著者
西谷 真稚子
出版者
大阪府立大学
雑誌
言語と文化 (ISSN:13478966)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.107-123, 2005-03

チャールズ一世が処刑前夜を過ごしたセント・ジェームズ宮殿に隣接するセント・ジェームズ・パークは、もともとヘンリー八世が鹿狩り専用の猟場として造営した御苑である。内乱後の空位時代には、損壊を受けた宮殿と同様荒廃の憂き目に合い、すんでのところで実行はされなかったものの議会によって樹木伐採の命まで下っていたという。王政復古がなってまもなく始められたこの苑の復興をうたったのがエドマンド・ウォラーの'On St James's Park, As Lately Improved by His Majesty'であるが、カントリーハウス・ポエムの中でも建造もしくは再建を旨とするいわゆるbuilding or reconstruction poemと呼ばれる詩群に属するこの詩についてまず特筆すべきことはふたつあるように思われる。ひとつは復興をうたわれているのが敷地部分を含めるにせよ建物である場合がほとんどである中、この詩で扱われているのが専ら外部空間である点である。建物の帯びる象徴性とはまた異なった表われかたをする象徴性がそこに見られると考えることができるだろう。もうひとつは、セント・ジェームズ・パークを再興する人物がチャールズ二世その人であることである。たとえば同詩人そしてエイブラハム・カウリーがうたうサマセット・ハウスの再建においてまずは再興者として称賛されているヘンリエッタ・マライアは新国王の母という立場で王権への近さは持つ。王政復古以前、以後に関わらず他の王党派の貴人たちの建物の再建・復興も含め、これらはもちろん間接的、時に直接的に国王を嘉するものではあるけれど、本詩のように王その人の手になる、いわばこれ以上直截な記号性を持つものはない営みはその称賛の仕方にかえって独特なものを持つかもしれない。以上のふたつの点が詩の展開にどのように作用しているかをたどりつつ、その展開をカントリーハウス・ポエムおよびトポグラフィカル・ポエムというジャンルと照らし合わせて考察することがここでの試みである。
著者
竹内 将俊 田村 正人
出版者
家屋害虫研究会
雑誌
家屋害虫
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.122-126, 1993

1)東京都世田谷区の大学キャンパス内で,チャコウラナメクジの発生経過と日周活動について野外調査を行った。2)発生量は,大型個体,小型個体とも5,6月が最も多く,夏期にはほとんど出現しなかった。また,大型個体は冬期にも活動し,産卵も認められた。3)活動時刻は日没から明け方まで続き,湿度が高い時は活動時刻に明瞭なピークはなかった。4)家屋への侵入と関連して,建造物の壁面や樹木の幹を這っていた個体の割合は季節的には春期と秋期に多く,時間的には終夜観察された。
著者
竹内 将俊 田村 正人
出版者
家屋害虫研究会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.11-23, 1995-07-20
参考文献数
16
被引用文献数
3

東京都世田谷区の大学構内で同所的に棲息するチャコウラナメクジ,オナジマィマイ,ウスカワマイマイの季節的発生経過,日周活動,利用食物について調査を行った。発生量はチャコウラが最も多く,夏期以外の季節に活動し,カタツムリ類は春期と秋期に活動した。活動時間は3種類とも体サィズに関係なく日没から明け方までで,カタツムリ類は活動個体の出現頻度に変異が大きく,明確なピークは認められなかった。また糞の内容物の解析の結果,野外で利用している食物は3種間で大きな違いは認められなかった。
著者
柴多 直樹 島津 秀雄 高島 洋典
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.2246-2247, 1989-10-16
被引用文献数
1

筆者らは先に文献において、対象を長調の童謡に絞り、扱う音階と和音は自然長音階とその上の三和音と限定してニューラルネット(以下ANNと略記)によって行った和音付けについて報告した。そこで得られた知見をもとに、取り扱う音階を12音音階に拡張し、また当所で開発した自動編曲システムに実装して作成した演奏出力につき主観評価を行った結果について報告する。
著者
大曽根 隆志 岩田 栄之
出版者
富山県立大学
雑誌
富山県立大学紀要 (ISSN:09167633)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.60-68, 1991-03-30

By using Synthesized Crystal Growth Technology which can simultaneously grow several kinds of semiconductor crystals on a single substrate, it is proposed that high-performance Synthesized-CMOS Devices with high electron & hole mobilities can realize both of ultra high speed operation and ultra low power dissipation. Assuming the supply voltage of 3.0V and operation temperature at 77K, it is estimated that CMOS devices fabricated by the combination of (p-GaAs/n-Ge) crystals may show the most high performance characteristics among many combinations of element and III-V compound semiconductors. From the circuit simulations of CMOS inverter chain, delay time (τ) and product of delay time and power dissipation (τP) may be improved by a factor of 15 and 14,respectively, in comparison with the conventional Si-type CMOS devices. Moreover, it is expected that the integration density of the Synthesized-CMOS Devices may become higher by about 10 times.
著者
浦城 晋一 石田 正昭 Uraki Shin'ichi Ishida Masaaki
出版者
三重大学農学部
雑誌
三重大学農学部学術報告 (ISSN:04624408)
巻号頁・発行日
no.67, pp.p31-55, 1983-12

農業基本法が制定されて以来,一連の構造政策が試みられたが,その現場である市町村段階においては「構造政策の受入れと農業事情のバリエーションの増大が著るしい。このバリエーションの増大の実態,その中に市町村の白治行財政のあり方がどのように絡みこんでいるか,さらに市町村・農協・農民グループの連携努力がどのように絡みこんでいるか,に関する一連の事態関連を「数量化の理論・第III類」の解析手法をもって解析した。その結果,バリエーションを展開させるソーティング・マシン-市町村の類別の作用カの結合機構-がえられた。それは1水田整備を中心とした構造政策の受入れの容易性,2他の政策との関連における市町村当局の農政姿勢,3市町村内における産地形成努力と構造政策との関連,4農業的開発前線の自然的環境との関連における持たれかた,5農業の内発的展開の担い手としてのファーマー的農家の析出方向, を導く作用カを体現している5個の相互に独立した仕訳作用カの連結器としてのソーティング・マシンであった。この仕訳メカニズムをめぐって,農業構造政策における「つぎ水構造」と「ねじれ現象」が観察された。
著者
前田 久明 増田 光 林 昌奎 居駒 知樹 伊藤 和彰 加納 裕三
出版者
公益社団法人日本船舶海洋工学会
雑誌
Techno marine : bulletin of the Society of Naval Architects of Japan : 日本造船学会誌 (ISSN:09168699)
巻号頁・発行日
no.866, 2002-03-10

本論文の目的は,幾何学相似モデルを用いた実験を行い,VIVによるライザーの挙動を把握することである。海象条件を模擬した一様流中,あるいは波浪中,強制動揺下においてライザーの挙動計測実験を行い,結果として,VIVがライザーの高次モードの変形に寄与していることを把握した。また,ライザーのトップテンション,表面粗度がライザーの挙動に大きく影響することを確認した。[graph]
著者
角岡 賢一
出版者
龍谷大学
雑誌
龍谷紀要 (ISSN:02890917)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.55-75, 2010-09-30
著者
丸山 一郎 阿部 芳春 江原 暉将 白井 克彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.184-192, 2002-02-01
被引用文献数
9

本論文では,事前収録されたテレビ番組に対して番組VTRと事前電子化原稿から聴覚障害者向けの字幕を自動的に付与する技術の中で,音声と字幕の同期タイミングを検出する字幕提示タイミング検出手法について述べている.背景音が重畳している放送音声に対しては,音素HMMワードスポッターだけに基づいたタイミング検出手法では十分な検出精度が得られない.番組の原稿中の各文に対してワードスポッティングにより複数のタイミング候補を検出し,音響的なゆう度に加え三つのスコア(原稿の時間順序,原稿から推定される発声時間との比,音声らしさ)を用いた動的計画法を行い,番組全体として最適なタイミングを選択する手法を提案した.ドキュメンタリー番組10回分を対象とした評価実験において,許容検出誤差を1秒とした場合に検出率99.0%,3秒とした場合に99.7%の検出精度が得られ,実用的な方式であることが示された.
著者
草苅 仁
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農業経済 (ISSN:02860473)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.1-6, 2008-03
被引用文献数
1

学校給食法は、学校給食にかかる食材費等は、保護者に負担の義務があることを規定している。しかし、最近、学校給食費を納めようとしない一部保護者の存在が問題となっている。食事と教育がセットになった学校給食は、いわば学校単位のクラブ財であると考えられるので、一部に「ただ乗り」が発生すると、その影響がクラブ(学校)全体に及んでしまう。以下、第2節では、文部科学省『学校給食費の徴収状況に関する調査』を用いて、生活困窮に関わる経済変数が給食費の未納率をどの程度説明できるか、簡単な回帰分析からチェックする。次に、第3節でクラブ財としての学校給食と家族の規範意識との関係をモデル分析から考察する。以上の作業によって、給食費未納問題と規範意識との関係を検討することが本稿の課題である。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1003, pp.40-42, 1999-08-16

格下げや株価下落の脅威のもとに、多くの企業が人員削減に走る風潮を心配する向きは少なくない。元ヤマト運輸会長の小倉昌男氏(現ヤマト福祉財団理事長)もその1人だ。 小倉氏は「人を増やせば人件費が上がると警戒するのは、経営者として本末転倒ではないか。人を増やせば、品質やサービスが向上し、売り上げが増えるのであって、人件費が増えるのは結果でしかない。
著者
野田 勝利
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.56, pp.25-30, 2007-11-22

・家業の倒産経験後、再建し同族会社役員の一員として職域総合月賦販売業を経営してきましたが、多額な貸倒金に嫌気が差し、ピザ宅配に進出しました。・香川に出店後、独立。社員もろくにいない中、店舗出店を繰り返し数年後には10店舗。・飲食業界の常識も知らず、数々の困難に出会い、全てを社会や従業員のせいにしていた。・たまたま出会った同友会に入会し、自分の経営に対する考え方が間違っていたことに気付かされ、また会の役を引き受けていくことで、会員の世話と社員への関わりに気づかされ、社員への感謝の念が沸いてきました。・社員の出入りの激しさは変わらず。共同求人活動で4, 5年前から複数人数が取れる。・新卒を採用すると教育が必要となり、社員教育委員会に参加。また会社の将来を打ち出そうと、経営指針を毎年作成。その結果やっと社員が辞めない会社にもなりました。・我が社も高々15年しか経っていませんが、やっと自社に理念が少し浸透してきた。
著者
酒井 久治 北野 庸介
出版者
日本水産工学会
雑誌
日本水産工学会誌 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.111-115, 1996
被引用文献数
1

漁船における海中転落事故は、海難によらない人身事故のうち、40%を占めている。なかでも、そのほとんどが一人乗りである小型漁船では、操業中や航行中に一度転落すると、本船に追いつくことが困難になり、生存の可能性は僚船に救助される以外、極端に低くなる。したがって、海中転落は、死亡事故に直結するので、小型漁船における海中転落時の救助対策は沿岸漁業の最重要課題の一つであると言える。一方、転落時の救命、救助のための支援対策として、漁労用救命胴衣の改良、エマージョンスーツおよび無線警報式海難救命ヘルメットの開発などがあり、発見されるまでの生存に大きく寄与していると推察される。しかし、どの場合でも、転落時に本船側が無人になるため、燃料切れを生じるまで航走することが考えられる。そこで、乗組員の転落事故が発生した場合、直ちに機関を停止させることができるならば、自力による救命が可能になり、漁業者の死亡事故を減らす近道であると考えられる。本研究では、一人乗り漁船の乗組員が海中に転落したとき、機関を自動的に停止させる装置を試作し、漁業者の救命、救助のための支援装置の開発を目的にしたものである。本論では機関停止装置を用いた海上実験を実施し、その効果を確認したので、装置の概要、実験結果、および若干の知見を報告する。
著者
酒井 久治 北野 庸介
出版者
日本水産工学会
雑誌
水産工学 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.111-115, 1996-11
被引用文献数
1

漁船における海中転落事故は、海難によらない人身事故のうち、40%を占めている。なかでも、そのほとんどが一人乗りである小型漁船では、操業中や航行中に一度転落すると、本船に追いつくことが困難になり、生存の可能性は僚船に救助される以外、極端に低くなる。したがって、海中転落は、死亡事故に直結するので、小型漁船における海中転落時の救助対策は沿岸漁業の最重要課題の一つであると言える。一方、転落時の救命、救助のための支援対策として、漁労用救命胴衣の改良、エマージョンスーツおよび無線警報式海難救命ヘルメットの開発などがあり、発見されるまでの生存に大きく寄与していると推察される。しかし、どの場合でも、転落時に本船側が無人になるため、燃料切れを生じるまで航走することが考えられる。そこで、乗組員の転落事故が発生した場合、直ちに機関を停止させることができるならば、自力による救命が可能になり、漁業者の死亡事故を減らす近道であると考えられる。本研究では、一人乗り漁船の乗組員が海中に転落したとき、機関を自動的に停止させる装置を試作し、漁業者の救命、救助のための支援装置の開発を目的にしたものである。本論では機関停止装置を用いた海上実験を実施し、その効果を確認したので、装置の概要、実験結果、および若干の知見を報告する。