著者
中村 拓真 今井 啓輔 濱中 正嗣 山﨑 英一 山田 丈弘 水野 敏樹
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.100-104, 2018 (Released:2018-02-28)
参考文献数
15
被引用文献数
3 3

61歳男性.声の聞こえにくさ,物の見えにくさ,ふらつきにて第6病日に受診した.両側聴力低下とともに,見当識障害,眼球運動障害,体幹失調,深部反射の消失がみられた.頭部MRIのFLAIR画像にて両下丘を含む中脳蓋と両視床内側に高信号域がありWernicke脳症(Wernicke encephalopathy; WE)が疑われた.ビタミンB1補充療法開始後に聴力は急速に回復し,眼球運動障害と歩行障害も徐々に改善した.入院時の血清ビタミンB1低値にてWEと診断され,第39病日の頭部MRIでは異常信号は消退していた.本例におけるビタミンB1補充後の聴力低下と下丘のMRI異常信号の改善経過からWEの聴力低下の可逆性が確認された.
著者
今井 裕太郎 小池 則満 西村 雄一郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_66-I_73, 2012

木曽三川下流・伊勢湾岸の低平地においては、東海ネーデルランド高潮・洪水地域協議会が設置され、巨大台風に対する大規模な事前広域避難について検討がされている。そこで本研究では、名古屋市内の港区、南区、中川区の伊勢湾台風被害のあった公立小学校計6校の5年生もしくは6年生の保護者対象にアンケート調査を行った。その結果、事前広域避難そのものへの認識が低く、現状では円滑な広域避難は期待できないこと、ほとんどの家族が浸水域内に避難してしまうこと、大多数がマイカーで移動することが予想され、渋滞・駐車場対策が必要であることを述べた。また、上陸時間によって避難開始の時間が異なることから、呼びかけのタイミングが重要である可能性があることなどを指摘した。
著者
宮崎 邦彦 岩村 充 松本 勉 佐々木 良一 吉浦 裕 松木 武 秦野 康生 手塚 悟 今井 秀樹
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.1871-1879, 2005-08-15

電子署名技術の利用にあたっては,署名者は秘密鍵を安全に管理する必要がある.一般には,秘密鍵を安全に管理することは署名者自身にとって利益となると考えられているが,署名者の状況によっては,安全に管理することが利益とならないケースも生じうる.本稿では,署名者が債務超過に近い状態にある債務者である場合を例にあげて,署名鍵の自己暴露が債権者に対する攻撃となることを指摘する.さらに債務者が鍵自己暴露の可能性を持つことが,債権者?債務者間の債務縮減交渉に与える影響について分析を行い,この問題への対策の方針と例を示す.
著者
今井 涼 呉 懿軒 イマイ リョウ ウ イシュエン Imai Ryo Wu Ihsuan
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.121, pp.37-54, 2017-05

論文(Article)本稿では日本の児童虐待対応機関たる児童相談所と、台湾の家庭内暴力及性的侵害防止治療センターとを比較分析している。結果、日本では児童虐待を児童福祉の問題の一として、台湾では家庭内の暴力の一として位置付けていることがわかった。両国共通の課題としては地域機関との連携の困難が確認された。日本の課題としては業務の膨大さ、保護者以外からの虐待の見えにくさが、台湾の課題としては虐待の法的定義の曖昧さ、虐待死の把握が困難なことが確認された。This research purpose is to compare with child guidance center in Japan with child protection institutions in Taiwan. As result, we found out following things. In Japan, child abuse is regarded as part of the welfare problem surrounding children. In Taiwan, child abuse is regarded as one of the violence that occurs in the home. And then, the following problems were confirmed. As a common problem, both of child guidance center in Japan and child protection institution in Taiwan have difficulties of working with other organizations. And there are two unique problems in each of the Japanese child guidance center and Taiwan child protection institution.
著者
今井 佐金吾
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.27, no.10, pp.611-615, 1978 (Released:2010-02-16)
参考文献数
11
被引用文献数
3 4

有機物試料を低温灰化する際に,これに含まれる元素群の揮発損失について放射化分析法により検討した.メンブラン・フィルター又は天然セルロースろ紙上に 25種の元素を各々100μgずつ個別に添加し,更に灰分増量剤及び共存物質として硝酸マグネシウム又は塩化鉄(III)を2mg添加した試料, 更に高揮発性の塩化アンモニウム,又は低揮発性の塩化カドミムを 0.1 mmol程度共存させた試料を調製した.これらの試料はすべて2試料1組として調製し,その一つを低温灰化し,もう一方は対照用試料として,それぞれ中性子放射化分析した.その結果,硝酸マグネシウムを灰分増量剤とした場合にヒ素(III),セレン(IV),セレン(VI)が74%から89%の間の回収量を示し,又,塩化鉄(III)を灰分増量剤とした場合,又は,これに塩化カリウムを共存させた場合,ヒ素(III),ヒ素(V),カルシウム,セレン(IV),セレン(VI)が55%から94%であった.この他の元素群については95%以上の回収率が得られた.塩化鉄(III)に塩化アンモニウムが共存する場合は,一般に回収率が若干低下する傾向が認められた.炭素微粉末を主成分とし,比較的多量の鉄を含む大気浮遊じんの灰化を想定して,これに類似の系として塩化鉄(III)に黒鉛粉末を共存させた試料では塩化鉄(III)のみの場合と,その回収率に有意な差は認められなかった.
著者
徳田 恵一 益子 貴史 小林 隆夫 今井 聖
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.192-200, 1997-03-01 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
2

動的特徴 (音声のデルタ及びデルタデルタパラメータを含む混合連続分布HMMから音声パラメータ列を生成するための高速アルゴリズムを提案する。ここでは, 尤度最大の意味で最適な音声パラメータ列を生成することを考え, この問題を現実的な演算量で解くため, 適応フィルタリングにおけるRLSアルゴリズムと類似の手法を用いて高速アルゴリズムを導出した。また, 提案アルゴリズムにより, 静的及び動的特徴の統計情報(平均及び共分散)を反映した音声パラメータ列の生成が可能となることを例によって示すと共に, 提案アルゴリズムの音声の規則合成への応用について考察を加えている。
著者
齋藤 秀樹 今井 英行 中口 努 久後 地平 川瀬 博隆 竹岡 政治
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大學學術報告. 農學 (ISSN:00757373)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.46-58, 1989-11-18
被引用文献数
8

林分1ha当りの生殖器官各部分の生産量(乾重と個数)について, ミズナラの若齢Y林分と老齢O林分とを比較し, 種子生産に関係する要因を考察した。各部分の生産量はトラップ法で測定し, 花粉については開花前の雄花序試料に含まれる花粉量と林分の開花雄花序数を掛けて求めた。調査は若齢林が3年間, 老齢林は5年間行った。主な知見は次の通りである。(1) 落果は多く, 8月末で80&acd;90%に達した。これは同化物質の節約になる。(2) 雄花序1個当りに含まれる花粉量は年によって9.3&acd;16mgと0.8&acd;1.2×(10)^6個の範囲にあった。(3) 乾物生産量(kg/ha・yr)は次の通りである(左側が若齢林, 右が老齢林。括弧内は平均値)。開花雄花序(花粉なし) : 7.7&acd;38.5(20.1);17.8&acd;55.9(42.2)。花粉だけ : 11&acd;43(26);24&acd;78(61)。雌性部分 : 81.7&acd;544.4(244.2);25.7&acd;256.4(158.8)。生殖器官合計 : 100&acd;625(291);68.0&acd;379(262)。(4) 各部分の乾物生産量の年次変動は3&acd;10倍(最大値/最小値)であった。しかし老齢林では, 連続4年間の雄花生産の変動は小さく(1.3倍), これはアカマツ林の場合に似ていた。(5) 雄性部分の乾物生産量が生殖器官全体に占める割合は, 若齢林が20%前後, 老齢林では種子豊作年に30&acd;40%で, 凶作年には60%前後を示した。(6) 花粉の乾物生産量は, 開花雄花序(花粉をのぞいた残り)より数%&acd;10%多い。(7) 花粉粒の生産量(個/ha・yr)を求めると若齢林が1.2&acd;5.3(平均2.9)×(10)^<12>, 老齢林2.8&acd;7.9(同5.2)×(10)^<12>となった。この最大値はスギ, ヒノキのそれより少ない。しかし, ミズナラの年次変動はこの2樹種より小さい。老齢林の値はアカマツ林にほぼ一致している。(8) 雄花序, 花粉粒, (総)雄花の個数生産量の年次変動は大きかったが, 雌花に対する雄花序及び花粉粒の数比は2倍以内の小さな変化であった。雌花1個に対して放出された花粉粒は若齢林が1.3&acd;2.4×(10)^6個, 老齢林1.9&acd;4.3×(10)^6個である。既報の2老齢林を加えた比較から, 林分によって雄花対雌花の比率に著しい偏りがあり, これは林齢と無関係であった。(9) 種子の豊作年には結実率が高かった。結実率の上昇は, 巨視的には放出される花粉粒の多少に関係がありそうである。これは将来, 解明しなければならない問題である。
著者
松田 吉平 田中 謙一郎 今井 秀幸 五井 龍彦 佐藤 恭一 田中 裕久
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.84, no.861, pp.17-00472-17-00472, 2018 (Released:2018-05-25)
参考文献数
4
被引用文献数
2

The traction drive - integrated drive generator (T-IDG®) has been developed since 1999 to replace current hydrostatic transmission drive generators. The T-IDG® consists of a generator and a half-toroidal traction-drive continuously variable transmission (CVT), which maintains a constant output speed of 24,000 rpm. In terms of coping with recent trends of high-power electric drive aircraft (MEA) and the need for weight reduction, a high-speed traction-drive CVT is advantageous over current hydro-static drive transmissions. To control a speed ratio of the high-speed CVT accurately, it is essential to know the speed-changing response. In conventional study, the speed-changing response is approximately proportional to a rotational speed; however, in the high speed CVT, a minute deformation during the speed change affects its response. This paper describes the analysis and a developed theory of the speed-changing response of a toroidal CVT, with showing test results which verify the response of the high speed CVT, whose input speed is 20,000 rpm at maximum with a peripheral speed of traction contact of 70 m/s.
著者
西村 一朗 今井 範子 久保 妙子
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究年報
巻号頁・発行日
vol.16, pp.163-171, 1990

日本人が未だ住みこなしていない都市集合住宅地において生活騒音,ペット飼育等の近所迷惑の実態を明らかにし,気持ちよく住むための「住み方ルール」を明らかにするのが本研究の目的である。過去5か年(1983~87)の新聞記事を分析した結果,騒音問題が迷惑の第一位であり,次に特に最近の傾向としてペット問題が大きくなってきていることがわかった。そのためアンケート調査では,それらに1つの焦点をあてて調査し検討している。調査対象地は,大阪市の南港ポートタウンである。調査により得られた知見のいくつかは以下の通りである。(1)住み始めに挨拶まわりをする習慣はほぼ維持されており,範囲は3割ほどが「両隣と上下の住戸」,2割はどが「両隣だけ」となっている。(2)生活騒音にかかわる生活時間では,起床・就寝,楽器演奏,洗濯,入浴等の生活時間に,ばらつきがみられ特に夜更しの生活も増えている。互いに迷惑にならないよう一定の生活コントロールが必要になろう。(3)生活騒音に対する「住み方ルール化」では,特に早朝深夜の楽器演奏は「厳しく禁止」の意向が強い。(4)生活騒音を減らす重点として「居住者の自主性が肝心」との見解が過半を占める。(5)ぺット飼育は5%未満だが,実態はより多いと推定しうる。(6)ペット飼育について3割弱は禁止すべきでないとしている。(7)「住まいのしおり」は,7割ほどがもらっていて一応は目を通している人が多い。(8)「住み方ルール」のあり方として「個人個人の自主性に任せるしかない」とする意見が圧倒的に多い。 以上をもとに,項目ごとに多くの人々に受け入れ可能な「標準住み方ルール」をつくり,「住まいのしおり」の改善等を通じて普及,定着してゆくことが緊急の課題といえる。
著者
常盤 香代子 面田 真也 今井 保 阪上 奈巳 安藤 卓
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.GbPI1482, 2011

【目的】<BR> 臨床実習は体力的・心理的負担の多い環境であり、それが体調管理に影響する学生は少なくない。今回、体調不良をきっかけに欠席が続いたが、実習を再開し最後まで継続できた学生を経験した。数日間の欠席により自分自身をみつめる経験ができ、実習を通じ能動的な学習行動が変化としてみられた。本学生の臨床実習教育において、体調不良や欠席の要因を分析し、実習指導内容と学生の変化について考察する。<BR>【方法】<BR> 実習終了後に学生、臨床実習指導者(以下、指導者)、教員各々に対し、本実習を通じての学生の変化についてインタビューを行った。また、養成校の用いる実習評価表や学内成績について過去の実習と比較した。<BR> 対象学生と実習経緯:平成22年度の臨床実習8週間の学生で最終実習であった。実習前の教員からの情報提供(内容:意欲はあるが指導者との関わりが不十分で積極性がなく、追求心が少なく、知識や技術も不十分である)を元に、指導者と充分な意思疎通がとれるように配慮した。また、紙面上の指導ではなく臨床場面での経験を重視した教育方針で実習を開始した。学生は開始早々に症例を担当し、その数日後に体調不良で欠席となり欠席は4日間続いた。教員からの情報で、学生が一時は実習を終了すると訴え混乱しており、親と相談し実習を継続する意思がみられたものの、施設に再度出向くことに対する強い不安があることを確認した。その為、施設まで指導者と同伴し再開した。<BR>【説明と同意】<BR> 学生と養成校に研究の目的を説明し、実習やインタビューの内容、成績の開示について同意を得た。<BR>【結果】<BR> インタビューにより、学生からは「対象者に責任を感じるようになった」「コミュニケーションの本来の意義が理解でき自然にとれるようになった」「評価や治療、検証作業を自分で考えて進めることができた」「レポート課題などストレスに弱い自分がわかった」等の内容、指導者からは「臨機応変に動けるようになった」「自分で考えて行動するようになった」という内容、教員からは表情や対応が明るくなった等と様々な内容が聴取できた。実習評価表は、リスク管理や能動的学習姿勢、理学療法士像の形成について向上していた。しかし、技術の振りかえりや自己主張に関しては成績が低いままであった。学内での症例報告等の成績はやや低下していたが、臨床実習成績は合格レベルであった。<BR>【考察】<BR> 課題の多い学生という情報の元、実習が始まり、実習早々に欠席が続いたが最後まで継続でき、学生は責任感や有能感を得て行動に成長がみられた。体調不良の要因は、症例レポートが無意識下でストレスになり、それが関係していると考えた。しかし、実習での欠席が初経験であり、先がみえない不安と今までが皆勤であるという自分の支えのようなものを失い、適切な判断力が欠け混乱を引き起こし、欠席が続いたと推察した。これは本学生のこれまでの人間関係の構築において、本来の意義を理解しないまま関係性を築いてきたことが学生の価値観の形成に影響し、あいまいな判断基準で行動してきたことが関係していると考え、それは学生の本質的な課題であると捉えた。そして過去の実習でも、懇切丁寧な誘導型の指導により、学生の人間形成に必要な価値観や判断力を養う場面が少なかったと考えられる。欠席が続いた後、教員や親に現状を受容され励まされたことで、本来の自分を冷静に振り返ることができ、実習を再開する気持ちになったと考える。欠席への反省と指導者や対象者への迷惑、2度とできない失敗等を考えると再開する不安が強い中、再開できたことは学生にとって自己決定の中での挑戦であったと考える。これらをふまえ、再開後の実習では対象者と関わる機会を大いに取り入れ、治療の一部を任せる環境や過度な助言は与えず、学生が自ら考え主体的に動かなければ解決に向かわないような環境を調整した結果、対象者への責任感が芽生え能動的な学習が習慣化され、理学療法過程の考察に論理的要素が増え、対象者の変化や問題解決に応じる行動になった。実習終了後の学内成績は低下しており、誘導型の指導による症例の理解と自ら考察した症例の理解の格差が生じたことに指導内容の課題を感じる。しかし、欠席が続くという実習では負と捉えがちになる経験や失敗・行き詰まるという経験を共に乗り越え、学生の本質的な課題において成長が認められたことは学生の将来につながる教育に携わることができたと考える。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 臨床実習は対象者を通じ理学療法が学べ、理学療法士像が形成される貴重な教育現場である。学生の質の多様化がみられる中、実習で問題になる学生において要因を分析し、適切な教育内容で支援できるよう、臨床実習のケースを考察した。
著者
小野 博 香取 竜生 犬塚 亮 今井 靖 賀藤 均
出版者
Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.49-56, 2014

<b>背景:</b>Marfan症候群に対するGhent基準が2010年に改訂された.改訂基準では大動脈病変,水晶体脱臼,遺伝子変異に重点がおかれ,骨格所見はsystemicscoreに一括された.<br><b>方法:</b>2008年4月~2009年12月に東京大学医学部附属病院小児科マルファン外来を受診し,従来のGhent基準(旧基準)においてMarfan症候群と診断または疑いでフォローされている症例38例について,改訂Ghent基準(改訂基準)における診断の詳細を検討した.<br><b>結果:</b>旧基準を満たした症例は13例,改訂基準は22例であり有意な増加を認めた(p=0.0039).改訂基準を満たした22症例のうち17例(77%)に家族歴を認めた.改訂基準を満たした症例の内訳は,大動脈所見が10/22例(45%),水晶体脱臼が10/22例(45%),systemic score≧7が4/22例(18%),FBN1遺伝子変異が2/3例(67%)であった.<br><b>結論:</b>改訂Ghent基準は旧基準より簡易化され診断が容易になった.さらに<i>FBN1</i>遺伝子解析が普及すれば,診断精度の向上および診断数の増加が期待される.
著者
今井 純好 栗原 潔 小澤 美和 島本 由紀子 石田 和夫
出版者
北里大学
雑誌
北里医学 (ISSN:03855449)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.58-64, 1995-02-28

北里大学病院では1989年7月より神経芽細胞腫マススクリーニング(NBMS)陽性者の精密検査を行ってきた。今回は精密検査を施行した84例の乳児を対象にNBMS陽性者から発見された神経芽細胞腫(NB)例の頻度や特性, NBMS陽性でありながら腫瘍を認めなかったNBMS疑陽性例の経過観察の方法などについて検討した。NB例は6例,疑NB例1例で進行例も認めたが, N-myc癌遺伝子の増幅を認めなかった。NBMS疑陽性例については,1歳までは腹部超音波や胸部XPなどの画像診断により腫瘍の確認を慎重に行い,それでも腫瘍が認められなかった症例については,2歳頃まで尿中VMA, HVAなどにより経過観察を行った方がよいと思われた。
著者
松岡 浩司 阿部 浩通 今井 幸三
出版者
徳島赤十字病院
雑誌
徳島赤十字病院医学雑誌 = Tokushima Red Cross Hospital Medical Journal (ISSN:13469878)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.69-74, 2002-03-01

その病歴において両親から軟禁されるという体験があり、失立、失声等で発症した転換性障害の22歳女性症例を報告する。母親は一級身体障害者。幼少時より両親に交友関係や門限など厳しく制限されて生育した。中学生時過換気症候群を発症、高校入学後失立・失歩が出没するようになった。21歳時、恋人との交際を両親に狙反対され、自宅二階に軟禁状態となり、無断外出すると体制を与えられるようになった。この頃から失声も出現したため、近医より紹介入院(任意入院)となった。治療は①環境調整②両親への感情を患者に言語化させること、を目標とし、入院期間を限定した上で両親を含めた三者面談を頻回に行い、家族療法的アプローチを試みた。入院2ヶ月目、電話をきっかけに失声が消失したことから両親と会話が出来るようになり、その後の歩み寄りの過程で家族構造の歪みを双方が認識したことで症状が劇的に消失し退院となった。
著者
柳田知常 今井文男共編
出版者
白楊社
巻号頁・発行日
1955
著者
今井 俊介
出版者
兵庫大学
雑誌
兵庫大学論集 (ISSN:13421646)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.27-40, 2008

明治憲法が範としたドイツ・プロイセン型の立憲君主型憲法のもと、行政権優位の国家体制を支えてきた行政行為の公定力理論の推移を追い、それが現行民事・刑事裁判にどのような影響を及ぼしているかを学説・判例を鳥瞰しながら考察した。