著者
宍戸 邦章 佐々木 尚之
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.336-355, 2011-12-31 (Released:2013-11-22)
参考文献数
42
被引用文献数
3

本稿の目的は, 2000年から2010年の期間に8回実施されたJapanese General Social Surveys (JGSS) の累積データに基づいて, 時代や世代の効果を考慮しながら, 日本人の幸福感の規定構造を検討することである. JGSSは, 各年または2年に1回実施されている反復横断調査であり, このデータをプールすることで, 単年度の調査では明らかにできない時代や世代の効果を検討することができる. また, 時代や世代の効果を統制しながら, 個人レベルの変数の効果を検討することで, 特定の調査時点だけで成り立つ知見ではなく, より一般化可能な知見を得ることができる. 分析手法は, 階層的Age-Period-Cohort Analysisである. 個人は時代と世代の2つの社会的コンテクストに同時にネストされていると考え, 時代と世代を集団レベル, 年齢および幸福感を規定する他の独立変数を個人レベルに設定して分析を行う.分析の結果, 次のことが明らかになった. (1) 年齢の効果はU字曲線を描く, (2) 2003年に幸福感が低下した, (3) 1935年出生コーホートや80年以降コーホートで幸福感が低い, (4) 出身階層や人生初期の社会的機会が幸福感の加齢に伴う推移パターンに影響を与えている, (5) 絶対世帯所得よりも相対世帯所得のほうが幸福感との関連が強い, (6) 就労状態や婚姻状態が幸福感に与える効果は男女によって異なる.
著者
佐々木 謙太朗 吉川 大弘 古橋 武
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.466-472, 2015-03-01 (Released:2015-02-03)
参考文献数
15

This paper proposes a mixture model that considers dependence to multiple topics. In time series documents such as news, blog articles, and SNS user posts, topics evolve with depending on one another, and they can die out, be born, merge, or split at any time. The conventional models cannot model the evolution of all of the above aspects because they assume that each topic depends on only one previous topic. In this paper, we propose a new mixture model which assumes that a topic depends on previous multiple topics. This paper shows that the proposed model can capture the topic evolution of death, birth, merger, and split and can model time series documents more adequately than the conventional models.
著者
名取 琢自 今井 完弌 秋田 巌 禹 鍾泰 平尾 和之 佐々木 玲仁 平田 俊明
出版者
京都文教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

申請時の研究計画に基づき、海外の心理臨床家への半構造面接による調査を企画し、平成20年度はアメリカと韓国、平成21年度はスイスとフィンランド、平成22年度はオーストリアを調査対象地として面接調査を行い、調査票と録音データを収集した。面接調査は研究計画で設定した規模で実施でき、資格や就業形態、勤務内容、想定される賃金、他職種との連携のイメージについて、心理臨床家の生の声を得ることができた。音声データは逐語記録化され質的分析が行われた。
著者
上保 国良 佐々木 隆爾 上保 国良
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の成果は,「幕末・明治期における民謡・流行歌を通じてみた外国文化摂取の歴史的研究」,および「幕末〜明治初期,長崎における外国音楽摂取の時代的背景」の二編からなる報告書にまとめた。第一部では,『長崎新聞』『西海新聞』を主要な資料として,次の結論を得た。長崎を事例とする研究で明白になったことは,第一に身分解放令後も芸妓は娼妓と同様激しい差別に晒されていたが,1879年半ばより彼女らの清楽を中心とする演奏が高く評価されるに至り工尺譜が普及し,第二に,この直後から開始された文部省の唱歌教育が五線譜の浸透力不足のため軽視される中で,清楽師範として人気の高かった長原梅園が明治22(1889)年,工尺譜『月琴・俗曲今様手習草』を発刊し,文部省唱歌を12曲紹介し民衆の問で愛唱される大きな契機をつくり,第三に,スコットランド民謡「あさひのひかり」(のちの「蛍の光」),ルソーを発端とする「みわたせば」(のちの「結んで開いて」),モーツアルト『魔笛』のアリアのメロディーを転用した「仁は人の道」(原曲パパゲーノのアリア)等が定着したことを明らかにした。第二部では,長崎県『学務課教育掛事務簿』,『r長崎県会日誌』r明治十二年六月,米国前大統領来港接待記事』等の精査をもとに,第一に,得られた主な資料を,その歴史的背景を説明しながら紹介し,第二に『活水学院百年史』等を参照しつつ分析し,義務教育における音楽教育は難渋しつつも,俗曲が,その担い手であった芸妓に対する差別的観念と相侯って,文部省の狙い通り零落したことを明らかにし,第三に小学校における唱歌教育が童謡をもとに,生徒の健康増進を実際上の目的として進められたことを解明し,第四に活水学院の前身では発足当初から高度の西洋音楽の教授が重視され,長崎県下の子どもに西洋音楽を定着させる有力な途を開いたことなどを明らかにできた。
著者
佐々木 勇介 田野 俊一 橋山 智訓 岩田 満
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.744, pp.7-12, 2004-03-19
被引用文献数
2

近年情報技術の発展に伴い,計算機によってアートやデザイン活動を支援できるようになり,様々なツールを使うことで複雑で綺麗な絵を容易に作成できるようになってきた.しかし,それゆえ逆に人間の創造性や感性を阻害しているという場合も存在する.そこで本研究では,デザイナの創造性,感性を阻害せず,逆に創造性,発想性を高めるデザイン支援システムとして,「発散型思考」と「収束型思考」を活性化させるスケッチ支援システムの構築を目標とした.
著者
川名 真理子 小堀 裕果 中崎 允人 鈴木 正論 永井 淳子 佐々木 忠徳
出版者
一般社団法人日本医薬品情報学会
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.105-110, 2013 (Released:2013-12-27)
参考文献数
7

Objective: There are only a few studies evaluating the effects of drug information services on pharmacotherapy.  We, therefore, studied the effects of providing drug information such as the effectiveness and safety of aliskiren on its pharmacotherapeutic efficacy by comparing before versus after drug information provision.Methods: Pharmacists provided drug information such as the effectiveness and safety of aliskiren coadministered with either ACE-I (angiotensin converting enzyme inhibitor) or ARB (angiotensin receptor blocker) to physicians and other healthcare professionals.  We compared the number of patients for whom aliskiren was prescribed, the proportion of diabetic patients taking both aliskiren and ACE-I (or ARB), the proportion of patients with low eGFR (estimated glomerular filtration rate), and the proportion of patients with hyperkalemia and related conditions, before versus after providing the drug information to the healthcare professionals.Results: The number of patients for whom aliskiren was prescribed decreased.  The proportion of patients taking both aliskiren and ACE-I (or ARB) decreased significantly after providing the drug information (p=0.007).  The proportion of diabetic patients taking both aliskiren and ACE-I (or ARB), the proportion of patients with low eGFR, and the proportion of patients with hyperkalemia also decreased, after providing the drug information.Conclusion: This study showed the drug information service to be clinically beneficial, achieving better pharmacotherapy.  Pharmacists should evaluate and provide information on the effectiveness and safety of drugs announced by authorities in a timely manner to achieve optimal patient care.
著者
佐々木 綾香 小林 佑慈 井庭 崇
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.17, pp.89-92, 2008-03-05
被引用文献数
1

本論文では,研究活動を支援するための「リサーチ・パターン」を提案する.リサーチ・パターンとは,研究活動において繰り返し起こる問題とその解決策を「パターン・ランゲージ」の手法を用いて記述したものである.これにより,学生の研究活動の直接的な支援となること,および教員や学生,および研究者のコミュニケーションを促進するツールとなることを目指す.In this paper, we propose a pattern language for academic research. Each pattern consists of a frequent problem and its solution in a research activity. In this paper, we show the overview and two examples from 43 research patterns. Our aim is to support students to manage themselves and be productive in research, and also provide a tool for researchers to communicate about their research activities.
著者
古屋敷 明美 平岡 正史 佐々木 秀美 紀 成子 武井 功子 長吉 孝子 山下 典子 河野 寿美代 金子 道子 森川 晴美 山崎 弘子
出版者
広島文化学園大学
雑誌
看護学統合研究 (ISSN:13460692)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.42-53, 2004-03-27

音楽が生体とこころに良い結果を及ぼすことは衆知の事実であり,この影響について生演奏を聴いた前後の血圧・脈拍・皮膚表面温度・こころの変化によって明らかにすることを目的とした。対象は本学の公開講座「音楽による癒し」のサックスとピアノ演奏・歌唱を聴いた参加者。自動血圧計による演奏前後の血圧・脈拍を計測した24名,サーモグラフを用いて演奏経過による顔面皮膚表面温度を計測した5名,調査に回答した78名である。結果は,演奏を聴いた後が演奏前より血圧が低下は約70%,脈拍数の減少約90%であった。収縮期血圧の12.0mmHg低下と脈拍数8.7回/分減少とに有意差があった。演奏前収縮期血圧が高い者は血圧低下が大きい。皮膚表面温度の変化は,前半と後半の演奏とも皮膚表面温度が約2℃上昇していた。こころに及ぼす影響は,演奏前にこころの緊張状態にある者が約半数を占め,苛立ち>不眠>憂〓>苦痛>不安の順であった。演奏後に気持ちが変化したと答えた者が8割あり,その変化はリラックスできた,楽しかった,感動した・感銘を受けた,心が落ち着いた,気持ちがほぐれた,心豊かになった,肩こりが軽くなったなどであった。生演奏を聴くことで血圧・脈拍が低下し,体温が上昇し,こころの緊張が緩和されることが実証できた。
著者
佐々木 敏光
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.94, no.3, pp.131-151, 2021-05-01 (Released:2023-02-19)
参考文献数
20
被引用文献数
4

本稿では,和歌山県椿山ダムの建設により水没移転を余儀なくされた人々が移転先をどのように決定したかを,属性,およびそれ以外の要因にも焦点を当てながら解明することを目的とする.ダム建設計画が発表されると,水没予定地区の住民は反対運動を起こしたが,すぐに条件闘争に切り替えた.補償交渉の過程での意見対立は人間関係の悪化を招き,地元ダム対策組織が分裂と再編成を繰り返す事例が見られ,移転先の意思決定に大きな影響を与えた.水没移転者のほとんどは,住み慣れた地域の近くに移転した.新たに仕事を見つけるには高齢で,そのため,移転前と同じ仕事に従事することを望んだことによる.林業経営者も,事業継続のため近隣地域に移転した.水没移転を人口移動の一つとしてとらえ,水没移転者の属性,人間関係等のファクターに注目しながら移転先の意思決定に至るプロセスの分析を行った結果,複数の移転パターンが明らかになった.
著者
藤井 歌倫 川上 敬子 宮本 真豪 明樂 一隆 三澤 亜純 中尾 紗由美 田内 麻依子 宮村 知弥 中林 誠 丸山 大介 中山 健 佐々木 康 森岡 幹
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.266-271, 2023 (Released:2023-08-30)
参考文献数
15

子宮内膜症のリンパ節での発生は稀少部位子宮内膜症とされている.子宮内膜症のリンパ節病変は骨盤内リンパ節が多く,骨盤内の深部子宮内膜症を伴うことが多い.今回,深部子宮内膜症を伴わない傍大動脈リンパ節子宮内膜症の一例を経験した.症例は44歳,過多月経による貧血のため,当科へ紹介となった.MRI検査で子宮腺筋症および子宮筋腫を認めた.子宮筋腫は8.7cm大で,拡散強調画像で軽度高信号とADC mapで一部低信号を呈したため悪性を否定できなかった.全身検索のため造影CT検査を施行したところ,多発肺動脈血栓と左下肢静脈血栓,12×25mm大の嚢胞状に腫大した右傍大動脈リンパ節を認めた.抗凝固療法および下大静脈フィルター留置後に腹式子宮全摘術と両側卵管摘出術と右傍大動脈リンパ節生検を施行した.術中所見では,骨盤および腹腔内に内膜症病変を認めなかった.術後病理診断では,子宮筋腫と子宮腺筋症に悪性所見を認めなかった.腫大リンパ節に内膜症病変を認めた.子宮内膜細胞がリンパ管や血管を介して骨盤外臓器に出現することが報告されていることを考慮すると,孤立したリンパ節に子宮内膜症が発生したものと考えられた.今回は偶発的に発見されたが,嚢胞状に腫大したリンパ節病変を認めた場合,悪性疾患によるリンパ節転移のほかにリンパ節子宮内膜症を考慮する必要がある.
著者
佐々木 稔
出版者
The Iron and Steel Institute of Japan
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.178-184, 1982-01-01 (Released:2010-01-19)
参考文献数
6
被引用文献数
2
著者
岩間 信之 中島 美那子 浅川 達人 田中 耕市 佐々木 緑 駒木 伸比古 池田 真志 今井 具子 貝沼 恵美
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.170-185, 2023 (Released:2023-06-09)
参考文献数
61

本研究の目的は,外国人散在地域を事例に,外国にルーツのある子どもたちの成育環境と健康状態の関係を解明することにある.外国人労働者が増加する今日,外国人世帯の生活環境の改善は喫緊の課題である.中でも,外国人散在地域では,外国にルーツのある子どもたちの健全な成育環境の確保が難しいと推測される.そこで本研究では,外国人散在地域に該当する地方都市を事例に,3歳児健診データを分析した.その結果,成育環境の悪化がう蝕(虫歯)などの健康被害を誘引し得ることが明らかになった.特に,所得が低く社会的に孤立していると考えられる外国人世帯の子どもたちの間で,健康被害が顕著であった.一方,社会的統合の程度が高いと推測される世帯では,こうした傾向はみられなかった.社会的排除状態にある外国人世帯は,家族や社会から十分な支援を受けにくい.このことが子どもたちの成育環境を悪化させ,健康被害をもたらすと考えられる.
著者
生駒 貴弘 岡田 和也 長谷川 直実 佐々木 渉 平井 愼二
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.140, 2017 (Released:2018-10-31)

本研究は,物質使用障害に対する条件反射制御法の効果について検証したものである. この技法は,標的行動を司る反射連鎖を制御することを目的とするが,これまでの実践を通じて, 物質使用障害者の通院治療を継続させる効果,及びその再犯を防止する効果があると推測される. その根拠となる仮説として,第1に,この技法は,具体的な作業をステージの進行に従って積み重ね る構成であるため,通院目的と課題が明確であり,また通院を重ねるごとに効果が実感されるため, 通院を継続する動機づけが高められる.第2に,この技法を用いることにより,物質使用の引き金とな る刺激に遭遇した際の反射連鎖の作動性が減衰するとともに,物質使用に至る行動を司る反射連鎖を 止めるための人工的な刺激(動作と文言)を形成し活用することで、規制薬物再使用の危険性を低下 させることができる. 仮説の検証は,2種類の実態調査を行い,その結果について統計的に検討を行った. その結果,この技法は,物質使用障害者の通院治療を継続させる効果,及びその再犯を防止する効 果があることが示唆されたが,限定的な条件に基づく分析であることから,更なる実証研究の集積が 必要と思われる.
著者
多田 実加 大森 圭貢 佐々木 祥太郎 最上谷 拓磨 榊原 陽太郎 宮﨑 登美子
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.65-74, 2018-03-30 (Released:2019-08-07)
参考文献数
47

本邦におけるHand-held Dynamometer(以下,HHD) を用いた膝伸展筋力測定方法を文献検証した.医中誌のデータベースを用い,「Hand-held Dynamometer」,「ハンドヘルドダイナモメーター」,「徒手筋力計」のキーワードで文献検索を行った.抽出された文献のうち膝伸展筋力測定方法に関して再現性と妥当性が検討された32文献を対象とした.運動器疾患を有さない対象者において再現性を検討した報告は16文献あり,その内15文献はHHDにベルト固定を併用していた.端座位でベルト固定を併用した測定における級内相関係数は,検者内,検者間ともに1つの論文を除きすべて0.9を超えていた.一方,筋力水準が高い場合,ベルト固定なし条件での再現性は不良であった.同時的妥当性を検討した8文献では,7文献においてベルト固定が行われていた.いずれも等速性筋力測定装置などによって得られた値との間に強い相関関係を認めていた(0.73~0.98).運動器疾患を有する対象者で検討した8文献では,4文献においてベルト固定が併用されており,検者内級内相関係数は0.9を超えていた.ベルト固定を併用していない1文献でも,級内相関係数は0.9を超えていたが,測定された筋力は極めて低値であった.運動器疾患のない対象者においては,端座位でのベルト固定を併用したHHDによる測定方法が選択されるべきである.