著者
西海 功 山崎 剛史 濱尾 章二 関 伸一 高木 昌興 岩見 恭子 齋藤 武馬 水田 拓
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

日本列島の島嶼部を中心に分布する陸鳥類の14分類群(19種)について、異所的な集団の種分化と種分類に関する研究をDNA分析、形態学的分析、およびさえずりの音声分析を含む生態学的分析によっておこなった。日本列島の島嶼部を中心とした陸鳥の集団構造や種分化が極めて多様なことが示された。つまり、遺伝的な分析からは、南西諸島の地史を直接に反映した集団構造は陸鳥類では全くみられず、集団の分化のパターンが種によって大きく異なることがわかった。遺伝的に大きく分化している地理的境界線の位置も種によって異なるし、遺伝的分化の程度も分化の年代も種によって大きく異なることが示唆された。また、形態的分化や生態的分化の程度も種によって異なり、それらは必ずしも遺伝的分化の程度と相関しないことが推測された。近縁種の存否がさえずりの進化に影響する、すなわちさえずりの形質置換があったり、人為的環境の改変への適応が行動を通して形態的適応進化を促進したりすることがわかった。また、リュウキュウコノハズクやキビタキなど多数の種で亜種分類の見直しの必要性が示唆され、ウチヤマセンニュウなどいくつかの種では種分類の見直しの必要性が示唆された。今回の研究期間ではっきりと種・亜種分類の見直しの検討が出来たのはメボソムシクイ類とコトラツグミのみであったので、それ以外の見直しは今後の課題として残された。
著者
秋葉 剛史
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.61, pp.149-164_L9, 2010

According to the widely accepted correspondence theory of truth, each atomic contingent truth has its own truth-maker, i.e., an entity existing in the world that makes contingent proposition true. And at least for the metaphysical realist, the first and obvious candidates for truth-maker are entities called &ldquo;facts&rdquo; or &ldquo;states of affairs&rdquo;. These are entities normally designated by expressions like &ldquo;<i>a</i>'s being <i>F</i>&rdquo; or &ldquo;the fact that <i>a</i> is <i>F</i>&rdquo;.<br>Although it seems natural to assume that states of affairs exist, there is a famous objection to this assumption, known as &ldquo;Bradley's regress&rdquo;. Roughly put, the objection proceeds as follows. The states of affairs are supposed to be complex entities. However, what accounts for the unity of constituents in the state of affairs, say, <i>Fa</i>? If one appeals to the exemplification relation <i>E</i> to bind the constituents <i>a</i> and <i>F</i> together, the explanatory job is not yet finished. For, in that case, the unity of <i>a</i>, <i>F</i>, and <i>E</i> now raises the same problem. It is no use to add further and further exemplification relations <i>E</i>', <i>E</i>'', <i>E</i>'''..., because each time one adds a new relation, one gets only a new explanatory task, and never the unity of <i>a</i> and <i>F</i>. Thus, since the unity of constituents cannot be accounted for, the assumption that states of affairs exist should be regarded as groundless.<br>Against this objection, F. Orilia replies as follows. Though the regress objection above seems to seriously threaten the assumption that states of affairs exist, in fact it does not. For, the thought that there is an infinite explanatory sequence does not involve any inconsistency. As for myself, I agree with him as far as his last claim is concerned, namely the claim that there is no inconsistency in the idea of infinite explanatory sequence. However, I disagree with him as far as the evaluation of the regress objection is concerned. I claim that the alleged explanatory sequence generated in the regress objection is in fact vacant in its explanatory power, and hence that this objection in any way shows the failure of explanatory task.
著者
伊東 剛史
出版者
日本感情心理学会
雑誌
エモーション・スタディーズ
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.37-44, 2020

<p>This article discusses how the historical study of emotions, which emerged during the period from the 1910s to the 1940s, took ideas and inspirations from psychology. During this period, the basis for the history of senses and feelings was laid out by Johan Huizinga and Lucian Febvre. Much has been written about the roles played by the two historians, especially the latter, in bringing the methods and methodologies of other disciplines such as anthropology and sociology into the historical investigation of the emotional life of people in the past. Yet the contribution of psychology has hitherto been relatively understated. To fill the gap, the article analyses the psychological origin of the history of emotions. It argues that while Huizinga took a nuanced attitude towards natural sciences including physiological psychology, Febvre pleaded for the collaboration between history and psychology and appropriated the dialectical paradigm from Henri Wallon. Wallon's theory of the cognitive development, together with his holistic understanding of the human mind, was drawn into Febvre's conception of the emotional history of civilization. It is hard to overestimate the significance of the collaboration between historians and psychologists of emotions during the years leading to the Second World War. It can be discussed and shared across the boundaries of academic disciplines in the present era. The dialogue with the past helps navigate emotion studies to the future.</p>
著者
石原 望 纐纈 良 山本 剛史 渡辺 侑一郎 安藤 易輔
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】現在,スポーツ場面や学校,職場などで障害予防を目的に様々なストレッチが行われている。身体の総合的な柔軟性を評価する検査としては,立位にて膝関節を完全伸展させたまま体幹を前屈させ指先と床面との距離を測定する指床間距離(以下,FFD),ハムストリングスの伸張性に着目した検査では背臥位にて膝・股関節を90°屈曲させた状態から他動的に膝関節を伸展させる膝窩角(popliteal angle以下,PA)などがある。近年,柔軟性が低下した者に対する新たなストレッチ法としてジャックナイフストレッチが提案されている。現時点で健常成人を対象にその効果を検証する研究がいくつか行われているが,従来から行われてきた立位にて体幹を前屈させるストレッチとジャックナイフストレッチの効果を比較した報告はない。本研究の目的は,全身的な柔軟性の指標としてFFD,ハムストリングスの伸張性の指標としてPAを用い,ジャックナイフストレッチが柔軟性に及ぼす効果を明らかにすることである。【方法】健常成人22名(男性15名,女性7名,年齢25.3±3.5歳,身長167.5±8.1cm,体重60.1±9.9kg)を対象とした。課題はジャックナイフストレッチを行った群(以下,JS群)と体幹前屈ストレッチを行った群(Trunk Forward Bending以下,TFB群)の2つとし,無作為に割り付けた。課題はそれぞれストレッチ時間10秒×5回とし,JS群はしゃがんだ姿勢から足首を把持し大腿部と胸部を離さないように膝関節を伸展させていくように指示した。TFB群は立位にて膝関節完全伸展位を保持したまま,ハムストリングスの伸張痛が出現する直前まで体幹前屈を行うよう指示した。各ストレッチは朝・夕の1日2回,4週間毎日実施した。FFD,PAの測定は介入開始前,介入終了後の計2回測定した。FFDの測定は被験者は30cmの台上に立位となり,膝関節伸展位で体幹を前屈し上肢を下垂させ,中指と床面との距離をメジャーで計測した。PAの測定は,股・膝関節90°屈曲位からの膝関節伸展の他動運動とし,挙上側の股関節内・外転,内・外旋は中間位,足関節は中間位とした。測定時は,Tilt Table上背臥位にて対側大腿部・骨盤をベルトで固定し代償動作を極力除き,対側股関節・膝関節は伸展位とした。測定により疼痛が出現する直前の角度をPAとし,測定はゴニオメーターを用いて行った。統計解析は介入前の測定値と身体的特性(年齢,身長,体重)において,2群間で統計的に有意差がないことを確認した後,介入の効果判定としてFFD,PAを指標とし,1要因に対応がある二元配置分散分析を用いて比較した。なお,有意水準は5%未満とした。【結果】介入前後での比較では,JS群はFFD 30.2±8.7cmから21.1±6.1cm,PA 155.9±11.3°から165.4±10.3°,TFB群はFFD 35.1±12.0cmから28.1±10.8cm,PA 152.7±11.6°から160.0±14.4°となり,両群においてFFD,PAともに有意差が認められた。ストレッチ間での比較では,FFDではJS群21.1±6.1cmに対し,TFB群28.1±10.8cm,PAではJS群165.4±10.3°に対し,TFB群160.0±14.4°とFFDのみ有意差が認められ,PAでは有意差は認められなかった。【考察】結果より,ジャックナイフストレッチが柔軟性に及ぼす効果として,ハムストリングス以外の要因に対してより大きなストレッチ効果を及ぼす可能性が示唆された。JS群でよりFFDの改善が得られた要因として,ジャックナイフストレッチは自己の股・膝関節伸展筋力によって筋を伸張させるのに対し,体幹前屈ストレッチは自己の体幹重量のみで筋を伸張させる。よって,ジャックナイフストレッチでは筋により高強度な伸張を加えることができると考える。また,ジャックナイフストレッチはその実施方法から,肩峰と足首の距離が規定されるため常に腰椎屈曲位を強制されることになる。一方,体幹前屈ストレッチは,膝関節完全伸展位を規定し体幹前屈を行うためハムストリングスに対してはストレッチが強制されるが,腰椎の屈曲は強制力が働きにくい。そのため,柔軟性低下の原因が腰椎の屈曲制限による被験者ではストレッチの効果が得られにくかった可能性がある。今後の課題として,今回は柔軟性の要素の一つとしてハムストリングスを指標として検討したが,その他にも骨盤や腰椎の可動性などについても検討が必要であると考える。【理学療法学研究としての意義】ジャックナイフストレッチがFFD,PAに及ぼす効果が確認できた。また,ジャックナイフストレッチはハムストリングス以外の関節,筋肉などにより大きな効果を及ぼす可能性が考えられた。本研究が柔軟性向上を目的としたストレッチを行う上での一助になると考えられる。
著者
中川 慧 大鶴 直史 猪村 剛史 橋詰 顕 栗栖 薫 中石 真一路 河原 裕美 弓削 類
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】臨床現場においても,難聴者とのコミュニケーションに難渋することが多い。高齢による難聴の多くは感音性難聴といわれており,内耳から脳への伝達経路での障害が原因と考えられている。一般的に感音性難聴を評価する際には,音の聞き分けができるかどうかの主観的評価が用いられているが,加えて大脳皮質応答を客観的に評価することも重要と考えられる。そこで本研究では,聞き取りやすさの条件を変更することで音の聞き分けに対する大脳皮質応答が変化するのかを検討し,感音性難聴を客観的に評価するシステムを確立することを目的とした。【方法】実験に先立ち,難聴者9名を対象に57-S語表(日本聴覚医学会)を用いた50音の聞き取り検査を行い,聞き取りの難しい音・簡単な音を調査した。結果,聞き取りの正答率が最も高い音は『ル』,最も誤答が多かった組み合わせは『ミ』と『ニ』であったため,これらの音を用いて課題を作成した。課題は,約20%の確率で逸脱音を呈示するoddball課題とし,難課題(標準音『ニ』,逸脱音『ミ』)と易課題(標準音『ル』,逸脱音『ミ』)の2課題を設定した。計測は,健聴者10名を対象に,シールドルーム内にて,被験者前方3mの位置のスピーカーから700ms間隔で呈示される音(70dB)を聴いた際の聴覚誘発脳磁界を記録した。スピーカーには,音の指向性および高音域の音圧を高め,聞き手が聞き取りすくなる構造を持つ『COMUOON<sup>Ⓡ</sup>』(ユニバーサル・サウンドデザイン株式会社)および同一の素材で作られた標準的なスピーカーを使用した。なお計測中,被験者には音に注意を向けないように指示した。各条件500回程度加算し,逸脱音と標準音の差分波形(ミスマッチ反応:mismatch field)をもとに,等価電流双極子推定法を用いて左右聴覚領域それぞれの活動源を推定し,各条件での電流モーメントを比較した。【結果】音の呈示に伴い,刺激後100msをピークとする活動源が両側上側頭回付近に推定された。逸脱音から標準音の応答の差を求めると,易課題では,スピーカーの種類に関わらず100ms(N1m)と220ms付近(P2m)にピークを持つ波形が記録された。一方,難課題ではN1mの振幅が小さく,P2mの潜時が平均288msと遅かったが,『COMUOON<sup>Ⓡ</sup>』を用いることでP2mの潜時が平均259msと短縮した。【結論】感音性難聴の客観的評価システムの導入を目的に聞き分けの難しい言語音を用いた課題を作成し,聴覚誘発脳磁界を指標としてその有用性を検証した。その結果,話し手側から聞き取りやすい音を伝える高精度のスピーカーを用いると,音の認識に関与すると考えられるP2mの出現潜時が短縮した。これは本手法が感音性難聴の客観的評価に対する一つとして有用である可能性を示している。今後は,難聴者を対象に計測を行い,評価システムの確立を目指したい。
著者
石原 知洋 四本 裕子 角野 浩史 玉造 潤史 中村 遼 小川 剛史 相田 仁 工藤 知宏
雑誌
インターネットと運用技術シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.85-92, 2020-11-26

2020 年初頭から発生した COVID-19 により,多くの大学で 4 月からオンラインによる講義の配信を行っている.オンライン講義のメリットが明らかになる一方で,様々な要因から対面での講義の実施も求められている.そこで東京大学では,COVID-19 対応のためオンラインと,感染症対策を実施した上での対面講義の双方を実施するハイブリッド方式の講義を検討している.このハイブリッット方式では,対面講義のためキャンパスに来た学生が,対面講義の他にもその日のオンライン講義をキャンパスのネットワークを用いて受講することになる.このように多数の学生がキャンパスネットワークを用いてオンライン講義を受講するにあたって,どの程度のネットワーク設備があればそのような講義形態が可能であるかは自明ではない.そこで我々は,最もボトルネックになると想定されるユーザ端末の無線接続について,実際の教室を用いて多人数での同時オンライン講義の受講が可能であるかの評価実験をおこなった.本実験では,いくつかのオンラインの講義シナリオを設定し,ネットワーク状況やオンライン講義の音声・映像の品質を計測,確認した.本論文ではその実験結果および得られた知見について述べる.
著者
岡田 佳之 榊 剛史 鳥海 不二夫 篠田 孝祐 風間 一洋 野田 五十樹 沼尾 正行 栗原 聡 Okada Yoshiyuki Takeshi Sakaki Fujio Toriumi Kosuke Shinoda Kazuhiro Kazama Itsuki Noda Masayuki Numao Satoshi Kurihara
雑誌
SIG-SAI = SIG-SAI
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-9, 2013-03-11

Twitter is a famous social networking service and has received attention recently. Twitter user have increased rapidly, and many users exchange information. When 2011 Tohoku earthquake and tsunami happened, people were able to obtain information from social networking service. Though Twitter played the important role, one of the problem of Twitter, a false rumor diffusion, was pointed out. In this research, we focus on a false rumor diffusion. We propose a information diffusion model based on SIR model, classify the way of diffusion in four categories, and reapper the real diffussion by using this new model.
著者
中山 剛史
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.383-408, 2008

ヤスパースの哲学は、実存と超越者とのかかわりにもとづくきわめて「宗教性」の高い哲学であるといいうるが、他方において、ヤスパースは哲学と宗教との相違を強調し、みずから「哲学」の立場に立って、権威への服従に基づく「宗教」に対して鋭い批判を行っている。とりわけ、「神が人となった」というイエス・キリストにおける神の「啓示」を唯一絶対の真理とみなすキリスト教の「啓示信仰」に対して、超越者の「暗号」を聴きとる「哲学的信仰」の視点から批判的な対決を行っている。ヤスパースは「啓示信仰」に対して、(1)神人キリストの放棄、(2)啓示の暗号化、(3)排他的唯一性の放棄という「三つの放棄」を要求するが、これは「啓示信仰」を「哲学的信仰」へと解消させることではなく、むしろキリスト教が教義への束縛と排他性の要求から脱け出て、その根源にある「真摯さ」へと立ち還ることを呼びかけるものである。ヤスパースの宗教批判の意義は、異なった信仰の根源同士が相互に出会いうる開かれた対話の道を開くことにあるといえよう。
著者
西脇 剛史
出版者
社団法人 繊維学会
雑誌
繊維学会誌 (ISSN:00379875)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.P_150-P_153, 2009-05-10 (Released:2009-06-10)
被引用文献数
2
著者
山本 裕二 木島 章文 福原 洸 横山 慶子 小林 亮 加納 剛史 石黒 章夫 奥村 基生 島 弘幸
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では,スポーツにおける対人運動技能の制御・学習則を解明する.対人運動技能とは,眼前の他者と連携や駆け引きを行う技能と,連携や駆け引きを通して互いに成長し続ける技能の両方を指す.これは様々なスポーツに共通の重要な技能であると考えられるが,従来は個の運動技能のみが扱われており,対人運動技能の制御・学習則は未知である.そこで本研究では,二者が連携や駆け引き,二者が連携して他の二者と駆け引きする対人運動技能の制御・学習過程の調査・行動実験からそこに潜む規則性を見つけ,数理モデルを構築して制御・学習の本質を理解し,ロボットに実装してその妥当性を検証する.
著者
新島 有信 小川 剛史
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.93-100, 2016-03-31 (Released:2017-02-01)

In this paper, we investigated to control a phantom sensation by visual stimuli. A phantom sensation is one of tactile illusion caused by vibration stimuli. Some previous works employed vibration motors for a tactile display, and utilized a phantom sensation to present tactile stimuli in a large area with a few vibration motors. Our research is to control tactile perception by visual stimuli. Our previous works showed that visual stimuli influence tactile perception. From the results, we considered that it is also possible to control a phantom sensation by visual stimuli. We made a primitive visual-tactile display, and conducted some experiments. The results showed that visual stimuli influenced a phantom sensation and it seemed to be possible to cause or not to cause a phantom sensation by visual stimuli.
著者
森 治 櫛木 賢一 成尾 芳博 澤井 秀次郎 志田 真樹 丸 祐介 道上 啓亮 中塚 潤一 高見 剛史 浦町 光
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
航空宇宙技術 (ISSN:18840477)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.29-35, 2019 (Released:2019-02-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

The chemical propulsion system of Hayabusa-2 consists of 12 bipropellant thrusters whose thrust is 20N. The communication with Hayabusa was lost due to the fuel leakage just after touchdown in 2005. Akatsuki failed to enter orbit around Venus in 2010. The chemical propulsion system of Hayabusa-2 took measure to prevent these accidents. It satisfied the requirements of continuous injection for SCI (Small Carry-on Impactor) operation. The short injection impulse was estimated using flight data. It was changed by the thruster temperature and the frequency of use. The approximation of the long injection impulse was improved using TCM (Trajectory Correction Maneuver) data and VIC (Velocity Increment Cut) test data. This paper presents development and outward operation of the chemical propulsion system of Hayabusa-2.
著者
羽田 清貴 加藤 浩 井原 拓哉 中野 達也 深井 健司 辛嶋 良介 宮本 崇司 森口 晃一 嶋村 剛史 岡澤 和哉 奥村 晃司 杉木 知武 川嶌 眞之 川嶌 眞人
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0237, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】臨床において,歩き始めに膝痛や不安定感などの症状を訴える変形性膝関節症(以下,膝OA)患者は少なくない。膝関節へのメカニカルストレスの指標として外部膝関節内反モーメント(以下,KAM)が注目されており,膝OAの病態進行の危険因子の1つとして考えられている。また,膝OA患者に対して体幹や骨盤の回旋運動を改善させる理学療法を実施すると,歩容の改善だけでなく膝痛が減少する患者を経験する。そこで本研究の目的は,膝OA患者の歩き始めにおける胸椎・骨盤回旋運動とKAMとの関連性について検討することである。【方法】対象は膝OA患者7名(平均年齢70.3±10.9歳。以下,膝OA群)と健常成人15名(平均年齢35.0±11.7歳。以下,対照群)で全例女性であった。課題動作は5mの歩行路上の自由歩行とした。計測下肢から一歩目を踏み出し,床反力計を踏むように指示した。一歩目の歩幅の距離は被検者の身長の40%になるように設定した。歩行時は目の高さに設置した前方の目標物を注視させた。動作は5回実施した。計測方法は,赤外線カメラ8台を備えた三次元動作解析装置Vicon-MX13(Vicon Motion Systems社製)と床反力計(AMTI社製)1基を用いて実施した。三次元動作解析装置,床反力計のサンプリング周波数は100Hzとした。直径14mmの反射マーカーを身体51箇所に貼付した。得られたマーカー座標から胸椎セグメント,骨盤セグメント,両大腿セグメント,両下腿セグメント,両足部セグメントの8剛体リンクモデルを作成し,胸椎・骨盤の絶対及び相対回旋角度変化量,KAM第1ピーク値と第2ピーク値を算出した。統計学的解析はDr.SPSS II for Windows 11.0.1 J(エス・ピー・エス・エス社製)を用い,正規性の有無に従って,2群間の比較には2標本の差の検定を,KAMと胸椎・骨盤回旋角度変化量の関連性の検討にはPearsonの積率相関係数,またはSpearmanの順位相関係数を用いた。なお有意水準は5%未満とした。【結果】KAMの第1ピーク値と第2ピーク値[Nm/kg]は,対照群でそれぞれ0.35±0.09と0.31±0.09,膝OA群でそれぞれ0.57±0.16と0.53±0.16であり膝OA群が有意に高値を示した。胸椎相対回旋角度の変化量及び骨盤絶対回旋角度の変化量[deg]は,対照群で18.39±7.20と14.89±6.57,膝OA群で10.79±3.97と7.79±5.05であり膝OA群が有意に低値を示した。また,胸椎相対回旋角度の変化量及び骨盤絶対回旋角度の変化量は,KAMの第1ピーク値及び第2ピーク値と負の相関関係が認められた。【結論】歩き始めにおけるKAMは膝OA群が大きかった。臨床において,歩き始めに膝痛を訴える膝OA患者は,KAMの増大が疼痛の誘発原因の1つになっている可能性が示唆された。また,胸椎や骨盤の回旋可動域の低下は,KAMを増大させる一要因になる可能性が示された。膝OA患者のKAMを減少させるための理学療法戦略として,歩行時の胸椎や骨盤の回旋運動に着目する必要性があるかもしれない。
著者
髙野 剛史 田中 颯 狩野 泰則
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.45-50, 2019

<p>ハナゴウナ科Eulimidaeの腹足類は,棘皮動物を宿主とする寄生者である。同科の<i>Mucronalia</i>属は形態および生態情報に乏しいグループで,タイプ種のフタオビツマミガイ<i>M. bicincta</i>は生貝での採集報告がなされていない。Warén(1980a)による殻形態に基づく属の概念では,つまみ状の原殻,内唇滑層,ならびに中央部の突出した外唇を有することが重要視されている。また2既知種がクモヒトデ寄生性であることが知られており,これが本属貝類に共通の生態とみなされている。本報では,神奈川県真鶴町の潮下帯より採取されたアカクモヒトデ<i>Ophiomastix mixta</i>の腕に外部寄生する<i>Mucronalia</i>属の1新種を記載した。</p><p><i>Mucronalia alba</i> n. sp.オビナシツマミガイ(新種・新称)</p><p>原殻がつまみ状に突出すること,殻口内唇に滑層を有すること,また外唇は中央部が突出し横からみると大きく曲がることから,<i>Mucronalia</i>属の一種であると判断された。殻は本属としては細く塔型,最大5.5 mm,白色半透明である。後成殻は6.6巻,螺層は時に非対称に膨れ,螺塔は成長に伴い不規則に太くなる。外唇縁痕は不定期に現れ,僅かに褐色を呈する。殻口は細長い卵型。軸唇はまっすぐで,体層の軸から20°傾く。原殻は淡い褐色。</p><p>本種の殻形は,同じく日本に産するヤセフタオビツマミガイ<i>M. exilis</i>と,オーストラリアのクイーンズランドから記載された<i>M. trilineata</i>に似る。一方これら2種は殻に褐色の色帯を有し,また軸唇の傾きが弱い。オマーンをタイプ産地とする<i>M. lepida</i>と<i>M. oxytenes</i>,メキシコ西岸の<i>M. involuta</i>はいずれも本種と同様白色の殻をもつが,前2種は殻が太く螺層の膨らみが弱い点で,また<i>M. involuta</i>は本種と比してはるかに小型である点で区別される。タイプ種であるフタオビツマミガイ<i>M. bicincta</i>,オマーンに産する<i>M. bizonula</i>,スリランカの<i>M. exquisita</i>は,色帯のある円筒形の殻をもつ点で本種と明瞭に異なる。</p><p>上述の種のほか,コガタツマミガイ"<i>M.</i>" <i>subula</i>やヒモイカリナマコツマミガイ"<i>M. lactea</i>"が<i>Mucronalia</i>属として扱われることがある。しかしながら,前者は殻口外唇が湾曲せず,カシパンヤドリニナ属<i>Hypermastus</i>に含めるのが妥当である。後者は,殻形態,寄生生態および予察的な分子系統解析(髙野,未発表)により,セトモノガイ属<i>Melanella</i>の一種であると考えられた。しかしながら,<i>Eulima lactea</i> A. Adams in Sowerby II, 1854が同じ<i>Melanella</i>に所属すると考えられるため,ヒモイカリナマコツマミガイに対する<i>lactea</i> A. Adams, 1864は主観新参ホモニムとなる。そこで,ヒモイカリナマコツマミガイに対する代替名として<i>Melanella tanabensis</i>を提唱した。東アフリカのザンジバル諸島産で,同じくヒモイカリナマコに内部寄生する"<i>Mucronalia</i>" <i>variabilis</i>もセトモノガイ属に含めるのが妥当と考えられ,本論文で属位を変更した(<i>Melanella variabilis</i> n. comb.)。</p>
著者
北川 夏樹 鈴木 春菜 羽鳥 剛史 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_327-67_I_332, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
21

本研究では,「家族」,「学校や会社等の組織」,「地域」,「国家」という4つの共同体を取り上げて,これらの共同体からの疎外意識が主観的幸福感に及ぼす影響について実証的に検討することを目的とした.この目的の下,主観的幸福感を構成する「感情的幸福感」と「認知的幸福感」に関する既存尺度とヘーゲルの理論を基に作成した「人間疎外尺度」を用いて,両者の関連を検討した.その結果,共同体に対する疎外意識と主観的幸福感との間に負の関連性が示され,共同体からの疎外意識を感じている人ほど,その幸福感が低い傾向にある可能性を示唆する結果が得られた.特に,「家族」と「国家」に対する疎外意識は,感情的幸福感と認知的幸福感の双方に対して直接的な負の影響を及ぼし得る可能性が示唆された.
著者
三上 剛史
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.453-473, 1998
被引用文献数
1

「ポストモダン」とか「複合社会」とか呼ばれる現代社会において, 〈公共性〉はいかなる形で可能となるのか。これまでの公共性概念はハバーマスの「市民的公共性」に代表される近代市民社会の前提--「大きな物語」--に支えられたものであったが, 物語の衰退は公共性概念の曖昧化をも招来せずにはおかない。<BR>そこで, まずハバーマス型の公共性概念の変容を辿り, これを「大きな物語」の衰退に伴う物語の修復と捉え, そこに見られるモダン的要素を取り出したい。その上で, さらに, メルッチに代表される社会運動論の視点からも公共性問題を再考し, メルッチもまたハバーマスとは別の形でのモダン的物語の修復を志向している点を確認する。<BR>このようにして, 公共性論の抱える問題をハバーマスとメルッチに託して検討し, 彼らの到達した観点を批判的に摂取することで, これからのありうべき新たな公共性概念と公共空間の可能性に言及してみたい。<BR>NPO/NGOに代表される新しい「アソシエーション関係」を念頭におきながら, ルーマンの機能主義的視点とベックのリスク社会論を援用しながら, 試論的に論じたい。