著者
笠 純華 倉内 祐樹 田中 理紗子 春田 牧人 笹川 清隆 関 貴弘 太田 淳 香月 博志
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学会年会要旨集 第94回日本薬理学会年会 (ISSN:24354953)
巻号頁・発行日
pp.3-P1-07, 2021 (Released:2021-03-21)
被引用文献数
1

Migraine is a common neurovascular disorder characterized by severe headaches and is associated with dysfunction of the autonomic nervous system. Notably, some patients who have migraine seem to be more sensitive to changes in the weather such as atmospheric pressure and humidity. Here, we investigated the effect of Goreisan, a traditional Kampo medicine used to treat headaches, on the cerebral blood flow (CBF) dynamics by using implantable CMOS imaging device for detecting hemodynamic signal in female meteoropathy model mice. Moreover, we evaluated the effect of loxoprofen, an analgesic used to treat headaches, on the CBF changes and compared it to the effect of Goreisan. To reproduce the change of the weather, atmospheric pressure was lowered by 50 hPa and kept this level for 1 h and it was returned to the previous level. We observed the increase in CBF during low atmospheric pressure, which was prevented by Goreisan (1 g/kg, p.o.) as well as loxoprofen (4 mg/kg, p.o.). Although CBF gradually recovered to baseline after returning to normal atmospheric pressure, Goreisan, but not loxoprofen, lowered CBF below baseline. These results suggest that Goreisan is the headache therapeutic drug with a different action profile from loxoprofen in that it has a mechanism to actively reduce cerebral blood flow.
著者
鬼倉 徳雄 中島 淳 江口 勝久 乾 隆帝 比嘉 枝利子 三宅 琢也 河村 功一 松井 誠一 及川 信
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.29, no.12, pp.837-842, 2006 (Released:2010-01-09)
参考文献数
22
被引用文献数
14 16

The populations of Japanese bitterlings and unionid mussels and the land use of the watershed were investigated in 36 sampling sites in the Tatara river system in northern Kyushu, Japan. Five bitterling species were found in 11 sites in the system. Although Rhodeus ocellatus kurumeus was found to be distributed in 23 sites in 1983, this species was found in three sites in this study. The population of the bitterlings decreased in the sites with a high urbanization rate, although the populations of several other fish species showed no dependence on the urbanization rate. The population of the mussels showed a negative correlation with urbanization rate. In addition, the mussels populations showed positive relationship with the bitterling populations. These three relationships indicate that the decrease in the bitterling population due to the urbanization of the watershed was responsible for the decrease in the mussel population.
著者
板倉 陽一郎
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.99-111, 2015

<p>パーソナルデータの利活用に関する制度見直しは, 内閣官房IT総合戦略本部に設置された「パーソナルデータに関する検討会」において検討が進められ, 平成25年12月には「パーソナルデータの利活用に関する制度見直し方針」が, 平成26年6月には「パーソナルデータの制度改正大綱」が, それぞれIT総合戦略本部決定され, これを元に個人情報保護法の改正案が作成されるものと思われた。しかしながら, 平成26年12月の検討会で公表された「個人情報の保護に関する法律の一部を改正する法律案(仮称)の骨子(案)」は, 「大綱」からかけ離れた内容を含んでいる。具体的には, ①「個人情報」の定義については, 「大綱」が保護対象の見直しについては「機動的に行うことができるよう措置する」とされたものの, 政令事項となり, 更に議論しなければならない。②匿名加工情報(仮称)については, 「民間の自主規制ルール」に関する規律がほぼ無内容となった上で, 自主規制ルールではなく個人情報保護委員会規則での規律は非現実的である。③利用目的制限の緩和は, 本人の感知しないまま利用目的の変更を認めるものであり, OECDプライバシーガイドライン違反のおそれがある他, 経済界からも, 消費者の信頼を得られず, 導入できないとの声が上がっている。④外国にある第三者への提供の制限については, 一般的な第三国への移転概念と異なる日本独自の概念を創り出しており, 混乱のもとである他, 移転可能な第三国をホワイトリスト方式にすることとしており, 外交上の困難を招来するものである。</p>
著者
倉持益子
出版者
明海大学
雑誌
明海日本語
巻号頁・発行日
no.16, 2011-02-26
著者
井田 諭 金児 竜太郎 今高 加奈子 藤原 僚子 勝田 真衣 白倉 由隆 大久保 薫 東 謙太郎 村田 和也
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.143-151, 2021

<p><b>目的:</b>サルコペニア合併高齢糖尿病患者に対する多面的治療プログラムの,筋力,身体機能,及び骨格筋量への影響を検証すること.<b>方法:</b>伊勢赤十字病院,糖尿病代謝内科に通院している65歳以上の糖尿病患者を対象とした.サルコペニアの診断はAsian Working Group for Sarcopenia 2019を元に行った.四肢骨格筋量の測定は多周波生体電気インピーダンス法,筋力は握力,身体機能は5回椅子立ち上がり検査でそれぞれ評価した.多面的治療プログラム(蛋白質摂取量の適正化,レジスタンストレーニング,及びサルコペニアに関する患者教育)開始前と12週後に,筋力,身体機能,四肢骨格筋指数,及びその他パラメーターを評価し,前後比較した.統計処理には対応のあるt検定を用いた.<b>結果:</b>14例(男性3人,女性11人)が本研究の解析対象となった.平均年齢は74.4±4.7歳であった.多面的治療プログラムにより,握力(男性:23.2±5.6 kgから25.6±5.5 kg,P=0.014,女性:15.5±5.0 kgから18.9±5.0 kg,P<0.001),及び5回椅子立ち上がりテスト(11.2±2.5秒から8.6±1.7秒,P=0.002)の有意な改善を認めた.また,HbA1c(8.1±0.7%から7.7±0.9%,P=0.004)の有意な低下も認められた.一方,四肢骨格筋指数の増加傾向はあったものの有意差は認めなかった.<b>結論:</b>サルコペニア合併高齢糖尿病患者に対する多面的治療プログラムにより,筋力及び身体機能の改善が認められた.</p>
著者
倉渕 隆 鳥海 吉弘 平野 剛 遠藤 智行 栗林 知広 小峯 裕己
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会 論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.117, pp.1-10, 2006-12-05 (Released:2017-09-05)
参考文献数
19

建築基準法の改正に伴い,居室には原則として機械換気設備の設置が義務付けられることとなったが,現状では地域性や建物性能に対応した換気システムの適切な選択方法が整備されていない状況にある。本研究では,住宅に設置される各種常時換気設備について,外界気象条件や建物気密性能による問題点と改善対策を解明することを目的とし,戸建住宅を対象とした年間に渡る換気シミュレーションによる検討を実施した。その結果,第1種換気設備-本体給排気では建物気密性能によらず良好な換気充足度の評価を得ることができるが,第1種換気設備-居室給排気および第2種換気設備-居室給気では2階居室の空気汚染が問題になること,第3種換気設備-水周り排気では2階の新鮮外気の給気量不足が問題になることなどを明らかにし,考えられる改善対策の効果について検討した。
著者
倉本 敬二
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.1071-1075, 2011 (Released:2011-08-25)
参考文献数
6

2008年に日本静脈経腸栄養学会において「NST (nutrition support team) における薬剤師の活動指針」が制定された。その第一項目に (1) 静脈・経腸栄養療法における処方支援 1) 処方設計支援、と記してある。つまりNSTにかかわる薬剤師には静脈栄養療法の処方支援が求められているのである。静脈栄養療法に用いられる輸液は医薬品である。医薬品の責任者は薬剤師であるはずである。その期待に応えNSTにおける薬剤師の役割を明確にするためにも是非とも我々薬剤師は“輸液力”を磨かなければならない。末梢輸液では食事や飲水によるバイアスがあるため、絶飲食のTPN (total parenteral nutrition) が最も輸液処方設計への導入としては適していると考えられるので本項ではTPN症例を念頭において“輸液処方設計の基礎知識”について解説したい。
著者
門倉 正美
出版者
山口大学哲学研究会
雑誌
山口大学哲学研究 (ISSN:0919357X)
巻号頁・発行日
no.1, pp.63-81, 1992

先端医療技術やバイオ・テクノロジーの進展がわれわれの死生観を揺り動かし、環境問題は別の側面からいのちの危機を突きつけている。また、死の迎え方、老いの生き方、食のあり方といった日常の風景の中でもいのちのありようが問われている。「生命学」は、現代社会におけるいのちのあり方を総体的に捉えようとする試みである。 小論はそうした「生命学」への一つのアプローチとして、デパートの店員に「カブト虫の修理」を頼む子どもの「生き物」感覚の問題を切り口として、都市化や産業社会の論理、さらには一次産業の現場での「生き物」感覚の衰退・希薄化を見ていく。一次産業は「自然条件に依拠して生命を育てる」のを本来の姿としていたが、近代化が推進されていく中で「自然を最大限に効率よく搾取していく」という工業の論理に浸されてきている。 「生き物を物として扱う」近代産業社会の枠組みの中では、家畜や作物をはじめとする人間以外の生き物の生理が侵されるだけでなく、他の生き物のゆたかな生を保証しない殺風景さはやがて人間自身の「生き物」性を損なうことに連なっていくように思える。
著者
大倉 史也 益田 裕充 半田 良廣
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.47-50, 2016 (Released:2018-04-07)
参考文献数
10

本研究は、理科学習指導案をもとに、高等学校理科授業における探究の過程がいかに構築されているのかという観点から、高等学校理科授業の実態を考察したものである。調査の結果、問いを解決するストーリーの構造性の観点から課題が明らかとなった。
著者
近藤 憲久 福井 大 倉野 翔史 黒澤 春樹
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.63-70, 2012-06-30
参考文献数
36
被引用文献数
1

北海道網走郡大空町にある旧大成小学校体育館で,コウモリの出産哺育コロニーが発見された.本コロニーを形成する個体の捕獲を行い,外部形態を精査したところ,乳頭が2対あることからヒメヒナコウモリと同定した.また,8月以降にコロニー周辺で拾得された2個体のコウモリについても,外部並びに頭骨計測値からヒメヒナコウモリと同定した.5回にわたる捕獲調査の結果,本種は6月下旬~7月上旬に出産し,8月上旬には幼獣が飛翔を始めていた.本コロニーを形成する雌成獣は約60頭であった.8月以降は,成獣はほとんどいなくなり,幼獣が大部分(96%)を占めていた.飛翔時の音声構造は,FM-QCF型であり,ピーク周波数の平均値は26.1 kHzであったが,FM成分とQCF成分の比率は飛翔環境によって大きく変化していた.ヒメヒナコウモリのねぐらおよび出産哺育個体群は国内初記録であり,今回の発見により,本種の国内における繁殖・定着が明らかになった.<br>
著者
竹田 晴見 畑 四郎 倉矢 悦治 高瀬 直寿
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.229-233, 1982-08-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
4

先の報告では脳波の特徴情報の実時間抽出システムについて述べた. 本論文ではそのシステムの応答を速めるための2つの改良を提案している. 第一に, PLL回路中のループフィルタに位相補償を施すものであり, 第二の改良点は方形波変換回路の出力パルス数を, 付加回路により従来の4倍に増加することである. 実験的に新しいシステムのステップ応答は, 旧システムの応答よりはるかに速くなることが確かめられ, そのシステムの性能が改良された.
著者
倉岡 有美子 大重 育美 姫野 稔子 髙橋 清美
出版者
日本赤十字看護学会
雑誌
日本赤十字看護学会誌 (ISSN:13461346)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.81-87, 2021-03-31 (Released:2021-03-31)
参考文献数
13

A大学の4年生対象の看護技術演習に,看護実践能力の向上を目指して,シミュレーション学習と結びつけたOSCEを導入した.本稿の目的は,本演習科目について,科目の実践内容と評価を記述することである.本演習科目の学習目的は,看護職者として必要な知識・技術等の能力が身についているか客観的に評価するとともに,自らの課題解決に向けて取り組むことであった.シミュレーション学習を実施した結果,90%以上の学生が「十分できる」と回答した項目は19項目中16項目であった.また,評価表の自由記載欄の記述内容より,学生は自分の実力を見直し,卒業までに克服すべき課題を明確にしていた.OSCEを実施した結果,60点満点で平均45.4点(75.7%)であった.本演習科目は,学生の看護実践能力の向上を促進できたと考える.一方で,シミュレーション学習とOSCEを結びつけることによる学習効果を,より高められるような工夫が必要であることが示唆された.
著者
佐倉 統 五十嵐 太郎 片山 杜秀 菅 豊
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

この研究は、近代以降「『日本的』という標語がどのように語られてきたか」を分野横断的に比較し、近代・現代における「日本的」イメージの多様性を総覧するとともに共通性を抽出するものである。「民族」について様々な言説が乱れ飛ぶ現在、学術的かつ専門的な見地から、日本とその国民が自らをどのようにイメージしてきたかを明らかにして、現在におけるひとつの「規矩」を提供することは、社会的にも意義があると考える。
著者
西保 岳 後藤 真二 鍋倉 賢治 池上 晴夫
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.195-201, 1987
被引用文献数
2

The purpose of this study was to investigate the effects of contraction force and the pooled blood volume in the calf on the pumping action of calf muscle contraction. Calf blood volume was controlled by lower body negative pressure (LBNP) and isometric contraction of calf extensor muscle was performed using a handmade dynamometer in recumbent position. The relative volume changes (&Delta;V/V%) of calf were determined using rubber straingage, when isometric contractions (5, 10, 20, 40 and 60 kg) of the calf muscle were repeated under LBNP of 0, -20, -40, and -60 mmHg.<BR>During resting condition, &Delta; V/V was increased by 1.04% under -20 mmHg LBNP, 1.88% under -40 mmHg, and 2.54% under -60 mmHg. These increases of &Delta;V/V were due to the increased blood pooling in the calf. It was shown that the increased blood volume was almost expelled by several bouts of muscle contractions of proper force. The optimum force of contractions for expelling pooled blood was 20 kg under -20mmHg LBNP, and 40 kg under -40 and -60 mmHg LBNP. And it was apparent that the effectiveness of muscle pump was accumulated with repeating contractions, arriving to a plateau after several bouts.<BR>It was shown that the effect of muscle pump in the given contraction force was more effective under the condition with more amount of blood contained in the calf, but the muscle pumping action by light contraction forces couldn't overcome the effect of severe LBNP.
著者
篠島 直樹 前中 あおい 牧野 敬史 中村 英夫 黒田 順一郎 上田 郁美 松田 智子 岩崎田 鶴子 三島 裕子 猪原 淑子 山田 和慶 小林 修 斎藤 義樹 三原 洋祐 倉津 純一 矢野 茂敏 武笠 晃丈
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.235-242, 2019 (Released:2019-11-15)
参考文献数
14

【背景・目的】当院では難治性てんかんの患児に「ケトン食」を40年以上提供してきた.その経験に基づきIRB承認の下,悪性脳腫瘍患者を対象にケトン食の安全性,実行可能性,抗腫瘍効果について検討を行った. 【対象・方法】2012年11月から2018年10月までの悪性脳腫瘍患者14例(成人10例,小児4例).栄養組成はエネルギー30~40kcal/kg/日,たんぱく質1.0g/kg/日,ケトン比3:1のケトン食を後療法中ないし緩和ケア中に開始し,自宅のほか転院先でもケトン食が継続できるよう支援を行った. 【結果】ケトン食摂取期間の平均値は222.5日(5‐498日),空腹時血糖値および血中脂質値はケトン食摂取前後で著変なかった.有害事象は導入初期にgrade1の下痢が2例,脳脊髄放射線照射に起因するgrade 4の単球減少が1例でみられた他,特に重篤なものはなかった.後療法中に開始した10例中9例が中断(3例は病期進行,6例は食思不振など),緩和ケア中に開始した4例中3例は継続し,うち2例は経管投与でケトン食開始後1年以上生存した. 【考察】後療法中にケトン食を併用しても重篤な有害事象はなく安全と考えられた.長期間ケトン食を継続できれば生存期間の延長が期待できる可能性が示唆された.中断の主な理由として味の問題が大きく,抗腫瘍効果の評価には長期間継続可能な美味しいケトン食の開発が必要と考えられた.
著者
倉田 和範 船着 裕貴 林田 一成 安部 大昭 小幡 賢吾
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1619, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】入院患者は活動量が大きく低下し,廃用症候群が進行することが報告されている。リハビリテーション(リハ)中に歩行練習等を通じ活動性向上を促しているが,時間的にも限界がある。このため,リハ時間外の病棟内における活動性をいかに向上させるかが重要であると考える。しかし,患者は他者の見守りや介助を敬遠しがちであり,杖や歩行器などの歩行形態を問わず,歩行自立とすることが望ましい。これらのことから,病棟内歩行自立に影響する因子を検出することで,より安全かつ客観的に歩行自立を判断することが可能になると考える。そこで,入院患者における病棟内歩行自立に関連する因子を抽出することを,本研究の目的とした。【方法】対象は2016年4月以降に整形外科病棟でリハを開始,および2016年9月までに退院した75歳以上の入院患者160名。このうち退院時に寝たきり,立位などの測定姿勢困難,認知症または精神疾患による患者の理解困難,測定の同意が得られない,急遽の退院等によるデータ欠損,入院前から歩行困難,に該当した85名を除く75名を調査対象とした。診療録より年齢,性別,下肢疾患の有無,Mini Mental State Examination(MMSE)および退院時のFunctional Independence Measure(FIM)を抽出し,退院時に握力,大腿四頭筋筋力,Short Physical Performance Battery(SPPB)およびFall Efficacy Scale(FES)を評価した。歩行形態は問わず,退院時のFIMの移動・歩行項目の6点以上を自立群,5点以下を非自立群とし,病棟内歩行自立可否によって2群に分けた。統計学的解析として,連続変数に対しては正規性を確認した後に,wilcoxon順位和検定または対応のないt検定,カテゴリ変数に対してはχ2検定を用いて単変量解析を行った。次に多変量解析として病棟内歩行自立可否を従属変数,有意差が認められた変数を独立変数として多重ロジスティック回帰分析を行った。有意水準は危険率5%未満とした。【結果】自立群35名,非自立群40名であった。単変量解析の結果,有意差が認められたのは年齢(自立群82.3歳vs非自立群87.2歳),握力(32.9%BWvs27.6%BW),大腿四頭筋筋力(22.5%BWvs16.4%BW),SPPB(7.9点vs3.8点),MMSE(25.5点vs18.5点),FES(30.9点vs26.2点)で,性別および下肢疾患の有無は有意差を認めなかった。多重ロジスティック回帰分析の結果,病棟内歩行自立に関係する因子としてMMSEおよびSPPBが抽出された。オッズ比はMMSE1.82,SPPB2.12であった。ROC曲線を用いてカットオフ値を算出したところ,病棟内自立歩行可否のカットオフ値はMMSE23点,SPPB6点であった。【結論】病棟内歩行自立可否を検討するうえで,年齢や下肢疾患の有無よりも,認知機能と身体機能が重要な因子であることが示された。得られたカットオフ値を用いることで,根拠に基づいた入院患者の歩行自立を検討できるのではないかと考える。