著者
島田 隆史 金生 由紀子 笠井 清登 佐々木 司
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.201-204, 2012 (Released:2017-02-16)
参考文献数
19

近年行われた大規模な双生児研究から,自閉症スペクトラム障害(ASD)において早期環境要因の関与は従来考えられていたよりも大きい可能性が示唆された。一方で,ASDをはじめとする,発達障害の有病率増加が問題となっており,それにはpopulation全体に影響するような環境要因が加わっている可能性が考えられる。そのような環境要因として,近年増加の一途をたどっている高齢出産や,それに伴う体外受精や顕微授精といった生殖補助医療(ART)の増加など,受精―妊娠に関わる環境の変化が候補に挙がる。これまでに,ART とASDとの関連ついての研究が複数行われているが,相反する結果が報告され,その関連は明らかでない。また注意欠如/多動性障害とARTについては,弱いながらも有意な関連を認めるとする報告がある。1990年代以降,わが国で急激に増加してきているARTは,自然妊娠とは異なり人の手が加わり,特に胚操作の時期とエピゲノム形成や初期の体細胞分裂の時期が重なることからも,発達障害を含めたART児の長期的なフォローアップ調査は重要である。このような研究から,ARTが更に安全な治療法として発展することが望まれている。
著者
宇山 拓澄 田崎 達也 上神 慎之介 香山 茂平 佐々木 秀 中光 篤志
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.541-544, 2019-03-31 (Released:2020-04-11)
参考文献数
18

症例は32歳,男性。悪戯でエアーガンをズボン越しに肛門に注入された直後より腹痛と腹部膨満感を訴えたため,当院へ救急搬送された。腹部CT検査で腹腔内に多量の遊離ガス像を認めたが,穿孔部位は特定できなかった。気腹の解除目的で,針穿刺による経皮的ドレナージを施行した後,緊急開腹手術を施行した。横行結腸穿孔による腹膜炎の所見で,さらに,広範囲の結腸腸間膜対側に漿膜の裂傷を認めた。また,上行結腸からS状結腸までの腸間膜に気腫を認め,腸間膜側の損傷部位すべての同定は困難なため,結腸亜全摘を行った。回腸断端で一時的ストーマを作成し,残存したS状結腸を挙上し,粘液瘻造設とした。術後74日目に回腸―S状結腸吻合を行い,人工肛門を閉鎖した。圧搾空気による大腸穿孔に対する治療では,術中,下部消化管全体にわたり,慎重に損傷部位を検索する必要がある。
著者
佐々木 大樹
出版者
智山勧学会
雑誌
智山学報 (ISSN:02865661)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.111-138, 2021 (Released:2022-04-01)
参考文献数
190

「〓〓〓〓〓」は胎蔵大日如来の五字真言とされ、真言密教において厳密に師資相承されてきた。その一方で五字真言は民間に流伝し、災難を除き、病気や怪我を治す一種の呪いとして用いられてきた。本論では各都道府県より刊行された各種『県史』等を中心に、民間において五字真言がいかに信仰され、流通されたのかを調べた。具体的には功能別に様々な事例を整理し、Ⅰ 毒害を避ける(ⓐ蛇除けとその解毒 ⓑ蜂除けとその解毒)、Ⅱ 傷病を治す(ⓐ火傷 ⓑ歯痛 ⓒ止血 ⓓその他の傷病)、Ⅲ その他の効能、という細目を設けて、その由来等を論じた。しばしば五字真言は民間において転訛し、前後に意味深長な言葉が加えられたが、蛇除けには蕨やナメクジ、火傷の治療には「猿沢池の大蛇」、止血ならば「血は父母の恵み」といったように、言葉と功能には一定の法則性があることが判明した。
著者
佐々木 利和
出版者
近世京都学会
雑誌
近世京都 (ISSN:21886709)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.101, 2023-09-20 (Released:2023-10-02)

This research note analyzes an Ainu hunting colored picture by Matsuura Takeshirō (1818-1888), a well-known explorer of Ezo (Hokkaido), newly discovered by Professor Matsuda Kiyoshi among uncatalogued materials in the Yamamoto Dokushoshitsu (読書室) collection. The painting is a hansetsu (height 140.5 cm, width 31.6 cm) of gasen paper, owned by Yamamoto Ayao. On the reverse, the author’s name “松浦武四郎” (Matsuura Takeshirō) is written in ink, seemingly in the handwriting of Ayao. The san inscription is a waka poem, “Namimakura ukitomo shirazu ukineshite yowataru michizo kokoro yasukere” (Sleeping with your head on the waves, free from worldly worries, is the way to spend life, with a peaceful heart), written in ink by Takeshirō on the upper part of the piece. The rakukan inscription is “多気志絵” (Takishi e, drawn by Takeshi, Taki county). The rakukan-in seal reads “古春” (Koshun, old spring), a previously- unseen mark. The year of production is not given. The painting was probably a gift to Ayao or his father, Yamamoto Bōyō, teacher of Kakeshirō in Chinese classics and natural history.
著者
佐々木 洋子 佐々木 祥太郎 宮内 貴之
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.532-538, 2023-08-15 (Released:2023-08-15)
参考文献数
15

今回,上位頚髄後索に多発性硬化症を再発し,利き手である右上肢の表在および深部感覚が脱失した症例を経験した.症例の感覚障害は免疫吸着療法で改善したが,治療経過において静的2点識別覚や立体覚の障害を認め,手指の巧緻動作が拙劣となるUseless hand syndromeを呈していた.作業療法では,手の機能を細分化した能動的な感覚再学習と,実生活に汎化を促す介入を実施した.治療効果に合わせて,感覚障害に対するアプローチを行うことで,免疫吸着療法開始3週間で,スムーズに実用的な右上肢機能を再獲得することができたと考えられた.
著者
佐々木 秀綱
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.36-48, 2020-03-20 (Released:2020-08-13)
参考文献数
35
被引用文献数
1

本稿の目的は,権力を持った個人がいわゆる「身びいき」を行いやすくなるか検討することである.具体的には,内集団ひいきが社会的勢力感の上昇により促進されるという仮説を導出し,質問紙を用いた場面想定法実験によって検証を行った.MBA課程に在籍する大学院生を対象に実施した実験からは,日本語を母語とする男性の参加者においてのみ,上記の仮説を支持する結果が得られた.
著者
松田 茂樹 佐々木 尚之
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.169-172, 2020-10-31 (Released:2021-05-25)
参考文献数
9

東/東南アジアの先進国・新興国/地域は,いま世界で最も出生率が低い.この地域の少子化の特徴は,出生率低下が短期間に,急激に起こったことである.低出生率は,各国・地域の持続的発展に影を落としている.欧州諸国で起きた少子化は,第二の人口転換に伴う人口学的変化の一部として捉えられている.しかしながら,現在アジアで起こっている少子化は,それとは異なる特徴と背景要因を有する.主な背景要因のうちの1つが,激しい教育競争と高学歴化である.この特集では,韓国,シンガポール,香港,台湾の4カ国・地域における教育と低出生率の関係が論じられている.国・地域によって事情は異なるが,教育競争と高学歴化は,親の教育費負担,子どもの教育を支援する物理的負担,労働市場における高学歴者の需給のミスマッチ,結婚生活よりも自身のスペック競争に重きを置く物質主義的な価値観の醸成等を通じて,出生率を抑制することにつながっている.
著者
佐々木 誠 佐野 雅俊 田中 靖子 山本 育由
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.420-423, 2006-05-10 (Released:2007-11-09)
参考文献数
8
被引用文献数
5 3

Recently, at very low doses, carvedilol has improved the treatment of chronic heart failure. In Tenri Hospital, prescriptions for low dose carvedilol had been prepared by grinding a 10 mg tablet, adding lactose to it, and packaging the resulting powder. However, the drug loss in these processes had been causing problems in treating chronic heart failure. The present study examines the extent of drug loss in the grinding, sifting, and automatic packaging processes and the causes.The overall drug loss rate, as calculated by measuring the weight of the powder in the finished package, was 24.8±12.8, 33.9±13.2, and 28.0±9.3% for the 1.25, 2.5, and 5 mg packages, respectively, a considerable loss. The greatest loss was found to occur in the automatic packaging process. The drug loss rates for carvedilol itself were 56.4±8.1, 50.2±10.2, and 36.9±7.5% for the 1.25, 2.5, and 5 mg packages, respectively. The loss of carvedilol was greater for the 1.25 and 2.5 mg packages than the 5 mg package (p<0.05).These results suggest that the grinding of a 10 mg tablet gives rise to inaccurate dosing. Thus, low dose tablets available on the market should be used preferentially when low dosages of carvedilol are prescribed to patients with chronic heart failure.
著者
宮内 貴之 佐々木 祥太郎 佐々木 洋子 最上谷 拓磨
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.263-269, 2023-06-15 (Released:2023-06-15)
参考文献数
27

本研究はBox and Block Test(以下,BBT)が,急性期脳損傷患者に対して評価可能な食事動作に関連する評価指標となりうるかを明らかにすることを目的とした.対象は78名(食事動作自立群:54名,非自立群:24名)であった.その結果,2群間でBBTに有意な差があり,その効果量も大きいことが確認された.また,BBTは食事動作の自立度と高い相関関係を示し,Receiver Operating Characteristic曲線のArea Under the Curveでは良好な判別能を示した.そのため,BBTは急性期脳損傷患者の食事動作の自立度に関連する上肢パフォーマンスの評価指標となることが示唆された.
著者
安武 敦子 佐々木 謙二 志岐 祐一
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集・実践研究報告集 (ISSN:2433801X)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.215-224, 2023-03-31 (Released:2023-06-15)

戦後の公営住宅の不燃化の流れを整理し,1948年度に全国に展開した48型の所在や,標準型とは別に店舗付き住宅が建設されたことを把握した。さらに新聞等から地方での建設過程を明らかにした。平面計画に関しては,47型・48型は戦前の同潤会アパートの間取りに近いものの,住宅営団の日照の考えを取り入れ,48型では台所の家事動線が軽減されるなど改良が加えられている。施工については配筋間隔など高輪アパートとの差があったが大きな違いはなく,同一建物内で品質のバラツキが大きいことが確認された。またその後の規準と比較すると鉄筋が過剰に設計されていたことが分かった。
著者
茂木 健司 笹岡 邦典 佐々木 真一 鈴木 克年 根岸 明秀
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.511-516, 2000-11-01 (Released:2009-10-15)
参考文献数
10

著者らは, 口腔機能検査の一つとして口腔内容積を測定する方法, 含水法を考案し, その再現性, 客観性を検討した.方法 : 水を満たした60mlのシリンジ先端を被験者の口角より口腔内に挿入後, 水を注入し, その最大値を記録し, 6回の平均値を口腔内容積とした.結果 : 1.健常被験者10名の口腔内容積の測定から, 被験者の顎位を中心咬合位で測定する方が, 自由な顎位での測定より測定値に変動が少なく, 再現性が高いと考えられた.2.口腔内容積は身長, および全頭高との問に相関が認められた.そのため口腔内容積を個人間で比較するときは身長を付記すべきものと思われた.3.各種顎口腔外科的手術患者7例の手術前後の口腔内容積の変化は手術内容とよく一致しており, 本法は客観性があると考えられた.
著者
佐々木 秀文 春日 井貴雄 小林 学 堀田 哲夫
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.861-863, 1995-10-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
5
被引用文献数
1

今回私どもは経肛門的直腸内異物の1例を経験したので報告する. 症例は37歳男性で, 自分でラムネのびんを肛門から挿入後, 摘出できなくなった. 当院入院後, 腰椎麻酔下にびんを摘出した.
著者
佐々木 秀明
出版者
いわき明星大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

福島第一原発事故により,多量の放射性物質が環境中に流出した。種子植物とラン藻における放射性物質の蓄積能力に関する調査を行った結果,種子植物に高いレベルでの放射性物質蓄積は観察されなかったが,陸生ラン藻イシクラゲにおいて高い蓄積が観察された。福島県二本松市において,イシクラゲはセシウム137を607,000 Bq/kg蓄積していた。イシクラゲの放射性セシウムの蓄積量は,土壌の放射能濃度が高いところに生育するものにおいて,高い傾向があった。また,栽培実験の結果,イシクラゲは汚染土壌から放射性セシウムを吸収した。これらの結果は,イシクラゲによる放射性物質蓄積は,汚染土壌の浄化に役立つ事を示している。
著者
佐々木 正人
出版者
日本質的心理学会
雑誌
質的心理学研究 (ISSN:24357065)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.46-62, 2011 (Released:2020-07-09)

床の上に仰向けに置いたカブトムシが,様々な物など,周囲の性質を使って起き上がる過程を観察した。床の溝,タオル,うちわ,鍋敷,チラシ,爪楊枝,リボン(細,太),ビニルヒモ,ティッシュ,T シャツ,シソの葉,メモ用紙,割り箸,フィルムの蓋を起き上がりに利用する虫の行為が記録された(図 1~17)。周囲の性質で起き上がりに利用されたのは,物の網目状の肌理,床とその上に置かれた物の縁・隙間,穴上の陥没,抱え込んで揺らすことのできる物,床とひも状,棒状,円形状の物がつくる隙間であった。これらの観察をまとめるとカブトムシの起き上がりが,1)「地面-単一の脚」(図 18a),2)「変形する物-複数の脚・湾曲した背-地面」(図18b),3)「固い物-複数の脚・湾曲した背-地面」(図 18c)の 3 種の環境-行為系の創発として記述できることが明らかになった。
著者
福岡 真二 野村 茂治 桑野 正 安部 秀顕 佐々木 賀一
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.1527-1531, 1989-02-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
4

A case report of a 12-year-old male with heterotopic ossification of the patellar tendon is presented. He was a baseball player and came to our clinic with the complaint of bilateral gonalgia after exercise. We diagnosed the case as Osgood-Schlatter disease. Inspite of the conservative treatment, a fragment was separated from the tibial tuburcle. The ossicle moved to the central portion of the patellar tendon, increasing its size.
著者
来間 千晶 佐々木 丈予 関矢 寛史
出版者
日本スポーツ心理学会
雑誌
スポーツ心理学研究 (ISSN:03887014)
巻号頁・発行日
pp.2018-1713, (Released:2018-05-17)
参考文献数
28
被引用文献数
2

Japanese athletes often use the phrase “Kimochi ga kireta” (“I lost my spirit” in English) when they describe negative feelings during competitions. Although many athletes use this phrase and face this psychological problem, what it means and how it happens have not been studied. The purpose of this study was to clarify the mechanism underlying the “loss of spirit” phenomenon during competitions and the usage of this term, through a qualitative analysis. After semi-structured interviews were conducted with 14 athletes (M=8, F=6; mean age=20.43±1.40 years; mean duration of competitive career=11.64±4.62 years), 16 cases of “loss of spirit” were qualitatively analyzed with the KJ method (Kawakita, 1967) and classified into four types depending on causes of this phenomenon. It was revealed that “loss of spirit” is caused by (a) low motivation before the game, (b) opponent’s attitude or gap in ability, (c) bad tide of the game, and (d) unexpected events. The results also showed that the mental state of “loss of spirit” includes low motivation, decreased concentration, and feeling physical fatigue and pain. Moreover, it is indicated that this phenomenon leads to dissatisfying results in competitions. Therefore, this phrase is often used by athletes because it is a short expression of a mental state with multiple causes.
著者
吉永 真理 佐々木 雄司
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.8-18, 2000-01-15

はじめに 憑依状態は狂気の歴史の中で最も古くから知られているものであり,多くの精神障害に憑依の状態像がみられることは注目すべきことである。症状発現の背景となる宗教・文化的要因への社会精神医学的な関心,特徴的な意識変容の状態像への精神病理学的な関心,あるいは分類や定義に対する診断学的な関心など,様々な視点からアプローチが行われてきた。 シリーズ「日本各地の憑依現象」は本誌「精神医学」40巻2号から41巻4号まで連載され,10編の論文が所収された。表にシリーズに掲載された全論文に関して,対象地域,憑きもの信仰の内容,著者の論点を整理した。地域は沖縄,四国,山陰,近畿,中部,北関東,北海道,および韓国と台湾である。いずれの論文においても,地域・事例固有の問題を浮き上がらせた上で,現代的な文脈における憑依現象に関して,問題提起を行っているものである。憑依の発生は世襲的に継承されて生じるか,あるいは当人の資質や状況に応じて偶発的に生じるかに分かれる。前者には当該家族や世帯,すなわち「筋」や「系」をめぐる差別や偏見の問題が起こる。後者では当人の特異的な心身状態が「病」や「障害」として精神医学をはじめとする現代科学的医療と接点を持つこととなる。そしていずれの場合にも,憑依の背景となる信仰や世界観を共有する人々が存在し,新たな「憑依」を生み出す土壌となっている。こうした問題を本論では以下の3点に整理し,それぞれ考察していく。
著者
佐々木 光俊
雑誌
千葉経済論叢 = The Chiba-Keizai ronso (ISSN:0915972X)
巻号頁・発行日
no.45, pp.29-64,

古代メソポタミアの代表的な物語の一つである「エタナ物語」を採り上げ、その背後にある<ワシの力>という観念の重要性に注目した。そして、この観念がシュメール文化の最初期から確認され、変容・変化を遂げながら新アッシリア時代の物語にまで引き継がれていることを、この物語の再読と他の物語との連関を探ることによって明らかにすることを試みた。この観念がもつ主権性との近縁性のために生じる他の諸神との競合として「アンズー物語」をとらえる。またニヌルタ神をワシの力や樹のイメージという「エタナ物語」の表象を通して、この神格の特性を捉えかえす。最後にもう一つの代表的な物語である「ギルガメシュ叙事詩」とこの物語にみられる共通性とその意味について検討した。
著者
佐々木 哲也 天内 大樹 下澤 嶽 ササキ テツヤ アマナイ ダイキ シモサワ タカシ Tetsuya SASAKI Daiki AMANAI Takashi SHIMOSAWA
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.23, pp.151-160, 2023-03-31

大学生協は、法令に基づき、学生や教職員らの組合員により組織された機関によって民主的に運営されている。多くの大学生協は全国大学生活協同組合連合会や各地の事業連合に加盟しており、これらの組織から支援を受けつつ、専従の生協職員を雇用して事業を行っている。これにより多様なサービスの安定的・効率的な供給を実現させている一方で、機関運営と事業運営とが隔てられ、組合員による機関運営の役割や裁量は限定的なものとなり、ガバナンスの形骸化という組織運営上の問題を抱えている。 静岡文化芸術大学生活協同組合(以下、文芸大生協)では、2021年度に当時雇用していたパート職員が文芸大生協の資産を不正に取得する被害が発生し、これに対して、損失の処理、情報公開、不正の再発防止などの対処を行った。同様の不正の被害は全国の大学生協で散発しているものの、過去の事例を参照できず、文芸大での不正の対処は困難を極めた。また、不正の再発防止において対策にかかるコストや役員の負担などの難しい課題を残すなど、大学生協のガバナンスの問題を浮き彫りにした。 本稿では、文芸大生協での不正とその対処を事例として報告した上で、大学生協のリスク管理の改善には、全国・地域単位での多層的なガバナンスの構築と、大学の主体的な関与が必要であることを提示する。