time-dependent confounder.
著者
Ryuho Kataoka Stephen D. Winn Emile Touber
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
SOLA (ISSN:13496476)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.116-121, 2022 (Released:2022-06-11)
参考文献数
8
被引用文献数
3

Large-amplitude meteotsunamis were observed in many areas in Japan, following the arrival of barometric Lamb waves emitted by an underwater volcanic eruption of Hunga Tonga-Hunga Ha‘apai in January 2022. We modeled the power spectra of the tidal level data obtained from 12 tide stations of the Geospatial Information Authority of Japan, based on a method of transfer function which converts the barometric pressure pulse spectra into the meteotsunami spectra. The obtained transfer functions are similar at 12 stations. The pressure pulse spectra are obtained from the ensemble average of ∼1500 Soratena weather sensors of Weathernews Inc. distributed over Japan. The observed meteotsunami spectra can be characterized by the enhanced seiche eigenmodes at each station excited by the mesoscale pressure pulse within the amplitude error of 50%, which contributes for accumulating the necessary knowledge to understand the potential dangers in various different areas over Japan.
著者
井上 俊
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.36-47, 2020 (Released:2021-05-29)
参考文献数
27

日本の社会学は、第二次世界大戦後、1950~60年代にかけて急速に発展した。当時の主流は農村社会学と家族社会学、そして学説研究であった。戦後、GHQの方針もあって、日本社会の近代化・民主化が大きな課題とされ、社会学はとくに「いえとむら」に残る前近代性の実態解明と克服に貢献することを期待された。その意味で、当時の社会学には実践的・政策学的な関心が強かった。学説研究に関しては、米国社会学の影響が強まり、パーソンズやマートンらの構造-機能主義、リースマンやミルズらの大衆社会論などが紹介され、広く受け入れられた。1970年代に入ると、それまで大きな影響力を持っていた構造-機能主義とマルクス主義がともに弱体化し始め、シンボリック・インタラクショニズムや現象学的社会学など多くの新しい観点が登場し、研究テーマも多様化する。大衆社会論を引き継ぐような形で情報社会論、消費社会論、脱工業社会論なども盛んになり、80年代にはいわゆるポストモダニズムの潮流が形成され、90年代以降のグローバル化の進展とあいまって、「(欧米)近代市民社会の自己認識の学」としての社会学のあり方を脅かす。一方、80年代以降やや敬遠され気味であった実践的・政策学的関心は、バブル崩壊、オウム真理教事件、自然災害と原発事故などを契機に再び活性化した。日本の社会学のこうした歴史と現状を踏まえ、ブラヴォイの「パブリック社会学」論やジャノヴィッツの「工学/啓発モデル」論を参照しながら、社会学的知の多様性と社会学のディシプリンとしての曖昧性の擁護について最後に触れたい。
著者
石原 美里
出版者
Japanese Association of Indian and Buddhist Studies
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.1138-1142, 2012-03-25 (Released:2017-09-01)

「スータ」という語はこれまで「御者」,「吟誦詩人」と訳されることが多かったが,多くのスータに関する叙述を収集・分析すると,その人物像は非常に曖昧で一貫性がなく,「御者」,「吟誦詩人」という一言では片付けられない複雑さを孕んでいる.本研究では,『マハーバーラタ』に登場するサンジャヤという王の側近であるスータが,ヴェーダ文献に見られるスータ像をある程度反映しているものと仮定して,そのスータ像の変遷を追った.このヴェーダ時代におけるスータ像は,『ヴィシュヌプラーナ』の中に収められているプリトゥ王神話におけるスータ起源譯にも反映されている.そこにおいてスータは,王のするべき行いを規定するような権力を有する王家の高官として描かれており,それを便宜的に「古型」と位置付けた.その後この「古型」は,バラモンらがスータを彼らの構想する4ヴァルナ社会に組み入れようとする際に,混合ヴァルナ身分としてのスータの裏付けとして様々に応用されたと考えられる.その一方で,スータが現実社会に存在しなくなった時代,『マハーバーラタ』の最終改編としてスータ・ウグラシュラヴァスの語りの枠が導入される.この際『マハーバーラタ』の編者らは,その語り手として「放浪の吟訥詩人」という新たなスータ像を創り上げたと推測される.その新しい語りの枠はいくつかのプラーナ文献にも採用され,その結果,放浪の吟誦詩人的スータ像と,古い伝承における王家の高官的スータ像が同文献内にも併存することになったと結論付けた.