著者
堂前 亮平
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、川崎市、大阪市、名古屋市、福岡市およびこれらの都市の周辺都市における沖縄県出身者の社会空間の形成および特質について明らかにし、社会集団と空間との関係を考察するものである。沖縄から県外への移住は、大正末期から昭和初期にかけての恐慌によって、県外に生活の糧を求めて海外移民や本土の工業都市への出稼ぎがはじまった。大正末期、沖縄から最も出稼ぎが多かったのは、大阪で、全体の43%を占めていた。ついで神奈川県であった。本土という異質社会のなかで生活するために、沖縄県出身者は相互扶助のために必然的に県人会や、郷友会といった同郷組織をつくり、助け合って生活を送ってきた。この基底には、沖縄のシマ共同体という強い連帯がある。このため、沖縄県出身者は、必然的にお互いに近い距離に家を持つため、居住地も沖縄県人の集中地域が見られる。川崎市では川崎区、大阪市では大正区、名古屋市では緑区といったところである。幾つかの沖縄県人会館は、沖縄県出身者の拠点として機能している。琉球舞踊をはじめ三線や太鼓などの沖縄の芸能は、沖縄県出身者の拠り所として、沖縄社会のなかで演じられてきたが、近年、地域行事にも積極的に参加するようになり、地域との交流が進んできた。このような傾向は日常生活についても見られ、沖縄県出身者の生活行動様式が変化してきた。このことは、本土の人たちの沖縄に対する意識が、沖縄を「特別なもの」から「個性輝くもの」と見るように変化してきたことによる。相互扶助を目的として、県人会が組織されているが、その性格も、親睦的なものへと変化してきている。
著者
萩原 薫 神前 純一
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では欧州原子核研究機構の LHC 加速器の実験による新しい物理の発見を確実に実現するための物理解析ツールを開発した。グラフィックス・プロセッシング・ユニットの利用で多重ジェット生成過程を含む物理現象のシミュレーションの二桁近い高速化が実現され新しい物理現象に対するバックグランドの推定の高速化と精密化が可能となった。開発中のパートンシャワーとの接続により更なる精密なシミュレーションが期待される。
著者
前橋 明 浅川 和美 石井 浩子 本保 恭子 奥富 庸一 長谷 川大 松尾 瑞穂 泉 秀生
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

全国的な生活調査や体力・運動能力測定の実施から、子どもたちの抱える心やからだの問題点を見いだし、それらを改善するための計画を立案してきた。そして、調査・測定地の行政(教育委員会、子ども支援課など)や教育・保育・体育の関連団体(保育士会や幼稚園連盟など)と連携し、健康づくりのための実施可能な対策を立てて実行に移してきた。中でも、(1)子どもの個別の生活と健康実態が診断できるシステムや、(2)データ分析を通して育まれた基本的な健康づくりの考え方(近年の問題発現に関する理論)、および、(3)健康づくり運動を実践・普及するシステムを構築した。
著者
町田 史門 小山 貴之 宋 洋 高田 さとみ 嶋田 茂 越前 功
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EMM, マルチメディア情報ハイディング・エンリッチメント (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.226, pp.5-10, 2012-09-27

カメラ付きモバイルデバイスの普及により,SNSへの写真投稿が容易になっているが,その写真投稿に起因したプライバシー侵害の問題が次第に増加しつつある.この問題の多くは,被写体ユーザの了解を得ることなく写真を投稿する行為にあるが,そのプライバシー侵害と感じる要因を,アンケート調査と過去のSNS記事アーカイブを用いたマイニングにより解析し類型化を行なった.更にそれを用いたプライバシー保護サービスの策定を行なった.
著者
前田 祐治 杉野 文俊 メッセイ デヴィット
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、キャプティブを通じたリスクファイナンスが、米英の企業に比べて、なぜ日本企業に浸透しないのかとの課題に対して、3つの仮説を立てて「ミクロ分析」と「マクロ分析」の2つのアプローチにより実証分析を行った。研究結果として、日本企業はキャプティブによる効率性よりも取引会社との利益相反をできるだけ避けようとする非合理的な経営判断を行っていることが示された。また、企業の持ち株会社である保険会社が企業価値向上よりも既存の保険商取引を重視していることが判明した。
著者
西前 出
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

途上国における自然災害による農業生産の被害を軽減するために,地域資源を再考することを通じて新しい開発援助の在り方についてミクロ,マクロの双方の視点から研究を行った。フィールド調査,アンケート調査,GIS分析を通じて研究を実施し,住民目線では災害に対する正しい認識の欠如,行政の支援とニーズの不一致などが主たる課題として挙げられ,都市部では経済的な発展度合いによる災害への適切な対応が必要不可欠であることが定量的に明らかとなった。
著者
前田 幸男
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.3-25, 2003-03-31

米国において全国規模の選挙調査が稀であった時代には,集計データ分析,あるいは地方小都市調査による投票行動研究が主流であったが,そこでは社会的影響仮説は重要な研究主題の一つであった.しかし,全国規模の調査が選挙研究の主流になる1950年代以降,社会的影響仮説の研究は顧みられなくなる.1960年代以降も幾つかの論文が散在したとは言え,それらはいずれも深刻な方法論的問題を抱えたものであった.1980年代以降社会的影響仮説に対する関心は再び高まったが,そこでは従前の方法論的困難を克服するために,斬新な設計を施した調査がハックフェルトとスプラーグにより行われた.日本の選挙データを用いた社会的影響研究はフラナガンとリチャードソンの研究を嚆矢とするが,彼らは極めて小さな社会的影響しか発見できなかった.これに対して近年のハックフェルトとスプラーグの研究に触発された社会心理学者の研究は別の角度から日本人の投票行動における社会的影響を明らかにした.ただし日本における社会的影響研究は日米の制度的違いを明確に意識して行われていないので,幾つかの点で改善の余地があるように思われる.米国製の理論を日本に応用する際の陥穽が最後に検討される.
著者
竹原 健 中山 良一 前田 嘉則 八田 衛明
出版者
日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.238-243, 1984-06-30 (Released:2010-08-25)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

原子力発電所の運転, あるいは定期点検時における作業のロボット化が最近進められている.この一つとして, 人に代わって様々な発電所内の機器装置を点検する点検用ロボットがある.現在, 通産省補助事業である原子力発電支援システムとして「格納容器内自動点検システム」の開発が進められている.このシステムは床面走行車, 点検および運転用テレビカメラ, 各種センサ, 多関節腕形機構, 信号伝送装置およびケーブル処理装置から構成されおり, 自動および遠隔で操作できるものである.本報告では, 本システムの床面走行車について述べる.格納容器内部は, 狭あいで床はグレーチング (grating: すのこ) 床であり, また各所に階段が設置されているなど, 車の走行にとって厳しい条件となっている.これらの条件を満足する走行車として, 前後輪に操舵機構を持ち, 車体伸縮機構を車体内に持つ, 半月形4輪クローラ車を開発した.この半月形クローラ車は, 傾斜角度45.の階段 (1段高さ: 220mm) を昇降可能で, 旋回半径が小さいので狭あいな走行路を自在に走行できることを各種走行試験を行い確認した.現在システム試験を実施中である.
著者
前田 光一 喜多 英二 澤木 政好 三笠 桂一 古西 満 森 啓 坂本 正洋 辻本 正之 竹内 章治 濱田 薫 国松 幹和 奥 大介 樫葉 周三 成田 亘啓
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.1223-1228, 1994

ムチン様glycoproteinを産生するIshikawa細胞の培養系を用いて緑膿菌の温度感受性 (Ts) 変異株によるバイオフィルムモデルを作成し, エリスロマイシン (EM) のバイオフィルム形成抑制効果を検討した.本細胞培養系において緑膿菌Ts変異株は培養開始10日目で通常約40個/well前後のmicrocolony (バイオフィルム) を形成したが, EMは0.2μg/mlの濃度から細胞への菌付着およびバイオフィルム形成を抑制し得た.この系の培養上清中のglycoprotein量は1μg/ml以上のEM濃度で, またelastase, exoenzymeA量は2μg/ml以上のEM濃度で抑制された.以上から細胞培養系での緑膿菌によるバイオフィルム形成抑制効果がEMに存在することが示唆された.また菌体外酵素産生を抑制するEM濃度以下でバイオフィルム形成抑制およびIshikawa細胞からのglycoprotein産生抑制がみられたことから, EMのバイオフィルム抑制効果は細胞側因子への作用の関与がより大きいものと考えられた.
著者
前島 美保
出版者
京都市立芸術大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究は、江戸時代の上方歌舞伎における音楽演出がどのように組み立てられていたかについて、台帳(台本)に基づき明らかにすることをめざしたものである。『歌舞伎台帳集成』を典拠に音楽演出(囃子名目等)を抽出・リスト化する作業を経てわかってきたことは、囃子名目の初出を遡る例や従前には知られていなかった演出技法など、極めて豊富かつ具体的な用例の数々である。本研究で得た基礎データの慎重な分析と解釈が、今後の課題となる。
著者
金 ハンヨウル 前川 聡 苗村 健
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IE, 画像工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.478, pp.151-156, 2012-03-05

本稿ではミュージアムにおいて展示物に情報を重畳提示する複合現実感展示システムMRsionCaseの改良について報告する.これまでにハーフミラーを用いたシンプルな光学系を実装してきたが,ハーフミラーは虚像による提示になるため,結像の位置制御に限界があった.その制約を解消し,より自由な情報重畳の実現するためには実像で結像された空中像からの情報提示が必要となる.そのため,本稿では凹面鏡と実像鏡を用いたシステムを提案し,複合現実感展示システムとしての有効性を実証する.