著者
澤木 勝茂 尾崎 俊治 田畑 吉雄 竹澤 直哉 八木 恭子 佐藤 公俊
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究成果の概要は次の4点まとめることができる。(1)投資家と発行体の双方に償還ならびに権利行使のオプションが付与された条件付請求権の評価を2つの境界条件をもつ最適停止問題として定式化し、最適な償還政策と最適な権利行使政策の定性的な性質の分析を行った。(2)従来の在庫管理モデルにスポット市場での商品調達を導入し、ファイナンスと在庫管理モデルとの架橋を試みる研究を行った。最適ポートフォリオと企業の格付け理論についての研究会を実施した。(3)リアル・オプションによる企業評価モデルへの応用および実物資産に対するリアル・オプションによる評価(担当:竹澤・尾崎・八木)-リアル・オプションの接近法によるサハリン・プロジェクト2の共同開発協定の財務的評価について研究した。(4)レジューム・シフトによる資産価格過程のモデル化をおこない、従来のモデルでは説明できなかった資産評価モデルに「レジューム・シフト」を導入することによって投資家の行動と資産価格を説明するモデルの構築を行った。サプライチェーンマネジメントと資産評価モデルとの架橋を試みた。
著者
大田 えりか
出版者
独立行政法人国立成育医療研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本における人口レベルでの人口動態調査出生票・死亡票を用いた単胎・双胎症例を対象としたpopulation-basedの在胎週数別出生時体重基準値の推定を行い、スプライン関数によって平滑化した基準曲線を作成した。双胎の早期新生児死亡のハイリスクとなるのは、26週未満の早産児、母親の年齢が24歳以下、ペア間の体重差が大きいSGA児であった。高齢出産の低出生体重児出生のリスクは、近年減少しており、差はなかった。早産に限ると、高齢出産は1.5倍リスクは高いが、減少傾向であった。これは、20代での早産および低出生体重児出生が増加している影響と考えられる。地方と都市部での差はみられなかった。
著者
和田 恭幸 中野 真麻理
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究の研究対象は、江戸時代に刊行された通俗的な仏教書である。研究の目的は、それらの資料が、いつ頃・誰(版元)が発行したのかを調査することである。通俗仏書は、江戸時代の小説一般、怪異小説の形成に深い関連性を有し、仏教書の研究は、江戸時代の文学研究を進める上で、必要不可欠な研究活動である。上記の目的を達成するために、以下の研究活動を行った。1.多数の仏教書を所蔵する図書館の図書目録から、必要とする資料を抽出して、研究用の目録台帳を作成した。パソコンを使用して、所蔵者・資料名など、さまざまな基準でデータの並べ替えをできるようにした。2.1.で作成した目録台帳に従って、書誌学的な資料調査を行った。3.文献資料の調査において採取したデータカードを、パソコンに入力して、整理を行った。4.調査が進展するにつれて、庶民的な仏教書は、僧侶を対象として発行された専門的な学術書と深く連携することが明らかになり、仏教の学術書の調査も行った。5.こうした活動によって得られたデータを出版年表の形式へ整理を行った。6.ただし、江戸時代の初期の出版物は、学術的に貴重な資料であると判断されたので、個別のデータを丁寧に整理することに心がけた。
著者
中西 康人 伊東 太郎 井上 芳光
出版者
大阪青山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

運動強度(運動量)および加齢が四基本味に対する味覚感受性に及ぼす影響について検討を行った。その結果、運動強度(運動量)による味覚感受性の変化の程度差は見られなかった。また、加齢による塩味感受性・苦味感受性の低下がみられたが、運動が味覚感受性に及ぼす影響には若年者と高齢者との間に差異は見られなかった。そして、若年者においては甘味感受性と運動前後の血糖変化との間には中程度の負の相関(r2=0.62; p<0.01)が見られたが、高齢者には見られなかった。
著者
後藤 浩子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、Chateau du Bignon(Loiret, France)に残るA・コンドルセ・オコナーの未公刊の手稿"Memoirs"のトランスクリプションとデータ入力という史料編集作業を行った。また、理論的作業の面では、18世紀末ブリテン思想史研究の分析概念を整理し、「ラディカリズム」を有用性と利益の語彙による法権利の語彙の置き換えとして定義しなおすことで、T-ペインやオコナーの思想の特徴を映し出すことができる新たな思想分類の-カテゴリーを提示した。
著者
飯島 正
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

既に社会基盤として広く活用されている情報システムのトラブルは,社会的に大きな混乱を引き起こしかねない.しかし,企業や自治体で長く運用されている情報システムも大規模化し,トラブルを未然に防いだり,トラブル発生後の復旧が難しくなってきている.利用者を取り巻く環境の変化から,次第に使い勝手が悪くなることもある.そこで,利用者と開発者,異なる立場の利用者間や開発者間で,相互理解を深めるための共通の土台が必要である.本研究は,情報システムに,それ自身の挙動を説明するための説明文や深い理解をもたらすゲームなどを生成する機能を与える基礎技術を構築したものである.
著者
水野 健一 松井 敦男
出版者
甲南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

1.ピレン微粒子を分散したメリクリル酸メチル高分子(PMMA)膜試料をオスミウム処理し、濃淡をつけたものについて電子顕微鏡観測し、微粒子の粒径分布を求めた。その分布はおおよそガウス型でり、分布の山は32Å、半値幅は15Å、上限は約50Å、下限は約15Åであった。2.バルク・ピレン結晶では、低温において結晶構造が2相存在するので、まず、140K(高温相)において波長幅40cm^<-1>以下の光を用いて、蛍光スペクトルを測定した。我々が得られる粒径分布の範囲内では、確固たる自己束縛励起子発光は確認できなかった。続いて、2K(低温相)において、発光スペクトルを測定した。この発光スペクトルからも確固たる自己束縛励起子発光らしき物は見られなかった。このことは、微結晶において励起子は自己束縛しにくいことを意味している。最近、これを支持する結果が、我々のグループと協力関係にある竹島研究所で理論的に得られている。3.励起スペクトルのモニター波長依存性より、励起子帯幅の粒径依存性を調べた。それは、励起子帯幅は粒径が大きくなるに従い励起子帯幅が増し、粒径は約30Åで飽和が始まり、粒径47Åで、330cm^<-1>の最大値を示した。その後粒径が50Åのところで励幅が急降下し消失した。この最大値はバルク結晶の励起子帯幅と見なすことができることから、バルク結晶について今までに求められている励起子・格子相互作用の大きさや状態間の定性的な上下関係を考慮すると、v状態(自己束縛状態)が^1Lb状態(自由励起子状態)より下に15cm^<-1>以下にはならないという結果を得た。4.弱結合系に属するアントセランにおける微粒子の励起子帯幅の粒径依存性とピレンのそれを比較検討した結果、アントラセンでは分散体であるPMMAとの相互作用が強く、微粒子表面での励起子の散乱効果が見られるのに対し、ピレン微粒子ではその効果は無視できることがわかった。
著者
大貫 隆史
出版者
釧路公立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は,第二次大戦後英国に登場した,いわゆる「ニューウェイフ(New Wave)」と呼ばれる劇作家の中でも,社会改良を掲げて大きな反響を呼んだアーノルド・ウェスカーを,その主たる対象とするものである。その際,階層問題などの社会的背景との関連性を明らかにすることで,また,ウェスカーに関係する作家達にも目を向けることで,分析の充実を図り,再評価を行うことを目指した。二年目にあたる本年度では,ポピュラー・カルチャーの問題性を厳しく指摘し,否定的な立場を取るウェスカーが,聖別化もされていなければ,その一方で,大衆性の「烙印」を押されることのないような形の演劇を,どのように求めることになったのか,という問題を検討すべく,米国内アーカイヴでの調査資料を含む,ウェスカー関連資料の読解を行った。また,社会的背景と演劇作品の関わりを考察する上で,作品の「形式性」を慎重に検討するため,ウェスカーに限らず広く戦後英国の「社会的」劇作家一般という観点をとり,ウェスカー作品との関連性が強く指摘されるD.Edgar,Maydaysの分析を,本年度の研究目的に含まれる関連作家研究の一環として実施し,英国の「社会的」劇作家がその問題系を提示する際に共通して抱えると考えられる形式的問題点,つまり,悲劇的要素の抑圧とアイロニー形式の浮上という点について考察を深めた。この成果は,アメリカ演劇に対して応用されている文化の社会学的手法を,イギリス演劇に適用する際の妥当性を検討する際にも,示唆するものが大きいものと思われる。この観点を充分に生かしつつ,ウェスカー作品上演に関する文化の社会学的分析について,論文化の可能性を本研究は今後も継続して模索してゆく。
著者
錦戸 典子 坂本 光司
出版者
東海大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、中小企業における健康的な職場環境の普及推進に向けて、産業保健分野のみならず経営分野と協働することにより新たな知見を得て、革新的かつ実践的な推進モデルを開発することを目的に実施した。良好実践事例の分析により、職場のコミュニケーションの活性化や適切な労務管理・評価などについては経営分野でも重視されているが、健康診断結果の活用や健康を維持しながら働ける職場環境づくり、保健医療専門職・機関の活用などに関しては経営者等に殆ど認識されていないことが明らかとなった。中小企業従業員を対象とした質問紙調査結果からは、企業として健康と仕事の両立が可能な職場づくりに取り組む必要があることが示唆された。
著者
信原 幸弘
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

意識の自然主義的理論を構築するため、感覚質の自然化の問題と無意識的過程の本性をめぐる問題に取り組んだ。その結果、以下のような成果が得られた。1.意識的経験にはそれ自体に備わる内在的特徴とそれによって表される志向的特徴がある。感覚質は経験の内在的特徴ではなく、志向的特徴である。われわれは経験の内在的特徴を意識しえない。経験がある志向的内容をもつことはその経験がある一定の機能をもつこととして説明できるから、志向的特徴である感覚質は経験の機能に還元できる。2.感覚質は意識的経験の意識性を保証するものである。しかし、感覚質が経験の志向的特徴にすぎないとすると、同じ志向的特徴をもつ無意識的な経験が存在しうるから、感覚質は意識性を保証しえなくなる。したがって、感覚質は経験の「意識的」な志向的特徴だと言わなければならない。この「意識性」は言語化可能性として自然主義的に説明できる。言語こそ意識の根源であり、言語をもたないものは意識をもちえない。3.意識的な思考過程は言語的であり、したがって古典計算主義的である。しかし、無意識的な思考過程はニューロン群の興奮パターンの変形というコネクショニズム的な過程である。したがって、たとえば善悪の判断や文法的適格性の判断などは、意識的に行なわれる場合には、古典計算主義的であるが、直観的に行なわれる場合には、コネクショニズム的である。ただし、言語を用いて意識的に推論する場合でも、日常的な推論においては、ふつう多くの論理的飛躍があり、厳密な意味では、古典計算主義的とはいえない。
著者
唄 花子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

【研究の内容】本研究は、着床期の長い反劉動物をモデルとし、胚・栄養膜細胞と子宮細胞の相互作用による妊娠成立機構の解明を目的とした。初年度には、ウシ栄養膜細胞CT-1と子宮内膜上皮細胞(endometrial epithelial cells, EECs)を共培養することにより、着床周辺期の遺伝子発現を再現するモデルを確立した。しかし、EECsは、数回の継代で性質が変化してしまい、安定性に問題があった。そこで、安定した細胞を得るため、本年度は、不死化子宮内膜上皮細胞(imortalized EECs, imEECs)を作出することを目標として研究を行った。不死化遺伝子をEEcsに感染させ、薬剤選択を行ない、imEEcsを作出した。得られたimEECsは、60回以上継代した後も増殖能を持ち、形態にも変化はなかった。imEECsは、IFNTおよびホルモン処置への反応性も有しており、子宮上皮細胞としての性質を維持していた。しかし、imEECsは、上皮細胞のマーカー(サイトケラチン)と間質細胞のマーカー(ビメンチン)が共に陽性であり、EECsとしての性質を維持しながらも間質細胞の性質も有することが示唆された。更なる研究に用いるためには、培養基質を変える等の検討が必要である。栄養膜細胞との共培養実験に使用できるか否かも検討している。また、着床周辺期に重要な胚側の因子として、GATA6がIFNTの遺伝子発現制御に関与することを見出した他、内在性レトロウイルス由来配列に着目し、着床周辺期に発現するいくつかの配列を見出している。【意義・重要性】本研究により、長期の継代にも耐えられるimEECsを作出した。課題は残るが、IFNTやホルモンへの応答性を検討するためには研究を行う上での安定性の問題が克服できたといえる。また、新たにIFNT遺伝子の制御に関与する因子として見出したGATA6は、反芻動物とマウス胚の知見とで違いがある点が興味深い。今後、動物種による違いを探るきっかけとなり得ると考えている。【研究成果】本年度の研究成果として投稿した論文は7報が採択された。また、2報は採択決定済である。
著者
坂上 昇史 新井 隆景 西岡 通男
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,定量化シュリーレン法による変動計測法やPIV計測の校正法,新しい熱線流速計など超音速乱流変動計測法の開発を行い,これらを用いて超音速境界層乱流遷移や超音速乱流混合場を調べた.超音速境界層の乱流遷移については非圧縮流変換した遷移レイノルズ数が主流マッハ数によらずほぼ一定となること,超音速混合については主流マッハ数が大きくなると縦渦によって生じる小スケール変動は逆に小さくなること等を明らかにした.また,壁乱流の平均速度分布が対数分布かベキ乗分布かを診断する新しい方法を提案し,平板乱流境界層の速度分布に適用してその有用性を示すとともに対数分布とベキ乗分布の共存する現象を明らかにした.
著者
河野 裕彦 菱川 明栄 小関 史朗 加藤 毅 菅野 学 伏谷 瑞穂 松田 晃考
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

電子・原子核波束計算法を用いて,COやN2のレーザー場中の多電子ダイナミクスやアト秒パルスを発生する高次高調波のレーザー制御法を提案した。また,実験グループは,理論の予想通りCO2の等価な2つのC-O結合の一方だけを2色レーザーパルスの形状によって選択的に切断させることに成功し,化学反応制御の新たな可能性を示した。さらに,反応動力学計算を用いて,XFELによる多価カチオン生成とそのクーロン爆発を使った時間分解分子イメージングに対するシミュレーション法を確立して,ヨードウラシルなどに適用した。そのほか,分子ベアリングやDNA鎖切断の実時間シミュレーションを行い,それらの動力学を明らかにした。
著者
大友 弘士 日置 敦巳
出版者
岐阜大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

ネズミマラリアを病態モデルとして用い、宿主における組織低酸素症の発現と主要臓器障害との関係を調べた。7周令、雄のBALB/cマウスにネズミマラリア原虫Plasmodium berghei NK65感染赤血球【10^7】個を腹腔内接種した場合、マウスは接種後7-8日で死亡した。宿主マウスの貧血は原虫接種6日後には血液中ヘモグロビン5.7g/dl(非感染対照群14.5g/dl)と著明となり、組織低酸素症はこの時期に急速に進行するものと考えられた。感染の進行に伴う重要臓器障害について検索を行った結果・肺水腫もしくは肝不全はマウスの死因としては重要ではないと考えられた。腎機能を調べるために感染マウスの血中尿素窒素,クレアチニン,尿量,尿中への尿素窒素排泄および尿中N-アセチルグレコミニダーゼ活性の変動を調べるとともに腎組織中アデニンヌクレオチドを測定した。血中尿素窒素は死亡前に増加したがマラリアで惹起される大量溶血から推定されるような血中尿素窒素の著増、もしくは尿中への尿素窒素大量排泄は認められなかった。また血中クレアチニン濃度も軽度上昇したのみであった。尿中N-アセチルグルコサミニダーゼは原虫接種4-6日後に高値となる傾向を示したが7日後には低値となった。腎組織中のアデニル酸エネルギーチャージには接種7日後に低下が認められた。これらの結果から、組織低酸素症が惹起されると考えられた接種6日後には腎機能がかなり低下し、尿細管上皮が傷害されてN-アセチルグルコサミニダーゼが逸脱した結果、7日後には低値となったものと示唆された。マラリア感染では腎障害は重要な病態であり、血中尿素窒素で腎不全を評価する場合には過小評価しないよう注意する必要があると考えられた。
著者
櫻井 敏雄 城光寺 文章 大草 一憲
出版者
大谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は社寺建築の設計と深く関連する木割大系の基礎となる屋根材である垂木の規則的な間隔(枝割)について検討したものである。枝割は柱径や柱間・柱高に関連し、古建築の意匠に深く関連する。特に、枝割と軒を支える組物との関連が重要で、近世には三斗組に垂木を6本のせるシステムが主流を占める。しかし、これに従わないシステムを持つものがかなり存在する。この点について重文指定の遺構を通じて考察したものである。
著者
小島 廣光 寺本 義也 平本 健太 金井 一頼 工藤 剛治 梅本 勝博
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

『地域におけるNPOの知識ネットワーキング-経営学的実証研究』は,平成11年度に開始され,平成13年度に終了した。研究は,当初の実施計画にほぼそって遂行され,次のような4章からなる非常に有意義な内容の報告書を作成することができた。第1章NPOを取り巻く現状と課題我が国のNPOが直面している4つの危機((1)資金不足の危機,(2)市場競争の危機,(3)有効性の危機,(4)正当性の危機)と2つの明るい兆候が説明されるとともに,自己革新による危機の克服方法について考察された。第2章知識ネットワーキングに関する先行研究の検討組織学習,社会的学習,知識創造等の知識ネットワーキングに関する広範な先行研究が検討された。検討に際しては,未来志向のダイナミックな視点が採用された。第3章NPOの知識ネットワーキングの分析枠組NPOの知識ネットキングを分析するための枠組が提示された。この分析枠組は,(1)SECIモデル,(2)場,(3)知識資産,(4)ナレッジ・リーダーの4つの概念から成り立っており,NPO・政策形成過程・営利企業を含む広範な組織現象が分析可能な非常に有効な枠組である。第4章NPOの知識ネットワーキングに関する事例研究-NPO法立法過程の分析事例研究は,我が国のNPO法の立法過程を詳細に分析することにより,(1)本法律の特徴である市民に広く開かれた立法過程のあり方の提示,および(2)本法律の見直すべき問題点と有効な活用方法の解明を目指したものである。事例研究に際しては,全立法過程が6期に区分され,(1)政府,(2)議員・国会,(3)市民団体の3つの参加者の孑于動が詳述されるとともに,上述の枠組にもとづき詳細な分析が試みられ,次のような多くの興味ある事実が発見された。(1)NPO法立法過程は,知識ネットワーキングのプロセスであった。(2)NPO法立法過程の参加者は,見える参加者と隠れた参加者の各クラスターから成り立っている。(3)NPO法立法過程において,政策アクティビストである加藤紘一,坂本導聡,松原明が果たした役割は極めて大きい。(4)6つの政策の窓が開き,問題・政策・政治の3つの流れが合流することにより,NPO法は成立した。
著者
喜多崎 親 山口 惠里子 尾関 幸 松原 知生 佐藤 直樹 堀川 麗子
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

19世紀の前半にドイツのナザレ派、フランスの宗教画刷新運動、イギリスのラファエル前派など、絵画に於いてラファエッロ以前を強く意識した運動が各国で起こった。これらは相互に関係を持ち、ラファエッロ以前、すなわち盛期ルネサンスよりも前の絵画様式への回帰を謳ってはいたが、一律に同じ様式を採用するという結果にはならなかった。それは各国の民族的文化への意識や、近代への意識が微妙に関係していたためである。
著者
玉田 吉行
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

三つの成果がありました。(1)性感染症でもあるために、アフリカのエイズの状況がかなり複雑で、危機的になっているのが再認識された、(2)免疫不全の病気と戦うためには病気をより広い観点から捉える必要性があるのを再確認した、(3)利益を最優先し、多剤治療一辺倒の先進国や製薬会社が報道を恣意的に操って来たために、先進国ではアフリカのエイズの誤ったイメージが定着しているのを再認識した、ことです。それらを活字にしました。
著者
紀平 知樹
出版者
兵庫医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

研究課題では、現象学の手法を用いて持続可能な開発の倫理のための基盤を形成することを目的としている。そのために本研究課題では、持続可能性という概念の意味を明らかにすることに取り組んだ。ことに、経済学における持続可能性に関する論争をたどることによって、新古典派の理論を土台にした持続可能性の理解の限界と、サブシステンスな意味での経済のあり方がオルタナティブな持続可能性概念の基盤として考えられることを明らかにした。
著者
塚田 稔 小島 比呂志 大森 隆司 岡田 浩之 酒井 裕 奥田 次郎 小島 比呂志 岡田 浩之 酒井 裕 奥田 次郎
出版者
玉川大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

脳の記憶は外界(環境)からの感覚情報(ボトムアップ)と注意や予測など(トップダウン)の情報の相互作用によって創られている。高次の記憶に関連したニューロンにおいて、感覚からのボトムアップの記憶情報の書き込みでは時空間学習則(nonHEBB)が、注意などのトップダウン情報の書き込みではHEBB則が有効に働くことを理論と実験によって明らかにした。この実験結果に基づいて工学モデルによって実効性が確かめられた。