著者
押村 光雄 久郷 裕之 清水 素行
出版者
鳥取大学
雑誌
がん特別研究
巻号頁・発行日
1991

ヒト膀胱がんのがん抑制染色体の同定を目的としてpSV2neo遺伝子で標識した正常ヒト線維芽細胞由来の7,9,11,12番染色体を微小核融合法によりヒト膀胱がん細胞株H-15細胞に移入した。11番染色体移入クロ-ンでは,5回の移入実験によって得られた20クロ-ンにおいては,細胞形態の顕著は変化(Flat)が認められ,そのうち15クロ-ンは早期の段階で老死化した。残る5クロ-ンは,Flatな細胞と親細胞と同様な形態を示す細胞とが混在していた。また,7,9,12番染色体導入クロ-ンの細胞形態は親細胞と同様の形態と増殖速度を示し,クロ-ニング後も老死化することはなかった。現在までに,細胞老死化にかかわる遺伝子はヒト1番および4番染色体に存在することを示す報告がなされているが,上述の結果は,細胞老化にかかわる遺伝子がヒト11番染色体上にも存在することを示す。放射線照射により断片化したヒト3番染色体をヒト腎細胞がん細胞株RCC23に導入した。その結果,D3S22〜H3S30領域(3p25)およびD3F15S2〜D3S30領域(3p21)を含む染色体を導入した場合において,細胞形態の変化ならびに細胞増殖速度の低下が認められ,これらの領域にRCC23細胞の腫瘍形質抑制にかかわる遺伝子(群)の存在が示された。この領域は,ヒト腎細胞がんにみられる特異的染色体欠失領域であった。Kirsten肉腫ウイルス形質転換NIH3T3(DT)細胞の増殖抑制にかかわる遺伝子は1qcenー1q25に存在することが示されているが,RTーAluーPCR法により,この領域に存在し,発現されているDNA断片を2クロ-ン得た。このクロ-ンをプロ-ブとして,コスミッドクロ-ンのスクリ-ニングを行う予定である。
著者
高橋 聡
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011-08-24

,1.連続地層試料の採取:野外地質調査岩手県北部に露出するペルム紀・三畳紀の連続地層をエンジンカッターで切断し、分析試料の連続採取を行った。2.コノドント化石処理採取した試料よりコノドント化石を見出した。化石年代は現在検討中である。3.岩石試料の切り分け、研磨面・薄片の作成採取した岩石試料を研磨用と粉砕用に切り分け、一方を研磨した。研磨面の観察の結果、黒色粘土岩中にラミナ構造、生物擾乱の構造を確認することができ、当時の堆積環境を知るデータを得た。4.岩石研磨面の元素組成マッピング:XGT分析連続性が確認できた岩石研磨試料をXGT分析装置でスキャンし、各元素の存在度を観察した。結果、モリブデンの濃集層を複数箇所で確認し、その側方連続性を確認することができた。5.岩石試料の粉砕・粉末化処理遊星ミル粉砕装置を実験室に導入し、微量元素成分の汚染の少ないメノー製の粉砕装置を使って岩石試料を粉末化する準備を行った。6.モリブデン同位体比の測定アリゾナ州立大学の協力を得て、検出されたモリブデンとウランの安定同位体比について予察的な分析値を得た。分析値は大量絶滅時の還元的海洋水の大規模な発達を指示する。
著者
三輪 芳朗
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

日本企業の取締役会の構成とパフォーマンスの関係を、とりわけ「外部取締役」に焦点を合わせて検討した。第1論文(Who Appoints Them, What Do They Do?)では、1985-90年の「バブル経済」の期間と、1990-95年の混乱と停滞の時期に焦点を合わせて、約1千社の東証第一部上場企業の個別データを用いて検討した。第2論文(Does Relation Banking Matteτ?)と第3論文(Conflicts of Interest in Japanese Insolvencies)は、銀行を代表とする融資金融機関との関係に焦点を合わせて、コーポレートガバナンスおよび融資先が困難に陥った場合の銀行の役割について検討した。いずれも、日本企業に関する確立した「通念」が根拠のない主張であり、外部取締役を増やすべきだとするものや「メインバンク」などとの緊密な関係の再構築の重要性を強調するものなどという「通念」に基づく最近の日だった政策論議が誤っていることを示す結果を得た。日本では、融資先企業が困難に陥ると、「メインバンク」などの融資金融機関が救済に乗り出し、再建に努力するとの「通念」がある。しかし、そのようなケースがあるとしても稀であり、もちろん一般的に成立しない、その意味で、日本の銀行-企業間関係が世界的にみて特殊だと言うことも確認した。同様の論点は世界中の各国で盛んに議論されているから、間もなく公表される論文には大きな注目が集まるはずである。Discussion papersの段階でも、いずれも注目度が高く、多くの研究者・実務家からも好意的な評価を得ていた。
著者
アヴォカ エリック
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

学術雑誌ならびに講演録に9本の論文を公刊した。さらに、過去3年間に執筆した5本の論文の公刊が決定している。また、フランスおよび日本において、多様な聴衆に向けて、シンポジウムやセミナーで9回の口頭発表を行った。上記の成果のほとんどは、「フランス革命期における演劇と雄弁」を主題とする本研究課題に直接関連するものであるが、浮世絵師の北斎に関する著書のような少数の例外もある。
著者
石井 明 清國 祐司 大西 美智恵 中西 美恵子
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

小児期における近視の発症と進行には長時間の近業が大きく影響するが、その抑制には十分な屋外活動が有効である。そこで、児童が視力を低下させない保健行動を取らせるための保健モデルを提案した。このモデルは、①自動視力計による視力測定、②視力に関するアンケート調査、③視力に関する講義の3つから構成される。これを県内の小学校で実施した結果、児童の視力に対する関心が高まること、視力が心配な児童は視力を低下させない保健行動をとることがわかった。
著者
坂口 一朗
出版者
大阪医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

脳神経外科における破裂脳動脈瘤に対する手術は、低血圧麻酔でおこなわれるのが一般的である。しかし通常の低血圧麻酔では、後頭蓋窩巨大脳動脈瘤等に対する直達術における術中破裂による出血の制御は、実際には困難である。これに対し一部の施設では、全身低体温、心停止下に手術を行っているが、人口心肺装置が必要とされ、これによる高度のヘパリン化、そして心停止による合併症が問題とされている。そこで、脳血流を遮断し、低温乳酸リンゲル液で脳血管内を灌流し、低血圧、低体温下で脳を保護する方法につき犬を用い実験的研究を行い、これを発表した。この方法によれば、平均5分以内に脳温を28℃まで低下させ、これを60分間維持する一方、体温は平均34℃以上を保つことが可能で、心拍は、維持される上、大量のヘパリン化も不必要であった。また、実験後の犬は神経学的異常を来すことはなかった。しかし、膠質浸透圧の極めて低い乳酸リンゲル液による灌流では脳に何らかの障害を来すことも考えられ、更に安全な灌流液を模索するため今回実験を行った。実験用ビ-グル犬を10匹用い、灌流方法は頚部脳血管遮断後、その内の一本より灌流液を注入することとし、灌流時間は120分、灌流液温度は5℃に設定した。5匹に対しては前回同様乳酸リンゲル液を灌流し、残りに対しては膠質浸透圧を血液と同じくすめためヒトアルブミンを添加した乳酸リンゲル液を作成し灌流した。灌流終了後血液で脳を復温し、6時間後に脳を摘出し病理学的検索を行った。海馬や前頭葉脳皮質、小脳皮質のHE染色を行ったが、前者と後者には有意と考えられる病理的差異は認められなかった。しかし脳浮腫に関しては両者に何らかの有意差があってしかるべきと考えられ、今後は、脳虚血に対しする影響を微小透析法等を用いて脳代謝産物を直接測定することで評価したり、比重法による脳浮腫の定量化を追加し、安全な灌流液を作成していく予定である。
著者
薄井 勲 戸辺 一之 箕越 靖彦
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究計画で我々は、脂肪組織M1/M2マクロファージ(Mφ)とインスリン感受性との関連について、特にM2Mφとインターロイキン10(IL-10)の働きに注目し検討した。PPARγ活性化作用を持つテルミサルタンは脂肪組織MφのM2極性を誘導し、一方脂肪組織低酸素はM1極性を誘導した。ジフテリアトキシンの投与によりM2Mφを欠失することができるM2Mφablationマウスは脂肪細胞が小型化し、インスリン感受性が改善した。視床下部のIL-10シグナルの活性化は骨格筋のミトコンドリア関連遺伝子の発現を増強させ、耐糖能を改善させた
著者
倫 裕發
出版者
東京工芸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

東京の気候は、国内の他のメガポリスのように、比較的温暖な冬と高温多湿な夏である。暑い夏は、空調の使用は避けられない。2011年の福島事故後、我が国は、夏に、季節的な需要の増加により、厳しい電力不足に見舞われている。気温の上昇は発汗と蒸散を増加させ、夏バテや熱中症のような熱に起因する病死が増えている。従って、良好な通風は、伝統的な涼風手段であるが、十分な室内の気流流動を確保し、空調の使用を最小化する上で、依然として重要である。2011年度は、(1)文献調査と(2)外皮ファザードの評価と適用効果を報告した。2012年度は、風洞実験により通風促進壁の詳細評価を実施した。通風促進壁は風向45°から67.5°までの間で、通風効果が顕著であった。後流域でも通風促進効果が確保された。窓開口のある南側外壁面に通風促進壁を設置することが特に外気誘引効果に有効であることが判った。
著者
前田 忠直 富永 譲 末包 伸吾 水上 優 朽木 順綱 杉山 真魚
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-11-18

本研究は,建築空間の生成を「生きた生活世界」の具体化として解読しようとする建築論的研究である。以下に示す3つの課題(I,II,III項目),及び5つの細目課題について代表者と研究分担者により同時平行的に遂行し,それらを比較検討した。I.20世紀の建築家の思索(方法概念)の生成論的研究:1)ステートメント,講義・講演録,著作による分析,2)建築家のスケッチ,紀行文による分析 II.建築作品の生成論的研究:3)建築作品の生成過程の実証的研究,4)アーカイヴ訪問,現地調査(作品調査及びサイト調査)による実証的検証 III.総括:5)生成論的分析による存在論的建築論の構築
著者
小田 尚也
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

下院議院269人中、6割を越える166議員(61.7%)が土地所有者として認識されており、パキスタン国政において依然として土地と権力の結びつきが見られる。しかしこの数値はパンジャーブ州の数値に大きく影響されている。パキスタン経済の中心であるパンジャーブ州では下院選出議員の8割近くが大土地所有者である。地方政治においては在地権力の存在が依然として見られるが、国政レベルにおいては土地と権力との結び付きが低下しているとの見方が多い。パンジャーブ州を除く3州ではその傾向が見られるようであるが、パンジャーブ州では依然として在地権力が国政において大きなプレゼンスを誇っていることが確認できた。
著者
眞柄 賢一
出版者
舞鶴工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

NCVCは申請者が10年以上も開発を続けており、すでに3軸マシニングセンタ用CAMソフトとしての地位を確立しているため、そのユーザインタフェースを崩さずにワイヤ放電加工機向けのNCプログラムが生成できるよう努めた。単純な図形や一定のテーパ角度等は、ワイヤ放電加工機用の切削条件設定を別に追加することで簡単に実現できた。ワイヤ放電加工機特有の加工では、中抜き加工と上下異形状切削の区別を、前者はAWFポイントをCAD作図時点で指示する方法、後者は2つのレイヤ情報をXY軸とUV軸に対応させる方法を考案し、解決することができた。四角形と円など線の数が違う上下異形状は、プログラム内で微細線分を計算することで対応した。どうしても線の数が合わせられない錐形状等は、一時停止点をCADで作図することを考案し、それを認識させることで解決することができた。申請時点でワイヤ放電加工機向けのシミュレーション機能は実装できていたので、生成したNCプログラムはシミュレーション機能のデバッグも兼ねて入念なチェックを行った。実機での加工実験は、本校ではまだ経験が浅いことから、NCVCの教育利用と機器の導入実績などを勘案して松江高専様を訪問した。適切なアドバイスを受けながら進めることができ、加工実験は良好な結果を得ることができた。そのスキルは本校実習工場にもフィードバックできている。今回の取り組みによって、これまでのユーザインタフェースを崩すこと無くワイヤ放電加工機特有の上下異形状切削に対応することができた。しかもそれを2次元CADで表現した図形情報からNCプログラムが生成できる意義は大きいと思われる。今後は教育機関だけではなく広く一般企業にも展開できるよう問題点を整理し開発を進めていきたい。
著者
日下部 豊寿 佐藤 嘉晃
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目標は、加齢による変化を歯の移動を通して歯周組織を観察する事により明らかにすることである。第1段階として、咬合機能している歯としていない歯の歯髄腔内の違いを調べたところ、咬合機能が低下することにより、同じ歯の歯髄内においても部位によって微小血管腔、歯髄細胞の数に生じる変化量が異なり、特に髄角部における組織の活性の低下が生じており、歯冠部歯髄の組織の性状に差がある可能性が示唆された。さらに第2段階として、歯の移動時における歯槽骨の骨吸収について調べたところ、若齢に比べ老齢では骨吸収が少ないことが解り、また高血糖下における若齢と老齢の間では、特に骨吸収に違いは認められないことが解った。
著者
岩清水 伴美 鈴木 みちえ
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

若手保健師が乳幼児虐待ハイリスク家庭を支援するためのチームケア能力を向上させる関連要因は、リフレクションと学習、支援への気持ち等であった。先輩保健師の課題としては、若手保健師に見せる・伝える、先輩のスキルアップ等が明らかになった。新人保健師のチームケア能力向上するためには、ケースの個別支援を展開すること、苦手意識を芽生えさせないため「高い技能を求め、高い挑戦」をさせる教育内容の示唆を得た。
著者
林 剛人丸
出版者
筑波大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

1 研究目的本研究は新潟県十日町市に伝承されている玩具菓子『ちんころ』および新潟県中越地方を中心にして日本各地に伝承されているちんころに類似した玩具菓子のデザイン性について、現地調査をもとに主にデザイン的な見地から比較研究を行なうことを目的とした。2 研究方法(1) 現地調査対象地新潟県十日町市、熊本県山鹿市、秋田県湯沢市、石川県輪島市、三重県菰野町、千葉県松戸市(2) 調査項目玩具菓子の実物の入手および撮影、制作工程の取材、配布・頒布の状況取材、過去の資料の収集3 研究成果(1) 総じて米を素材としている。菰野町の事例を除き大部分は米の粉を練って造形されており、弾力性やコシなどの材料的特性から造形が導かれている。(2) 寺社を通じて配布若しぐは頒布されているものは素朴な造形であり、民間で頒布されているものほど手が込んでいて個性的な造形である傾向にある。(3) 造形には地域的な特性が認められるが、どの地域でも決まりごとが存在するわけではなく、作り手が自由に造形することが許容され複数のタイプのデザインが存在している。(4) 寺社を通さず民間で頒布を行なう地域においても、玩具菓子が信仰の対象となっているケースが見受けられた。(5) それぞれの玩具菓子が素材(米)・モチーフ(犬)・信仰の相関関係からデザインされた形態であると推測することができる。(6) 現存する犬の玩具菓子には時代によって盛衰が見られることから、各地に類似するものが比較的近年まで残されていた可能性を推測でき、今後の調査課題となった。
著者
藤本 悦子 今本 喜久子 小林 宏光 今井 美和 有田 広美 大島 千佳
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

高齢者の睡眠を援助することを目的に、高吸水性樹脂を使ったホットパックを作成した。この用具は入浴に比べ簡便に実施できる特徴を持つ。深部温を一旦あげ、次いで低下させるが、この変動時に睡眠が誘導される。実際に施設入所の高齢者に実施したところ、夜間の睡眠の質が向上した(睡眠潜時と中途覚醒の減少)。特に、日頃から不眠を訴える群で、その効果は大きい。この用具を使った睡眠援助のための看護プログラムを作成した。
著者
小池 康晴
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

筋電図によるアクティブな制御が可能な防水型福祉機器のために、筋電図用防水アクティブ電極を開発した。また、水中と空気中で計測した波形の質を比較し、性能の低下がほとんど見られずに計測できることを確認した。また、無線による通信のために、消費電力を抑えるシステムを構築した。さらに、防水型の義手の試作として、安価なサーボモータを用いた義手を製作した。関節角度とインピーダンスを可変に設定することで、位置だけでなく力の大きさも筋電図による制御可能とした。
著者
大野 正夫 LARGO Danilo FORTES Migue TRONO Gavino 鰺坂 哲朗 小河 久朗 増田 道夫 山本 弘敏 奥田 武男 吉田 陽一
出版者
高知大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

フィリピン諸島の海藻・海草・微細藻類に関する分類、生態に関する調査研究、有用海藻類の資源学調査は昭和60年度より開始され、3次にわたる現地調査が行われた後、最終年度の平成2年度に総括的調査研究が実施された。1.現地調査:今年度の実施計画では、各担当者が今迄の調査で、デ-タや海藻標本等を特に補ぎなう必要のある地域を定めた。また3次まで行動等を考慮して乾期に現地調査が実施されてきたが、雨期の海藻の生育状態も知る必要が生じたために、6月16日から6月28日の期間現地調査実施した。山本,増田,鰺坂は、今迄の研究から、それぞれオゴノリ属,ソゾ属,ホンダワラ属の海藻類の分類学的研究にしぼって、北ルソン島で調査が行われた。短期間でかなり広い範囲の採集調査が行われ、オゴノリ属やソゾ属の標本は充分に得られ、特にフィリピンでのこれらの種の季節的消長を知ることができた。ホンダワラに関して、新らたに得られた種の標本は多くはなかったが、生殖器床を持つ標本が多く得られた。吉田は、マニラ周辺のミル貝の養殖場の環境調査を実施した。今回はミル貝養殖を指導しているJICAの専門家の協力も得て、詳細な水質調査とともに、養殖場内の植物プランクトン組成を知ることができ、ミル貝養殖の管理の基礎資料を得ることができた。奥田は、フィリピン諸島の中央部にあるセブ島で、サンカルロス大学の協力を得て、5昼夜にわたり、紅藻類の果胞子放出周期、特に日周リズムの有無についての観察を実施した。今迄の調査で季節的成熟リズムを追ったが、今回の調査研究で、熱帯域における海藻の成熟現象を明らかにすることができた。小河は、海草類の分類地理学的調査を実施してきたが、生態的調査資料が充分でなかったので、パラワン島に定点を定め、季節的調査を実施してきたが、今回、その総括的な調査を実施した。その結果、雨期は結実期であることがわかり、熱帯域の海草の生活パタ-ンをとらえることができた。大野は、フィリピンで養殖されているキリンサイ類の養殖方法を生態学的に検討した。また前回採集された海藻標本の整理と種類の検討を行なった。2.招へい:3次調査までに協同調査を行なってきたフィリピン大学のトロノ教授,フォルテス助教授,サンカルロス大学のラルゴ講師は、彼等の専門分野について、日本側メンバ-および日本国内の関係研究者と有意義な意見交換をすることができた。トロノ氏は、フィリピン産のホンダワラ類について、出来るかぎり種名を明らかにする研究計画があり、北海道大学の標本庫におさめられている標本と比較検討することにより、多くの未同定のものについて、検討することができた。フォルテス氏は、海草類の生態に関し、熱帯域と温海域の相違点などを検討することができた。ラルゴ氏は、有用海藻であるオゴノリの生理生態的な研究とホンダワラ類の生態調査をセブ島で実施しており、そのデ-タを高知大学と京都大学において検討する会合を持った。以上のように各担当者は、短期間の現地調査であったが、多大の成果を得て、現在デ-タ-の解析や分類学的検討を行なっている。各人の成果は、個別に学術雑誌に投稿することにしているが、このプロジェクトの成果として日本水産学会平成4年度シンポジュウム「東南アジアにおける養殖の現状と将来展望」において、海藻類に関し、大野(海藻類の養殖)、小河(キリンサイ類)、鰺坂(オゴノリ類),吉田(ミドリガイ養殖と環境)が報告する。また、6年間にわたった調査研究の成果の総括的出版物として、200頁程度のものを企画している。原稿〆切を9月にして、来年度中に発行をめざしている。なおこのプロジェクトによりフィリピン諸島の海藻に関する研究は進んだが、海藻の分布域をみると、ベトナム沿岸の海藻が、日本・フィリピン諸島と似ているので、次にベトナム沿岸の海藻調査研究計画が立てられている。
著者
戸田 須恵子
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

幼児の仲間関係に影響を及ぼす親の諸要因を明らかにする為に、幼稚園へ通っている4歳以上の幼児を持つ両親へ研究への参加を求め、214名の母親と186名の父親から協力が得られた。仲間関係に影響する社会的行動(向社会的行動、攻撃的行動、引っ込み思案行動、情緒性、不安傾向/散漫性)については先生に評価してもらった。ソシオメトリー指名法は、親の反対によって中止された。親の養育態度は、権威的、権威主義的、許容的養育態度とその下位因子を因子分析によって抽出し、社会的行動との関係を見た。母親の権威主義的養育態度は、向社会的行動や自己主張と負の相関が見られ、父親の権威主義的養育態度は幼児の暴力/破壊的行動と正の相関が認められた。母親の権威主義的養育態度に影響を及ぼす要因としては、幼児の落ち着きのなさ、未熟な行動、頑固さといった性格が影響し、自分の不安・うつ的性格や暗い性格(感情的、不安定、不満ぽい、嫉妬深い、神経質等)も権威主義的養育態度を規定する要因であった。又、権威主義的養育態度を示す母親は、家族を喧嘩の多い、感情的でストレスのある家庭として見ていた。又、夫婦関係においても言い争いが多く、問題を無視・回避するといった態度が見られた。権威的養育態度を示す母親は、家族を調和のとれた理想的家族と見ており、夫婦関係においても相互に援助しあっている関係として捉えていた。このような母親の養育態度は、幼児の友好的性格や自分の明るい性格が影響していた。父親に関しても同様な傾向が見られた。又、両親の父母の養育態度の影響に関して見ると、父母が権威主義的養育態度であれば両親も権威主義的養育態度を示し、父母が権威的養育態度だった場合は、両親も権威的養育態度を示した。即ち、子どもに示す親の行動・態度は、親から娘、息子へと受け継がれ、彼らが親になった時、又同じ行動様式をとる事が明らかにされた。
著者
三上 俊治 橋元 良明 箕浦 康子 吉井 博明 八ッ橋 武明 柏倉 康夫 遠藤 薫
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、多チャンネル状況における地域情報メディアの利用実態を探るために、鳥取県米子市において、中海ケーブルテレビの視聴可能地域をエリアとして、テレビ、新聞、多チャンネルケーブルテレビ、インターネットの利用状況、地域情報の情報源、地域住民の情報発信手段としてのケーブルテレビの役割について、テレビ局での聞き取り調査、パブリックアクセスチャンネル(PAC)参加者へのグループインタビュー、米子市民へのアンケート調査を実施した。具体的には、米子市在住の20〜69歳男女819名を対象とする社会調査を実施した他、携帯電話、携帯メール利用者計約10名を対象として、特定の1週間の通話内容とメール内容を記録してもらい、これを起こしたスクリプトを使って会話分析を行った。社会調査の結果、次のような知見が得られた。(1)テレビとインターネットに関する利用と満足の構造は類似しており、ある程度の相互代替性、補完性がみられる。(2)ケーブルテレビの加入動機は、多チャンネル化と専門チャンネル視聴が大きく、多チャンネル化ニーズが強いことを示している。(3)中海テレビの地域チャンネルは比較的よくみられており、なかでも災害情報、選挙速報、お祭りなどのイベント情報へのニーズが高いことがわかった。(4)パブリックアクセスチャンネルの視聴率は低いが、ケーブルテレビの番組取材を受けた経験のある人が多く、これがケーブルテレビの地域的機能に貢献していることがわかった。携帯メールの会話内容を分析した結果、感情表現として絵文字や特殊記号が多用されていること、全体として文章が簡潔で短く、くだけた会話調であること、移動しながら、きわめて短時間に多くのメッセージが交換されていることなどの特徴が再確認された他、音声通話との使い分けの実態などが明らかになった。
著者
東城 秀人
出版者
私立白梅学園高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

高校では植物が光合成に利用する光の種類(波長)と光合成色素の持つ特徴とを合わせて学習するが、その指導の中で、光と色の関係においてはスペクトルなど重要な概念は、生物分野ではきちんと教えられているとは言えない。また、光合成色素の特徴として吸収スペクトルを学習する際には、色素の抽出・分離や分光器を用いた吸収スペクトルの実験・観察を行うことが多いが、その後吸収スペクトル(曲線)へは説明だけとなり,実験的,経験的なつながりはない。上記の問題点を解決するためには、生徒が自らの手を使って実験をし、吸収(率)スペクトル(曲線)を描き、その特徴を学ぶことが有効であると考え、本研究では、吸収(率)スペクトルを描くための測定装置(透過率測定用装置(通称「葉さむ君」),反射率測定装置(通称「葉ねる君」))を、LEDとフォトセル(CdSセル)を利用して開発した。これらの装置を用いて各種の葉(ツバキ,イチョウ,ハナミズキなど)の透過率や反射率を測定し、以下の点を確認することができた。(1).緑葉では、スペクトルの青,赤領域(クロロフィルの吸収領域)の吸収率が高く、緑領域の光の吸収率は低かった。しかし、緑もかなりの率で吸収されている。(2).黄葉や紅葉では緑葉と異なり、クロロフィルの赤色吸収領域(光合成機能領域)が著しく低下し、透過率が上昇した。黄葉と比べて紅葉では、新たに合成されたアントシアニンによるものと考えられる緑色領域の吸収が見られた。また、生徒がツバキおよびイチョウの葉(緑葉,黄葉)を用いて、透過率を測定し、吸収(率)スペクトルを描く授業実践を行い、その授業効果を調べたところ以下の結果が得られた。(1).短時間で測定を終えることができ、計算も簡単にできた。実験に対する生徒の評価も良かった。(2).葉の色の変化を含まれる色素の変化と意味づけて考察することができた。以上の結果から、本研究で開発した装置は光合成の指導に十分利用できることが確認できた。