著者
佐々木 昇一
出版者
生活経済学会
雑誌
生活経済学研究 (ISSN:13417347)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.63-78, 2020 (Released:2021-03-31)
参考文献数
28

本論文は、日本においてどのようなワーク・ライフ・バランス(WLB)制度を持つ企業においてそれらの制度を社員が使用した場合に昇進を遅らせる期間にどのような影響を与えるのか、また、どのようなWLB制度を利用した社員の昇進の程度にどのような影響を与えるのか、という2つのリサーチ・クエスチョンを設定し実証的に検証した。 その結果、職場(上司や同僚)の協力確保、男性の育児休業取得促進を行っている企業は、育児休業取得に伴う昇進の遅れ期間が長引かせないという結果を得た。WLB制度の利用と昇進程度との関係では、男性において6カ月から1年以内の育児休業取得が昇進程度を有意に高める効果があり、反対に女性の場合は、その期間の育児休業取得が昇進程度を有意に低下させる効果があることが分かった。また、くるみんマークの認定は昇進の遅れを長引かせない効果を持ち、効果的に機能している。 これらのことから、政策的には、男性の育児休業を普及させるには、比較的短期間の育児休業を普及促進することが有効であり、女性の場合には、女性の役職登用も並行して推進する必要があることが言える。
著者
守谷 順 佐々木 淳 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.171-182, 2007 (Released:2007-04-10)
参考文献数
36
被引用文献数
4 3

本研究は,対人不安の維持要因として考えられている判断・解釈バイアスと自己注目との関連についての検討を行った。研究1では被調査者の大学生194名から対人不安高群53名,対人不安低群48名を対象に質問紙調査を行い,対人・非対人状況での判断バイアスと自己注目との関連について検討した。その結果,対人場面かつ自己注目時でのみ対人不安高群は対人不安低群に比べて否定的な判断バイアスが働くことを示した。研究2では,研究1と同様の被調査者を対象に肯定的とも否定的とも考えられる曖昧な対人・非対人状況での解釈バイアスについて質問紙調査を行った結果,判断バイアス同様,対人場面かつ自己注目時でのみ対人不安高群に顕著な否定的解釈バイアスが認められた。以上のことから,否定的な判断・解釈バイアスが対人不安高群に働くときは,対人場面であり,かつ自己注目状況であることが明らかにされた。
著者
大石 智子 佐々木 銀河 野呂 文行
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.81-90, 2017-03-31 (Released:2017-10-06)
参考文献数
11

本研究では、自閉スペクトラム症幼児1名に対して、モーラリズムタッピングを用いて物品名称の音声模倣指導を行い、介入手続きの各構成要素が正確なモーラ単位での音声模倣に及ぼす効果を検討することを目的とした。また、命名スキルにも刺激性制御が転移するかを検討した。発音のアセスメントを行った後で、モーラリズムの音声提示、指導者によるタッピングモデル提示および対象児によるタッピングのガイダンスを継時的に導入した。結果、指導者が音声モデルを提示するよりも、指導者と対象児が音声モデルのモーラに合わせてカードをタッピングする方が正確なモーラ単位での音声模倣および命名スキルの促進に有効であった。この結果について、音声表出における弁別刺激の明瞭化や刺激性制御の転移の観点から議論した。
著者
山路弘樹 中村輝子 横山潤 近藤健児 諸田隆 竹田秀一 佐々木博 牧雅之
出版者
植物研究雑誌編集委員会
雑誌
植物研究雑誌 (ISSN:00222062)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.57-78, 2007-04-20 (Released:2022-10-20)

日本産カンアオイ属ウスバサイシン節植物の形態変異を明らかにするために,国内の全分布域・既知の分類群,地域集団を含む55集団について野外調査を行った.同節に関する過去の研究はいずれも量的形質の評価が不十分であるため,本研究では今まで用いられてきた形質,新たに採用した形質の評価に加え,花の量的形質に基づく多変量解析を行った.その結果,形態より区別できる8型が認識された.日本の同節はまず萼筒内壁のカラーパターンで2型に分けられ, D 型は全面暗紫色なのに対し, L 型は基底部は暗紫色,中央部は黄緑色ないし淡紫色,萼筒開口部は暗紫色ないし白色だった. D 型はさらに萼筒内壁,萼裂片内面の毛の細胞数,雄蕊・雌蕊の数で D1-D4 の4型に分けられ, L 型は萼筒の形態,萼筒開口部の大きさ,萼裂片の形態,サイズで L1-L4 の4型に分けられた.この8型はほぼ異所的に分布し,それぞれ独立の分類群に値するまとまった地域集団と推定された.
著者
坂本 知弥 佐々木 良一 甲斐 俊文
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS)
巻号頁・発行日
vol.2011-DPS-146, no.5, pp.1-7, 2011-03-03

近年,インターネットの普及により,IPv4 アドレスの枯渇が懸念されている.その為,IPv6 の導入が進められており,IPv6 が導入された場合,IP アドレス数の大幅な増加だけでなく,様々な利点が期待されている.しかし,その利点を逆手に取った攻撃手法も同時に発見されており,迅速な対応が求められている.そのような攻撃手法の 1 つがアドレス自動割り当て時における,ルータへのなりすましによる不正 RA (Router Advertisement) 攻撃である.既存対策としてはネットワーク機器やルータへの機能実装による対策が提案されているが,実現性や有効性の問題により,現実的ではない.そこで,本研究では実験を通じて不正 RA 攻撃がどの程度容易に実現出来るかを示すとともに,PC 側でフィルタリングを行う簡易で効率的な手法の提案と評価を行う.
著者
佐々木 倫子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.178, pp.21-35, 2021-04-25 (Released:2023-04-26)
参考文献数
19

本稿は国内の学生・一般成人に対する日本語教育の実践とその研究を採りあげる。はじめに本稿の対象を明確化し,第2章では国内の日本語教育の現状と課題を探るため,ある初級授業例を採りあげる。そして,教師の専門性,組織・機関と目を広げ,現状から(1)データに基づいた,担当教師による自己評価・実践研究,(2)第三者による授業評価,(3)教師の専門性の確立,(4)組織・機関の自己評価能力という4つの課題を挙げる。第3章では,1960 年代から2020 年までの実践と研究の変遷を追う。社会の変化に連動する教育実践と同時期の研究の変遷を踏まえた上で,第4章では今後の教育実践と研究を考える。評価システムが機能する教育実践,ICT を織り込んだ教育実践,ICT を活用した教育研究,が今後の展開として考えられる。
著者
福島 直樹 佐々木 邦明 上坂 克巳 小菅 英恵
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.22-00031, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
13

高齢運転者が健康状態に問題を感じながらも,代替的な移動手段が確保できないことから,運転を継続しているとの報告がなされている.このことから,高齢運転者の運転頻度は,個人的な要因だけでなく,地域的な要因が影響していることが指摘されてきた.そこで本研究は,教習所での高齢者講習時のアンケート調査で得られた,高齢者の目的別の運転頻度データを用いて,高齢運転者の運転頻度とアクセシビリティ,ウォーカビリティなどの地域の移動環境との関係性について検証を行った.ロジスティック回帰分析によって両者の関係を分析したところ,複数の目的の運転頻度において,地域のアクセシビリティ指標やウォーカビリティ指標が有意な係数を持つことが確認され,地域移動環境と高齢運転者の運転頻度に関係性があることが示された.
著者
佐々木 真紀子 石井 範子 菊地 由紀子 工藤 由紀子 杉山 令子 長谷部 真木子
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.164-172, 2016-09-20 (Released:2016-10-07)
参考文献数
44
被引用文献数
3 2

目的:化学療法中の患者を看護している看護師の抗がん剤の職業性曝露の状況と看護内容との関連を検討する.対象:北東北2カ所の一般病院で化学療法中の患者を看護している女性看護師10名で,原則として抗がん剤の混合調製を実施していない看護師とした.方法:化学療法中の患者の看護に従事した日の24時間の尿を採取し,オランダのEXPOSURE CONTROL研究所に依頼して,尿中のシクロホスファミド(CP)とα-フルオロ-β-アラニン(FBAL)の定量分析をガスクロマトグラフ質量分析で行った.また,年齢,化学療法中の患者への看護内容とその際の防護具装着状況,最近の健康状態等について質問した.結果:CPは9人の看護師の24の尿サンプルから検出された.CPの総排泄量は一人あたり5.4~44.2 ng/24 h,平均は16.8 ng/24 hで病院間に有意な差はなかった.FBALはいずれの尿サンプルからも検出されなかった.CPは勤務開始前の尿からも検出され,またCPの点滴中の患者を看護していない看護師の尿中からも検出された.健康状態では脱毛があると回答したものが9名で最も多かった.考察と結論:本研究ではCPの点滴中の患者の看護を行っていない場合でもCPによる曝露があることが明らかになった.曝露の経路としてCPの吸入や皮膚からの吸収が考えられる.曝露を最小限にするためには,看護の様々な場面でも適切な個人防護具の装着が必要である.また今後は環境中の抗がん剤のモニタリングや看護師の健康状態のモニタリングを定期的に行っていくことが重要である.
著者
長谷川 益己 佐々木 康寿
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
材料力学部門講演会講演論文集 2001 (ISSN:24331287)
巻号頁・発行日
pp.351-352, 2001-07-19 (Released:2017-08-01)

Changes in shear wave velocity were measured by the sing-around method rotating the oscillation direction of the wave with respect to the orthotropic axis of wood. The velocity of the shear wave propagated through the stressed wood decreased suddenly when the oscillation direction coincided with the tangential direction of the wood. The polarization direction of shear wave coincided with the principal axes of wood, not with the direction of the principal stresses. This finding indicated that the polarization direction was much affected by the texture-induced anisotropy of wood. Based on the result, the bending and shear stress distributions in wood beam specimen were estimated by the acoustoelastic birefringent method. The stress values estimated agreed well with those obtained by the strain-gauge method and mechanical calculations.
著者
林 伸和 佐々木 優 黒川 一郎 谷岡 未樹 古川 福実 宮地 良樹 山本 有紀 川島 眞
出版者
日本臨床皮膚科医会
雑誌
日本臨床皮膚科医会雑誌 (ISSN:13497758)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.629-634, 2021 (Released:2021-10-06)
参考文献数
3

経口イソトレチノインは,皮脂の分泌と毛包漏斗部の角化異常を抑制することで痤瘡を改善することから,海外では集簇性痤瘡あるいは重症・最重症の尋常性痤瘡に対して推奨されているが,本邦では未承認である.そこで,本邦における集簇性痤瘡や重症・最重症の尋常性痤瘡の患者数や現状での治療状況,イソトレチノインに対する考え,使用実態などについて日本臨床皮膚医会(日臨皮)と日本美容皮膚科学会(美容皮膚)の会員を対象に調査を行った. 日臨皮会員4,539名中565名(12.4%),美容皮膚会員2,711名中の158名(5.8%)から回答を得た.その結果,「男性に好発し、顔面のみならず胸背部に、多数の面皰と嚢腫・結節の多発をみる難治性の痤瘡ないし膿皮症の一型」と定義した集簇性痤瘡を両学会会員の85.6%が経験し,うち48.6%が年間1~2例を経験していた.また,経験者の81.7%は「標準治療だけでは治療不可能」と回答し,81.5%は経口イソトレチノインが「必要」,あるいは「必要性がとても高い」と考えていた.従来の治療で十分な効果が得られない重症・最重症の尋常性痤瘡については,90.8%が何らかの形で経験しており,そのうちの75.0%が経口イソトレチノインが「必要」あるいは「必要性が高い」と回答していた.また,何らかの手段でイソトレチノインを現在処方している医師の割合は全体の5.1%(美容皮膚会員15.8%,日臨皮会員2.1%)であった. 本調査では,集簇性痤瘡および従来の治療で十分な効果が得られない重症・最重症の尋常性痤瘡は,稀ではあるが皮膚科医が経験する症状であり,それに対して海外のガイドラインで推奨されている経口イソトレチノインへの期待が高いことが示唆された.経口イソトレチノインの必要性は高く,一部の皮膚科医がすでに処方している実態がある.しかし,催奇形性等の重大な副作用を伴うことから,十分な管理の下で経口イソトレチノインは使用されるべきである.現状の使用状況をより好ましい形にするために,安全性と有効性を確認する臨床試験を経たうえで,早期に薬事承認を目指す必要があると考えた.
著者
藤井 貴允 戸田 晴貴 石川 博隆 木藤 伸宏 佐々木 久登
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.463-468, 2013 (Released:2013-10-08)
参考文献数
20

〔目的〕本研究は,椅子からの立ち上がり動作(Sit-to-Stand, 以下STS)における加齢変化の影響を,個々の筋が発揮する筋活動と関節モーメントの関係から明らかすることを目的とした.〔対象〕対象はすべて女性で,若年者16名,高齢者16名とした.〔方法〕三次元動作解析装置と表面筋電図を用いてSTSを計測し,下肢の関節モーメントと積分筋電図を解析した.〔結果〕膝関節活動が主体であった高齢者は,最大股関節伸展モーメントよりも最大膝関節伸展モーメントの方が大きく,大殿筋下部線維,中殿筋の筋活動は有意に高値を示した.〔結語〕膝関節活動が主体であった高齢者は,股関節伸展モーメントが低下する傾向を示し,大殿筋下部線維・中殿筋の筋活動を高め,持続的に活動し,STSを遂行することが示唆された.
著者
大山 良樹 佐々木 和郎 中村 辰三
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.567-574, 1999-12-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
19

The effects of acupuncture treatment were investigated in 200 patients (99 males and 101 females, average age 16.1±0.2 (SE.)) who complained of reduced visual acuity, including juvenile myopia (age 13.25).Acupuncture treatment involved leaving the needle in place for 15 min, after inserting to a depth of 10-5 mm from the skin surface.The vital points Taiyo (Ex-HN5), Fuchi (GB-20), Shokyu (ST-1) and Goukoku (LI-4) were the basic points used for acupuncture therapy with Ganen (GB-4), Sanchiku (BL-2), Zui (ST-8) or Kyokuchi (LI-11) as supplemental points depending on individual symptoms. These acupuncture treatments improved the mean acuity by 0.33 in the right eye and 0.31 in the left.Analysis of these results indicated that acupuncture treatment caused significant improvement of visual acuity (P<0.01). Therefore, acupuncture therapy was considered to be an effective treatment that improved regulation of the ciliary muscle and the pupillary myosis system.
著者
安藤 昭 佐々木 栄洋 赤谷 隆一 三浦 剛史
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.639, pp.1-11, 2000-01-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
20
被引用文献数
4 1

今日, 我が国の津波防災に関する研究は, 国際的にも高い評価を受けている. しかし, それぞれの研究成果は, 関連性がないままになっており, これまでに講じられてきた津波防災対策を全般的にオーソライズし, 評価する体制は十分とはいえない.そこで, 本研究では, 津波常襲地域である岩手県沿岸域14市町村を対象に, 津波被害史, 津波対策史, 被災復興史という3つの観点から津波防災に関する情報を収集し, 津波防災に関するデータベースを構築した. そして, データベースにおいて制約, 結合といったデータ操作による分析を行い, 津波防災の変遷を明らかにし, 岩手県沿岸域における津波防災上の共通課題を探索した.
著者
佐々木隆 [著]
出版者
講談社
巻号頁・発行日
2010
著者
内野 博司 本多 勇介 中島 健太 佐々木 功二 小林 明 田中 江里 久米 信夫 酒井 崇 嶋崎 豊 石川 巌 岡野 信雄 京極 英雄 船越 昭治 北田 嘉一 淵之上 康元 田中 萬吉
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.107, pp.107_19-107_30, 2009-06-30 (Released:2011-12-09)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

茶新品種‘ゆめわかば’が埼玉県農林総合研究センター茶業特産研究所で育成された。‘ゆめわかば’は1968年に‘やぶきた’ב埼玉9号’の交配により得られた個体群より選抜され,1994年から2003年に県単試験を含む栄養系適応性試験,裂傷型凍害抵抗性及びもち病抵抗性検定試験を実施し,更に2004年,2005年には香気の更なる発揚を目的に試験を行った。この結果,優秀と認められ,2006年10月17日に茶農林53号‘ゆめわかば’として命名登録,2008年10月16日に品種登録された。‘ゆめわかば’は摘採期が‘やぶきた’より1日から2日遅い中生品種である。生育,収量とも‘やぶきた’並である。耐寒性は赤枯れ抵抗性が「強」,青枯れ抵抗性が「やや強」,裂傷型凍害抵抗性が「強」でいずれも‘やぶきた’より強い。また,病虫害抵抗性は,炭疽病に「やや強」である。製茶品質は外観が優れ,内質も‘やぶきた’並に優れる。また,摘採葉を重量減15%から20%に軽く萎凋させることによって,香気及び滋味が向上する。耐寒性が強いために,関東やそれに類似した冷涼な茶産地に適する。