著者
板宮 朋基 永竿 智久 千代倉 弘明
出版者
愛知工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、乳がんに伴う乳房切除手術後に行う乳房再建手術において、視覚的に最適と認識される手術デザインを提唱することにある。乳房のすべての形態パターンごとに考えられる手術デザインを提示し、それぞれの方法に対する審美的評価を行った。本研究において3次元コンピュータ・グラフィックスを用いることにより、複数の乳房の形態パターンや手術デザインに対応する手術痕を提示した。患者の乳房をレーザースキャナで計測し、3次元形状点群データを得た。レーザー計測による欠損域を補間するため、CT画像からの3次元形状も併用した。人体3次元形状のデータの軽量化手法やウェラブル端末利用手法の確立、他症例への応用も行った。
著者
市山 高志 長谷川 俊史 松重 武志 平野 玲史
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

山口大学医学部附属病院小児科では2010年夏以降エンテロウイルス68型(EV68)感染に伴う気管支喘息大発作、中発作入院症例を20症例以上経験した(Hasegawa S et al. Allergy 2011 ; 68 : 1618-1620)。今まで本ウイルスによる気管支喘息発作増悪の報告はない。大阪市でも2010年6~8月にEV68感染症が少数例報告され、今後流行する可能性は否定できない。気管支喘息発作を増悪させるウイルスとして、ライノウイルスやRSウイルスなどが知られているがEV68は今まで報告がなく、そのメカニズムの研究は皆無である。EV68感染による気管支喘息発作増悪のメカニズムを気道上皮細胞を用いて明らかにすることを目的とした。方法:気道上皮培養細胞(A549)を用いて、2010年夏に当科入院患児咽頭ぬぐい液から山口県環境保健センターで分離保存されているEV68を感染させ、感染細胞の培養上清を用いてtumor necrosis factor-α(TNF-α),interleukin-2(IL-2), IL-4, IL-6, IL-10, interferon-γの濃度をELISA法やcytometric bead arrayで検討した。結果:EV68がA549細胞に感染することを確認したが、測定した6種類のサイトカイン産生はみられなかった。考察:当教室では新型インフルエンザウイルス(H1N1 pdm2009)で同様の実験を行い、IL-6などの産生を確認しており、EV68は感染細胞におけるサイトカイン産生が新型インフルエンザウイルス(H1N1 pdm2009)と異なることが示唆された。
著者
村上 敏夫 鶴 剛 吉田 篤正 柴崎 徳明 池田 博一 牧島 一夫
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

ガンマ線バーストの起源を解明することを目的にこの研究班は組織された。今年度はその4年間の最後の年になる。その成果について実績を評価したい。研究は1:人工衛星を使った観測、2:理論的な検討、そして3:将来を考えたガンマ線バーストの観測装置の開発に目標を置いた。人工衛星を使った観測では、我々はガンマ線バーストの一種族であるリピーターの起源を超新星の残骸の中にある中性子星からと解明した。これはネ-チャー誌上に発表され、大きな評価を受けた。しかし、もう一つの種族であるclassicalガンマ線バーストでは原因の解明が達成されなかった。ガンマ線バースト源のX線対応天体の観測をASCA衛星で行い、X線源は受かるものの対応の可否は解明されない。最近イタリアのSAX衛星でガンマ線バーストに伴いX線が長い時間(数日)出ているのが観測されたが、これも人工衛星ぎんがで観測した事実の確認と言える。ここでも我々は大きく寄与したが、この輻射の起源の解明が今後の鍵を握るだろう。理論的な検討では、立教大の柴崎を代表にガンマ線バースト研究会を三回開催することが出来た。ガンマ線バーストでは発生源までの距離が分からないことから、理論家も仲々手を出すのが難しいと考えられる。主に我々の得た成果を聞いていただき、理論を検討頂いた。ガンマ線バーストで、日本から理論の論文が2つ出たのは大きな成果と言えるだろう。我々が最も重視したのは、将来の衛星で使えるガンマ線バースト検出器の開発である。科研費の大半はこれに投資されたのは言うまでもない。それは半導体を使用した硬X線検出器である。ノイズの少ない検出器を目指して開発され、ほぼ必要な性能がやっと最終年度に達成された。これは2000年に打ち上がるASTRO-E衛星に搭載されることになる。ASTRO-E衛星の硬X線検出器はガンマ線バーストを検出する能力があり、今後の発展を期待する。
著者
重橋 のぞみ (2003) 武藤 のぞみ (2002)
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

情動表出に問題を持つ統合失調症者(以下SC)について臨床実践を用いて検討した。以下、交付申請書の研究実施計画(研究1〜3)に対応させ、今年度の実績を報告する。「研究1」長期入院中のSCに対し、心理劇の関わりとSCの自発性・非言語的情動表出との関係を検討した。セッションの評定とセッションの特徴を分析した結果、過去に実体験があるなじみやすい場面、親和性のある場面、過去の大切な思い出を取り扱った場面において他者に了解可能な適切な情動表出が増すことが示された。(日本心理劇学会第9回発表論文集掲載;2003)。現在、発表内容を論文へまとめ、投稿の準備中である(情動の平板化ある統合失調症者の自己表現と自発性を促すテーマおよび場面設定の特徴;投稿準備中)。なお、心理劇における情動表出評定スケールついて前年度の学会発表を修正し投稿、受理された(心理劇研究印刷中;2004)。「研究2」SSTにおけるSCの会話から情動表出のあり方を検討した。その結果、スキルを習得するだけではなく、安心して自己表現できる場をグループが提供し、体験を伴えるロールプレイ場面を行うことにより、非言語情動表出の適切性が増すことが示された(第23回日本心理臨床学会2004:発表予定)。「研究3」SCの就労支援に対する具体的援助を通し、生活の場におけるSCの情動表出および臨床援助のあり方を検討した。その結果、SCの主体性を重視し、等身大の自己認識を促す関わりが情動表出および就労問題への取り組み方に影響を示す事がわかった(第27回九州集団精神療法研究会発表論文集掲載;2004)。実証研究も継続し、VTR視聴場面におけるSCの情動表出・情動体験について情動平板化の程度の違いから比較を行った(統合失調者の情動平板化が情動表出と情動体験に与える影響:心理学研究修正査読中)。また健常者とSCの情緒的な刺激の受け止め方、情動体験のあり方について検討し(第68回日本心理学会;2004発表予定)、SCは否定的情動体験に健常者は肯定的情動体験へ反応しやすいことが示された。
著者
高田 保之
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

超撥水面上で,過冷却下において安定的に存在する蒸気膜の性質を解明することを目的として,超撥水コーティングやテフロン(PTFE)コーティングを斑点状に施した出伝熱面を作成し,プール沸騰実験を行った.その結果,PTFE を斑点状にコーティングした伝熱面は,通常の銅面に比べて,低過熱度で沸騰を開始し,核沸騰熱伝達特性もすぐれていることが分かった.また,沸点以下で発泡を開始する現象を発見し,溶存空気が現象に深く関係していることを確認した.
著者
清瀬 みさを
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は「関西近代建築の父」と称されながら、建築史学の分野で「代表作がない」「没個性的である」「様式的一貫性がない」と評されがちであった京都大学工学部建築学科初代教授・武田五一(明治5?昭和13年)の建築作品とその思想を、「京都都市景観の形成」という観点から再評価することにある。そして、京都近代の都市形成の原点である武田の事例を考察することで京都市の景観施策の是非を検討することを目的とした。本研究では、まず武田が設計(設計指導あるいは競技の審査をつとめた)した橋梁、官庁、大学、商業ビルなど公共性が高く近代都市のランドマークとなった建造物と同時代の建築家のよるそれとの比較検討を行い武田作品の特質を考察した。武田建築の基本的な特色として陰影の浅い、グラフィカルな外観の構成とベージュや灰色の押さえた色彩が指摘された。そのため種々雑多な色柄形の建造物が入り交じる現代都市において埋没した印象を与えることが確認された。ついで、武田自身の著作、論文、建築作品、競技設計の審査を行った評価の観点に、時代を先取りした、単一の建築作品を越える「周囲(環境)との調和」への志向が確認された。武田の時代に描かれた風景画作品を分析することで建造物の「地」となる京都のイメージを抽出した。その上で都市景観を構築する建造物として武田作品の再評価を試みた。しかし、洋画黎明期の画家たちが描いた京都の街のイメージ、つまり淡く明るい土の色、陰影の浅い東山の山並み、浅瀬の鴨川、そこに点在するランドマークとしての歴史的建造物を背景に置くとき、逆にその「没個性」が現代の京都市景観施策を先取りする環境との調和を目指した結果であると評価される。そして、橋梁が建築物よりいっそう景観構築の規矩となるという武田の思想は、都市内の水運が廃れ、橋梁が道路の延長になってしまった現代都市において看過されてきたが、京都市景観施策に是非とも考慮すべき点であることを主張したい。
著者
茅野 宏明
出版者
武庫川女子大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1996

身体障害者に対する余暇教育プログラムの効果を明らかにすることを目的とした本研究は、平成9年5月から兵庫県立総合リハビリテーションセンター、重度身体障害者更生援護施設にて開始。5月中に余暇評価を実施し、ソーシャルワーカーとの協議の結果、7名をメンバーに選出。同年10月に再度余暇評価を実施。その時点で、継続意志なし(2名:現在や今後の余暇生活に不安なし)、退所(1名:8月末退所)、入院(1名)、継続中(2名)、完了(1名)。完了した1名について、2回にわたる余暇評価の差が、余暇に対する自発性(3.63から4.79)と余暇に対する退屈度(2.81から1.31)において、顕著に表れた。数値面だけでなく、実際に自らスポーツ系のクラブに入会し、退所後の継続的な余暇活動の実現を果たしていた。また、継続中の1名は、自分には無理だと思った活動を、同じ障害の人たちが行っているのをビデオを通じて発見し、『がぜん、やる気がでてきたぞ』と文集に書いた。同年10月から、新しいメンバーを6名迎えるとともに、余暇教育プログラムのワークシートを改訂した。平成10年1月時点で、継続中(5名)、長期欠席(1名)。継続中の5名は具体的な余暇活動計画へと進んでいる段階である。余暇教育プログラムを実施して、次の点が明らかになった。(1)現在行っているいないに関わらず、生活地域における活動が実現可能。(2)自分の好きなことを実現するために、自分自身への動機づけが比較的高いレベルで維持。(3)交友関係の広さが余暇生活への不安を減少する傾向。(4)余暇評価とケースワークとが同傾向を提示。今後の課題として、退所を目前にしないメンバー向けのワークシート開発の必要性と余暇教育プログラムの定着に向けてのケースワーク評価を重ねることがあげられる。
著者
山本 誉士
出版者
国立極地研究所
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

近年、気候変動による海洋生態系への影響が懸念されている。だが、その動態を広範囲かつ連続的に観測することは難しい。そこで、本研究では海洋生態系の高次捕食者である海鳥・オオミズナギドリにデータロガーを装着・回収することで、様々な海域(亜熱帯~亜寒帯)において彼らの採餌行動から生物資源ホットスポットを特定し、その形成の特徴を明らかにした。また、採餌域と海洋環境の相関からハビタットモデルを構築し、今後予測される水温上昇シナリオに対する彼らの応答を明らかにした。本研究の結果から、オオミズナギドリの採餌行動を指標とすることで、日本周辺海域における海洋生態系動態のモニタリングが可能であることが示唆された。
著者
山口 喜雄 藤澤 英昭 柴田 和豊 天形 健 春日 明夫 福本 謹一 永守 基樹 新関 伸也
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

(1)本邦初の美術教育文献WEB サイト(http://www.ae-archiving.jp/)を構築し、英日対訳を含む日本美術教育主要文献解題442 件を同Web サイト上に公開した。(2)11年間の論文12件(うち査読付論文9)を本科研報告書I『20世紀後半の日本美術科教科書研究 山口喜雄著 (1998‐2008)【日英対訳】』(全333 頁)にまとめ、〈第32 回InSEA 国際美術教育学会世界大会2008 in 大阪〉にて400 部、国内外関係機関や諸学会等にて600 部を頒布した。(3)欧米における著名美術館の教育担当者に対する面談調査を行った。合衆国のシカゴ美術館とメトロポリタン美術館、イタリアのピッティ宮殿美術館とバチカン美術館、フランスのルーブル美術館、スペインのピカソ美術館、 イギリスのコートールド協会美術館、オランダの国立ゴッホ美術館等々を対象とし、英日対訳の報告文を本科研報告書IIに記載した。(4)前記の欧米 美術館の面談調査報告を含む「美術教育文献アーカイビングの十年の進展」、「美術教育文献実践報告・研究論文ライティングリサーチ」15 件等々をまとめた 本科研報告書II『美術教育のアーカイビング&ライティングリサーチ2011【英日対訳】』(全198頁)を刊行、配布した。
著者
石野 陽子
出版者
島根大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

少産を施策で誘導し少子化社会となった中国と、様々な子育て支援施策にもかかわらず少子化が深刻な日本において、両国の青年達・若い既婚者達は、結婚や子育て、家族、そしてそれを取り巻く制度などをどのように考え、家族をめぐる諸問題へどのように取り組んでいるのであろうか。これらの事柄を、両国でのインタビュー及び質問紙調査によって探った。その結果、中国の青年は、日本の青年よりも家族を大切にし、自分の生活の豊かさや家族の繁栄のために自分はどう将来を歩むべきかを中心に考えていた。したがって、進学や就職、結婚の如何は、自分自身や家族の将来を左右するのであり、慎重かつ積極的に考えていることが示された。
著者
河内 佑美
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

要素間の相互作用によって自ら構造変化を起こし機能を創発する"複雑適応ネットワーク"において,秩序形成や自己組織化の要因となる構成要素や関係性を特徴づける定量的・定性的な内在情報をとらえることで,本研究は,ネットワークの適応・創発に関する秩序形成メカニズムを解明する.特に,その状態が可観測であり事後検証可能なWWWを対象とし,ソフトウェア工学的側面から次世代の知的情報システム構築を目指す.そこでまず,実ネットワークの調査・解析を行うためにWWWから情報取得を行うシステムを構築し,Eコマースシステムや情報発信コミュニケーションシステムから取得したデータを,ユーザの評価機能や相互リンク機能,閲覧履歴等から形成される大規模ネットワークとして調査を行った.特に,大規模な実データとして日本国内のユーザ約12万人のウェブブラウザから収集された1か月間約3憶件のURLアクセスログを用いた.全ユーザのクリックストリームをネットワークとして重ね合わせるとWeb構造と同様に,その構造はスケールフリー特性を持つ複雑ネットワークであり,どの一時点においてもスケールフリーという構造特性は変わらないことがわかった.さらに,時間発展と共にクリックストリームは刻々と変化しているので,その移り変わりを明らかにするために単位時間におけるネットワーク構造の遷移をネットワーク間の類似度を用いて解析し,二次元上に可視化することで,ビヘイビアのダイナミクスを明らかにした.このように,大規模実データを扱うための解析手法の提案と,解析結果から得られたユーザビヘイビアのダイナミクスについて複雑系工学,複雑ネットワークの視点から議論を行い,論文として結実している.
著者
松山 晃久
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

細胞の寿命の1つに、分裂を止めた状態でどれだけの期間生存できるかという「経時寿命」がある。経時老化は我々の臓器など分裂を停止した細胞の寿命制御機構を研究する良いモデルだが、細胞の寿命をその場で測定する方法がないために研究が遅れている。そこで本研究では即時に細胞の老化度を測定できるシステムを開発することを目指した。老化に伴って量が変動するタンパク質を分裂酵母の全5,000種類のタンパク質から探し出した。それらに蛍光タンパク質を融合することにより、目的タンパク質の量を可視化し、老化度と蛍光強度が相関するものを見出した。その結果、細胞の蛍光輝度を測定するだけで老化度が測定できるようになった。
著者
柴 眞理子 小高 直樹 宇津木 成介 魚住 和晃 萱 のり子 米谷 淳 菊池 雅春
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は、舞踊,音楽(ピアノ),書という異なる芸術分野に共通する基本的感情検証と、日・韓・中の異文化間比較によりその基本的感情が文化を超えて共通であることを確かめ,それと同時に,それぞれの芸術や文化に固有な感情表現についても明らかにすることであった。そのために、3つの評価実験を行い、その結果、次のような知見を得た。舞踊・音楽・書(漢字・かな)の3つの分野に共通する感情は「美しい」「きれい」「なめらか」「力強い(強い)」のみであった。3つの分野のうち,舞踊と音楽間では,例えば「楽しい」「悲しい」「こわい」など多くの感情が共通しているのに対し,書は他の2分野と共通する感情が少なく、いわゆる「快・不快」の感情を表現(伝達)しにくい。しかし、かなの書では「悲しみ」の感情は表現(伝達)されており,かなの表現性(表現力)が漢字とは異なる点があることも示唆された。異文化間比較では、各舞踊刺激、音楽刺激を視聴させ、その感情にふさわしい書をマッピングさせるという方法をもちいた。その結果、舞踊の場合のほうが音楽に比べ,「異文化的」な評価が少ない傾向がみられた。また,漢字とかなについては、漢字の方が,「文化差が小さい」ように見える。この点については、かなが我が国に固有の表現媒体であること,したがって舞踊なり音楽なりの感性的印象を評価する場合,漢字を用いるほうが「文化的共通性」を生み出しやすいことが推察される。以上のような知見と同時に、本研究を通して「感性評価の異文化間比較」は,単に,学術的な研究の対象となるばかりではないことを再認した。たとえば日本の芸術作品の海外における評価が日本的な感性による評価と一致するものかどうか,換言すれば,日本において高く評価される芸術的表現が他文化において同一基準で評価されるかどうかという,実際的な場面にも応用が可能であろうと思われる。
著者
竹蓋 幸生 水光 雅則 土肥 充 高橋 秀夫 竹蓋 順子 水町 伊佐男 田中 慎 西垣 知佳子 大木 充 大塚 達雄 村田 年
出版者
千葉大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

顕著な教育効果が期待できる教育方法の一つとして、CALLはすでに1960年代から外国語教師の間で知られていた。しかし、いわゆるLLと呼ばれる教育機器がそうであったように、CALLも長い間その期待に応えられる教育効果を示すことができなかった。それは、どちらも「教材の提示システム」としては素晴らしい可能性を持っていながら、妥当な「教材がない」からだと言われてきた。しかし教材不足の原因をさらに探っていくと、聴解力を中心とした基礎力及び総合力の教育法に関する「理論の不在」が原因であることが明らかとなった。我々はこの問題点を直視し、まずCALL教材の制作にも活用できる、「三ラウンド・システム」という緻密な指導理論を独自に開発した。特定領域研究の計画研究として行われた我々の研究はこの理論をベースにCALL教材を高度化し、外国語によるコミュニケーション能力の真に効果的な養成を可能にすることを目指したものである。本研究は、英語、独語、仏語、日本語の4言語グループでそれぞれのニーズに応じたCALL教材の高度化の研究を行ったが、開発された教材は、実験的試用の結果、どのグループのものも学習者、教師に好評であったと報告されている。英語グループは高度化された複数のCD-ROM教材を大学の通常の英語授業で約5ヶ月間試用し、学習効果を客観的な外部テストであるTOEICで測定した。その結果、上位群で大きなスコアの上昇が見られ、教材を試用しなかったクラスの成績との有意差も認められた。英語教材はすでに東京大学、京都大学をはじめ23大学での通常の授業への導入が予定されている。また日本語グループは国際学会での報告でも高く評価されたと聞いており、日本語教材は現在、米国、台湾を含め、5カ国で実験的試用が計画され、独語教材も北海道大学、都立大学、九州大学、立命館大学での導入が予定されている。
著者
阿部 生雄 大熊 廣明 真田 久
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、バレーボール、水泳、テニスなどの近代スポーツの日本的受容について明らかにすることを目的としたものである。本年度は特に、games(遊戯)、スポーツマンシップ、テニス、バレーボールの日本的受容について研究した。その結果、それぞれ次のことが明らかになった。西洋の遊戯(game)の日本的受容は,必ずしも受動的なものではなかった。数多くの西洋の遊戯(game)を積極的に導入し、子供の自然性と快活さを擁護し、児童のレクリエーション習慣(遊戯世界)の形成、遊戯の持つ健康上の効用と道徳的効用という教育的認識を早く摂取した。しかしそれは日本の「国民教育」の形成期におけるナショナリズム、日本の児童、学校教育の実態から西洋的遊戯を膾炙し、「加工」して受容しようとする姿勢の上になされたのであった。テニスは、まず学校の中に取り入れられるが、外国のスポーツをそのまま吸収するのではなく、ゴム製の庭球ボールを開発するとともに、ダブルスを基本とする和式テニス(いわゆる軟式庭球)を普及させた。これは用具の経済的な効率を考えつつ、授業として展開できるように考案されたものであり、教育現場に適した日本的なスポーツの受容といえる。同様にバレーボールも、9人制が推進されたが、これも効率化と、身長や技術的な能力の差異を集団でカバーするという観点からも推進されており、やはり教育的な観点での日本的な受容と言える。以上の事から、日本における近代スポーツの受容については教育的な面、健康増進の面、さらには教育活動としての経済的効率の面から積極的に解釈され、それらの効果を高めるために、近代スポーツを受容、加工していったことが明らかになった。
著者
原 祐一
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の目的は、小学校における体育科の評価について様々な角度から実証的データを収集し、生きた評価の在り方について提言することである。小学校教員に対するインタビュー調査、教員・児童に対する質問紙調査から新たに開発された評価方法を検証するためにモデル実施を行った。その結果、小学校教員が指導と評価を一体化させ、児童に共感的理解をしながら評価することが可能になる、デジタル・ティーチング・ポートフォリオの開発に至った。
著者
内田 純一
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

観光地に存在する様々なアクターの諸力を総合するために、DMOやDMCと呼ばれる組織が、地域競争力を向上させるための活動を行っている。これらの組織はマーケティングやマネジメントのノウハウを持っているが、地域が提供するサービス品質を管理したりサービス・レベルを向上させようとするような視点は持っていなかった。本研究は、観光地においてサービス・イノベーションの創出を目指すには、製造業的なミクロ視点のイノベーション論だけではなく、地域イノベーション論的なマクロ視点を導入することが必要とし、実証研究を重ねることによって「地域サービス・プロフィットチェーン」の枠組みの有効性を提唱している点に意義がある。
著者
松本 和子
出版者
東京理科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

キプリングを中心に彼とその周辺作家の小説に登場する男性性が弱体化した人物の検証を通じて、当時、時代を支配していた帝国主義の理想とは乖離した人物が描かれる事例が散見することが確認された。そして、多くの場合、そうした登場人物は作者から断罪されるどころか理解をもって描かれており、大英帝国の衰退と、帝国主義の隆盛の狭間を生きることを余儀なくされた作家の内面を探る切り口になり得る可能性が見出せた。
著者
水沼 充
出版者
山形大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

1.研究目的映像ハードウエア発展や様々な映像コンテンツ普及が進む一方、映像の生体に及ぼす影響が社会問題となっている。本研究では、映像酔いに着目し、複数の光電容積脈波センサを活用して映像酔いが生体に及ぼす影響を常時・客観的かつ簡便に計測する手法について研究し、映像酔いの簡易計測方法及び警告システムを開発することを目的とした。2.研究方法映像酔い簡易計測方法評価実験システムを構築し、複数の光電容積脈波センサを活用した簡易計測方法について研究し、簡易計測・評価・警告システムを開発する。具体的には、(1)開発した指尖光電容積脈波センサ内蔵グローブを装着し動きの早い映像を大画面ディスプレイ装置で視聴し、主観的に映像酔いと評価した時の複数の指尖光電容積脈波データ、映像酔いと評価しない時、無視聴時のデータを計測し保存する。(2)得られたデータに離散フーリエ解析等を適用して、各々の脈拍数等の生体信号を抽出し、その変化から映像酔いが生体に及ぼす影響を客観的・定量的に評価する有効なパラメータについて検討する。(3)簡易計測方法を確立し、警告システムを構築する。3.研究成果以上の計画に従って指尖光電容積脈波センサ内蔵グローブを開発した。市販のデータ集録・解析システムLabVIEWを用いた映像酔い簡易計測方法評価用システムを構築した。市販DVD映画の動きの早い部分を評価対象映像として46インチ液晶テレビで視聴し、主観的に気分悪い、普通と感じた時及び無視聴時に得られたデータに離散フーリエ解析等を適用し脈拍数等の生体信号変化が得られた。提案システムの動作を確認し基盤技術を確立した。得られたデータと映像酔いとの関係解明には映像酔いの強い映像サンプル取得や映像酔いレベル表現の精度向上が求められる。今後は映像酔い簡易計測方法確立、警告システム実現が課題である。