- 著者
-
加藤 謙介
渥美 公秀
- 出版者
- The Japanese Group Dynamics Association
- 雑誌
- 実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
- 巻号頁・発行日
- vol.41, no.2, pp.67-83, 2002-04-30 (Released:2010-06-04)
- 参考文献数
- 46
- 被引用文献数
-
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本研究では, 動物介在療法 (Animal Assisted Therapy: AAT) の効果を, 集合体の全体的性質 (集合性) の変容という観点から検討し, 廣松 (1989) の表情論を援用して考察を試みた。近年, 医療・看護・介護などの治療場面に動物を介入させるAATが導入され, これまでに, 生理的・心理的・社会的効果が見出されている。本研究では, AATに関する諸研究を概観し, その中で見出されたAATの諸効果を批判的に検討した。その上で, 老人性痴呆疾患治療病棟A病院において実施された, AATの一種であるドッグ・セラピーを参与観察した。A病院でのドッグ・セラピーは, 約10ヶ月間継続されたが, 対象者はもちろんのこと, 病院職員やドッグ・セラピーを実施するボランティアなど, ドッグ・セラピーに携わる人々に様々な変化が見られた。筆者らは, ドッグ・セラピーが実施された集合体において観察された, 対象者自身, 病院職員, ボランティアの3者の変化を, 表情性感得を契機とする集合性変容過程であるとし, その含意を考察した。