雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.122, no.2, pp.Cover01_1-Cover01_2, 2013

1990~1995年に噴火した雲仙普賢岳で,その噴火のメカニズムを解明するための火道掘削を2002~2004年に実施した.この掘削は国際陸上科学掘削計画(ICDP)からの資金援助を得て行われた.(左上)雲仙普賢岳の平成噴火(1990~1995年噴火)火道を掘削した,雲仙科学掘削プロジェクト(USDP)リグサイト(USDP-4)での作業風景.背景の裸岩部分は平成噴火で形成された溶岩ドーム(標高約1400m).普賢岳山頂の北約1km,標高840mにあるこのサイトから山頂直下に向かって斜めに掘り進んだ.2004年6月撮影.(左下)普賢岳の北斜面につくられたUSDP-4リグサイト.櫓の高さは約55m.山頂の溶岩ドームから2003年11月撮影.(右上)複合岩脈である火道域において採取されたコア試料.マグマ上昇中にできた火山角礫岩中の火砕岩脈(タフサイト).掘削深度1748m(標高約-100m).横幅約13cm.(右中)掘り当てた平成噴火の火道溶岩(デイサイト).掘削深度1977m(標高約-150m).すでに熱水変質が進んでいる.横幅約4cm.(右下)火道溶岩の顕微鏡写真.融食構造をもつ石英斑晶.横幅約2.5mm.(写真・解説 中田節也)
著者
渡辺 浩 佐藤 努 泉對 則男 木村 文治 佐野 美也子 星 雅彦 伊藤 篤 仲 孝治 佐川 良
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.285-294, 2009-03-20 (Released:2009-04-11)
参考文献数
15
被引用文献数
4 4

We have investigated the role assignment and radiation exposure of medical workers (including receptionists) in PET (positron emission tomography) facilities in Japan using a questionnaire. The survey period was from October 1st to November 15th 2006. The response rate for the questionnaire was 60.0% (72/120 facilities). Nurses were engaged in the intravenous administration of radioactive FDG in 66.9% of PET facilities. In 89.5% of PET facilities, radiological technologists mainly performed the PET examination. The average radiation exposure to medical workers was 0.13 mSv/month (n: 709, S.D.: 0.16) as the effective dose. It was shown that radiation exposure was significantly different depending on the occupation and content of work (p<0.01). The radiation exposure of cyclotron operators and radiological technologists was higher than that of the other occupations (p<0.01). The highest radiation dose to one worker per a PET facility was 0.60 [mSv month−1], which was 4.6 times higher than the average dose of 0.13 [mSv month−1]. We have clarified the actual conditions of radiation protection in PET facilities in Japan for the first time.
著者
Taro Oyama Hiroyuki Mayama Yoshimune Nonomura
出版者
(社)日本化学会
雑誌
Chemistry Letters (ISSN:03667022)
巻号頁・発行日
pp.130307, (Released:2013-05-30)
被引用文献数
8

We have investigated the spreading process of oil-in-water emulsions containing oleic acid droplets on flat and rough fractal agar gel surfaces. Significant spreading inhibition owing to local condensation of oil droplets is observed on flat agar gel surfaces. On the other hand, such inhibition is not observed on the fractal gel surfaces for any of the emulsions. The rough structure of the gel surfaces is an important factor of spreading dynamics of emulsions on surfaces.
著者
海老塚 広子 佐々木 千恵 喜瀬 光男 有田 政信
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.216-222, 2007 (Released:2008-02-06)
参考文献数
18
被引用文献数
1 2

女子大学生に発芽玄米含有レトルト米飯を主食として摂取させたときの栄養状態, 身体計測値, 血液生化学的検査値について摂取前の状態と比較してその影響について検討した。その結果,   (1) エネルギーの栄養素別摂取構成比率は, 摂取前13.4:27.9:58.7であったが, 摂取期間では13.3:24.5:62.3となり, 脂質の過剰摂取と炭水化物の過少摂取の状態から適正比率へ近づいた。白米と比較して発芽玄米含有レトルト米飯に豊富に含有されている食物繊維, マグネシウム, ナイアシン, マンガンの摂取量が有意に (p<0.05) 増加した。総脂肪酸量は摂取前44.1±9.5gから37.6±10.5gとなった。  (2) 体脂肪率は摂取前27.2±3.7%, 摂取終了時25.7±3.8%, 終了後9週目26.6±2.8%となったが, 有意な差異は認められなかった。適正範囲より高値であった被験者については適正化がなされた。BMIについても同様の変動を示した。  (3) 血清の生化学検査については, 総コレステロールは摂取前194.6±53.5mg/dl, 摂取期間178±41.5mg/dl, 摂取終了後5週目188.4±47.9mg/dl と変化したが, 有意差は認められなかった。200mg/dl 以上の高値を示す被験者については試験期間で適正化がなされ, 終了後試験前のレベルになるという結果が認められた。  以上より, 発芽玄米含有レトルト米飯を長期的に摂取することは, PFCバランス及び栄養摂取状況の適正化を誘引し, 健康維持および増進に有益であることが判明した。
著者
渡邊 伸行 鈴木 竜太 山田 寛
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.167-179, 2006-03-31 (Released:2010-10-13)
参考文献数
48
被引用文献数
3 3

本研究では,表情認知に関わる顔の構造変数について検討を行った.従来の線画表情図形を用いた研究では,顔の構造変数として,“傾斜性”,“湾曲性・開示性”といった眉・目・口の相関的変位構造を示す二つの変数が見出されてきた.しかしその後の実際の表情画像および線画を用いた検討から,構造変数は上述の2変数ではなく,三つの変数である可能性が示された.この問題について検証するため,本研究ではYamada,Matsuda,Watari,& Suenaga (1993) の実画像研究に基づいて新たに生成した,実際の表情と同じ可変性を持つ102枚の線画を用いて,基本6表情(喜び,驚き,恐れ,悲しみ,怒り,嫌悪)のカテゴリー判断実験を実施した.線画の眉・目・口の特徴点変位を示すパラメータ値を説明変数,実験参加者のカテゴリー判断の一致率を反応変数とする正準判別分析を実施したところ,“眉・目の傾斜性”,“口部傾斜性”,“湾曲性・開示性”と命名できるような,実画像研究 (Yamada et al.,1993) とほぼ同様の三つの構造変数が見出された.この3変数で構成される視覚情報空間におけるカテゴリー判断の中心傾向を示す点を比較したところ,線画と実画像で基本6表情の相対的な位置関係が類似していることが示された.以上の結果から,表情認知に関わる構造変数は三つであり,線画と実画像で共通してこれらの変数に基づいて表情の判断が行われていることが示された.
著者
中井 美樹
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.699-715, 2009-03-31 (Released:2010-04-01)
参考文献数
36
被引用文献数
1 4

本研究では,性別役割分業と結びついたライフコースの特徴と職業の諸側面がどのように人々の権力・権限ある地位へのアクセスに影響しているかを,社会階層と社会移動の全国調査(SSM)データの分析により明らかにした.女性はもっぱら家庭との役割調整を行いながら断続的な就業パターンをとるという制度化されたライフコースは今なお優勢であり,女性の職業キャリア中断/継続の要因のイベントヒストリー分析からは,高学歴女性が必ずしもフルタイム継続しないことや若年女性の雇用流動化の傾向が示された.子どもや高安定高報酬の夫の存在といった家族要因もまた女性を無職化に導くことが確認された.また男性と女性がいかなる性構成の職業的文脈において昇進可能性が高まるのかを検討した結果,女性は男性職および女性職にフルタイム継続就業している場合に権限ある地位に接近しやすい傾向が明らかになった.ただし男性がマイノリティである職域でもむしろそれら少数の男性に権限への接近が有利な傾向がある.さらに,男性は同じ勤務先での就業経験が長いほど,高学歴ほど管理的地位に到達しやすい一方で,女性は自身の人的資本が職務権限への接近にほとんど意味を有しない.分析結果から,ライフコース的視座を組み込んだ職業政策の必要性が示唆される.
著者
宮治 一雄
出版者
日本アフリカ学会
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.1984, no.25, pp.114-120, 1984-03-31 (Released:2010-04-30)
被引用文献数
1
著者
島谷 康司 関矢 寛史 田中 美吏 長谷川 正哉 沖 貞明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.105-109, 2011 (Released:2011-03-31)
参考文献数
24

〔目的〕本研究の目的は,発達障害児の障害物回避の見積もり能力を明らかにすることであった。〔方法〕対象は5~6歳の発達障害児と健常児,各9名とした。視覚弁別課題として,7.0 m離れた位置から異なる高さの2本のバーの高低を比較させた。また,接触回避を見積もる課題として,異なる高さのバーを1本ずつ呈示し,かがみ込むことなしに,身体を接触させずに通り抜けることができるかどうかを回答させた。〔結果〕視覚弁別課題では発達障害児の正答数は9.22±.63回,健常児は9.78±.42回であり,有意な差は見られなかった。見積もり課題では,発達障害児の正答数は7.78±.67回,健常児は8.56±.73回であり,発達障害児の正答数が有意に少なかった。〔結語〕発達障害児は身長とバーとの相互関係からバーへの接触回避を見積もる能力が劣っていたために,障害物に接触する頻度が高いのではないかと考えられた。
著者
高橋 英彦
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.19-22, 2008 (Released:2011-07-05)
参考文献数
20

【要旨】統合失調症の脳体積研究で、上側頭回と扁桃体を含む内側側頭葉はもっとも体積減少が認められる部位とされる。fMRIを用いて統合失調症におけるこれらの部位の機能異常を検討した。我々は、患者において不快な写真に対する右扁桃体の低活動を報告した。右の扁桃体は、瞬時の自動的な情報処理にかかわっているとされ、外的刺激に対するとっさの処理の障害を示唆すると考えられた。統合失調症の言語に関する研究は広くなされているが、統合失調症にはヒトの声の認知にも障害があるとされ、我々は統合失調症の声の認知時にヒトの声認知に関わる右の上側頭回の低賦活が見出し、言語理解だけでなく、ヒトの声に対する脳内処理の障害が示唆された。
著者
塩澤 光一 神山 かおる 柳沢 慧二
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.37-42, 2005-05-31 (Released:2010-07-21)
参考文献数
17
被引用文献数
4

米飯咀嚼時の食塊物性変化を調べるために, 咀嚼の中間期 (M), 第1嚥下誘発時点 (L), および第1嚥下までに要した咀嚼回数の20%余計に咀嚼した時点 (+20%) の米飯食塊をそれぞれ口腔内から回収してその物性を解析した.8名の成人被験者に6gの米飯試料を咀嚼させた.米飯食塊物性の測定はtexture profile analysisに従って行った.食塊の硬さは, 咀嚼の中間期 (M) から嚥下直前 (L) になると有意 (p<0.05) な減少を示したことから, 食塊の硬さの減少は嚥下誘発にとっての必要条件であることが考えられる.食塊の付着性は咀嚼の進行に従い有意 (p<0.01) な減少を示した.これに対し, 凝集性は有意な変化を示さなかった.これらの結果から, 米飯食塊の付着性が嚥下閾値まで減少することで嚥下が誘発される可能性が示唆された.
著者
森脇 広 松島 義章 町田 洋 岩井 雅夫 新井 房夫 藤原 治
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.253-268, 2002-08-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
39
被引用文献数
3 7

姶良カルデラ北西縁の平野を対象に,完新世の地形発達および相対的海水準変動,地殻変動を,地形と堆積物の観察,14C年代測定,テフラ分析,考古遺跡,貝化石と珪藻化石の分析結果にもとづいて検討した.3面に区分される完新世海成段丘は,それぞれ7,300cal BP(6,500yrs BP)~3,500yrs BP,3,000~2,000BP,古墳時代(1,500cal BP)以降に形成された.姶良カルデラ周縁では,カルデラ中心部へ向かって傾き上がる傾動隆起が生じ,その隆起量は7,300cal BP(6,500yrs BP)以降,最大10m以上に達する.この地域の海面高度は8,700cal BP(8,000yrs BP)頃には現海面高度にあり,現海面上4~5m(8,500~8,400cal BP:7,700yrs BP頃),現海面上6m(8,100cal BP:7,300yrs BP頃)を経て,7,300cal BP(6,500yrs BP)頃に現在の海抜12mの高さに達した.その後,海面は次第に低下し,現海面上5~7m(3,000~2,000yrs BP),現海面上2~3m(1,500cal BP)を経て現在に至った.この特異な相対的海水準変動は,姶良カルデラの火山活動に伴う地殻変動が影響しているとみられる.8,100~8,000cal BP(7,200~7,300yrs BP)には,海進は内陸深く及び,溺れ谷が形成された.この時期,米丸マールを形成したベースサージは,別府川流域の内湾を大きく埋積した.その後,汀線は段階的に前進し,縄文時代後期(3,500yrs BP頃)には現在の海岸に近い位置にまで達した.約8,000~7,000cal BP(約7,300~6,000yrs BP)の時期に,池田カルデラ,桜島,鬼界カルデラでも大規模な噴火が起こり,縄文海進最盛期に形成された南九州のリアス式海岸は急激に変化した.
著者
高倉 浩樹
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.91, 2013 (Released:2013-05-27)

本発表は、東日本大震災によって被災した人類学者としての経験をふまえて、震災にかかわるサルベージ人類学の必要性と、その理論的根拠、そこから見えてくる社会的実践の豊かなひろがりを論じるとともに、その実施に必要な調査体制についての展望について述べるものである。
著者
Seishiro CHIKAZAWA Takafumi NAKAZAWA Yasutomo HORI Fumio HOSHI Kazutaka KANAI Naoyuki ITO Koichi ORINO Kiyotaka WATANABE Seiichi HIGUCHI
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.13-0149, (Released:2013-06-25)
被引用文献数
4 10

In veterinary medicine, hyperferritinemia is often observed in dogs with various diseases (e.g., histiocytic sarcoma and immune-mediated hemolytic anemia) without evidence of iron overload. The mechanism underlying hyperferritinemia development is not well understood. Anemia caused by inflammation is termed as anemia of chronic disease (ACD), and experimentally induced ACD is known to cause slight hyperferritinemia. However, almost all these studies were based on short-term acute inflammation. Hepcidin, a protein mainly produced by hepatocytes, is thought to be a key regulator in iron release from reticuloendothelial cells (RECs), and its expression is related to ACD. We hypothesized that in the case of long-term ACD, iron deposition in RECs increases through hepcidin, causing a diachronic increase in serum ferritin levels. In the present study, we used a canine model with repeated subcutaneous administration of turpentine oil every 3 days over a period of 42 days (15 injections) and induced long-term inflammatory conditions; furthermore, we evaluated the change in serum ferritin concentration. Hypoproliferative anemia, bone marrow iron deposition and hypoferremia, which are characteristic of ACD, were observed on administering the turpentine injections. Hepatic iron content, hepatic hepcidin mRNA expression and serum ferritin concentration increased during the early period after turpentine injection, but returned to normal levels later. These results show that experimentally induced long-term ACD caused hypoproliferative anemia without sustained increase in hepcidin expression and did not cause systemic iron overload. Thus, chronic inflammation may not contribute greatly to increase in hyperferritinemia.
著者
吉野 正純 佐藤 哲生 北田 徳蔵 古川 左近 染谷 幸雄 橋詰 和宗 森地 敏樹
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1048-1053, 1987-12-25 (Released:2010-11-26)
参考文献数
15

生乳中の細菌数の測定で, Breed法の適用性の限界, 並びにBreed法による直接鏡検個体数 (全菌数) と標準平板培養法による生菌数との関係を, 別報のBactoscan 17600 (A/S N. Foss Electric, Denmark) の性能試験で得た成績を用いて検討した.生乳305点で, Breed法で求めた全菌数の対数値とBactoscanのインパルスのそれとの相関係数は, 0.936であったが, これをBactoscanのインパルス1000 (約50万/mlの細菌数に相当) 以下の場合, 1000~10000の場合, 10000以上の場合に分けると, それぞれ, 0.491 (n=70), 0.809 (n=144), 0.824 (n=91) となり, 最初のものは, 著しく低い値を示し, Breed法の適用性の限界が示唆された. また, Bactoscanのインパルスで1000以上を与える試料について, 全菌数の対数値と生菌数のそれとの相関係数は0.819であった. 生菌数を何倍すれば, 全菌数に見合う数値になるか調べるため, 生菌数に種々のファクターを乗じた値を求め, 対応する全菌数の, この積に対する比率の度数分布を比較した. この結果, ファクターが3.5の場合, 全菌数/(生菌数×ファクター) で計算される比が0.33~3.0の範囲に入る試料の (点数の) 割合が84.7%と最大となり, かつヒストグラムの形も左右対称に最も近かった. 即ち, 生菌数に, 3.5を乗じた値で, 直接鏡検個体数のオーダーを把握できることが明らかとなった. そして, この値は生乳中に分布する細菌の菌塊 (コロニーの形成単位) の平均個体数に相当すると考えられる.
著者
田子 泰彦 辻本 良
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.165-178, 2006-01-30 (Released:2009-01-19)
参考文献数
20
被引用文献数
3 3

庄川中流域にある水深約30cmの浅瀬に人工的に水深約1mの淵を造成し,そこでの魚類の出現状況を1995年と1996年の8月から9月に調査した.出現した魚類の種類,数,および大きさは,日中は目視観察により,夜間は投網採捕により調べた.造成した淵の魚種の多様度は,造成前の浅瀬に比べ著しく増加した.1995年には淵で最も出現数の多かったアユの数は,8月から9月にかけて,日の経過とともに増加した.しかし,淵への流入量が日の経過とともに減少した1996年には,最も出現数の多かったウグイの数は,日の経過とともに減少した.夜間においても淵における魚種の多様度は,淵の上流に隣接する瀬のそれに比べ有意に高かった.夜間にはアユ,ウグイおよびヌマチチブは瀬よりも淵を好む傾向がみられ,逆にカジカは淵よりも瀬を好む傾向が認められた.1996年には淵に生息していたウグイ稚魚のサイズは,日時の経過とともに大きくなった.淵は生息魚類に休息·逃避場所,稚魚の成育場,夜間の睡眠場所として重要な役割を果たしており,また適当な流量が維持されればアユにとっては重要な摂餌場になるものと考えられた.