著者
西尾 嘉之 寺本 好邦
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

木材および関連の天然高分子をベースとした成形加工性に富む新規磁性材料の設計・試作を行った。特筆成果として、天然木粉に化学修飾と酸化鉄微粒子のナノ充填を施し、熱加工によって超常磁性の透明マグシート・マグプレートを作製することに成功した。また、木材主成分および関連多糖類を個々に分子修飾あるいは他高分子と複合化して、種々の賦形化と異方的な磁場応答が可能な多機能ソフトマテリアルも設計しえた。
著者
田中 里弥
出版者
関西学院大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

我々が音響信号を聴取する際,新規音の生起を刻々と知覚した上で全体の時間構造を把握していると考えられる.本研究では,ラウドネスに変化がなくスペクトル構造が変化する連続的な音響信号に焦点を当て,周波数遷移部で明確な新規音知覚をもたらすための「急峻さ」がどの要因で規定されるのかを,心理物理実験によって検討した.その結果,明確な新規音知覚のための急峻さは遷移の時間長によって規定される可能性が高いことが確認された.
著者
猿渡 敏郎 山内 信弥 藤井 千春
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

近年、小型底魚類が未利用水産資源として注目されている。メヒカリ(アオメエソ属魚類)モデル分類群とし、小型底魚類の生活史の解明を図った。マルアオメエソがアオメエソの異名であることが判明した。世界で初めてアオメエソの発光観察と撮影に成功した。アオメエソは、仔稚魚が黒潮に乗り?方海域から輸送され、10-11月ごろ駿河湾内に加入・着底し、翌年湾外へと移動する。本種が、大回遊を行う小型底魚であることが判明した。
著者
児美川 佳代子 佐々木 康 宮永 美知代 青柳 路子 生井 亮司 猪瀬 昌延 上野 裕一 本郷 寛 木津 文哉
出版者
東京芸術大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

美術とスポーツにおいて、技術の習熟や行為の遂行において、身体への見方がどのように影響しているかを明らかにすることを目指した。実践研究では、スポーツ選手に人体クロッキーを描いてもらうことで、スポーツ選手の身体観を考察した。理論研究では、実践研究の分析とともに、美術とスポーツの比較から両者の共通点と差違について多角的に検討し、美術制作行為及び美術の学びの特質を明らかにした。
著者
池本 幸生 松井 範惇 坪井 ひろみ
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

社会的企業は、経済性を維持しつつ、援助や支援に頼ることなく社会的目的を達成する持続的活動として多くの国で実践されている。このような活動を成り立たせている仕組みは利他的動機から生まれており、アマルティア・センのケイパビリティ・アプローチによって説明することができる。本研究では、バングラデシュのグラミン銀行の活動、ベトナムのコーヒー、タイの有機農業を事例とし、その仕組みと効果に関する分析を上記の枠組みで分析を行った。
著者
林 知里
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

単胎児と多胎児の父親における子育て観、母性神話に対する価値観、育児参加を促進する要因を明らかにすることを目的とし、アンケート調査を実施。「父親の子育て参加度」を従属変数に回帰モデルを作成した結果、子どもが 0 歳時点では、「多胎」「妻の妊婦健診に付き添ったことがある」「子育ての悩みを友人・同僚に相談したことがある」「妻は、子育てに関する自分の頑張りを誉めてくれた」「子育ては、男女ともに協力して行うものである」「子どもを育てることに余り関心が持てない」で回帰係数が有意であることが確認された。
著者
原 健二 久保 真一 柏木 正之
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

火災で発生する熱分解物すなわち煙成分を焼死体の血液から証明する研究をした。方法としては、固相マイクロ抽出を使って揮発性成分を抽出し、低温濃縮ガスクロマトグラフィー質量分析法を使った。この方法により、熱分解産物であるフェニルアセチレン、スチレン、インデン、ナフタレンが熱傷を伴う焼死体の血液から検出されることがわかった。すなわち、この分析において、焼死体の血液から火災で発生した煙成分を証明することができる。煙成分の検出は火災発生時において焼死体が生存していた証拠になる。
著者
安田 章人
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究は、カメルーン共和国・ベヌエ国立公園地域を主な調査地とし、「持続可能性」を基盤としたスポーツハンティングと地域住民の生活実践の両立および、「人と野生動物の共存関係の構築」に対する学問的貢献と具体的提言を探求することを研究目的とした。最終年度にあたる平成24年度は、以下の二点を大きな目標として研究活動を進めた。つまり、第一に補完的フィールドワークの実施、第二にこれまでの研究成果の具現化である。第一の補完的フィールドワークについて、科研費の使用状況および時間的拘束のため、アフリカ・カメルーンおよびタンザニアでのフィールドワークをおこなうことはできなかったが、比較調査地とした北海道・占冠村において、2013年2月の一ヶ月間、フィールドワークをおこなった。そこでは、猟区を基盤とした野生動物保全管理に揺れる地域社会の姿を把握することができた。アフリカの事例と比較し、今後、論文執筆および学会発表による研究成果の結実を目指す。第二に、研究成果について、これまでのアフリカでのフィールドワークおよび文献研究の成果として、国際学会での発表1件、国内学会・研究会での発表を3件おこなった。また、これまでの研究の一区切りとして、単著を勁草書房より刊行した。本書は、国内初のスポーツハンティングに関する著書として、関係学界にてすでに多くの注目を集めている。3年間にわたる本研究の総括として、まずフィールドワークについて、資金および時間的制約によりカメルーンおよびタンザニアでの十分な調査をおこなうことが難しかった点はあるものの、北海道での調査を開始し、比較事例のレベルにまで達することができた。つぎに、成果発表について、単著の刊行および国際学会誌の掲載が主な成果である。また、Society and Natural Resourcesやヒトと動物の関係学会などの国内外の学会で学術的交流を深めることができた。こうした研究活動をさらに進め、我が国における.学術研究および現実社会に寄与したいと考える.
著者
角皆 静男 渡邉 修一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

大気中のCO_2などの温室効果気体の消長に果たす海面の役割の大きさを決める手法として、1.地球化学的収支、2.大気中濃度の解析、3.大気海洋界面における濃度差の解析、4.海水中濃度の時間的変動、経年変化の解析、5.海底堆積物に残された記録の解析による方法がある。そこで、1については、これまでのデータを再吟味し、主に1960年代に加えられたC-14の推移に注目して解析した。2については、海洋上をわたる大気に注目し、札幌近くの日本海沿岸に観測所を設け、日本海からの空気中のCO_2、O_2、H_2O、のOとHの同位体比の微細変動を解析した。3については、海水中のCO_2の逃散度を他の海洋炭酸系に関わる成分と同時に測定し、海洋表面水の平衡からのずれとそれの解消を支配している因子を明らかにした。また、CO_2そのものの交換速度定数を求め、交換量を求めた。泡の効果により、CO_2の交換速度はO_2の交換速度よりかなり大きかった。また、海水中のCH_4、N_2O、DMSも測定し、これらの逃散量を見積もった。4については、西部北太平洋ばかりでなく、東シナ海、噴火湾などの縁辺海や大陸棚域の炭酸系と時間変化の詳密な観測を行い、その構造を明らかにした。これには、水温、塩分、溶存酸素、栄養塩、全炭酸、pH、アルカリ度ばかりでなく、トレーサーのCFCs、トリチウム、C-14なども含まれる。その結果、太平洋水はもともとCO_2を吸収しやすい海であるが、沿岸域(大陸棚ポンプを提唱)や高緯度域から海洋に大量に送り込まれ、またSiが主導する生態系と太平洋中層水が働いて、大きな吸収量になることが明らかとなった。5については、炭酸塩をあまり含まない西部北太平洋の堆積物について、オパールなどを用いて氷期と間氷期間の差異を明らかにし、海水循環の違いから、炭素循環の違いを考察した。また、CO_2の吸収量に影響する生物ポンプの働きを海底での化学成分の挙動から明らかにした。
著者
山田 登世子
出版者
愛知淑徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

初年度に実施したフランスにおける贅沢研究は、ココ・シャネルというキーパーソンを得て、現地でのフィールドワーク(シャネルが青春をすごした修道院の視察など)が豊かな成果をあげたと思う。また、日本における贅沢の研究も白州正子という対比項を得て、二人を比較しつつ著作『贅沢の条件』にまとめることができた。アメリカについては想定外のリーマン・ショックのため贅沢研究がすすめられる環境がなく、余儀なく割愛した。今後に記したい。
著者
中込 和幸 最上 多美子 兼子 幸一
出版者
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

認知矯正療法(NEAR)のRCTについて、サンプル集積がはかどらなかったため、並行してquasi-experimentalデザインを用いて、認知機能及び近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いた前頭部での血流変化に対するNEARの効果を検証した。統合失調症患者19名に6か月間NEARを実施し、その前後で認知機能および前頭部での血流変化を測定した。患者12名を対照群とし、6か月間の通常治療前後で評価し、群間比較を行った。対照群に比して実施群で運動機能、遂行機能の改善及び右前頭極部で有意な血流増大効果が認められた。NEARは前頭機能の活性化を介して認知機能の改善をもたらす可能性が示唆された。
著者
仙石 泰雄
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は,過去の100kmマラソンのレース結果を元にレースペースの類型化を行い,高いパフォーマンス発揮につながるレースペースパターンを明らかにすることを目的とした.さらに,100kmマラソン走行中の血糖変動を連続的に測定し,レースペース変動との関係を明らかにすることを目的とした.その結果,100kmマラソンレースを7時間以内でゴールする一流ウルトラマラソンランナーは100kmマラソンレース中の走速度変動を小さく抑えて走行していることが明らかとなった.また,9時間以降にゴールするランナーは50km以降に急激に速度が低下する特徴が示された.さらに,7時間以内でゴールしたランナーは,9時間でゴールしたランナーと比較して,レース中のエネルギー摂取量が少ないものの,血糖低下率は小さいことが明らかとなった.このことより,100kmマラソンにおいてトップパフォーマンスを達成するためには,レースペース変動を小さくすることが重要であり,レースペース変動の抑制には,エネルギー摂取量の多少に関わらず血糖値の低下を防ぐ能力および効果的なエネルギー補給のタイミングが関与している可能性が示された.
著者
木村 桂 齋野 朝幸 佐藤 洋一 黒坂 大次郎
出版者
岩手医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

プロテアーゼ活性化型受容体(PARs)はGタンパク共役型受容体の一種である。涙腺でのPARsの機能をCa2+イメージング法にて検討した。RT-PCRでPAR2のみの発現を認めた。PAR2刺激によって細胞内Ca2+の上昇を認め、この上昇は細胞外Ca2+除去によっても消失せず、PLC抑制薬やIP3受容体抑制薬でも阻害されなかった。Ca2+流入機構では、低濃度Gd3+等の投与で完全抑制されず、NO donorの投与で流入の増強を認めた。以上から、PAR2は細胞内ストアを刺激して[Ca2+]iの上昇を引き起こすが、これはIP3非依存性の反応と考えられ、Ca2+流入機構としてNCCEが優位に働いている。
著者
長谷川 信美 西脇 亜也 平田 昌彦 井戸田 幸子 飛佐 学 山本 直之 多炭 雅博 木村 李花子 宋 仁徳 李 国梅 SCHNYDER HANS 福田 明 楊 家華 郭 志宏 李 暁琴 張 涵 李 海珠 孫 軍 宋 維茹 ガマ デチン NAQASH J&K Rashid Y KUMAR Ravi AUERSWALD Karl SCHÄUFELE Rudi WENZEL Richard 梶谷 祐介 小田原 峻吾 平川 澄美 松嶺 仁宏 佐野 仁香 長谷川 岳子 坂本 信介 樫村 敦 石井 康之 森田 哲夫
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-11-18

中国とインドにおいて、放牧方式の違いが高山草原生態系へ及ぼす影響について調査を行った。東チベット高原では、暖季放牧地が寒季放牧地よりも植物種数が多く、種数密度と地上部現存量は低かった。土壌成分は、2012年と2004年間に差はなかった。牧畜経営では、ヤクが財産から収入源への位置づけに移行する動きが見られた。また、クチグロナキウサギの生息密度と植生との関係について調査した。インドの遊牧民調査では、伝統的な放牧地利用方法により植生が保全されていることが示された。衛星画像解析では、植生は日射、気温、積雪日数等に左右され、経年的な劣化も示された。ヤク尾毛の同位体元素組成は地域と放牧方式等で異なった。
著者
脇中 洋 中塚 圭子 GILCHRIST Alex 石橋 佳世子
出版者
大谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、NPO法人と連携しながら高次脳機能障害者ピアサポーターを養成し、概ね週1回以上の高次脳機能障害ピアサポート活動を継続して記録を収集し、社会的実装を果たした。また生活施設や就労支援施設の現場職員と当事者やその家族を交えた事例報告研究会を3か月おきに開催した。さらにこれまで連携してきたカナダのピアサポーター専門家との情報交換や共同の学会発表を行い、高次脳機能障害ピアサポートの有用性を実証した。
著者
中島 信博 松野 将宏
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

「地域密着」という概念を検討するため、プロサッカークラブのベガルタ仙台を事例として、質的データから分析を行った。特に、創設期に地域の多様なアクターが、どのように関与したのかについて史的に捉え、その上で全体の特徴を指摘した。仙台では、大企業が主導するビッグなクラブとは異なる様相を示していた。まず、県サッカー協会というボランタリー・セクターが先導し、行政への働きかけが、スタートであった。初期段階では、市民の運動やマスメディアのキャンペーンも後押しすることになる。その後に、地元の経済界が具体的に参加し、最終的に、多くのアクターが参加する形でスタートにこぎ着けた。
著者
高久 史麿 間野 博行 石川 冬木 平井 久丸
出版者
東京大学
雑誌
がん特別研究
巻号頁・発行日
1989

ヒト白血病細胞における癌遺伝子の機能、相互連関を明らかにする目的で、これまでにPCRを用いてNーRAS、ABLなどの既知の癌遺伝子の活性化の有無を検討した。更に、白血病細胞に特異的に発現している新しいタンパク質チロシンキナーゼ遺伝子であるヒト1+K遺伝子のcDNAをクローニングし、その構造、発現、機能について検討した。1.PCRによる活性化癌遺伝子の検出種々のヒト白血病、前白血病よりDNAもしくはRNAを抽出し、ヒトNーRASをPCRもしくはRTーPCRにより遺伝子増幅した。急性白血病18例中5例、慢性白血病12例中0例、前白血病状態23例中3例にNーRASコドン12、13、61における点突然変異を検出した。この検出感度は全細胞の1%に点突然変異が存在すれば、これを検出できた。更に、RTーPCRによりBCR/ABL再配列mRNAの有無を検討した。慢性骨髄性白血病、Philadelphia染色体陽性急性リンパ性白血病の全例に再配列mRNAが検出された。この検出感度は10^6細胞に1つの突然変異細胞を検出できた。このように、PCRを用いると非常に高感度、簡便に突然変異を検出でき、患者の経過を観察する上で、有意義であった。II.新しいチロシンキナーゼ遺伝子1+Kヒト白血病に関与していると思われる新しい癌(関連)遺伝子を同定する目的で、ヒト白血病細胞株であるK562のcDNAライブラリーをcーfmsプローブで低ストリンジェンシーで、スクリーニングしクローニングを得た。構造解析により、これはマウスで報告された1+Kのヒトホモログであることが分かった。この遺伝子は膜貫通部位とチロシンキナーゼドメインを持ち、ROS遺伝子と強いホモロジーを示すいわゆるレセプタータイプのチロシンキナーゼである。18例の血液悪性腫瘍細胞(株)と17例の非血液悪性腫瘍株についてトザンハイブリダイゼーションにより発現を検討した。10例の血液悪性腫瘍(株)発現が見られたが、他の非血液腫瘍に見られなかった。
著者
高久 史麿 小林 幸夫 石川 冬木 平井 久丸
出版者
東京大学
雑誌
がん特別研究
巻号頁・発行日
1988

骨髄異型性症候群(Myelodysplastic syndrome,以下MDS)は主に高令者をおかし,血液学的に末梢血の汎血球減少と骨髄の異型を伴う正〜過形成像を主徴とする予後不良な疾患である。我々は既に,本症患者骨髄細胞DNAをNIH3T3細胞に遺伝子導入した後,悪性形質転換をヌードマウスにおける腫瘤形成能により検定し,本症患者骨髄中に,N-rasがん遺伝子コドン13における点突然変異がしばしば観察されることを報告した。このin vivo selection assayは活性化がん遺伝子を非常に高い感度で検出するが,操作が非常に煩雑で時間を要するため,多数の検体を調べることは困難であった。そのため,本年度は、ポリメレース・チェーン・リアクション(PCR)とオリゴヌクレオチド・ハイブリダイゼーションを組みあわせて,MDS症例の骨髄細胞中におけるN-rasの点突然変異の有無を検討した。N-rasがん遺伝子はそのコドン12,13,61における点突然変異により活性化を受けることが知られているので,上記の領域を含むような範囲の両端のプライマーを用意し,患者骨髄DNAに加えて,Taq ポリメレースによりPCR法で,当該領域を選択的にin vitroで遺伝子増幅した。これをフィルターにドット・ブロットし,それぞれのコドンの点突然変異を出しうるようなオリゴヌクレオチド・プローブでハイブリダイゼーションした。本法により,患者骨髄細胞中に1%の点突然変異をもつ細胞が存在すれば,それを同定することができた。19例,のべ21検体のMDSについて検討した所,RA(refractory anemia)の一例,RAEB in T(refractory anemia in transformation)の一例そして,MDSより急性白血病へ進行した一例において,それぞれコドン61,12,61における点突然変異が同定された。以上より,点突然変異のおこる位置とMDS,急性白血病の間には何ら相関がないことが推定され,また,本法はその簡便性と高い検出感度により,前白血病状態の患者の経過観察に有用であると考えられた。
著者
笹月 健彦 石川 冬木 野田 哲生 鎌滝 哲也 伊東 恭悟 丹羽 太貫 中村 祐輔
出版者
国立国際医療センター(研究所)
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1999

本領域は、発がんの分子機構の解明を第一の目標とし、第二に細胞のがん化防御およびがん化した細胞の排除機構の解明を目指し、併せてがん研究の最終目標であるがん克服のための道を拓くことを目的とした。発がんの分子機能の解明のために、研究対象を分子・細胞レベル、臓器・個体レベル、家系・集団レベルにそれぞれ設定し、遺伝子および染色体の構造の安定性と機能発現のダイナミクスに関する恒常性維持機構、内的外的発がん要因によるこれらのゲノム維持機構の破綻と細胞のがん化の関連、新しい発がん関連遺伝子の同定および既知遺伝子も含めたこれら遺伝子群の変異に引き続く多段階発がんの分子細胞生物学的機構、を解明することを目指した。一方、発がん防御の分子機構の解明に当たっては、生体が備え持つ数々の恒常性維持機構によるがん化の防御、免疫系によるがん細胞の排除機構を分子レベルで解明することを目指した。DNA二本鎖切断によるチェックポイントの活性化、二本鎖切断の相同組換え機構と、それらの破綻と発がんの関係が明らかにされた。ヘリコバクター・ピロリ菌と胃がんとの関係が確立され、そのがん化機構の鍵となる分子が発見された。動物個体を用いてのがん関連遺伝子の機能解析により、Wntシグナル、Shhシグナル、PI3-Akt経路といったシグナル伝達系が生体内において果たしている役割と発がんにおけるこれらの活性化の重要性も明らかとなった。胃がん発症に関与する遺伝子の候補領域が同定され、21番染色体候補領域から胃がん感受性遺伝子が同定された。多数の癌関連抗原を同定すると同時に、NK細胞活性制御に関与する分子同定の分野やTヘルパー細胞の癌排除における役割、NK細胞やマクロファージなどの自然免疫系の特異免疫誘導における役割の分子レベルの解明も行われ、これら基礎研究成果の臨床応用のための探索的臨床研究の進展もみられた。
著者
中内 啓光 丹羽 仁史 横田 崇 須田 年生 岡野 栄之 石川 冬木
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

本特定領域研究では1)細胞の初期化の機構の解明、2)幹細胞の未分化性維持機構、3)幹細胞の多様性と可塑性の三つの柱を中心に5年間にわたり研究を進めた。ES細胞、組織幹細胞のそれぞれにおいて研究が大きく進展したが、最近2年間に本特定領域研究の分担研究者である山中伸弥教授らによって遺伝子導入によって体細胞を多能性幹細胞に変換する技術が開発され、再生医療・幹細胞研究に大きな転換を迎える事態となったことは特筆すべきことである。厳しいガイドラインのため本邦においてはヒトES細胞研究が諸外国と比して進展に遅れていたが、倫理的問題を含まないiPS細胞技術の登場により、多能性幹細胞の分野にも今後大きな研究の進展が見込まれる。そこで昨年度は新しく開発されたiPS細胞産生技術を中心に「幹細胞研究を支える新しいテクノロジー」というテーマのもとでシンポジウムを開催した。産業界を含む300名近い研究者が参加し意見を交換することにより、本研究領域における研究で得られた知見を速やかに共有することができた。また、総括班メンバーを中心に今後の幹細胞研究の進め方などについても討議がなされた。