著者
中島 ひかる
出版者
国立大学法人 東京医科歯科大学教養部
雑誌
東京医科歯科大学教養部研究紀要 (ISSN:03863492)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.49, pp.1-23, 2019 (Released:2019-06-28)

現代において、 フランスはどのように自らの共同体のアイデンティティを作ろうとしているのか、またそれを可視化するためにどのようにシンボルが使おうとしているのかを、歴史学者ノラの「記憶の場」の概念も援用しながら分析する。マ クロンは、EU の一体化を訴えることでヨーロッパのアイデンティティを再建し、その中でこそフランスのアイデンティティを示そうとするが、それはヨーロッパが自由、デモクラシー、人権といった世界のモデルになりえる普遍的な価値を体 現しているという啓蒙以来の観念と結びついている。しかしながら、難民受け入れ問題がヨーロッパ各国で、極右によるナショナリズムの擡頭を招いている今、この様な普遍理念によるヨーロッパのアイデンティティは既に自明なものではなくなっている。その中で、敢えてヨーロッパ再建を主張するとき、マクロンは民主主義発祥の地アテネやソルボンヌ大学といった、人々の共通の「記憶の場」である、文化遺産の力の助けを借りる。「記憶の場」は、ルソーの言う「祝祭空間」とも共通し、人々の一体感を高め、アイデンティティを確証するために役立つと考えられるからではないだろうか。
著者
松本 和浩 李 忠けん 千種 ひつ
出版者
園芸学会
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.293-297, 2008 (Released:2011-01-27)

韓国産イチゴ品種‘Mae-hyang’、‘Seol-hyang’および‘Keum-hyang’と‘章姫’を4℃または20℃で4日間貯蔵し、果肉硬度、可溶性固形物濃度、滴定酸度、アントシアニン濃度および糖組成の品種間差異を調査した。各品種の糖組成をみると‘Mae-hyang’および‘Keum-hyang’はスクロースが、‘Seol-hyang’および‘章姫’はフルクトースとグルコースが主体であった。また糖蓄積型ごとに各貯蔵温度における糖組成の変化が異なることが明らかになった。低温貯蔵によりいずれの品種も果肉硬度が上昇したが、特に‘Mae-hyang’において顕著であった。また、‘Mae-hyang’は貯蔵温度にかかわらず酸含量および糖酸比の変化が少なく、20℃貯蔵区における総可溶性糖含量の低下も他品種比べ少なく、安定した貯蔵品質を示した。一方、‘Seol-hyang’は他品種に比べ20℃貯蔵区において酸含量の上昇と糖酸比の低下が起こりやすかった。また、‘Keum-hyang’はいずれの貯蔵区でもアントシアニン濃度が高く、4℃貯蔵区でも糖含量の低下がみられた。これらの結果より、‘Mae-hyang’が他の韓国産新品種に比べ貯蔵中の硬度と品質を保ちやすい長期貯蔵に適した品種であると認められた。
著者
黒澤 耕介 小松 吾郎 薮田 ひかる 森脇 涼太 岡本 尚也 佐久間 博 松井 孝典
出版者
日本高圧力学会
雑誌
高圧力の科学と技術 (ISSN:0917639X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.140-148, 2021 (Released:2022-02-10)
参考文献数
29

In this article we first review the roles of hypervelocity impacts in volatile partitioning on planetary surfaces and thermodynamics of shock vaporization/devolatilization of geologic materials. Impact experiment in an open system is essential to accurately estimate the shock pressure required for incipient vaporization/devolatilization, and we introduce a newly-developed open system experimental technique applied to two-stage light gas guns. This experimental apparatus allows us to measure impact-generated gases with a mass spectrometer at the same geometry of natural impacts with a limited risk of chemical contamination from the gun operation. The threshold pressures of vaporization/devolatilization for halite and gypsum were measured to be 18-31 GPa and <11 GPa, respectively. The new open system method is expected to serve as a powerful tool to explore the nature of shock vaporization/devolatilization of geologic materials.
著者
齋藤 ちひろ 五野 日路子
出版者
日本国際地域開発学会
雑誌
開発学研究 = Journal of agricultural development studies (ISSN:09189432)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.54-62, 2019-12

マラウイでは,いまだにフードセキュリティーの未確立が懸念されている。本論文は,南部マラウイの条件の異なる2つの農村において,世帯レベルのフードセキュリティーの実態とその達成に関わる要因を明らかにすることを目的としている。フードセキュリティーには,食料の供給可能性(Availability),経済的・物理的な食料の入手可能性(Accessibility),栄養面でみる食料の利用(以下「栄養性」と略す)(Utilization),およびこれらの長期的な安定性(Stability)の4つの要素がある。これら4つの要素にもとづいた検討結果から,多くの世帯がフードセキュリティーの達成が難しい状態にあり,特に供給可能性と安定性を達成できていないことが明らかとなった。供給可能性の達成には,農業投入財による土地生産性の向上が必要である。また,入手可能性を達成するには農外所得の増大が有益であり,農外経済活動に従事するためには,経済機会へのアクセス面の改善や農村での雇用機会の創出が必要である。このような土地生産性の向上および農外所得源を確保することは,フードセキュリティーの安定性および栄養性の達成においても重要である。さらに,栄養性の達成には十分な所得に加え市場へのアクセスというもう一つの条件が重要であり,それが満たされることで高所得が栄養性の実現に結びつく。
著者
小島 ひとみ 中塚 美帆 小林 和成
出版者
東海公衆衛生学会
雑誌
東海公衆衛生雑誌 (ISSN:2187736X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.77-83, 2021-07-03 (Released:2021-08-04)
参考文献数
13

目的 岐阜県における後期高齢者医療制度被保険者のぎふ・すこやか健診(以下,健診)の特徴,及び健診の有用性を明らかにする。方法 岐阜県後期高齢者医療広域連合において,平成27年から平成29年までの3年間に蓄積された健康診査の結果169,216件分をデータベースとした。受診回数による比較をするため,平成27年度の健診受診時点の年齢が75歳以上の者53,662人(男性21,689人,女性31,973人)を分析の対象とした。健診受診者の基本属性,受診回数別に身長,体重,血圧,脂質検査,血糖検査,肝機能検査,問診項目等との比較検討を行った。次に,各種疾病の有無を目的変数として,性別に年齢を調整変数,受診回数を説明変数としたロジスティック回帰分析にてオッズ比を算出し,健診の有用性を検討した。結果 健診受診回数が増える程,血液データの代表値は基準値に近い傾向にあり,服薬や疾病罹患は管理できていた。生活習慣病の有無に対する受診回数のオッズ比は,男性の75歳以上85歳未満においては0.918(95%CI:0.852-0.989,p=0.024),糖尿病の有病に対する健診の受診回数のオッズ比は男女の75歳以上85歳未満,85歳以上おいて0.889(95%CI:0.842-0.989,p<0.001),0.898(95%CI:0.818-0.985,p=0.023),0.863(95%CI:0.822-0.906,p<0.001),0.914(95%CI:0.851-0.983,p=0.015)であった。結論 後期高齢者の健診受診者の特徴は,健診の受診回数が多い者程,服薬や疾病罹患は管理できており,医療管理下にあっても継続的に健診を受けることの有用性が示された。
著者
片山 直美 足土 由里佳 一野 晃代 長坂 恵樹子 加藤 江理 伊藤 えり 太田 陽子 梶川 典子 蟹谷 未香 下林 真知子 恒川 小百合 早川 ちひろ 楪葉 真由 藤本 保志
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.Suppl.2, pp.S125-S132, 2010 (Released:2011-12-01)
参考文献数
6

日本人の食の満足に及ぼす影響が大きい主食である「飯」に注目し、おいしく簡単に炊き上げるための工夫として、一般家庭で用いる炊飯器によって炊飯した飯の 3 種類の水(純水、ミネラル水、水道水)による違いを検討した。さらに選択した水を用いて、嚥下食・介護食に用いることが可能な離水しにくい粥を作製するために 5 種類の増粘剤(トロミパーフェクト、ソフティア、つるりんこ、とろみ名人、スルーキング)を用いて違いを検討した。方法として被験者である健康成人女性 92 名により各飯の「味」、「香り」、「見た目」、「総合」における官能試験を 5 点満点で評価し、物性を硬さ・粘り計(サタケ製)にて「弾力性」、「硬さ」、「粘り」、「バランス」について評価した。結果、無洗米の炊飯の際に用いる水は純水が最も高い評価であり、熱湯で炊飯することで、加水する時間なしで十分に評価の高い飯が炊き上がることが分かった。また離水しにくい粥も同様に熱湯を用いて加水する時間なしで炊き上げ可能であった。増粘剤を用いることで時間が経っても離水せず、軟らかい粥ができるため、嚥下食・介護食に適していることが分かった。
著者
加瀬 ちひろ 寺師 楓 森岡 杏月 豊田 英人 植竹 勝治
出版者
Japanese Society for Animal Behaviour and Management
雑誌
動物の行動と管理学会誌 (ISSN:24350397)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.137-145, 2021-12-25 (Released:2022-01-12)
参考文献数
19

動物園でのふれあいがテンジクネズミの行動と生理に及ぼす短期的影響を評価するため、埼玉県こども動物自然公園にて10頭を対象に調査した。調査対象個体は15:00から15:30のふれあいイベントに用いられた。コルチゾル濃度を測定するため、各個体からふれあい開始10分前、終了10分前の2回唾液を採取した。また、ふれあい後1時間の行動を3分間隔の瞬間サンプリングで評価した。ふれあい前後の唾液中コルチゾル値差には、ふれあい実施の有無による差はみられなかったが(z=−0.06, P=0.953)ふれあい持続時間と摂食には負の相関(rs=−0.29, P=0.028)が、ふれあい回数と身繕いには正の相関(rs=0.30, P=0.021)がみられた。これらの結果からふれあいは極端な生理的ストレスを与えることはないが、時間と頻度の増加により軽度のストレスと関連する行動に短期的に影響することが明らかになった。したがって、長時間のイベントでは1頭あたりのふれあい時間に制限を設けることが推奨される。
著者
仲間 妙 佐藤 和紀 梶本 佳照 磯崎 ひろみ 高橋 純
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Suppl., pp.125-128, 2018-12-20 (Released:2018-12-21)
参考文献数
6

教員志望学生を対象に,小学生向け漢字ドリル指導法を学ぶための講義パッケージを開発し実施した.講義内容は,漢字ドリルの基礎知識を学び,模範授業映像の視聴後,指導法を練習するものであった.講義の事前事後に漢字ドリル指導の自信や,講義から学んだこと,さらに学びたいことは何かを明らかにする質問紙調査を行った.その結果,漢字ドリル指導の自信向上が見られた(研究1).また,本講義が漢字ドリル指導のイメージを具体的に伝えることに効果的なことが示唆された.さらに,授業以外での指導法などについての講義も求められる可能性も示唆された.また,感想の共有や指導法の練習が,学びにつながった可能性が考えられた(研究2).
著者
荒井 基 鈴木 ひろこ 真田 成子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.89-95, 1974 (Released:2010-10-29)
参考文献数
5

(1) 全国124カ所の保健所の母親学級に参加した5,318名の妊婦・授乳婦について1970年と1971年において妊婦・授乳婦に関する食品禁忌のアンケート調査を実施した。回答した者は4,021名で回収率は75.6%であった。(2) 回答者の54%が1つ以上の禁忌食品を知っており, 1人当り平均2.0件となる。(3) 年令の多い者が若い者より多くの禁忌食品を知っていたが, 事務従事者, 商業, 農業に従事している者の間に差はなかった。(4) 地方別の禁忌食品の知悉度をみると, 北海道においては他の地方より禁忌食品を知っている者が多かった。(5) 禁忌を実行する者は教育程度が高くなるにつれて減少している。(6) 禁忌食品として挙げられたものは動物性食品71種, 植物性食品94種, 香辛・嗜好性食品22種, その他25種, 合計212種であった。(7) いか, たこ, 柿, なす, 香辛刺激性食品, コーヒー, アルコール性飲料などが出現頻度が高く, また頻度はあまり高くはないが, 栄養価の高い食品, かぼちゃ, 獣肉, そば, みかんなどが禁忌されていた。(8) 食品禁忌はその食品が多く生産される地方において高い頻度で禁忌されている傾向がみられた。
著者
宮原 ひろ子
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.3, pp.510-518, 2010-06-25
参考文献数
20
被引用文献数
1 3

&emsp;The relationship between solar activity and climate change in the past can be examined using proxy records. Variations of solar activity can be reconstructed based on carbon-14 in tree rings, which are produced by galactic cosmic rays modulated by the solar wind, while climate change can be reconstructed from changes of tree-ring growth rate or content of stable isotopes in ice cores from the polar region. A comparison of solar activity and climate change at the Maunder Minimum in the 17<sup>th</sup> century and the Early Medieval Maximum Period in the 9-10<sup>th</sup> century suggests that the sun plays an important role in climate change even on a decadal time scale. The characteristic variations detected in climate change suggest the mechanism of solar influence on climate involves galactic cosmic rays. Variable features of eleven-year and twenty-two year cycles of solar activity and consequent variations of cosmic rays are possible origins of complex variations of climate change on decadal to multi-decadal time scales. We summarize variations of solar activity and cosmic rays during the past 1200 years and their possible influence on climate change.
著者
田中ひかる [著]
出版者
KADOKAWA
巻号頁・発行日
2019
著者
大須賀 彰子 岩崎 裕子 高橋 智子 大越 ひろ
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.15-22, 2013 (Released:2013-11-22)
参考文献数
18
被引用文献数
5

本研究では,油脂の性状がマッシュポテトの飲み込みやすさに及ぼす影響を力学的特性と官能評価の観点から検討した。試料は性状の異なる3種の油脂,すなわち液状油O,固形脂F(ゲル状油脂),固形脂S(ショートニング),また対照として水をマッシュポテトに添加し,調製した。その結果,固形脂のテクスチャー特性の硬さと降伏応力がマッシュポテト試料に影響していた。水平方向の抵抗力の測定により得られた平均抵抗力はマッシュポテト試料のなめらかさやすべりやすさの指標となり,この測定法の有効性が示唆された。マッシュポテト試料中の副材料を顕微鏡で観察したところ,水と油脂では分散が異なり,力学的特性にも影響することが示された。官能評価では,水添加試料が硬く,なめらかさに欠ける傾向を示した。また,水と液状油Oを添加した試料が固形脂F添加試料に比べ,有意にべたつき感と残留感が少なく,飲み込みやすいと評価された。
著者
加藤 美生 木内 貴弘 河村 洋子 石川 ひろの 岡田 昌史 奥原 剛
出版者
帝京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

保健医療課題を取り扱ったプライムタイムテレビドラマの研究状況を文献調査から把握した。視聴者の医師像の認知および医師への信頼度の影響を分析したところ、医療ドラマの外科医の描かれ方によって信頼度を左右する可能性があることが明らかになった。テレビドキュメンタリー番組に登場した患者の語りについてはその重要性が近年認識されつつあることがわかったが、公害や薬害の番組数は種類によって制作数の偏りが見られた。エンターテイメント・エデュケーション実施団体や医療ドラマ制作者へのヒアリング調査により、制作者の制作動機や課題を収集し、メディアと医療をつなぐ会を設立し医療ドラマ制作教育プログラムを実施した。
著者
岡本 洋子 土屋 房江 前田 ひろみ 三谷 璋子 三好 康之 吉永 美和子 井川 佳子 大下 市子 奥田 弘枝 奥山 清美 上村 芳枝 亀井 文 倉田 美恵 杉山 寿美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.17, pp.160, 2005

<br>【目的】日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学:魚介類」の一環として、広島県において調査を行った。今回は、あなご、かき、まだこ(食品成分表の食品番号10015:10292:10361)の利用実態について調べることを目的とした。<BR>【方法】広島県内の14地域で、質問紙調査を実施した。14地域を島嶼部、都市沿岸部、都市内陸部、中国山地に4区分した。調査項目は、魚介類の種類、入手方法、手作り・購入、調理法、日常食・行事食度等である。調査対象者は20歳代から70歳代の171名である。調査時期は2003年10月_から_2004年2月。<BR>【結果】(1) 記載魚介類は212種類(食品成分表)、総記載料理数は4,684であった。(2) 調査者数に対するあなごの出現比率では、島嶼部83.5%、都市沿岸部80.6%、都市内陸部45.9%、中国山地18.8%であった。調理法では、焼き物と飯料理が多くみられ、照り焼き、ちらしずし、あなご飯、巻きずし、刺身(島嶼部)、雑煮、茶碗蒸し等に調理された。(3) かきの出現比率では、島嶼部63.1%、都市沿岸部91.2%、都市内陸部89.5%、中国山地73.0%であった。調理法では、4地域いずれにおいても、フライ、鍋物、酢がきが多くみられた。殻付き素焼きやグラタン料理もみられた。(4) まだこの出現比率では、島嶼部69.9%、都市沿岸部63.1%、都市内陸部36.3%、中国山地75.3%であった。調理法では、4地域いずれにおいてもなま物(刺身、酢の物)や茹で物(ゆでだこ、ぬた)が多くみられ、揚げ物(島嶼部ではたこ天)、たこの煮物やたこ飯(都市沿岸部)、にぎり寿司、たこ焼き等に調理された。