著者
村野 良太 佐藤 健 友野 貴之 加藤 麻樹
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.103-112, 2023-06-15 (Released:2023-06-21)
参考文献数
38

本研究は靴紐の締め方の強弱(tightness)が歩行動作に与える影響を明らかにすることを目的とした.実験参加者は男性9名(22.8±1.2歳),女性9名(21.9±1.8歳)とし,歩行課題(自然歩行,努力歩行)と靴紐の締め方の強弱(fit条件,loose条件)を操作した歩行実験を行った.Kinect v2を用いた歩行姿勢測定システムで歩行速度,歩幅,歩隔を,体幹2点歩行動揺計で歩行周期時間,胸椎背部(以下,Th6)および仙骨付近(以下,S2)における3方向(左右,上下,前後)の平均動揺量とHarmonic Ratio(以下,HR)を計測,算出した.すべての分析項目を用いて対応のある二元配置多変量分散分析を実施した結果,歩行課題と靴紐条件について主効果が認められた.loose条件ではfit条件よりも,歩行速度,S2の上下動揺量,Th6の上下方向のHRは有意に小さく,Th6の左右動揺量,S2の前後動揺量は有意に大きかった.本研究より,靴紐の締め方が緩い(loose条件)と歩行中の体幹の動きに影響を与えることが示された.
著者
加藤 之敬
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.69, pp.170-184, 2018-04-01 (Released:2018-08-01)

This paper intends to clarify Nietzsche’s concept of “contest.” This is because “contest” is an important concept in properly understanding Nietzsche’s view of our relation to others. In many cases, Nietzsche regards relation to others as a struggle, which may lead readers to think that Nietzsche considers relation to others negatively because struggle is associated with denying, suppressing, and destroying others. However, this interpretation is a misunderstanding. For Nietzsche, struggle is not only negative but also positive - if it is a form of relation in which people recognize others and which is associated with productive activity. This is clear from his early text, “Homer’s Contest.” In this text, he divides struggle into two forms: a positive and productive struggle, namely “contest,” on the one hand, and a negative and destructive struggle, namely “annihilative struggle,” on the other. Moreover, he postulates that “contest” was the foundation of progress in ancient Greek culture. Thus, in “Homer’s Contest,” Nietzsche considers “contest” to be the ideal relation to others. Furthermore, in discussing “contest,” Nietzsche often compares ancient and modern cultures, criticizing modern culture’s inability to create the conditions for forming an ideal relation to others. Nietzsche’s concept of “contest” has three fundamental elements: first, affirmation of envy and ambition, which are regarded as negative in the modern age; second, the necessity of equal or more powerful rivals and the availability of people who are capable of estimating correctly; and third, the necessity of maintaining pluralism. In this paper, these elements are explained in detail in order to clarify Nietzsche’s opinion on the ideal relation to others, namely “contest,” and emphasize his critical attitude toward modern culture apparent in “Homer’s Contest.
著者
藤居 祐輔 安積 卓也 西尾 信彦 加藤 真平
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.1048-1058, 2014-02-15

サイバーフィジカルシステム(CPS)が注目される中,その技術基盤として,GPUなどのデバイスが利用され始めている.GPUはデバイスドライバを経由して利用されているが,CPSのように短い周期で繰り返し多くの処理が行われると,ホストへの負担が増えるとともに,デバイス制御や処理の同期によってレイテンシが発生する.さらにGPU処理では,データをデバイスメモリへと転送する必要があり,上記問題を悪化させ,データ転送処理自体にも影響を与える.そのため我々は,GPU制御処理の一部をGPUマイクロコントローラ上で動作するファームウェアへオフロードし,GPU処理の効率化をめざす.本論文では,オフロード基盤としてコンパイラ,デバッグ支援ツールを含んだGPU制御ファームウェア開発環境と,既存のNVIDIA社製ファームウェアと同等の機能を持つファームウェアを開発する.次に,オフロード基盤を用いて,制御処理の一部であるDMA転送処理をファームウェアに追加実装することで,オフロードを実現しGPU処理を効率化する.我々は,実装したファームウェアと既存のファームウェアを比較し,性能低下がないことを示すことで,オフロード基盤の有効性を確認した.オフロードしたデータ転送処理では,既存のデータ転送処理と比べ,一部のデータサイズにおいて約1.5倍の転送速度を実現し,さらに既存データ転送処理へのオーバラップ転送を実現した.
著者
加藤 良平 赤石 純子 杉野 公則 近藤 哲夫 伊藤 公一
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.168-174, 2021 (Released:2021-11-27)
参考文献数
15

小児・若年者(20歳以下)を主体に発生する甲状腺癌は,成人以降に発生する通常型甲状腺癌とは異なる組織所見を示すものがあり,それらは臨床経過も特徴的であることが知られている。最も頻度が高いのは通常型の乳頭癌であるが,小児・若年者ではいわゆる“若年型乳頭癌”といえる特徴的組織所見を示す亜型群が発生する。その中には充実亜型,びまん性硬化亜型,篩状・モルレ亜型などが含まれる。乳頭癌以外では,家族性髄様癌や多発性内分泌腫瘍症2型に伴う髄様癌も若年者に多く認められる。一方,小児・若年者では低分化癌や未分化癌は極めて例外的といってよい。若年者甲状腺癌は特徴的な病理組織像と臨床像を示すため,正確な病理診断と治療が肝要である。
著者
加藤 博久 村上 雅彦 新井 一成 草野 満夫
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:03899403)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.156-157, 1996-06-07 (Released:2015-03-20)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

It has been reported that one of the effects of proton pump inhibitor (PPI) is inhibition from exocrine pancreas. We treated two cases of reflex esophagitis due to total gastrectomy with PPI and they were cured soon. Case 1 : A 71-year-old man was operated upon total gastrectomy (6-interposition) for early gastric cancer. He had felt aphagia and heart burn from ten days after operation. We had been following up him for three years with camostat mesilate, but his symptoms had been unchanged and the endoscopy had revealed esophagitis which was Savary-Miller (SM) stage III. Case 2 : Total gastrectomy (Roux-Y) for early gastric cancer was carried out to a woman who was 53 years old. Her symptoms were nausea and heart burn from eight days after operation. She had never been treating by any medicines. Four months after operation, her symptoms had been stronger and endoscopic findings was esophagitis of SM stage III. In both cases, their symptoms were got under control soon and esophagitises were changed to SM stage I-II with single medication of PPI for several weeks.
著者
中村 祐介 吉富 秀幸 清水 宏明 大塚 将之 加藤 厚 古川 勝規 高屋敷 吏 久保木 知 高野 重紹 岡村 大樹 鈴木 大亮 酒井 望 賀川 真吾 宮崎 勝
出版者
一般社団法人 日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.258-264, 2015-04-20 (Released:2015-05-08)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

【目的】膵腺房細胞癌(以下ACC)は稀な膵腫瘍であり,その発生頻度は全膵腫瘍の約0.4%とされる.本疾患の臨床病理学的特徴には未だ不明な点も多く,自験例での検討を行った.【対象】2004年から2011年までに当教室で経験し,組織学的に確認し得たACC 4症例.【結果】平均年齢は68.2歳,全例男性で,CT検査画像では境界明瞭で内部不均一な低濃度腫瘤影を呈し,血液検査では血清エラスターゼ1,AFP値の上昇を認めた.治療は3例に根治的切除が施行され,切除不能例には5-FU+放射線照射併用療法が施行された.切除例全例に肝転移再発を認め,追加切除または全身化学療法を施行した.治療成績では追加切除例で68.4ヶ月,切除不能例で70.0ヶ月の長期生存例を経験した.【結論】今後も症例の集積により,再発・転移例に対する積極的な制癌治療を含む治療戦略の検討が必要と考えられた.
著者
加藤 久美子
出版者
京都大学東南アジア地域研究研究所
雑誌
東南アジア研究 (ISSN:05638682)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.35-69, 2023-07-31 (Released:2023-07-31)
参考文献数
60

This article explores the Bajo/Sama people’s perspectives and beliefs about the sea, focusing on the ritual practices of these settlements in Southeast Sulawesi, Indonesia. The sea has traditionally been the source of the Bajo’s livelihood: they have used the sea for fishing, dwelling, shipping, practicing healing rituals, and carrying across the deceased for burial on islands.The Bajo believe that the “twin spirit” of a newborn is born when the placenta is submerged in the ocean. The twin spirit resides in and is spiritually connected with the person throughout their life. The Bajo’s healing rituals call on these spirits for help, which deepens their connection with the sea. This belief extends to the powerful and profound spirits nabi and mbo’, who dwell far from the kampung (settlements), as well as kaka, tuli, and kutta, who are familial spirits that dwell by the settlements and in the sea and are often part of healing rituals.By analyzing Bajo practices and beliefs, this paper reveals that the Bajo perceive the sea as being part of the relationship between spirits and humans. For the Bajo, the sea not only enables their physical livelihood but also has an affective bond with them, and it is a space for the spirits of siblings, ancestors, and the Bajo. Bajo ritual practices might reproduce in new migrant places, as the spirits join the Bajo’s journey on the sea as their protectors and mediators between humans and other spirits.
著者
加賀谷 みえ子 加藤 舞子
出版者
椙山女学園大学
雑誌
椙山女学園大学研究論集 : 人文科学篇・社会科学篇・自然科学篇 = Journal of Sugiyama Jogakuen University. Humanities, Social sciences, Natural sciences (ISSN:24369632)
巻号頁・発行日
no.54, pp.53-61, 2023-03-01

日本料理の四季折々の盛り付けの美しさや料理のおいしさは,調理過程における調理操作の良し悪しで決まる。世界に誇る日本の食文化を代表する日本料理は室町時代に成立したとされている。調理操作は,非加熱調理操作,加熱調理操作,調味操作に大別され,特に非加熱調理の切砕では包丁技術が料理の出来栄えに大きく影響する。野菜では不可食部分を除去するため,皮を剥き,次に切る操作によって,形を整え,大きさを切りそろえるなどの成形を行う。これは食品の表面積を大きくし,火の通りを速め,味の浸み込みを均一にすることができ煮崩れを防ぐこともできる。野菜や肉では繊維の方向を考えて切ることで食感に変化を与えることができる。繊維に対して直角に切ると軟らかい食感,繊維に対して平行に切ると硬さを残すことができる1)。さらに切り方の大小は食感,味に影響し,飾り切りは美しい仕上がりとなる外観の美しさに影響する。剥く・切る調理操作では包丁技術が料理の完成度に大きく関与する。日本料理を志す料理人が,まず初めに習う剥き方は「桂むき」である2)。大学での調理実習においても「桂むき」は初めに練習する包丁技術である。「桂むき」の語源は諸説あるが,京都の町へ行商に来た桂女が頭にかぶっていた白の布に似ている,また京都桂川のなだらかに流れている川面が大根など剥いたさまに似ているところからこの名が出たといわれている3)。「桂むき」は剥きものの最も基本となる包丁技術4)といわれ,剥く速さではなく,薄く均等に長く剥くことが求められる。「桂むき」は練習を繰り返すことで正確に剥く技術が身に付き,やがて様々な剥き方・切り方の習得へとつながっていく。しかし,専門的な剥き方の上達には熟練を要し,包丁技術の熟練者と非熟練者では 技術力に差がでるのは当然である。熟練者が剥き方のコツを伝授し,非熟練者の技術力の上達を図るためには,その違いを分析し解明する必要がある。 「切り方」に関連する先行研究において,包丁技能に関する研究5‒7),熟練者と非熟練者の比較研究 8, 9)や包丁技術の指導に関する研究10, 11), アンケート調査12)などはあるが「桂むき」を実測した研究は見当たらない。本研究は,「桂むき」に着目し,熟練者と非熟練者の技術力を客観的に把握し,非熟練者の改善点を見出し,「桂むき」の剥き方を具体的且つわかりやすい桂むき指導法の教材開発を行うことを目的に研究を行った。
著者
加藤 和弘 樋口 広芳
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.177-183, 2011-07-30 (Released:2017-04-21)
参考文献数
17
被引用文献数
3

三宅島において2000年噴火後の鳥類の生息状況を調査してきた。噴火直後に鳥類は一時減少した。その後、植生被害の少ない場所では鳥類の個体数は増加し、近年ではほぼ安定している。ただし、鳥類の種数(種密度)や個体密度は樹木植被率と正の相関を一貫して示しており、植生が破壊されて回復していない場所では、植生がより健全な場所に比べて鳥類群集は種密度、個体密度ともにより小さかった。この相関関係は噴火後終始一定であったわけではなく、回帰直線の切片が有意に正の値をとるという状況、すなわち植生が破壊されている場所でもある程度の鳥類が記録されるという状況が、2005〜2007年にかけて認められた。これは、何らかの理由、おそらくは衰退木や腐朽木から発生した多量の昆虫により、植生が貧弱な場所でも鳥類の食物が供給されていたことによると考えられた。2008年度になってこの状況に変化が見られ、植生が破壊された場所では鳥類の種密度、個体密度ともに小さくなった。今後、昆虫の調査結果との対応付けを行う必要があるが、腐朽木や衰退木からの昆虫発生がこれら樹木の消失や除去に伴って減少しつつあるのであれば、樹林性の昆虫食の鳥類は、本来の照葉樹林が回復するまでの間に食物の深刻な不足に直面することが懸念される。
著者
加藤 大輔 小山 隆夫 中野 雅子 新井 高 前田 伸子
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.58-65, 2010-02-28 (Released:2018-03-29)
参考文献数
49
被引用文献数
1

根管治療は根管の複雑性や治療の困難さから,しばしば失敗することがある.治療成績向上のためには,根管消毒剤の使用が不可欠とされている.しかしながら,根管内に残存する微生物に対するこれらの消毒剤の抗菌性の有効性は確認されていない.そこで,本研究ではin vitro根管モデルを使用して,難治性根尖性歯周炎の歯に残存することが知られている微生物に対する根管消毒剤の抗菌性の有効性を調べた.被験微生物は,Enterococcus faecalis,Candida albicans,Pseudomonas aeruginosa,Staphylococcus aureusを用いた.また,根管消毒剤にはホルムクレゾール(FC),カンフル・カルボール(CC),水酸化カルシウム(Ca(OH)2),ヨードチンキ(J),メトロニダゾール,ミノサイクリンおよびシプロキサシンの3種混合薬剤(3Mix)を使用した.根尖病巣実験モデルは,根管を90号サイズに形成し,病巣部に相当する部位を半球状に形成した.微生物を含んだ病巣部は根尖から離し,生理食塩水寒天で挟み,サンドイッチ様の3層構造とした.それぞれ37℃で1時間,1,3,7日間薬剤を作用させた後,根尖部より無菌的に寒天を採取した.寒天はトリプティックソイ(TS)液体培地にホモジナイズし,適宜希釈してTS寒天培地上で37℃にて好気培養を行い,出現したコロニー数(log cfu/ml)を計測した.その結果,FCが4種の微生物すべてに十分な抗菌性を有し,それ以外の薬剤は,FCに次いで,J,Ca(OH)2の順で抗菌性をもつこと,また,CCはP.aeruginosa以外の3菌種には抗菌性をもっていないこと,3Mixは4種の微生物すべてに十分な抗菌性をもっていないことが示された.この研究から,FCが最も有効であることが示唆された.

2 0 0 0 OA 人権新説

著者
加藤弘之 著
出版者
谷山楼
巻号頁・発行日
1882
著者
石井 拓男 加藤 一夫 榊原 悠紀田郎
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.78-102, 1982 (Released:2010-10-27)
参考文献数
333
被引用文献数
2

日本における歯牙フッ素症の疫学調査に関する文献338件を収集し, その中から歯牙フッ素症のフィールド調査に関する248件の報告について考察を行った。我国において, 歯牙フッ素症の調査報告は, 宮城県以外の46都道府県でみとめられたが, 長期間連続的に調査された地区は22県内の36地区であり, そのうち同一調査者, 研究機関によって追跡調査されたところは12県内15地区であった。さらに水質の改善から, 歯牙フッ素症の減少, 消滅まで追跡し報告のされた地区は, 熊本県阿蘇地区, 山口県船木地区, 岡山県笠岡地区, 愛知県池野地区の4地区のみであった。飲料水中のフッ素濃度の測定が一般的になったのは1950年頃からで, それ以前の報告52件中, 実際にフッ素の確認のあった7件以外はフッ素の裏づけの無いものであったが, 追跡調査及び結果の内容から歯牙フッ素症と認められるものが31件あった。1950年以降でフッ素濃度の記載のないもの20件とフッ濃度0.3ppm以下で歯牙フッ素症の発症を報告しているもの11件計31件のうち, 迫跡調査が無く, その結果の内容からも歯牙フッ素症との確認がむつかしいものが11件あった。今回収録した文献の中で, 最も高濃度のフッ素の報告は美濃口ら ('56) による滋賀県雄琴での23pgmであった。このほか10PPm以上の報告が3件あった。日本の歯牙フッ素症の報告は1925年福井によって発表されて以来およそ60年の歴史があるが, 1950年から1960年の10年間に, 全体の報告数の55%が発表されており, 1つの流行現象のあったことが認められた。またその調査報告は, 単に歯科領城に留まらず, 医科及びその他の研究機関で幅広く実施されていたことも認められた。
著者
長尾 慶子 加藤 由美子 畑江 敬子 島田 淳子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.39, no.7, pp.677-682, 1988-07-05 (Released:2010-03-10)
参考文献数
6
被引用文献数
1

コロッケの破裂の機購および破裂を防ぐ揚げ条件を設定することを目的とし, 乾燥マッシュポテトを用いて加水量を変えたコロッケを調製, 実験し以下の結果を得た.1) コロッケの破裂は水分量および揚げ温度, 依存し, 水分が少ないほど, また揚げ温度が高いほど破裂しなかった.2) 油温200℃で揚げたときの, コロッケ破裂時の表層部 (1 mm 内側) 温度, 2 mm, 5 mm 内側および中心部温度は 118, 70, 40 および 22 ℃ であり中心部はほとんど変化がなかった.3) 破裂はコロッケの外皮付近で起きており, いずれの試料も表層部温度は100℃ 以上で破裂した.4) コロッケ外皮の破断強度は, 高水分試料のほうが小さく, また油温が高いほうが大となる傾向にあった.5) 破裂しやすい高水分試料の表層部を, 破裂の起きにくい低水分試料でおきかえると破裂は防止できた.6) 破裂は表層部の蒸気圧と皮の強度が関与している.