著者
佐々木 真吾 仲 真紀子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.118-129, 2020 (Released:2022-09-20)
参考文献数
38

本研究では,小学1年生62名と4年生58名,大学生60名を対象に,出来事の想起における,「だいたいでよいので教えて下さい」と「できるだけ正確に教えて下さい」という異なる質の報告を求める教示の効果を検討した。実験では,小学校生活で体験する出来事を口頭で提示し,「だいたい(概ね教示)」「正確(正確教示)」の教示で想起を求めた。研究1では両教示をそれぞれ個別に(参加者間要因),研究2では両教示を対比した状況で実施し(参加者内要因),想起の文脈の効果を検討した。その結果,教示が個別に行われる場合,正確教示では,重要度の高い情報が多く報告され,一方で概ね教示では重要度の低い情報の報告が控えられた。さらに,教示が対比されて行われる場合,正確教示では,重要度の高い情報が逐語的に報告されるようになり,概ね教示では重要度が中程度の情報も控えられるようになった。ただし,概ね教示の効果には年齢差があり,児童は大学生に比べて情報を控えることが困難であった。以上の結果から,出来事の想起における正確教示,概ね教示は,想起の文脈によりその解釈が変化し,情報量のコントロールを導いたり,情報の詳細さのコントロールを導いたりすることが示唆された。これらをふまえ,子どもから正確で詳細な情報を得るための司法面接への応用的示唆を考察した。
著者
工藤 崇 宝田 晋治 佐々木 実
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.5, pp.271-289, 2004 (Released:2005-01-07)
参考文献数
56
被引用文献数
14 12

北八甲田火山群は11の小規模成層火山体から構成される. 本火山群は約40万年前から活動を開始した. 噴出中心の位置は時間とともに中央部に収束する傾向がある. 活動様式は溶岩流の流出に卓越し, 水蒸気噴火, ブルカノ式噴火およびストロンボリ式噴火による小規模な降下火砕物および火砕流を伴う. 27~17万年前の間には噴出量が0.1 km3以上の比較的規模の大きい火砕噴火を数回起こした可能性がある. 本火山群の総噴出量は15 km3, 長期的噴出率は0.04 km3/kyである. 噴出率は40~10万年前で比較的高く, 10万年前以降では低くなる. 噴出率および活動様式の時間変化から, 本火山群の火山活動のピークは40~10万年前の間にあったと考えられる. これらの時間変化はマントルダイアピルの冷却過程と調和的であり, ダイアピルモデルを仮定すれば, 本火山群の現在の活動は終息へと向かいつつある状態と解釈可能である.
著者
佐々木 彩乃 桐野 文良 塚田 全彦 高木 秀明
出版者
マテリアルライフ学会
雑誌
マテリアルライフ学会誌 (ISSN:13460633)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.46-58, 2017-05-31 (Released:2021-05-08)
参考文献数
15

本研究ではエオシンとそれをレーキ化したゼラニウムレーキ顔料について,レーキ化が耐光性に及ぼす影響を検討した.X線回折,電子顕微鏡観察より,どちらも結晶構造をもつが,ゼラニウムレーキ顔料の方が,粒子が微細であることを確認した.また紫外-可視分光分析で両者に吸収端波長の違い等がみられたのに対し,赤外分光分析,ラマン分光分析では差異は認められなかった.エオシンとゼラニウムレーキ顔料を用いた油絵具の耐光性試験では,ゼラニウムレーキ顔料の変色はエオシンの4分の1程度であった.ゼラニウムレーキ顔料ではアルミニウムイオンとの結合により電子状態の変化が生じ,耐光性の向上に寄与していると考えられる.光による変色の機構を赤外分光分析で検討した結果,いずれの絵具もC-Brの分解とキサンテン環の構造に変化が確認された.また試料の断面観察,顕微赤外分光分析から,どちらの試料にも表面に薄い層が形成されており,光劣化は表面層にのみ生じていることが明らかとなった.
著者
後藤 力 東 幸仁 佐々木 正太 中河 啓吾 木村 祐之 野間 玄督 原 佳子 茶山 一彰 河村 光俊 奈良 勲
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.87-91, 2002 (Released:2002-08-20)
参考文献数
12

本研究では有酸素運動を行うことで一酸化窒素(NO)産生増加を介する血管内皮機能にどのような影響を及ぼすかを検討した。対象は運動習慣を持たない健常男性8名(平均年齢:27±3歳)とした。血管内皮依存性拡張物質としてアセチルコリン(ACh)を使用し,血管内皮非依存性拡張物質として 硝酸イソソルビド(ISDN)を使用した。また,NO合成酵素阻害薬としてNG-モノメチル-L-アルギニン(L-NMMA)を使用した。運動方法は最大酸素摂取量の50%とし,1日30分,5回/週の頻度で3ヶ月間行った。前腕血流量の変化はプレチスモグラフにて測定した。ACh投与では運動後に有意な増加を認め,NO合成酵素阻害薬であるL-NMMA投与下では消失した。血管内皮非依存性拡張反応では有意な変化を認めなかった。これらより有酸素運動による血管内皮機能の増強は,NO産生増加を介することが示唆された。
著者
谷川 亘 山本 裕二 廣瀬 丈洋 山崎 新太郎 井尻 暁 佐々木 蘭貞 木村 淳
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2022-04-01

1888年磐梯山噴火により磐梯山の北側に湖(桧原湖)が形成し、それに伴い桧原集落(桧原宿跡)が被災し水没した。桧原宿跡は旧宿場町のため近世・近代の文化を記録する『水中文化遺産』であり、また火山災害の痕跡を記録する『災害遺跡』としての価値を持つ。そこで、桧原宿跡の水中遺跡調査を通じて、江戸・明治の産業・文化・物流の理解、山体崩壊に伴い約500名もの住民が亡くなった災害のメカニズム、せき止め湖の形成過程、および水没により高台移転を余儀なくされた避難の過程という自然災害の総合的な理解につなげる。
著者
三浦 浩治 佐々木 成朗
出版者
愛知教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

これまで知られていなかった超潤滑(超低摩擦)状態が、特徴的な条件・環境のもとで、観測されつつある。これらの摩擦、潤滑の素過程には、原子間結合の破断・生成が寄与するナノニュートンのオーダーから水素結合等が寄与するピコニュートンオーダーの力が関わっている。特に我々によって発見されたフラーレン分子をグラファイトに内包する炭素系超潤滑物質においては、従来の摩擦力測定装置の測定限界をこえるピコニュートンの力が働いている。まさに、これはブラウン運動の領域の熱揺らぎ力に匹敵する。したがって、超潤滑機構の詳細は、ピコニュートンの測定精度をもつ摩擦実験によって明らかになることが期待される。本研究では炭素系超潤滑物質の超潤滑機構を高精度の摩擦力測定により次に示す2点から系統的に調べた。(1) 荷重に対する摩擦力の測定と解析。(2) 速度に対する摩擦力の測定と解析。まず、荷重が100nN以下のとき、摩擦力は実験誤差内でほぼゼロを示す。荷重が100nNまで増加すると、摩擦力像に明確なC_<60>の稠密構造を反映した周期像が現れると同時に有限な摩擦力が出現する。この結果は、荷重の増加によって、グラファイト表面による圧縮で内在するC_<60>分子の動作が凍結されるかC_<60>分子とグラフェン間の化学結合の形成が起こることを示唆している。すなわち、このことは、C_<60>分子の回転や揺らぎの流動性が固体潤滑における超低摩擦発現に極めて重要であることを意味している。さらに、摩擦力が走査方向依存性を示さなかったことより、C_<60>単分子層の多層効果が現れている。走査速度が数10μm/secまでは、摩擦力においては変化がなかったため、この速度内では、超低摩擦が維持されていることを示唆している。
著者
佐々木 睦子
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.63(1992-CG-058), pp.65-71, 1992-08-10

コンピュータを用いて、いかにコンピュータらしい美しい絵を生成できるか、その可能性を試みた。そのためにコンピュータ・アート用のシステムを作成した。出力にプロッタ(白黒)を想定したART?3システム(tistic Realistic Technician?3の略)とカラーグラフィク用のART?4システムである。これらのシステムは画素でキャンバスを塗りつぶして絵をかくが、画素のサイズ、密度、画素自身の形および画素の色を関数で制御する。ARTシステムによるいくつかの作品例を呈示し、コンピュータ・アートの種々の面について議論する。
著者
朝倉 伸司 佐々木 廉雄 足助 雄二 渡辺 弘規 加賀 誠 清水 ひろえ 川田 松江 播磨 晋太郎 長濱 裕 松田 道生
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.42, no.12, pp.947-953, 2009-12-28 (Released:2010-01-27)
参考文献数
19

透析施行に際して動脈―静脈吻合を設置すると,その局所でのblood accessは高ずり応力の存在する動脈系から中あるいは低ずり応力が働くと考えられる吻合部遠位側(心臓側)へと移行するため,吻合部周辺での血栓形成の機序は必ずしも単純ではないと考えられる.さらにPTA(percutaneous transluminal angioplasty)による圧ストレスが血管内壁上で血液凝固線溶機構にどのように関連しているか,あるいは動脈硬化病変が血栓形成にどのように影響するか等については,十分に検討されてきていないのが現状である.今回,われわれはPTA施行前後の当該シャント部位での血液凝固線溶関連因子の変動を検討し,血栓形成の初期に形成される可溶性フィブリン(soluble fibrin, SF)が15例中4例が著明に上昇していることを見出した.また,SFとともにトロンビン―アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex, TAT)も上昇していたが,SFとは相関を示さず,両者の上昇は異なる反応によるものと推定された.SFはフィブリンモノマー1分子に対しフィブリノゲン2分子が結合した3分子複合体であることが示されており,そのフィブリンモノマーの中央に位置するE領域に接合している1対のalpha C globuleがトロンビンにより切断,遊離されることにより,alpha鎖(96-97)に存在するRGDドメインがフィブリンモノマーのE領域表面に露呈されること,また,これが細胞膜に存在し,フィブリノゲン受容体(fibrinogen receptor)として働くα5β1インテグリンおよびビトロネクチン受容体(vitronectin receptor)であるαvβ3をも巻き込みながら細胞伸展を促進することをわれわれはすでに報告しており,SFが単に血液凝固亢進を示す分子マーカーであるだけでなく,血管壁への血小板の強力な接着に貢献することが明らかになった.SFが著明に上昇していた4例(SF著明上昇群)では動脈硬化の指標であるpulse wave velocity(PWV)がSF非上昇群に比し有意に上昇していた.またSF上昇群は非上昇群に対しシャントトラブルの年間発生率が高いことから,SFの上昇はPTA後の血行動態,ことに血栓形成機序の解明ならびにシャントトラブル発生とその予後の予想に有用な分子マーカーとなることが期待される.
著者
曽我 太佐男 佐々木 秀昭 白井 貢 九嶋 忠雄
出版者
The Japan Institute of Electronics Packaging
雑誌
サーキットテクノロジ (ISSN:09148299)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.380-394, 1993-07-20 (Released:2010-03-18)
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

プリント配線板上に搭載される電子部品のスルーホール継手構造について, 温度サイクル加速試験による信頼性評価を行った。スルーホール継手のコネクタなしのピン構造におけるクラック進展要因を明らかにし, クラック進展を低減するための対策を示した。この構造では, 汎用のガラスエポキシ基板に対して, ピンと基板間の熱膨張差で生ずるはんだの最大せん断歪とクラック発生率との相関性は得られないことがわかった。そこで, ピン, 基板, はんだ間の熱膨張差で発生する軸方向に作用する最大応力で評価した結果, 最大応力とクラック発生率との相関性を見出した。その結果, 応力が大なるほどクラック発生率が高いこと, ガラスエポキシ基板の場合, ピン径が大なるほど応力は小さく, クラック発生率が低いこと等を明らかにした。他方, 実用的な構造であるコネクタ付ピン継手のクラック進展についても検討した。クラック進展の主な駆動力は, コネクタとプリント配線板との基板面方向の熱膨張差で生ずる曲げによる歪である。コネクタ両端部のピン継手におけるクラック進展は中央部ピン継手に比べ顕著に大であり, コネクタの構造, 寸法効果が大きいことがわかった。一般的に, スルーホール継手構造においては, ピンが穴の周囲で拘束されるため, 初期にフィレット部でクラックが早期に発生しても, クラック進展速度はクラック進展と共に低下してくる。このため, スルーホール継手はフリップチップ形, フラットパッケージ形継手と比べ, 高信頼構造であると考えられる。
著者
佐々木 加奈子
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.1-14, 2018 (Released:2018-05-19)
参考文献数
19
被引用文献数
1

東日本大震災後に開始された地域情報のアーカイブ活動には,以前から複数の問題が指摘されてきた。これに加えて,近年,多くの震災アーカイブが「あの時,どう避難したのか」という被災上の教訓の伝達に焦点を当てすぎており,その土地に生きた人々の多元的なライフストーリーが省略されているとする指摘が現れた。先行研究の分析は,しかしながら,多元的なライフストーリーの生成プロセスの理論化がまだ十分ではない。佐々木(2016)では,福島県双葉郡浪江町民に焦点をあてて多元的なライフストーリーの生成を実際に試みており,「協働」の場を設定することで,その中での相互行為の中から多元的なライフストーリーが語られうることを実証的に示している。しかし,なぜその結果が得られるのか等は明らかにされていない。本論文では,行為を演技として捉えるゴフマンの演劇論的アプローチの役割概念を用いて,その仕組みを明らかにした。協働の場では,多層的なオーディエンス構造とオーディエンス・パフォーマー間の親密な関係性によって,チームパフォーマンスが促された。その際,参加者たちは自由に自身の役割を見出すことができ,メディアが設定する避難者像から距離を取ることができ,これにより新たな語りの発現に至った。
著者
亀崎 宏樹 大橋 和典 石原 圭朗 佐々木 義昭 高藤 晃雄
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.145-151, 2007 (Released:2007-12-16)
参考文献数
17
被引用文献数
3 3

The lethal effects of two types of oxygen absorbers on the eggs of the house dust mites, Dermatophagoides farinae, D. pteronyssinus, and Tyrophagus putrescentiae were studied. For D. farinae, and D. pteronyssinus, the mortality obtained after 2 days in an air-tight container with iron (Fe)-type oxygen absorbers was 100%, while an ascorbic-acid-type oxygen absorber needed 5 days to obtain 100% mortality. On the other hand, the two types of oxygen absorbers showed no significant lethal difference on T. putrescentiae.
著者
佐々木 宣介 飯田 弘之
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.2990-2997, 2002-10-15

本研究では,ゲームのルール変遷の根底にあるゲームの性質の変化に着目し,将棋の歴史的変種を比較する.最初に,ゲームの性質に関する比較を行うための2つの指標を提案する.これらの指標はそれぞれ,ゲームの面白さとゲームの決定複雑性を表すもので,平均可能手数,平均終了手数に基づいて算出される.すでに廃れてしまった将棋種に関しては,コンピュータプレイヤを用意し,それらのデータを採取した.本研究で用いたコンピュータプログラムは駒価値をベースにした評価関数を持ち,先読み探索を行う.各将棋種に対して駒価値を自動学習するために,Temporal Difference学習法を適用した自動対戦の実験を行い,各将棋種に対するデータを採取し,比較を行った.重要な知見として,大駒付加よりも持ち駒使用ルールがルール変遷の過程でより大きなインパクトを与えていること,そして,あまり難しくなりすぎないようにルールが洗練されてきたことが分かった. : This study explores how the evolutionary changes of the rules affect the characteristics of the games in the Shogi species from the viewpoint of evolutionary selection. For this purpose, we propose two measures based on the average number of possible moves and the average game length: (1) measure for entertainment, and (2) measure for decision complexity. For games where no grandmaster games are available, the statistics of specific features, such as the average number of possible moves and the average game length, are obtained by the method of self-play experiments. Then we made computer programs that performed lookahead search using an evaluation function based simply on piece-material balance. To obtain the appropriate piece values of Shogi variants, we apply Temporal Difference Learning method. Based on the data obtained by the above self-play experiments, Shogi variants including the modern Shogi and ancient Shogi variants are analyzed and compared. Through the analysis, we observed that the inclusion of the reuse rule was more important step than the inclusion of the major pieces in the course of evolutionary changes from Heian Shogi toward modern Shogi. We believe that the proposed measures are useful tools for building a genealogical tree of chess-like games.
著者
佐々木 久美子
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.105-116, 2008-07-17 (Released:2013-12-27)
参考文献数
38
被引用文献数
1

岩手県は広大で山地が多く,高度経済成長期以前の県民の所得水準が低く,農村地域では特にその環境は劣悪なもので都市部との地域間格差があった.このような状況の中,高度経済成長期前の岩手の保健活動は乳児死亡率を低下させることが第一の課題であり,それを実現させるために自治体を初め医療関係者が地道な努力を行った. 本稿では,地域住民に直接かかわる保健師の活動を焦点として戦後から高度経済成長期までの岩手県内の乳児死亡率の変化と町村保健師の配置状況との関連を分析し,地域における保健師の活用が地域保健を充実させた要因の一つであることを検証した.その結果,保健師の採用時期が早い町村ほど,また,一人あたりの担当人口が少ない町村ほど乳児死亡率の低減が早いことが明らかになり,岩手の地域保健医療における保健師の貢献の可能性を実証した.
著者
濱田 真由美 佐々木 美喜 住谷 ゆかり 鈴木 健太 仁昌寺 貴子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.5_875-5_889, 2018-12-20 (Released:2018-12-21)
参考文献数
75

目的:授乳を行う母親の体験に関する質的研究結果を統合する。方法:質的研究40件を抽出し,メタ・サマリーを行った。結果:授乳に必要とされる自律性を発揮する体験,意思をもって授乳方法を選択する体験,母乳を与えようと努力する体験,母乳に母子関係を投影する体験,母乳に「母親」を投影する体験,断乳・卒乳・離乳と折り合いをつける体験,授乳に対する否定的体験,支援に満足した体験,支援に不満を抱いた体験の9トピックと30の結果に統合された。出現頻度が高かった結果(effect sizes 20~38%)は,母乳育児や搾乳に伴う身体的・精神的苦痛,「母親」としての自己価値が揺るがされる体験,母親の自律性や意思を示す体験であった。結論:母乳を与えることに伴う母親の身体的・精神的苦痛や自己価値が揺るがされる問題状況に取組み,母親の自律性や意思を尊重した支援創出に向けた研究が必要である。