著者
真野 祥子
出版者
愛媛県立医療技術大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

学童期のADHD児を持つ母親を対象とし,マターナルアタッチメント形成プロセスの特徴について検討した。12人の母親に半構成的面接を実施し,児の行動と養育について母親自身の情動体験を含めて聞き取りを行った。ADHDの症状は母親のネガティブな感情を引出し,問題行動に直面するとネガティブな感情が生起し養育態度も厳格になりがちであったが,その一方で可愛いと思える様子の時にはポジティブな気持ちとなっていたように,アンビバレントな状態が特徴的であった。マターナルアタッチメントの状態は,ルールに沿った行動が求められる学校生活が開始されると悪化していた。この時期のマターナルアタッチメントは母子の生活史の中で最も悪い状態となるのであろう。ADHD児の母親は診断を肯定的に受け止めていた。診断後,母親は自責の念から解放され,本を読んだり親の会に参加し,疾患に関する知識を得ていた。その結果,問題行動が起こった時はその原因を冷静に考えることができ,行動の見方と養育態度も変化したと実感していた。また,診断後,ポジティブなエピソードは顕著に増加し,小学校入学後に大幅に増加したネガティブなエピソードは診断後に減少しており,小学校入学と診断は母親にとって転機であると言える。しかし,将来への不安は依然として大きなままであり,最終的には学校教育終了後,就職や結婚等の社会的自立について将来の見通しが持てず不安を抱いていた。
著者
海老 一郎
出版者
財団法人西成労働福祉センター
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

1.本研究では、「あいりん地域」の日雇労働市場の展開を中心として、労働市場の縮小が日雇労働者や職人層の労働・生活に与える影響を明らかにし、不安定就業層の生活保障政策において、雇用と福祉の交錯を視野に入れた施策のあり方を研究することが目的である。2.(1)リーマンショック以降の新規流入層の実態と従来の日雇労働者との相違点を明らかにするため、2008年に西成労働福祉センターが実施した「あいりん地域日雇労働者調査」のデータ再集計と分析を行った。(2)「あいりん地域」の日雇労働者を雇用する事業所の求人動向や雇用実態をとおして、1998年から2011年まで西成労働福祉センターで実施している「建設業作業員宿舎調査」の分析を行った。(3)不安定就労層(稼働層)の生活保障政策のあり方を明らかにするため生活保護受給者や労働災害被災者の就労支援策を展開している釧路市役所や宮崎県建設農林事業団への現地聞き取り調査を実施した。(4)建設労働や失業・貧困、社会的排除、ホームレス、生活保護(就労支援)に関する先行研究成果のレビューを行ない、学内外の研究会等で先行研究レビュー報告や意見交換を行った。3.(1)リーマンショック以降の新規流入層は、若年化しており、建設日雇に従事する労働者の就労経路の不明確化や社会保障の欠如が顕著となってきている。(2)90年代以降建設作業員宿舎に入る労働者の減少が続き、現場入場の手続きの厳格化(身元確認・健康管理・年齢制限など)が進み、雇用を抑制する事業所が増加している(3)就労支援プログラムでは労働条件の低位性や社会保障の欠如はあるが、当事者の社会的自立(適応)を促進するシステムが確立している。(4)本研究課題の成果をまとめて、2012年度に修士論文を執筆する。
著者
澤田 裕治
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究で明らかになったのは次の4点である。①ロンドンのシェリフと市長裁判所史料の喪失に留意する必要性、②イングランドは、12世紀末に西欧で初めて、国王裁判権を頂点とする「授権」体系を成立させ、裁判と立法により、全国的なコモン・ローを創出したこと、③コモン・ローは、ロンドン都市法等の地方慣習を敵対視せず、「授権」体系の枠組の中で柔軟にその特権享受を許したこと、④しかし、ロンドンの裁判所は占有アサイズ、土地明渡令状等のコモン・ローの革新にモデルを提供した可能性のあることである。
著者
杉原 儀昭
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

一原子の硫黄供与体として働く硫化試薬の合成と硫化能につき,検討した.その結果,アルケンからチイランのワンポット合成において塩化メトキシカルボニルスルフェニルが有用であること, 3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン 1,1-ジオキシドとシリカゲルを用いたアルケンの固相チイラン化において孤立シラノールとヒドロキシ基と反応基質間の水素結合が反応に関与することを明らかにした.
著者
森田 茂之 中村 博昭 河澄 響也 古田 幹雄 村上 順 秋田 利之 森吉 仁志
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究では,曲面の写像類群とリーマン面のモジュライ空間の構造の解明を中心課題とし,それに密接に関連する種々の問題についての研究を行った.具体的には,写像類群のコホモロジー群の研究,Floerホモトピー型の理論の展開,3次元多様体のゲージ理論に基づく位相不変量の研究,写像類群の調和的Magnus展開の理論の建設,Grothendieck-Teichm\"uller群の構造の研究,3次元多様体論における体積予想の研究,3・4次元における非可換幾何学の展開,写像類群の有限部分群と特性類の関係に関する研究,写像類群のJohes表現の研究,写像類群と4次元多様体論との関連,等である.このように代表者および各分担者はそれぞれのテーマを追究する一方で,相互啓発により一段高い観点からの研究を目指した.その中から,例えば写像類群の幾何学とシンプレティック幾何学との結びつきや,写像類群と自由群の外部自己同型群の構造の類似点および相違点の解明等の新しい研究の方向も見えてきた.
著者
日高 洋 米田 成一 安東 淳一
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本年度は,前年度に引き続き,以下について行った。1、gas-rich隕石の分析:多量にガス成分を含んでいる隕石(Kapoeta,Cook101,NWA801,SaU290)について,Sm,Gd同位体,希ガス同位体,の分析を行い,これらの宇宙線照射履歴の詳細について解析した。これらの隕石は銀河宇宙線の他に,低エネルギーの宇宙線による照射の影響を著しく受けている可能性が示唆された。2.炭素質コンドライトのバリウム同位体分析:タイプの異なる6種類の炭素質コンドライト隙石(Orgueil,Mighei,Murray,Efremovka,Kainsaz,Karoonda)について酸による連続溶出実験を行い,得られた各々のフラクションのバリウム同位体分析を行った。特に,3種類のCM隕石から得られた同位体変動を総合的に解析し,原始太陽系の同位体不均一に影響を及ぼす要因としてs-過程,r-過程の原子核合成成分以外に消滅核種^<135>Csの存在の可能性を検証した。3.原始惑星における水質変成:水質変成を激しく受けている形跡のある狭山隕石(CM2)について,その組織からコンドリュールを採取し,個々のコンドリュール粒子についてバリウム同位体測定を行った結果,^<135>Cs-^<135>Ba壊変系の著しい乱れを示すデータを得た。本研究結果は同位体化学的見地から水質変成の存在を示唆する有意義な証拠となり得た。
著者
ヴィゴ レジャン LAUNEY THOMAS 千村 崇彦 池田 時浩
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

我々は分子や粒子をイオン化・加速して特定の神経細胞に穿通させるナノ電子スプレー微小管を設計、2本の同心の表面疎水処理ガラス管内部の溶液を電子スプレーにして標的に局所的に到達させた。液滴の安定噴射には管配置と電圧波形が重要で、20-250nAのパルスピーク電流が得られた。しかし陰イオン色素と蛍光顕微鏡で観察すると粒子は管先端-培養液面境界のほか外管内壁にも急速に蓄積、終には管内部への引水と溶液流出が生じ、菅形状の調整を重ねたが不可避だった。静電的性質のシミュレーションによる改良型を提示する。
著者
小川 敦史 我彦 広悦 犬飼 義明 犬飼 義明
出版者
秋田県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,1)作物根系の大部分を占める側根原基ならびにその周辺組織における,浸透圧ストレス条件下での発現遺伝子ならびに代謝物質の変動の網羅的解析,2)冠根および側根数が著しく減少するイネ突然変異体の特徴の解明と,その原因遺伝子の単離および機能解析,3)糖代謝関連酵素の根系形成への関与の解明,4)オーキシンやサイトカイニンの働きを制御する腫瘍誘発遺伝子群の一つである6b遺伝子を導入した植物体での根系形成やホルモンの分配の解明を行った.
著者
東 幸代
出版者
滋賀県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、近畿三角地帯を対象とし、近世期に発生した地震の被害と人々の対応を解明するものである。対象地域を(A)福井県・滋賀県・京都府エリア、(B)三重県・岐阜県・愛知県エリア、(C)大阪府・奈良県・兵庫県エリアの3エリアに分割し、3ヶ年にわたって検討した。その結果、(A)~(C)のいずれのエリアでも有感地震の頻度は高く、地震の際の人々の対応には共通した行動パターンが確認されるが、災害教訓の伝承に関しては、被害地の立地などに基づく地域的差違が顕著であることが明らかになった。
著者
齋藤 ひろみ 森 篤嗣 橋本 ゆかり 岩田 一成 菅原 雅枝
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

国内でも外国人の児童生徒が増加しているが、日本生まれ日本育ちの子どもの言語発達支援・教育が新たな課題となっている。本研究では、こうした日本生育外国人児童生徒(日本籍の児童も含む)のリテラシーの発達について、作文を書く力に焦点化して調査を行った。外国児童生徒と日本人児童生徒から、出来事作文と意見文作文という2つのジャンルの作文データを収集し、産出量、表記、語彙、文法、内容構成等の観点で分析を行った。その結果、産出量、社会性の表出には日本人児童と同等の発達が見られたが、特殊音表記、文法適格性、結束性、陳述の適確さ・多様さ、論理性にやや遅れが見られ、これらを意識した指導が求められる。
著者
加藤 千香子 橋本 順光 松原 宏之 小玉 亮子
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、まず世紀転換期における特徴的な国民規範形成のプロセスの検証がなされた。日本における「青年」の構築と組織化、アメリカでの性にかかわる問題、ドイツにおける「少子化」問題、イギリスでの黄禍論や「武士道」概念といった焦点を浮かび上がらせ、それらが同時代の世界との緊密な関係のうえに登場したことが検証された。他方、国民規範が企図した社会秩序の安定化については、必ずしも果たされたわけではないことも明らかにされた。
著者
ゴチェフスキ ヘルマン 藤井 浩基 塚原 康子 酒井 健太郎 大角 欣矢
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

28年度の研究活動は28年3月12日から29年6月26日まで開催された駒場博物館の「フランツ・エッケルト没後100周年記念特別展「近代アジアの音楽指導者エッケルト--プロイセンの山奥から東京・ソウルへ」」展示中に行われた行事とその準備に集中した。5月28日には東京大学駒場キャンパスで「フランツ・エッケルトとその時代」というタイトルで国際シンポジウムと吹奏楽の演奏会を実施した。シンポジウムには研究代表者と研究分担者全員に加えて安田寛(元奈良教育大学、研究協力者)、李京粉(ソウル大学、研究協力者)、曺允榮(梨花女子大学、招待講演)と文景楠(東京大学、通訳)が参加し、主にこの研究で明らかになった新たな事実の解釈と意義について議論した。演奏会では小澤俊朗の指揮と神奈川大学吹奏楽部の演奏でエッケルトの作品を一次資料から再現した。その中の複数の作品がエッケルトの時代から一度も演奏されていないものであった。作品の性質と再現に当たっての問題点については楽譜作成に協力した都賀城太郎(藤村女子高等学校)から説明があった。6月23日には渡辺克也(オーボエ)と松山元・松山優香(ピアノ)によって、エッケルトのオーボエとピアノの作品を中心とする演奏会を行い、オーボエの専門家成澤良一に解説を依頼した。展示された資料によって成澤氏はアジアのオーボエ受容史について新たな発見をし、本研究企画にも貢献した。特別展は多くの観客を迎えるのみならず、数多くの専門家が(一部繰り返して)展示会を訪れ、その結果研究代表者を含む企画者は多くの刺激を受けることになった。展示が終わってから研究代表者は改めてヨーロッパに渡り、エッケルトがプロイセンやドイツで経験した軍楽隊文化とその時代背景についてさらに調査した。
著者
馬原 孝彦 秋元 治朗 羽生 春夫 清水 聰一郎 宮澤 啓介 橋本 孝朗 赫 寛雄 織田 順
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

筋萎縮性側索硬化症脊髄前角細胞での14-3-3白eta isoform発現を確認し、リン酸化TDP43との共局在も確認した。リン酸化TDP-43の細胞質移行と前角神経細胞死関与にeta isoformの関連を指摘。脳梗塞急性期虚血コア周辺神経細胞でのHMGB1の細胞質での局在を確認。新規脳梗塞治療法に寄与できる。対照例29例、アルツハイマー病例84例、パ-キンソン病例8例、DLB例25例の血液中HMGB1濃度をELISA法で測定。順に、5.4, 6.6, 10.7, 8.1ng/mlで有意に増加。オートファジ-関連物質Beclin1の頸動脈病変での発現を確認しオートファジ-の関与を指摘した。
著者
太田 浩 芦沢 真五 渡部 由紀 野田 文香 新田 功 横田 雅弘 堀田 泰司 上別府 隆男 杉本 和弘
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

欧州で進行中の大学評価プロジェクトであるNufficのMINT、CHRのIMPI、IAUのISAS、ACAのAIMの開発者と利用した大学に聞き取り調査を行うと共に文献調査を行い、プロジェクト間の相違点、課題、利点などを明らかにした。そのうち、IMPIが開発した国際化評価の489指標を翻訳し、日本の文脈に照らして妥当と判断される152の指標を使い、質問紙調査を日本の228大学に対して行った。調査で収集したデータの分析結果に基づき、日本の大学国際化の評価に関する現状と今後の評価のあり方、及び日本の大学にとって最も有効性が高いと考えられる指標群、また有効性が高くないと考えられる指標群を明らかにした。
著者
羽石 秀昭
出版者
千葉大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-04-01

われわれはこれまでに交差プロファイル法と呼ぶ4D-MRIの再構成法を提案してきた.4D-MRIにより胸部の呼吸性移動を3次元空間と時間空間で可視化,定量化することができる.交差プロファイル法では,各データスライス(DS)あたり約20周期の呼吸の取得が必要となり,3次元情報を取得するのに20~30のDSの撮影を行う必要がある.結果として全データの収集に30分間程度要することになり,このことが実用化に向けて課題のひとつとなっていた.本研究では撮像時間の短縮とそれに伴う画質劣化への対策を研究目的とした.全体の収集時間を短くするために,1スライスあたりのエンコード数を減らし,複数スライスを高速に切り替えながらデータ収集を行うスライスインターリーブ撮像を導入することを前提とした.さらに,この際の画質劣化の問題に対して,スパースモデルを用いた高画質再構成を行う.エンコード数不足による劣化を抑制するため,L+S分解と呼ばれる,動画像を低ランク成分とスパース成分に分解するロバスト主成分分析の方法をMR再構成に適用して4次元再構成を行った.1/3の収集時間を想定したシミュレーション実験を実行した.得られた画像に対し,4次元画像でのRMSEや最大値投影法での視覚的評価など多面的な評価を行った.この結果,提案法によって,少ないデータ数からでも劣化の少ない再構成が行われることが確認された.
著者
川那部 和恵
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

日仏の中世末期とは、いずれにおいても、聖と俗の関係性がとりわけ強く人々の意識を捉えた時代であったが、当時の文学や演劇はその表出の一端を担っている。本研究の目的は、フランスと日本の中世末の聖俗をめぐる精神風土のありようを、アルヌール・グレバンの『受難の聖史劇』(15世紀中期初演)をはじめとするフランスの聖史劇と、世阿弥の一連の能楽論(『風姿花伝』『至花道』等)を対象として、とくに両者においてそれぞれに聖俗の観念に包括的に係わる根本的イメージとして提起されている「花」もモチーフに焦点を定め、双方の「花」の比較をとおし、相違と協応による相互対照の視点のもとに捉え直すことであった。その成果を総括すれば、これらフランスと日本の宗教家と能芸家の言説に現れた「花」は、まずは前者では「愛」を媒介とする聖と俗の交流の概念の表出であるとすれば、後者では「美」を軸とした俗から聖への超越性のイメージを担っており、この点において、各々のジャンルの根ざす文化的背景が起因の違いが認められるが、しかし視点を引いて、両者をそれぞれの内容に準じて、神の救済成就にみる予定調和の運行であれ、あるいは芸的求導行程であれ、いわば巨視的な時間の流れの中で眺めるならば、両者とも包括的には聖・俗の和合と調和の志向において照応しているのであり、聖と俗の間の遠大な循環運動に組み込まれた異次元空間の表象としての「花」というのが、協応点として確認された。
著者
神谷 庄司 林 高弘 徳田 豊
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

シリコンの長期疲労破壊確率の統計的評価・推測法を確立した。また、これを用いて上活性環境中の疲労寿命を予測し、それまでに提唱されていた表面の酸化反応とは異なる疲労機構の存在の可能性を明らかにした。さらにシリコン表面の機械的.傷の電子的検出に成功し、.傷の電子状態が環境中の水蒸気等のガス分子によって変化することを初めて明らかにするとともに、湿潤環境下における疲労寿命低下のメカニズムが表面現象以外にもあり得ることを指摘した。
著者
山元 大輔 木村 賢一 小金澤 雅之 鳥羽 岳太
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

動物は種によって独特の行動を示す。本研究では、求愛行動様式に歴然たる相違のあるショウジョウバエ2種、Drosophila melanosgaterとD. subobscuraに着目して、なぜ行動の違いが生まれるのかを解明した。あらゆる行動は、特定のニューロンが決まった順序で活動することによって生み出される。研究の結果、fruitlessという遺伝子のスイッチがどのニューロンでオンになるかが変わることによって、種ごとの行動の違いが生まれる可能性が示された。
著者
玉利 麻紀
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

リビングライブラリーは、様々な社会的マイノリティが「生きている本」となり、「読者」である一般の人々と直接対話することを通して、誤解や偏見への気づく機会をつくり、多様性への理解を図る活動である。本研究では、リビングライブラリーを実施し、以下の二つのことを明らかにすることを目的とする。第一に、「生きている本」の語りを質的分析することで、より実感のある社会的マイノリティの自己概念モデルを構築することである(交付申請書における研究1)。第二に、「読者」として参加した一般の人々を対象に、障害等、社会的マイノリティの背景や特性への理解を促進する要因を明らかにすることである(交付申請書における研究3)。本研究では、平成23年度に、一年目の試みとして、リビングライブラリーを3回開催し、予備調査を行った。各回において、(1)開催日、(2)場所、(3)「生きている本」参加者数(延べ数)、(4)「読者」参加者数(延べ数)は下記の通りであった。第1回:(1)6月3-4日、(2)東京都、(3)29名、(4)234名。第2回:(1)7月12日、(2)東京都、(3)2名、(4)39名。第3回:(1)12月17-18日、(2)京都府、(3)27名、(4)240名。上記の内、研究1では全ての回を、研究3では規模の等しい第1回と第3回を予備調査の対象とした。研究1では、調査への協力に同意の得られた社会的マイノリティに対し、それぞれの背景に関する「受容」に焦点を当て、インタビューを行なった。研究3では、「読者」として参加した人々に対し、社会的マイノリティへの心理的距離感に焦点を当て、アンケート調査(無記名式)を行った。研究1、3の予備調査結果から、それぞれ、「他者」との対話のタイミングや状況、質がポジティブな態度変容へつながる可能性が見いだされた。本結果を精緻化するために、調査項目を修正し、疑似場面を用いての実験を追加することで、社会的マイノリティの社会的排除の解消策を提案できると考えられる。
著者
松野 太郎 山岬 正紀 林 祥介
出版者
東京大学
雑誌
自然災害特別研究
巻号頁・発行日
1986

この研究の当初目的は、対流雲の2次元数値モデルを用いて数値シミュレーションを行い、集中豪雨をもたらすような中小規模気象システムの予測可能性を検討することであった。ところが、昨年度までの研究によって完成したつもりの対流雲モデルに、いくつかの欠点のあることがわかり、このまゝで実験を行っても所期の目的を達成し得るような実験を行い得るとは限らないことがわかり、計画を変更して今年度はモデルの改良に力を注ぐことにした。問題と、それについての研究実施経過は次の通りである。(1)原モデルでは、雲水量・雨水量の移流を計算するのに、2次の中央差分式を用いていた。この方式は、簡単で計算効率はよいのだが、差分式としての精度は余り良くない。これまでの結果を詳細に検討したところ、差分誤差のため、マイナスの雨が形成されることがあることがわかった。これは許容できない誤差なので、差分式をより良いものにする検討を行った。計算量の制約を考慮に入れて、種々の方式を検討し、実際にプログラムに組み入れてチェックを行った。その結果4次の差分式で保存則をみたす方式が適当であるとわかった。(2)原モデルでは、雲物理過程として氷晶を含まない「暖かい雨」の過程のみを取り扱っていた。このモデルでも集中豪雨の原因となる対流雲の組織化は一応再現されていた。しかし詳しい検討の結果、本当は上層の絹雲(氷晶雲)のかなとこ状のひろがり(アンビル)によって広域に降水がもたらされ、近接する対流雲セルの振舞いに影響を与える点が重要であり、この過程を含まいモデルでは現実の雲のモデルとして不十分であることがわかった。そこで、氷晶、雪片、あられという3種の固体降水要素を新たに変数とし、その間の変換を含む雲物理過程のスキームを新たに開発しモデルに取り入れた。