著者
森 健太郎 松村 純 藤井 亮介 清水 砂希 宮地 諒 西 祐生 中野 希亮 米倉 佐恵 出口 美由樹 荒木 茂
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】我々は石川県で活動しているスポーツ選手を対象に身体機能チェック,セルフエクササイズの指導を平成25年4月より行っている。今年度からはGrayCookが考案したFunctional Movement Screen(以下FMS)を用い,評価した。FMSとは7つの動作パターンをスクリーニングすることにより,動きの制限や非対称性を特定し,ランク付けが可能となるもので,トレーニングを行う選手の障害リスクを予測するための指標となると提唱している。今回そのFMSで得られた結果について報告する。【方法】対象は,石川県で活動している実業団や高校部活動などの現役選手74名(平均19.5±6.5歳。男性47名,女性27名)であった。競技種目別人数はレスリング14名,ハンドボール11名,卓球7名,アルペンスキー7名,テニス6名,ソフトテニス6名,自転車競技6名,ソフトボール5名,フットサル3名,人力飛行機2名,その他水泳,バスケットボール,バレーボール,スキージャンプ,ダンス,マラソン,バドミントンが1名ずつであった。選手の運動パターンの質を評価するためFMSを実施した。FMSは選手に7つの動作をしてもらい,それぞれ0から3点で点数化する。採点基準として3点はFMSのテスト基準に沿った正しい動作パターンを行うことができる場合。2点は動作パターンを行うことができるが,代償や誤ったフォーム,アライメント不良が認められる場合。1点は動作パターンが不完全でFMSの基準に沿った動作ができない場合。ただし痛みがある場合はすべて0点となる。Gray Cookは不良なパターンがみられる1点以下の被験者は障害のリスクが高い可能性があると述べており,今回は3点と2点をリスク無し群,1点と0点をリスクあり群とした。7つの動作は,基礎的な動作パターンとして主に可動性を評価するショルダーモビリティリーチング,アクティブストレートレッグレイズの2種目,主に安定性を評価するトランクスタビリティプッシュアップ,ロータリースタビリティの2種目の計4種目を挙げており,さらに応用的動作パターンとしてディープスクワット,ハードルステップ,インラインランジの3種目を挙げている。【結果】結果①:7つの動作テストを通してリスクあり群は63名(85.1%)であり,そのうち痛みがあった選手は22名(29.7%)であった。結果②:7つの動作テストの内訳をみると,リスクあり群が最も多かったテストは,トランクスタビリティプッシュアップで40.5%。2番目はロータリースタビリティで37.8%。3番目はディープスクワットで31.1%。以下ショルダーモビリティリーチングは27.0%。ハードルステップは16.2%。アクティブストレートレッグレイズは12.2%。インラインランジは5.4%。の順であった。結果③:リスクあり群を動作テスト項目ごとにみていくと,基礎的な動作パターンの可動性の項目,安定性の項目,応用的動作パターンの項目の中では安定性の項目が62.2%で最も多かった。可動性の項目の中では,ショルダーモビリティリーチングでリスクあり群が最も多かった。結果④:基礎的な動作パターンの中ではアクティブストレートレッグレイズが応用動作パターンの中ではインラインランジで最もリスクなし群が多かった。【考察】結果①より,現在は診断名がついておらず,医療的介入を受けていないにもかかわらず,動作テストによって痛みが出る選手が29.7%おり,現役の選手でも痛みのある中,トレーニングを続けていることがわかった。さらに現在,痛みはないが将来的に障害を起こす可能性のある選手が55.4%いることがわかった。この選手たちはパフォーマンスに関しての指導は受けていたが動作の質への意識や,基本的な運動に関しては指導を受けていないため,理学療法士の個別の介入の必要性があると考えられる。結果②,③,④から体幹やコアの反射的な安定性が低下した選手が多かったことが考えられる。近年,コアエクササイズがよく推奨されているが,今回のスクリーニングでは点数が低かったテストでは肩甲帯の安定性も必要となるため肩甲帯,コア,骨盤を反射的に安定させながら動作を行う能力の低下も問題に繋がると考えられる。【理学療法学研究としての意義】スポーツ現場では筋力やスピードなどパフォーマンスの量的評価が重要視されているが,FMSは運動パターンの質を評価することにより障害のリスクを予測するものである。動作をスクリーニングすることにより,将来の障害のリスクの可能性がある選手を発見するための標準化されたテストとして有用であると考え,予防を目的とした理学療法を実施するための一助となり得るのではないかと思われる。
著者
小山 貴之 中丸 宏二 相澤 純也 新田 収
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】近年,アスリートに対する動作スクリーニングとしてFunctional Movement Screen(FMS)が用いられている。FMSは7つの動作(ディープスクワット;DS,ハードルステップ;HS,インラインランジ;IL,ショルダーモビリティリーチング;SMR,アクティブストレートレッグレイジング;SLR,トランクスタビリティプッシュアップ;TSP,ロータリースタビリティ;RS)からなり,定義された動作指示のもとに各動作を行い,0~3点(21点満点)で点数付けされる。FMSが14点以下の場合に重症外傷の頻度が有意に高くなるとの報告から,外傷予防の観点でシーズン前にFMSを実施する意義は高い。加えて,FMSの各動作のスコアから課題を探り,修正のためのエクササイズを重点的に実施することで,外傷を予防できる可能性がある。本研究は,可動性に焦点を当てたコレクティブエクササイズの実施がFMSのスコアに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。</p><p></p><p>【方法】対象は大学アメリカンフットボール選手95名とした。学年は1年生が39名,2年生が23名,3年生が18名,4年生が15名,ポジションはOLが13名,QBが3名,WRが23名,RBが10,DLが12名,LBが14名,DBが20名だった。オフシーズン期である2016年2~3月にベースラインのFMSを測定し,4月から12週間,コレクティブエクササイズを週3回実施した後,終了時のFMSを再測定した。この間,怪我等で練習を一定期間中止した選手は除外した。FMSの点数付けは,FMS level 1のライセンスを持つ理学療法士から十分な指導を受けたスタッフが理学療法士の監視のもと行った。ベースライン測定の結果から,可動性の改善に焦点を当てたコレクティブエクササイズのプログラムを作成し,選手への点数のフィードバックとともに実技指導した。統計学的分析は,FMSの総合スコアと各動作スコアについてベースライン時と終了時の差を比較するため,Wilcoxonの符号付順位検定を行った。有意水準は5%とした。</p><p></p><p>【結果】各スコアの中央値(四分位範囲)は,ベースライン時・終了時の順に総合スコアが15(14-16)・16(15-17),DSが2(2-2)・2(2-3),HSが2(2-2)・2(2-2),ILが2(2-3)・2(2-3),SMRが3(2-3)・3(2-3),SLRが3(2-3)・3(2-3),TSPが2(2-3)・2(2-3),RSが2(2-2)・2(2-2)だった。検定の結果,総合スコアとDS,SMR,SLR,TSPにおいてベースライン時よりも終了時のスコアが有意に高かった。</p><p></p><p>【結論】コレクティブエクササイズの実施により,12週間でFMSスコアの改善が認められた。FMSの各動作は相互の影響があり,可動性の低下はDSやHSのスコア低下につながることが多い。本研究では可動性の改善に焦点を当てたコレクティブエクササイズを実施したことで,可動性を主な要素とするSMRやSLRだけでなく,DSやTSPの改善にもつながったと考えられる。</p>
著者
三宅 晋司 佐藤 望 赤津 順一 神代 雅晴 松本 一弥
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.239-249, 1996
被引用文献数
1

室温のゆらぎ条件 (28~30℃: 1/fゆらぎに基づくもので, 平均45分の短周期ゆらぎと平均90分の長周期ゆらぎ) と28℃で一定の定常条件で温度制御を行い, 終夜睡眠ポリグラフおよび体表面皮膚温を測定した. さらに, 起床時に主観的睡眠感と温熱感の調査を行った. 被験者は健康な男子大学生12名で, 適応夜3夜の後, 3条件の実験を無作為の順序で行った. 睡眠時間は8時間 (11時30分就床, 7時30分起床) とし, 睡眠中はトランクスのみの裸の状態で寝具の使用も禁止した. 有効な10名についての結果では, 定常条件において stage IIの出現率が長周期ゆらぎ条件よりも多いことが示された. また, REM+徐波睡眠の全就床時間に対する割合を睡眠質の指標とした場合, ゆらぎ条件と定常条件間で有意差が認められ, ゆらぎ条件のほうがやや良い睡眠であることが示唆された. その他の各種睡眠パラメータおよび主観的睡眠感では条件間で有意差は認められなかった.
著者
斉藤 保典 小林 一樹 鈴木 剛伸 平藤 雅之 木浦 卓治 深津 時広
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-11, 2013
被引用文献数
2

圃場現場の環境情報や作物生育状況を実時間で計測し,公開と情報共有を行う圃場センシングネットワーク「アグリサーバ」を構築した.アグリサーバのセンシングノードには,気温・湿度および日射量センサ,カメラ,通信デバイス,制御回路等が含まれ,ノード管理および計測データの転送等は,全てインターネットを通じて行われた.センシングノード自体は,長野県上高井郡小布施町のブドウ,クリ,リンゴ,野菜の各圃場に設置され,平成18年度から試験運用を開始し平成20年度より本格運用を継続している.データの公開と利活用を進めるため,アグリサーバ専用のホームページ「農ライブ」を制作した.農ライブにおける農業情報の利活用法として1)IT/精密農業,2)トレーサビリティ,3)農ビジネス,4)教育,5)コミュニケーション,6)アグリツーリズム,への応用を提案し,具体的事例を示すことでその有効性を議論した.その結果アグリサーバは,小布施町の活性化にとって非常に重要な農業情報を提供することが示された.<br>
著者
松田 和徳 堀 洋二 雫 治彦 武田 憲昭
出版者
The Society of Practical Otolaryngology
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.98, no.10, pp.809-814, 2005

In the present study, we evaluated daytime sleepiness in 32 patients with obstructive sleep apnea syndrome (OSAS) using epworth sleepiness scale (ESS). ESS scores of patients with OSAS were significantly higher than those of patients with simple snoring and healthy subjects. ESS scores of patients with OSAS were significantly correlated with apnea-hypopnea index, the longest apnea time, but not with the lowest oxygenation. It is suggested that ESS score is a predictive index of the severity of OSAS. We then examined whether ESS in combination with body mass index (BMI) can identify patients with OSAS among patients complaining of snoring. When the cut off points were 11 in ESS and 25 in BMI, the combination of ESS and BMI correctly classified 18 of 25 patients with OSAS (sensitivity=72.0%) and 7 of 10 patients without OSAS (specificity=70.0%). We concluded that the combination of ESS and BMI was useful for screening of sleep apnea syndrome.
著者
バレンチナ オスタペンコ 越田 紗葉 片平 亜矢子 平坂 尚久 西川 治 西出 孝啓 西出 巖 湯川 進
出版者
Japanese Society for Thermal Medicine
雑誌
日本ハイパーサーミア学会誌 = Japanese journal of hyperthermic oncology (ISSN:09112529)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.51-59, 2008-06-20
参考文献数
23
被引用文献数
1 2

生活の質 (QOL) の改善は進行がん患者における治療目的のひとつであると考えられる. 今回我々は, 局所温熱療法 (HT) と化学および放射線療法の併用治療を受けたがん患者に対しQOLの評価を行った. 対象はがん患者89名 (M/Fは44/45) で, QOL評価は, European Organization for Research and Treatment of Cancer (EORTC) QOL Questionnaire Core 30, 日本版を用いた. 評価は, HT療法開始前と8回後に行った. さらに, 長期温熱療法を施行した14名の患者に対し, 16回, 24回, 30回後に行った. その結果, 性と年齢がQOLの様々な面に影響を与えることがわかった. 女性患者が社会面に関して改善率は高かったが, 逆に身体面では男性患者に比べ低い事が判明した. 年齢別に比較すると, HT前に60歳未満の患者は経済状況の低下を認めたが, 治療後では60歳未満, 60歳以上の患者共に悪化はなかった. 食欲の回復については60歳以上の患者の方がHT後に改善を認めた. 疾患別に見ると, QOL改善が特に良かったのは, 乳がんと肺がん患者であった. 長期温熱療法の結果に関して, 観察期間中のQOLは安定していた. 以上のことから, 局所温熱との併用治療によって, 身体的, 社会的, および精神的なQOLは改善される事が証明された. さらに, 治療前の精神状態および治療中QOL改善は治療効果にも良い影響を与えられると考えられる.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1733, pp.38-43, 2014-03-17

中でも、ヤマダは売り上げ規模で2位の倍もある、圧倒的なトップ企業だ。家電メーカーに対する仕入れ交渉は「ヤマダさんは総じて、他の量販店よりも数段厳しい」(健康関連機器メーカー)と言われてきた。 にもかかわらず日本の家電メーカーにとって、ヤマ…
著者
吉田 雅行 荻野 和功 小倉 廣之
出版者
Japan Association of Breast Cancer Screening
雑誌
日本乳癌検診学会誌 = Journal of Japan Association of Breast Cancer Screening (ISSN:09180729)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.223-229, 2013-07-20
参考文献数
2

浜松医師会は平成16年度にマンモグラフィ検診導入,精度管理の一環で毎年報告しているが,その成績と課題から,乳がん検診の医師会(地域医療)の役割を考察した。【対象と方法】従来の医師会型で初年度50歳以上・偶数年齢・視触診+MLO,2年目以降40歳代・二方向撮影を追加した。二次読影はマンモグラフィ講習会B以上2名(1名はA)の合議制とし,無料クーポン券は平成21年より開始した。結果より課題を明らかにし,医師会員のアンケート調査から医師会(地域医療)の役割を検討した。【結果と考察】受診者数は初年度3,145人,2年目6,525人,21年度は無料クーポン券で倍増した。受診率も平成20年度16.8%から無料クーポン券で30%へ上昇し,23年度37.9%だが50%には遠い。『検診に二人誘って50%(ぱー)』ポスターで受診者教育を展開している。要精検率は初年度10.1%と高いが,徐々に低下し5~6%前後を維持している。乳がん発見率は初年度0.45%,その後0.20~0.29%と概ね良好である。しかし,精検未受診率未把握率は平成21年度以降30%以上で,精度管理上問題である。医師会,行政,検診実施者間の協議会が必要である。さらなる受診率向上には,病診連携と患者の健康管理を担う"かかりつけ医"に,受診勧奨と患者家族の啓発が期待される。【結語】旧浜松市の乳がん検診の課題は高い精検未把握率と低い受診率であり,精度管理の協議会開催と医師会員の"かかりつけ医"としての受診勧奨に期待される。
著者
村越 伸行 許 東洙 西連地 利己 五十嵐 都 入江 ふじこ 富沢 巧治 夛田 浩 関口 幸夫 山岸 良匡 磯 博康 山口 巖 大田 仁史 青沼 和隆
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.236-244, 2016

【目的】一般住民における上室期外収縮の長期予後については,いまだ不明である.本研究の目的は,一般住民健診における上室期外収縮の診断的意義を調べることである.【方法と結果】われわれは1993年の年次一般住民健診を受診し,2008年まで経過を追えた63,197名(平均年齢58.8±9.9歳,67.6%女性)を解析した.一次エンドポイントは平均14年のフォローアップ期間中の脳卒中死亡,心血管死亡,または全死亡,二次エンドポイントは心疾患あるいは心房細動(AF)のない解析対象者における最初のAFの発生とした.上室期外収縮のない解析対象者と比較して,上室期外収縮のある解析対象者のハザード比(95%信頼区間)は,脳卒中死亡:男性1.24(0.98~1.56),女性1.63(1.30~2.05),心血管死亡:男性1.22(1.04~1.44),女性1.48(1.25~1.74),全死亡:男性1.08(0.99~1.18),女性1.21(1.09~1.34)であった.AFはフォローアップ期間中386名(1.05/1,000人年)に発生した.ベースラインでの上室期外収縮の存在は,AF発症の有意な予測因子であった〔(ハザード比(95%信頼区間):男性4.87(3.61~6.57),女性3.87(2.69~5.57)〕.傾向スコアマッチング解析でも,上室期外収縮の存在が交絡因子の補正後もAFの発症および心血管死亡のリスク上昇に有意に関連していた.【結論】一般住民における12誘導心電図での上室期外収縮の存在は,AF発症の強い予測因子であり,心血管死亡リスクの上昇に関連している.
著者
杉江 英司 松岡 雅典 秋山 俊弥 三村 宏 住友 芳夫
出版者
社団法人日本鉄鋼協会
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.1190-1197, 1983
被引用文献数
2

High Strength Line Pipe Research Committee in the Iron and Steel Institute of Japan has conducted five full scale burst tests with air pressure of 12.0 MPa on pipes of 48 in. in diameter and 0.720 in. in wall thickness of API. grade X 70, made with both controlled rolled steels and quenched and tempered steels. The arrestability of the pipes for the propagating shear fracture can be evaluated by Charpy absorbed energy and is not influenced by the existence of separation. The critical Charpy energy for arresting the shear fracture depends on the distance in which the crack should be arrested, and this phenomenon is well explained by solving the equation which governs the change in the crack velocity. Under the present test condition, the critical Charpy energy is 180 J for the arrest within one pipe length and 130 J for the arrest within two pipe length.
著者
庭井 史絵
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.13-24, 2016

本研究は,司書教諭や学校司書が行おうとする学校図書館利用指導の内容が,既存の教科の中でどのように取り扱われているかを明らかにすることによって,情報活用能力育成における利用指導の独自性や意義について論じることを目的とする.教師用指導書から,情報の探索と利用に関する指導内容を示す記述を抽出し,利用指導の内容と比較した結果,利用指導で取り扱う知識・技能は,「教科でも同じように取り上げられているもの」,「一部が教科でも指導されているもの」,「教科では取り扱われていないもの」の3つに分類できることが分かった.利用指導は,生徒が自ら情報を探し出すこと,多様な情報源の特徴を生かして利用すること,適切な形で記録を取ることに焦点を合わせており,教科とは異なる指導領域を有している.このような知識・技能は探究的な学習において求められていることから,学校図書館と教科が連携して情報活用能力の育成に当たることは,教育的に大きな意義があると確認できた.