著者
佐藤 文昭
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.69, no.586, pp.73-79, 2004

1.はじめに 今日の都市計画において、行政やプランナーなどの専門家だけではなく、市民との協働により計画を推進することが重要である。しかし、市民と専門家の並列的な関係により、計画が人々のニーズを十分に満たすことができない中で、その過程において個人の意見をどのように反映することができるかが、ひとつの大きな課題となる。本論では、都市計画における市民参加の原点となる近代都市計画家パトリック ゲディス(1854-1932)の理論である「生命の表記」に焦点を当て、その中における市民参加の位置づけを明らかにする。また、ゲディスの考え方を継承した都市計画家であるアーサー グリクソンの理論との比較を通して、近代からポスト近代の計画論において、個人と計画者が引き離されてきた過程について検証する。さらに、現代の都市計画が抱える問題を踏まえ、近代のゲディス理論が今日においで期待される役割とその可能性について検証する。なお、個人と計画者との関係を検討するための基盤として「近代化理論」と「従属理論」を用いて分析を行う。2.パトリック ゲディスの「生命の表記」 ゲディスは、1905年に「生命の表記」と呼ばれる思考機械を発表している。それは、生命の発展過程を示す4つの概念:「行為」(科学に基づく人間の活動の把握)、「事実」(日々の生活における「場所」の個人的な認識)、「夢」(個々の認識を超えた、人々が共感できる世界の構築)、「業績」(「夢」に基づく新たな世界の構築)によって構成される。「事実」では、都市の中での人々の活動を捉えるため、彼は「場所」(地理学)、「仕事」(経済学)、「人」(人類学)を社会学の基礎的概念として位置づけている。それ以降の「事実」「夢」「業績」は、これら3つとその組み合わせによるダイアグラムが徐々に発展していく過程を示している。さらに、この4段階の概念を1サイクルとする過程を繰り返すことにより、都市が進化しながらひとつのゴールへと収束していく。「生命の表記」の中でゲディスが思い描いていたものは、個人による場所の認識から政治的な議論までの道筋を構築することであったと言える。彼は、個人が地域に興味を持ち参加する市民となるよう、感情面での動機付けを行うと同時に、市民を新たな都市づくりを実現するための原動力として、重要な役割を担うよう位置づけていることが分かる。それは、市民とプランナーが、人間と自然との調和という社会が目指すべき共通の目標を抱き、言わば同一の社会観を有していることを前提としている。3.アーサー グリクソンのゲディス理論の解釈 ゲディス以後、生命の表記は、都市計画家であるアーサー グリクソンの理論の中に引用されている。1953年に発表した著書である『地域計画と開発』の中で、彼は独自の地域計画プロセスの枠組みを示している。彼の理論は、ゲディスが定義した4段階の概念のうち、一番初めの「行為」、つまり科学による人間活動の把握のみを用いている。それを含む計画過程として4つのステージ:自然科学の視点による「基本的過去」、社会科学の視点による「歴史的過去」と、それらの統合による「現在の文化的景観」、さらにそれが導き出す「計画的行動を設定している。ゲディスの「場所-仕事-人」は、社会科学の視点による「歴史的過去」として位置づけられており、より基礁的な学問としての自然科学による視点とあわせて、地域の現状を把握しようとしている点では、実証主義に基づくゲディスの理論と共通すると考えられる。しかしながら、ゲディスの生命の表記とグリクソンによる新たなアクションとしての都市計画プロセスとの相違点は、前者が、「行為」、「事実」、「夢」、「業績」からまた「行為」へと戻る循環するプロセスとして記述されているのに対して、後者は、「計画的行動」で終わる1サイクルとして表現されていることである。また、ゲディスの「行為」とグリクソンの「歴史的過去」の過程における「場所」、「仕事」、「人」を比較した場合、グリクソンの定義が、より詳細な専門的調査に基づく科学的データを重視しでいる。4.「近代化理論」としての生命の表記 今日の社会において、プランナーと市民の並列的な関係に基づく計画は、必ずしも人々のニーズを満たすことを保証しているとは限らない。ゲディス以後の都市計画のモデルでは、プランナーと市民の並列した位置づけと視点が明確に示されており、今日の計画理論にも共通して見られることが分かる。ゲディス理論の継承者であるグリクソンが描いた人と自然との調和に基づく地域づくりのプロセスでも、積極的に自らの生活の場を改善しようとする市民の力に依存することはなく、住民は、専門家としてのプランナーの意思決定に消極的に従うものとして位置づけられてしまった。ゲディスが「事実」の中で示した「感覚」、「経験」、「感情」といった日常の言認こよる地域の認識は、すべて専門のプランナーによる技術的な言語による地域の把握に吸収されている。このことは、ゼネラリストとしてのゲディスの理論がスペシャリストによる計画に移行する過程を示す一つの根拠として捉えることが出来る。今日、ゲディスの理論が過小評価されている理由として、市民プランナーの並列的な関係から捉えることができる。都市計画家ジョン・アボットは、近代からポスト近代に至る計画論を、「近代化理論」と「従属理論」として整理している。「近代化理論」では、その主たる目的を経済的、社会的発展と位置づけ、市民はその目的達成のために計画に参加するように位置づけられている。この視点に基づいた場合、ゲディスの理論は、人と自然との調和を目指すことをすべての個人にとっての共通の目的であると前提とすることにより、「行為」から「事実」の過程において、調査に基づく客観的な地域の把握と個人の知覚、経験、感情による主観的な地域の理解とが同一であると考えられており、それが「夢」としての新たな計画を導き出している。しかしながら、この問題点は、仮にこれら2つの認識に差異が生じた場合には、専門性とそれに基づく技術的言語が日常言語による主観的な認識を軽視する傾向にあること、またこうした専門性は、必ずしも複数の異なる住民の地域間のずれを調整する機能を持っていないことである。したがって、現代におけるゲディスの理論は、2つの問題を示していると言える。ひとつは、すべての人々が共有できる都市の姿が存在することを前提とすることはもはや出来ないということ、もうひとつは、プランナーが持つ専門的言語の優位性が、市民を都市計画から遠ざけていることである。5.結論:今日におけるゲディス理論の再評価 「近代化理論」としてのゲディスの理論が目指すプランナーと市民との同一の社会観の構築は、もはや今日の都市計画理論として応用できるものではない。しかしながら、彼が唱える「生命の表記」は、プランナーの価値観のみに依存することなく、個人が地域に対する自らの価値観を構築するための、個人の発展プロセスとして捉えることは可能である。このゲディス理論の解釈は、地域の経済的発展を第一の目的として置かず、その代わりに地域住民の異なる価値観や利益追求が共存できるように地域社会のエンパワーメントを推進し、個人のニーズを満たすための理論として定義することができると考える。このことにより、今日の都市計画の枠組みを、専門家による客観的態度と個人の主観的な自己表示的態度から捉え、その中で、ゲディスの「生命の表記」を、個人が自ら快適な生活の場、仕事の場を追求するためのひとつの手法として位置づけることが可能となる。さらに、より包括的な意味における都市計画には、これら2つの態度とそれぞれの価値規範を超えた公共圏の構築が必要であり、その中で両者の具体的な合意形成を行うことが求められる。
著者
桃井 昭好 佐藤 茂雄 中島 康治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.472, pp.37-42, 2004-11-20

ストカスティックロジックを用いた1000ニューロンハードウェアシステムの構築を行った。ストカスティックロジックは確率密度変調された1bitのデジタルパルス列を用いて演算を行う。そのため、バイナリロジックに比べて回路面積を小さく実現でき、さらにアナログ回路に比べて外部ノイズ耐性が高い回路を実現できる。また、確率的な動作に起因するノイズを利用することでネットワークの性能を向上させることができる。今回、我々は1000ニューロンシステムの詳細、及びシステムの測定結果についての報告を行う。
著者
立田 健太 佐藤 紘昭 大谷 良光
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.102, pp.105-114, 2009-10

青森ねぶた祭への「ハネト若者離れ問題」を焦点とし、若者に当たる高校2年生1140人を対象として祭の観覧・参加状況と祭への意識(思い)を調査した。大型ねぶたの観覧・参加率は2008年59.3%・36.7% で、「ハネト」での参加率は2007年72.8%、2008年64.6% で8.2% 減じており「ハネト若者離れ」の一端が立証された。また、「ねぶた祭は世界に誇れる」や「伝統の継承」には高い意識(約8割)をしめしたが、この数値は参加率とかけ離れており、それを裏付ける「参加しなかった理由」として「特に興味がなく、参加する意義や必要性は感じない」が約4割で、その格差の克服が新たな課題として明確になった。それに対して我々は、学校教育との関わり、社会教育の充実、伝統文化の継承と観光化のバランスの3視点を提起した。
著者
波多野 浩士 佐藤 元孝 辻本 裕一 高田 剛 本多 正人 松宮 清美 水谷 哲 藤岡 秀樹
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.641-644, 2006-08

79歳男.前立腺肥大症と診断され,内服治療を行ったが,排尿悪化に伴い経尿道的前立腺切除術(TURP)を椎麻酔下で施行した.術後の著明な出血により術後7日目に尿道カテーテルを抜去したが39~40℃の発熱が持続し,E.cloacae,MRSAの検出をみた.9日目より腰痛を自覚しMRIでL4~5椎間腔の狭小化を認め,腰痛症又は腰椎ヘルニアを疑うが脊椎炎の所見は認めなかった.imipenem(IPM),teicoplanin(TEIC)を2週間CRPは陰性化しなかったが解熱,WBC低下と血液・尿培養の陰性化を受け,galifloxacin(GFLX)に変更したが再び発熱とWBC,CRPが上昇し,腰痛悪化で歩行困難となった.Gaシンチ施行により術後39日目に化膿性背椎炎と診断し,E.cloacaeが検出された.3週間治療内服後CRPの陰性化,腰痛は軽減し歩行可能となり術後6ヵ月目に退院したWe report a case of pyogenic spondylitis caused by Enterobacter cloacae as a rare complication of transurethral resection of the prostate (TURP). A 79-year-old man underwent TURP. Immediate after removal of urethral catheter on postoperative day (POD) 7, he developed high fever > 40 degrees C with increased acute inflammatory reaction. Urine and blood culture detected E. cloacae and methicillin-resistant Staplylococcus aureus. He complained of lumbago since POD 9. Two-week administration of imipenem and teicoplanin resulted in resolution of fever as well as laboratory data, so intravenous antibiotics were changed to oral gatifloxacin. However, his lumbago worsened and gait disturbance appeared. On POD 39, diagnosis of pyogenic spondylitis was finally obtained by Ga-scintigraphy and magnetic resonance imaging. Aspiration of the intervertebral disk (L4-5) revealed E. cloacae as the causative organism of pyogenic spondylitis. His condition improved after conservative treatment with teicoplanin, meropenem and ciplofloxacin for 9 weeks.
著者
佐藤一斎 著
出版者
文魁堂
巻号頁・発行日
vol.言志後録, 1898
著者
佐藤 文子
出版者
仏教史学会
雑誌
仏教史学研究 (ISSN:02886472)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.22-48, 2001-11
著者
佐藤 正典 藤井 壽崇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. US, 超音波
巻号頁・発行日
vol.97, no.30, pp.35-42, 1997-04-25
被引用文献数
4

水中における超音波の非線形現象を解析するために、フォノンの概念を用いた。周波数ν波長λの超音波を、エネルギーhν、運動量h/λを持つフォノンの集まりと考え、量子力学的なエネルギーおよび運動量保存則を適用した。超音波の運動量の考え方により音の放射圧および音響流の理解が容易になる。さらにフォノンのエネルギーに関するパラメトリック崩壊のメカニズムは、サブハーモニック、キャビテーション、キャピラリー彼の発生メカニズムをうまく説明できる。これらの非線形現象に関する流体力学的解析とフォノンによる取り扱いはよく一致し、工学的応用に限れば、フォノンを用いる方法は見通しよく有効である。
著者
井上 武 朝倉 浩志 植松 幸生 佐藤 浩史 高橋 紀之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.411, pp.97-102, 2010-01-28

多くのWebサイトが,AjaxやマッシュアップのためにWeb APIを提供しているが,Webアプリケーションに適した再利用可能なデータべースコンポーネントがないために,そのようなコンポーネントはサービスごとに独立に開発されてきた.本稿ではWebアプリケーションの開発を迅速に行うためのデータべース管理システムWAPDBを提案する.WAPDBは,Web API標準技術のAtomをべースに設計され,Webアプリケーションに求められる機能を提供する.たとえば,効率的なデータ・アクセス制御や簡潔な拡張メカニズム,検索・統計の提供である.WAPDBの導入によって,開発者はこれらの機能を繰り返し開発することから解放される.さらに,RESTアーキテクチャスタイルに準拠しているため,アプ リケーションに統一性やスケーラビリティがもたらされる.我々はWAPDBを用いたサンプルアプリケーションを開発し,大きな性能低下なしに開発コストを削減できることを示す.我々の実験では,開発コストが半減した一方で,アクセス時間は数ミリ秒しか増加しなかった.
著者
得丸 定子 佐藤 英恵 郷堀 ヨゼフ
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.257-268, 2010-02-28

核家族化, 個人化の進んでいる現代では, ペットは単なる飼育動物の域を超え「コンパニオン・アニマル」と呼ばれ, その親密な存在の死に伴う「ペットロス」という用語は, 学校教育現場でも用いられつつある。ペットの死に伴う感情やその死への関わりは, ティーチヤブル・モーメントとして「いのち教育」の好機である。しかし, それらの言葉の背後にある心情やその理解については, 十分に認識されていない現状である。ゆえに, いのち教育の一環としてのペットロスについての基礎的知見を得るために, 本調査を行った。結果として, 心理尺度では"協同努力型人生観""多彩型人生観""信仰型人生観""金銭重視型人生観"の4因子が抽出された。"協同努力型人生観"は最もペットロスに陥りやすく, "金銭重視型人生観"はペット葬に反対であり, 女性の方が男性よりもペットロスに陥りやすい結果が示された。自由記述では, 「ペット葬賛成」派が約6割を占めた。「ペット葬反対」派も回答としては反対ではあるが, その記述を考察すると「賛成」派であった。ペット喪失悲嘆から立ち直った契機としては「時間の経過」が最多であり, 先行研究で見られない記述として, 「ペットについての知識, ペットロスについてあらかじめ勉強しておく, 心の準備をしておく」が得られた。本調査により, 人生観や性別とペットロスとの関係性や, ペット葬の必要性への認識, ペット飼育の知識やペットロスについて事前学習の重要性が示され, 「いのち教育」の一環としてのペットロス学習の意義が得られた。
著者
小林 久美子 窪田 正幸 奥山 直樹 平山 裕 塚田 真実 佐藤 佳奈子
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.825-829, 2009

【目的】小児外科疾患の中には長期入院や退院後の長期外来通院を必要とする疾患も多く,長期に診療を行う過程で離婚をされる家庭もあり,長期治療の影響が懸念される.そこで離婚した母親のアンケート調査から,長期加療を要する小児外科疾患が家庭環境に及ぼす影響を検討した.【対象および方法】当科において長期入院加療を受け現在も継続して加療中の患児の母親で,我々が離婚されたと知りうることができた母親6名に,事前に電話にてインタビューを行い,了解を得た5名にアンケート調査を施行した.アンケート項目は,1)離婚に関して,2)病院に関して,3)公開の是非で,患児の疾患はCIIPS,短腸症候群,cloaca,小腸閉鎖,鎖肛であった.【結果】1)離婚に関しては,子供の疾患が離婚の直接の原因であったとの返答はなく,思わないが2名,どちらともいえないが3名であった.長期入院で離婚の危機感をもったのは1名で,2例はそうではなく,2例はどちらともいえないという返事であった.しかし,長期入院が離婚に影響を与えたとの返事が3名からあった.2)病院に関して,完全看護を必要だと思う母親は2名で,思わないは3名であった.また,病院に対する要望として,長期入院時の大部屋での同室者がいる苦痛や,父親に対する介護指導や教育の必要性が寄せられた.【まとめ】小児外科疾患が離婚の直接の原因ではないとの返答であったが,長期入院生活が及ぼす影響は大きいものと考えられた.父親の教育や指導を希望する要望があったことは,今後の小児外科医療に対する課題が提示されたものと考えられた.
著者
佐藤 翔 逸村 裕
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
三田図書館・情報学会研究大会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2009年度, pp.9-12, 2009-09-26

大学・研究機関による機関リポジトリの設置とコンテンツの整備が進むにつれ、リポジトリに収録されたコンテンツの利用状況に注目が集まっている。中でも「誰がコンテンツを使っているのか」(アクセス元)、「どこから機関リポジトリにアクセスしているのか」(アクセス方法)、「どのようなコンテンツが利用を集めるのか」(コンテンツ属性)の3点はリポジトリ運用の参考になるとともに機関リポジトリが果たしている役割を考える上でも重要である。このうちアクセス方法についてOrganは外部サイトからのアクセスの96%がGoogleからであったとしており1)、また利用の多いコンテンツについてRoysterはNebraska-Lincoln大学リポジトリのアクセス上位論文の多くがリポジトリ以外で公開されていないコンテンツであったとしている2)。しかしこれらの調査はリポジトリソフトウェア上の単純な統計やランキングに基づいており、詳細な分析は行っていない。利用の詳細を見た研究としてはBonilla-CareloによるStrathclyde大学リポジトリの利用分析があり、利用数とアクセス元の国の数の間に相関があること等が示されているが3)、分析対象は物理学分野の文献に限られておりコンテンツ属性の分析は十分には行われていない。そこで本研究では機関リポジトリ収録コンテンツの利用数とアクセス元(ユーザドメイン)、アクセス方法、コンテンツの属性(文献タイプ、記述言語、出版年等)の関係を明らかにすることを目的に、4つの機関リポジトリのアクセスログ分析を行った。また、分析結果から合わせて利用数に影響するその他の要因についても明らかにすることを試みる。
著者
常田 貴夫 佐藤 健
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.291-296, 2009-04-05
被引用文献数
1

近年,ナノ材料科学における自己集合や生命科学における機能的構造形成など,ファンデルワールス力にもとづくマクロな現象が,広範な研究分野で注目を集めている.ファンデルワールス力は電子相関にもとづく純粋に量子論的な効果であり,なおかつ系のスケールに応じて重要性を増す.したがって,その理論的な解明には電子相関を考慮に入れた高速計算が可能な第一原理計算法が必要である.本稿では,密度汎関数法にもとづく第一原理ファンデルワールス力計算法に着目し,長距離補正法をはじめとする最新の計算法を紹介する.また,それらの手法の特長と問題点を比較し,ファンデルワールス力計算法開発において今後考えるべき指針を示す.
著者
竹内 淳彦 森 秀雄 佐藤 滋 大橋 正義 北嶋 一甫 山田 伸顕 本木 弘悌
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.55-59, 2000-03-31

1999年の地域大会として11月27日に上記のフォーラムを開催した.午前は「工業のまちを歩く」と題して東京都大田区内の住工混在地域を巡検し, 午後は大田区産業プラザにおいて会議が行われた.はじめに小関智弘氏の特別講演「工場に生きる人々とそのまち」が行われ, 続いて竹内淳彦の基調報告, 5名のパネラーの報告の後, 討論が行われた.なお, 巡検参加者は66名, フォーラム参加者は203名であった.座長は上野和彦(東京学芸大学)と松橋公治(明治大学)が務めた.以下には各報告の要旨, 討論と巡検の記録を掲げる.
著者
小池 隆司 佐藤 直
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.44, pp.85-92, 2007-05-11
被引用文献数
1

本稿では,ユーザとプロバイダが協力してスパムメールをフィルタリングする方法を検討している.具体的には,従来利用されているグレイリスティングとベイジアンフィルタリングを組み合わせた手法を提案した.提案手法によれば,グレイリスティングにより,スパムメールによるネットワーク輻輳を回避でき,また,受信者コストを低減できる.また,ユーザがメール内容をチェックし、スパム/非スパムを判定し,その結果をグレイリスティングにフィードバックするため,秘密の保護という電気通信事業法の規定に適合しつつ,スパムメールフィルタリングが実施できる,という特徴を有する.提案方法を実現するためのシステム構成を検討するとともに,実環境での実験例により,スパムメール低減効果を確認した.
著者
松尾 和弥 佐藤未来子 並木 美太郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.36, pp.39-46, 2007-04-05
被引用文献数
1

OS をはじめとするシステム構築において、実際の計算機の動作データ、資源利用データは有用な情報となる。そこで本研究では各種アーキテクチャ対応の高速な命令、メモリアクセストレーサを構築した。構築したトレーサによって x86、ARM アーキテクチャでの実行命令列、アクセスされた物理アドレス、物理アドレスに対応する仮想アドレス、アクセス時・命令実行時の CPU 特権レベル、実行中プロセスの PID といった情報がトレースできる。構築はフリー、オープンソースの CPU エミュレータ QEMU に300行程度のコードを追加することで実現した。また、有用性を確認するために、構築したトレーサの性能評価を行い、さらに実際に構築したトレーサを省電力手法の考察に応用した例を示す。In development of computer systems such as OS, actual data about behaviour and resource usage of a computer is important. So we developed high speed tracer of executed instruction and main RAM access for various architecture. By our tracer, we can trace data about executed instructions, accessed physical and virtual memory address, CPU mode and PID on x86 and ARM. To develop our tracer, we remodeled QEMU, free and open source CPU emulator. In addition, to show the usefulness of our tracer, we evaluated the performance of our tracer and applied our tracer to the research of low power computer system.