著者
茂木 創 立花 亨 木村 正信
出版者
拓殖大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究「食料・エネルギー備蓄におけるデフラグメンテーション費用」は、食料やエネルギーの国家および民間備蓄の有効かつ即効性のある活用について考察したものである。本研究では、「不測の事態」が発生した状況下では、「規制緩和」よりも透明性が確保された下での「規制された経済社会体制」の方が効率的に危機を回避できる可能性について考察した。
著者
岡本 正洋
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

走運動により高まる神経新生の分子機構を明らかにするために,平成24年度は計画書の「実験2:海馬アンドロゲン阻害が走運動による神経新生の増加に与える影響」について,アンドロゲンとエストロゲン効果の比較や血中アンドロゲン作用について詳細に検証した。以下にその概要を示す。実験2-1アンドロゲン受容体拮抗薬の検討運動誘発性の神経新生におけるアンドロゲン作用を明らかにするために,アンドロゲン受容体拮抗薬フルタミド投与が神経新生に及ぼす影響について検証した。神経新生はその成熟過程を三つの段階,増殖(Ki67),分化(DCX),生存(BrdU/NeuN)に分けて評価した。その結果,フルタミド投与により低強度運動によるDCX陽性細胞数およびBrdU/NeuN陽性細胞数の促進効果は消失した。一方,Ki67陽性細胞数はフルタミド投与群でも低強度運動により有意に増加した。これにより,アンドロゲンは神経新生の促進因子の一つであり,その効果は細胞増殖ではなく,新生細胞の神経分化や生存に強く作用することが明らかとなった。実験2-2:精巣摘出の効果一般的に,アンドロゲンは精巣から血液中に分泌され,標的器官に作用すると考えられている。そこで,精巣摘出に伴う血中アンドロゲン濃度の枯渇が運動誘発性の神経新生に及ぼす影響について検証した。その結果,低強度運動による神経新生促進効果は精巣摘出群でも持続され,その効果はアンドロゲン拮抗薬フルタミドを投与することで消失した。フルタミド作用は,実験1-1同様,DCX,BrdU/NeuN陽性細胞に特異的であることが明らかとなった。これらのことから,アンドロゲンが神経新生を促進する新たな因子の一つであり,さらに運動誘発性の神経新生を仲介するアンドロゲンは精巣由来ではなく海馬由来であることが示唆された。
著者
松井 徳光 田畑 麻里子
出版者
武庫川女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本応募研究課題の主要な実験内容は、食肉を発酵する担子菌のスクリーニングを行い、心筋梗塞や脳血栓などの血栓症を予防する担子菌由来および発酵作用によって生じる抗トロンビン活性、線溶活性、抗酸化活性および免疫力を高めガンを予防するβ-D-グルカンなどを有する機能性食肉を製造することである。研究の結果、食肉の発酵にはスエヒロタケが適しており、発酵に伴って肉懸濁液中のトリグリセライド量が減少し遊離脂肪酸が増加していること、トータルコレステロールおよび遊離コレステロールも減少の傾向を示したこと、それぞれの発酵期間後に独特の風味を呈することなど、機能性のみならず、新しい加工食品として有効であることが示唆された。さらに詳細な実験が必要であるが、本研究で、担子菌で食肉を発酵させることによって、脂肪分やコレステロールが分解できることが明らかとなり、担子菌による食肉の発酵は、より健康的な食肉の製造に適していることを確信した。
著者
別所 義隆 河野 能顕 SAULIUS Klimasauskas
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

tRNAメチル基転移酵素と人工補酵素のAdoMet類似体を用いて、メチル基以外の非天然官能基がtRNA分子に高効率で取り込まれる技術を開発した。tRNA分子に転移される非天然官能基末端を蛍光標識することで、tRNA基質の均一な蛍光標識試料を準備し、tRNA・タンパク質複合体の蛍光結晶を作成した。大型放射光SPring-8のマイクロビームBL32XUビームラインにて、レーザー照射により結晶からの蛍光発色を観測し、微小結晶X線回折測定法を開発した。
著者
矢澤 徳仁
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

膠原病におけるB細胞の活性化は自己抗体産生のみならず種々の症状発現にも関与することが示唆されている。CD40リガンド(CD40L : CD154)はT細胞や血小板に発現し,CD40からのシグナルを介してB細胞やマクロファージ,樹状細胞などを活性化する作用をもつが,血中に存在する可溶性のCD40L(soluble CD40L ; sCD40L)が膠原病の病態に関与していることが示唆されている。われわれは全身性強皮症患者血清中のsCD40Lの値をELISAを用いて測定した。対象は全身性強皮症70例で,うちdiffuse型が42例,limited型が28例であった。これらの症例はすべてアメリカリウマチ学会の診断基津を満たしており,他の膠原病を示唆する所見は認められなかった。年齢,性を一致させた健常人25例をコントロールとした。全身性強皮症患者ではコントロール群と比較して有意にsCD40L値が高値であった。コントロールの平均+3SDをカットオフ値としたところ,全身性強皮症患者70例中31例(44%)にsCD40L値の上昇が認められた。病型別にはsCD40L上昇例はdiffuse型に多く,%VCおよび%DLCOと正の相関が認められ,肺線維症の存在との相関していた。以上より,sCD40Lは全身性強皮症の病態,特に肺線維症に関与している可能性が示された。さらに血清sCD40L値の上昇している例において末梢血リンパ球のCD40L発現量を検討したが有意な上昇は認められなかった。
著者
関 達治 五十嵐 泰夫 冨田 房男 吉田 敏臣 駒形 和男 小崎 道雄
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

日本の発酵食品のルーツでもあり、食文化として文化の一端を担う東南アジアに特有の伝統的発酵食品に関する情報を、社会の発展に伴い失われる以前に調査収集し、情報を保存することを目的とした。また、東南アジアに広く分布する類似発酵食品の比較検討を通して、その共通性、地域特異性を明らかにし、生物工学的、食品工学的意義を明らかにし、各国の研究者と協力して国際学術論文として取りまとめることを目的とした。本年度は最終年であるため以下の調査研究を行った。1.カンボジアにおける伝統的発酵食品に関する調査カンボジアの伝統的発酵食品、特に糖質を原料とする発酵食品並びに魚を原料とする発酵食品について、生産現場を調査した。(関、冨田、五十嵐、小崎、駒形、飯野、S.Limtong、C.Wongkhaluang、S.Saono、P.T.Ho、T.L.Thuoc)2.収集資料整理と取り纏め前年度までに収集した東南アジア諸国(タイ、マレーシア、ベトナム、西インドネシア、フィリピン、ラオス、ミャンマー)および本年度実施のカンボジアにおける発酵食品に関する学術等資料を整理し、取りまとめ指針に従いデータベース化を行った。(関、小崎、駒形、飯野、岡田、中川、N.Lotong、S.Saono、C.Wongkhaluang、W.Yongmanitchai、S.Saono、P.T.Ho、T.L.Thuoc)
著者
森下 覚
出版者
大分大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は,教員養成系大学で行われている「教育実習」と「体験的プログラム」における学習過程を比較することを目的として行われた。研究の結果,教育実習は失敗を伴う実践的な体験が少なく,指導力の自己認知が高まることが明らかになった。一方,体験的プログラムは現場の教師と協同して働く実践的な機会が多く,学生は教師の背中を見て学ぶことが明らかになった。
著者
福住 英仁
出版者
京都市立朱雀中学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

近年、個人情報の漏洩が大きな社会問題として取り上げられている。その大きな原因は、情報を扱う人々の個人清報やセキュリティーに関する意識の低さと、基礎的な知識の不足である。この問題を解決するためには、若年層の情報教育は必要不可欠である。そのため、義務教育における横断的な情報教育を実施することは、基礎的な知識を与え、セキュリティー意識を育てることになると考え、本研究を設定した。中学校では学級担任の子どもとの関わりが強いため、「学級活動」・「道徳」・「総合的な学習の時間」などを横断的に活用しての情報教育が可能である。「学級活動」の時間では、学級文集や卒業アルバムのデジタル化を進める中で住所録や、個人の写真の扱いについての基礎を理解させる。また、「道徳」の時間において、多くの生徒が携帯電話を持ち、インターネットに接続されたコンピュータを使える環境をふまえて、インターネットの仕組みを理解し、その上で正しいインターネット上でのルール、エチケットを学ぶ場として環境を整備した。「総合的な学習の時間」における情報教育では、文化的行事(文化祭、合唱コンクール、百人一首大会など)、体育的行事(体育祭、球技大会など)、儀式的行事(卒業式、入学式など)、宿泊行事(キャンプ、修学旅行)、部活動(試合、練習)などをビデオ、写真で撮影しDVD-VIDEO、電子アルバムを作成し、必要な時に利用できる環境を整え、必要に応じてWebでも公開した。これらの情報教育を、個々の授業として終わらせることなく、デジタル文集・デジタル卒業アルバム製作という形で、創造的活動の中で実体験として体験しながら学ぶことができるように、学習指導案、総合資料を制作した。
著者
真野 祐輔
出版者
大阪教育大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

本研究における主要な成果は次の2点である。一つは,概念変容という角度から,カリキュラムや領域の構成を検討することを通して,具体的な概念変容場面として「変数性に関する概念変容」を同定したことである。もう一つは,「式」のコンセプションの変容を捉える枠組みに基づく授業を設計・実施し,理論的枠組みの妥当性やその実践的有効性を検討したことである。
著者
小林 謙一 坂本 稔 松崎 浩之 宮田 佳樹 坂本 稔 松崎 浩之 宮田 佳樹 遠部 慎
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

縄紋時代の居住期間、特に竪穴住居の構築・使用・廃絶の時間経過を研究する目的で福島県井出上ノ原遺跡、神奈川県相模原市大日野原遺跡の縄文時代中期集落発掘調査を行い、データをとりながら年代測定用炭化種実・炭化材・土器付着物を採取し、年代測定を両遺跡あわせて約60測定行った。他に、日本先史時代の火災住居、重複住居や盛土遺構などの年代を測定し、縄紋集落の形成期間や形成過程を明らかにした。
著者
中村 史
出版者
小樽商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

平成29年度は、単著『七仙人の名乗りーインド叙事詩『マハーバーラタ』「教説の巻」の研究ー」の執筆・出版に相当な時間を費やすこととなった(平成29年12月20日出版)。この著書は、平成27年度末に北海道大学・文学研究科に提出していた博士論文「サンスクリット叙事詩『マハーバーラタ』第13巻の文学研究」を改稿し、博士論文には無かった二章を新たに付加して執筆したものである。この著書は『マハーバーラタ』第13巻「教説の巻」の文学研究を試みたものであり、『マハーバーラタ』に文学研究が少なく(決して多くなく)、『マハーバーラタ』第13巻「教説の巻」には研究そのものが少ない状況において、大きな意義を持つものと考える。特に、この著書の書名の元とした『マハーバーラタ』第13巻「教説の巻」の神話「七仙人の名乗り」については、そこに様々な文学技巧が見られるという点において、『マハーバーラタ』の神話としては非常に特異な存在である。そうした、この神話の文学性、特異性を指摘したことは、私の今後の研究の展開について大きなきっかけとなったと言える。しかし、この説話は非常に難解な説話であるため、さらなる解釈・研究を続けていかなければならないと考えられる。平成29年度10月より1年間の長期研修期間を得、京都大学文学研究科の内地研究員として、研鑽を積んでいる。その中で、『マハーバーラタ』第13巻「教説の巻」「七仙人の名乗り」の研究を英文の論文とすることが1つの課題である。
著者
平山 信夫 桜本 和美 山田 作太郎 松田 皎 小池 篤
出版者
東京水産大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

漁業管理方策を立てる際、漁具の漁獲機構を予め知っておく必要がある。本研究は刺網の漁獲機構について、漁獲量を決定する因子(漁獲制卸操作因子)による数理モデル式によって表現し、漁獲性能決定パラメータとしての漁獲効率の諸性質と、その推定方法を研究した。さらに漁獲と魚群行動、および網目の漁獲選択と漁獲効率との関係をニジマスを用いて、野外水槽において実験的に調べた。また暗闇時の魚群行動の計測法、明暗変化と漁獲との関係も同時に行った。得られた結果は次のとおりである。(1)漁獲モデル式:漁獲式を既往の研究結果に基づいて次のように決定された。すなわち、単位漁具がt日浸漬した時の漁獲量C(t)はC(t)=k_1/(k_1-k_2)NoX(e^<-k2t>-e^<-k1t>)・で示される。ここでk_1は羅網係数、k_2は脱落係数、Noは漁獲可能魚群量である。異体類ではk_1=5.00、k_2=0.229、No=1.203kgと推定された。(2)漁獲効率の定義式と操業管理パラメータ:漁獲効率K(t)はK(t)=C(t)/Noと定義される。従って前項の式を変形して得られる。この式を用いて、管理のパラメータ、最大漁獲効率K_<max>=(k_1/k_2)k_2/(k_1ーk_2)温、最適浸漬日数t_m=1/(k_1-k_2)×lnk_2/k_1、脱落率δ(t)等が得られた。(3)漁獲効率と網目選択率:両者の関係を理論的に調べるとともにニジマスを用いて実験を行い、両者の関係を実際的に確めた。さらに選択率(絶対・相対)の吟味を行った。(4)魚群行動と漁獲効率の関係:野外水槽において、ニジマスによる暗闇水中における魚群行動計測法を赤外線エリアセンサおよびケミカルライトを用いて、その実用性を確めた。またこの実験と同時に、明暗時の照度匂配と漁獲効率の関係を統計的実験計画法に基づいて実施し、照度匂配の急激な時に漁獲効率の高いことを確めた。
著者
河島 基弘
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

特に日本における人間と動物の関係の現状を(1)宗教の影響や民俗史などの歴史的視点、(2)社会の個人化傾向やペットブームなどの現代社会論的視点、(3)諸外国との比較という比較文化論的視点の3つの観点から考察した。具体的な成果としては、捕鯨問題に特化した形で単著を1冊、和文と英文の共著をそれぞれ1冊ずつ刊行。また、肉食の倫理、動物実験の是非、ペット飼育をめぐる問題などを理論と実践の両面で詳述した動物倫理の入門書を翻訳出版した。
著者
太田 孝彦 林田 新 村木 桂子 森下 麻衣子 吉田 智美
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

従来、江戸時代絵画は様式を語るのが常で、筆法が果たす機能に注意することはなかった。筆法の機能に注目してみれば、「書と画」の南画家たちにとって筆法修得は「古人になる」王道であり、狩野派が語る粉本の重視は筆法の価値を取り戻そうとする試みだったと解釈できる。こうした筆法重視の観点からは新たなる江戸時代の絵画史が語られることになる。それは従来の「美術」の観点から語っていた江戸時代の絵画史とは別の面を見せることになるだろう。
著者
稲垣 勉 大橋 健一 白坂 蕃
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、宗主国によって植民地に建設された避暑地・ヒルステーションの現状を、領域横断的なアプローチで明らかにすることである。ヒルステーションはレジャーを通じた国際間の文化接触の先駆けであり、現在でも観光地として機能し続けている。リゾートの祖型のひとつであるヒルステーションの現状分析を通じて、新興国民国家における国内観光の社会的役割を明確化し、さらにグローバル化の下における、気候条件やより良い生活環境を求める「人の移動」を分析することで、ヒルステーションの現代的な意義を明らかにした。
著者
金子 克美 加納 博文 東郷 秀雄 小西 健久 大場 友則 田中 秀樹 石井 千明
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2003

単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、単層カーボンナノホーン(SWCNH)、ナノ細孔性配位高分子(MOF)の壁の柔らかさの特徴とそれら物質のナノ構造へのクリーンエネルギー貯蔵について研究した。上記物質以外のナノ細孔性カーボンも含めて超臨界水素吸着性を総合すると、室温での吸着量は1wt.%以下であるが、77K程度になると10wt.%程度のナノ構造炭素があること、吸着水素の密度は20Kでの液体水素密度に近いものもあることを明らかにした。硝酸と硫酸の混酸処理によりSWCNTのバンドル構造を制御すると0.7nm以下のウルトラミクロ孔が増え、水素吸着量がほぼ2倍にまで増加することを見出した。SWCNTについてはアルコールを吸着すると、チューブの同心方向の振動(RBM)が大きな影響をうけラマンバンドが高波数側にずれること、分子吸着がその振動に与える圧力効果は約1万気圧相当であることを発見した。モデルケースとして窒素分子の場合にナノスケールの曲率の符号が単分子層吸着構造にどのような影響を与えるかを検討し、曲率が負である内側チューブ表面上の窒素単分子層は、曲率が正である外側チューブ上の単分子層よりも長距離秩序性が優れていることを明らかにした。SWCNHのナノ細孔が電荷貯蔵能力に優れており、構造制御の仕方によってはスパーキャパシターとして有望であることが分かった。また、水素と重水素は古典的には同じ大きさであるが、分子量が小さいために低温では量子的振る舞いにより、重い重水素のほうが小さくなる。このために、40K程度では重水素の吸着量が5倍程度大きくなるMOFを見出し、その理論的根拠も示した。MOFについて2段階ゲート吸着を示す化合物を発見した。
著者
鎌田 由美子
出版者
早稲田大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究では、17-18世紀にインド北部と南部で織られた絨毯には、どのような特徴があるのか、貿易品としてどのように国際流通し、各地で受容されたのかを、国内外での調査をもとに考察した。その結果、従来「ラホール絨毯」という名称で分類され、ムガル朝のもと、北インドで生産されてきたと考えられてきたインド絨毯のなかには、インド南部の絨毯生産地で、輸出先の好みと需要を反映して貿易用に織られたものが少なからず存在することが判明するとともに、絨毯そのものの価値に加えて、絨毯が受け入れられた社会的な文脈が新たな価値を生み出していく様子が明らかになった。
著者
服部 進 小野 徹
出版者
福山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

この研究の目的は平成13年から15年の3年間で,トンネルや斜面の変位を検知し,あるいは橋梁部材のような大きな構造物の変形を計測できるディジタル写真測量システムを開発することであった.システムの実現のために下記の課題を研究し,ほぼ当初の目的を達成した.以下研究結果の概要である.1.計測精度の向上-ディジタルカメラの低い解像度でトータルステーションの観測精度を実現するため,ターゲット,撮影法,画像座標計測法の改良を進め,10mで400μm以内の誤差の3次元精度を得た.2.計測速度の向上-100点の計測点,30枚の画像で1時間以内の計測を達成するため,画像点の自動ラベル付け,コードをつけたターゲットの開発,高速の調整計算法などを開発した.3.網設計の研究-計測は観測の網を作って精度を向上させるため,最適な網の設計が重要であった.ZODと呼ぶ基準形の問題を解決するとともに,変位検知のためのFOD(観測形態の最適化),SOD(観測の重みの最適化)を研究した.4.実用性の向上-トンネル,橋梁部材,コンクリート歪試験,斜面模型などの計測を通して,実用性を向上させた.5.遠方監視法-遠方の岩盤変位を監視するためには,望遠カメラが必要である.このため正射投影変換法を考案し標定法やキャリブレーション法を研究した.
著者
指宿 信 安田 裕子 青木 孝之 廣井 亮一 丸山 泰弘 後藤 弘子 石塚 伸一 佐藤 達哉 中村 正
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

第一に、法学、心理学、社会学、精神医学など多様な学問領域の専門家による「治療的司法」概念の検討が多角的に進められ、刑罰重視型より更生支援型刑事司法が再犯防止に有効という海外の先行する知見が、我が国においても通用することが明らかした。 第二に、更生支援を具体的に進めるための支援や治療を提供する社会的資源となる「プロバイダー」が各所に存在し活動を進めているが、治療的司法観を共有することができることがわかった。 第三に、刑事被告人や被疑者に最も近接する立場にある弁護人が、相当程度現行の刑事司法制度の中でも治療的司法に基づいた処分や処遇を進めることが可能であることが明らかになってきた。