著者
太田 玲子 範 瑀軒 網谷 英樹 飯塚 拓巳 山田 夏鈴 加藤 陽佳 石栗 広志 深瀬 真由美 村木 靖 西村 秀一
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.96, no.2, pp.34-38, 2022-03-20 (Released:2022-03-29)
参考文献数
14

手指消毒薬の開封後の使用期間は施設により異なるが,開封から半年と定める所が多い.しかし,アルコール製剤の開封後の殺菌効果については明確な指標はなく,情報も少ない.我々はその根拠となるデータを得るために当院の医療現場で実際に6カ月間使用され残ったゲル状アルコール製剤(ゲル状製剤)を回収し,そのまま室温で保存した後(開封直後から開封後34カ月,残量60から350 mL),その主成分であるエタノール濃度をガスクロマトグラフィー法で測定した.その結果,経過時間,残量に関わらずエタノール濃度はすべて開封直後と同等であった.この結果を検証するためにStaphylococcus aureusとPseudomonas aeruginosaを用いて各製剤の殺菌能を測定し,開封直後の製剤と比較検討した.殺菌能測定ではゲル状製剤の対照剤として液状製剤についても測定した.方法は製剤と菌液を30秒と5分間反応させた後に生菌数を求め,精製水を用いた対照実験に対する減少率とlog10 reduction(対数減少値)で評価した.その結果,殺菌能も経過時間,残量に関わらずすべて開封直後と同等で,エタノール濃度と同様な結果であった.今回の検討でゲル状製剤は開封後半年,あるいはそれ以上経過しても開封直後と同等のエタノール濃度とS. aureusとP. aeruginosaに対する殺菌能を保持している可能性が示唆された.
著者
松井 俊樹 加藤 弘幸 湯浅 浩行
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.896-902, 2015 (Released:2016-10-31)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

症例は78歳男性.腹部の手術歴はなし.入院3日前に干し柿を食べ,その後より頻回の嘔吐をきたすようになり,近医を受診した.腹部レントゲン検査にてniveau形成を認め,イレウスを疑われ,当院に紹介となった.当院でのCTにて回腸にbubbly mass and impactionを認め,それより口側の腸管が著明に拡張していたことから,食餌性イレウス疑い,同日緊急手術を行った.臍部を3cm切開し,腹腔鏡で腹腔内を観察すると,回腸末端から約50cmの部位に硬い食物の嵌頓を認め,食餌性イレウスと診断した.腸管を創外に引き出し,milkingを試みたが困難で,やむなく腸管を3cm程度切開し,嵌頓した食餌を摘出した.腸管を縫合閉鎖し,手術を終了した.嵌頓していた食餌は干し柿であった.術後経過は良好で,第7病日に退院となった.詳細な問診を行うとともに,食餌性イレウスの特徴的なCT画像所見を認識し,術前診断することができれば,低侵襲な術式を選択することも可能となると思われた.
著者
加藤 一郎 関口 時正 重川 真紀 西田 諭子 大迫 知佳子
出版者
国立音楽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

研究代表者及び研究協力者の関口時正、重川真紀、西田諭子、大迫知佳子は最終年度に『ショパンによるバロック音楽の受容に関する研究』及び『ユゼフ・エルスネル研究』を刊行した。前者は論文集であり、後者はショパンの師ユゼフ・エルスネルの研究書の邦訳書である。代表者はこの他「ショパンとバロックの精神: スティル・ブリゼの応用を通して」北海道ポーランド文化協会,札幌大谷大学,(2016)、「ショパンによるオペラの受容過程に関する実証的研究-ポーランド時代-」国立音楽大学大学院研究年報,28,(2016)、「ショパンによるバロック様式の受容過程に関する研究-ポーランド時代-」同,29,(2017)を発表した。
著者
加藤 欣也 加藤 孝幸 岡村 聡 和田 哲
出版者
Japan Society of Engineering Geology
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.227-235, 2008-10-10 (Released:2011-11-04)
参考文献数
25

クリソタイルを含む蛇紋岩を対象に, 偏光顕微鏡によるモード測定法と粉末X線回折法を用いてクリソタイルの含有量を, 位相差・分散顕微鏡法を用いてアスベストの含有量を計測し, 測定結果の比較, 検討を行った. 一般的な蛇紋岩は, クリソタイルを多く含有するものでも, 試料を粉砕するとクリソタイルが破片状に破砕され, 元々繊維状を示していたクリソタイルがアスベストとしての形態を示さなくなるものが多いことがわかった. したがって, 通常の蛇紋岩を粉砕した際の周辺空気中のアスベスト繊維数濃度は, 作業環境基準値を下回ることが多いものと推定された. しかし, 花崗岩質貫入岩体近傍に位置するアスベスト鉱山のクリソタイルからなる直交繊維脈状蛇紋石は, 粉砕するとアスベストの形態を示し, 作業環境濃度の基準値を上回ることが確認された. 以上のことは, クリソタイルには結晶度の高いものから低いものまで, 種々のものがあることを示唆している. また, 蛇紋岩を粉砕する際に湿潤状態に置きドラフトを用いて吸引すると, アスベストの周辺への飛散量は大きく抑制できた.
著者
小浜 基次 加藤 昌太良 欠田 早苗
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.24-36, 1964 (Released:2008-02-26)
参考文献数
19

樺太アイヌは、はじめ1875年に北海道に移住し、1905年に樺太に復帰、1945年にふたたび北海道に移住して今日に至っている。したがってその純血度を追求することは、はなはだ困難である。現代樺太アイヌの形質のうちで原樺太アイヌの特徴として残されている形質は、顔高と鼻高の大きいことである。そのほかの諸特性は認めがたく、恐らくは混血によってその特性を失ったものであろう。現代樺太アイヌの諸形質を総合すれば、北海道混血アイヌにもつとも近似する。体部は北海道純アイヌにやや近く、樺太和人とは遠いが、頭部、顔部は北海道純アイヌよりも和人に接近し、ギリヤーク、オロッコとはもつとも離れている。この研究に協力された現地の方々に対し深甚の謝意を表する。
著者
石林 健一 崎村 祐介 俵 広樹 林 憲吾 加藤 嘉一郎 辻 敏克 山本 大輔 北村 祥貴 角谷 慎一 伴登 宏行
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.217-224, 2022-03-01 (Released:2022-03-31)
参考文献数
25

症例は45歳の女性で,20年前にくも膜下出血による水頭症に対して脳室腹腔シャント(ventriculoperitoneal shunt;以下,VPSと略記)挿入術が施行された.意識障害があり当院を受診し頭部CTで脳室拡大を認め,脳室ドレナージが施行された.VPSの閉塞が疑われ施行した全身CTでVPSチューブが上行結腸を穿通しており,治療目的に当科紹介となった.開腹するとチューブ状の繊維性被膜が上行結腸に付着しており,繊維性被膜を全周性に剥離するとVPSチューブが同定できた.VPSチューブを結紮,離断し,腸管に穿通しているカテーテルは抵抗なく抜去できた.腸管の瘻孔は縫合閉鎖した.VPSチューブ腹側端は髄液漏出を確認し,繊維性被膜内から出さずに閉腹した.術後第9病日に脳室ドレーン感染からの髄膜炎を来し,VPSチューブの全抜去を施行した.まれなVPSの消化管穿通の1例を経験したので報告する.
著者
加藤 拓彦 小山内 隆生 和田 一丸
出版者
弘前大学大学院医学研究科・弘前医学会
雑誌
弘前医学 (ISSN:04391721)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2-4, pp.71-78, 2006 (Released:2021-09-21)
参考文献数
19

作業療法を行っている統合失調症患者 84例を対象とし,対象者の退院に関する意識と社会生活背景としての結婚および就労状況を明らかにすることを目的に面接調査を行った.その結果,退院を希望しない者は 29%であり,退院希望者に比べ入院生活に満足している者が有意に多く,年齢は有意に高く,入院期間および罹病期間は有意に長かった.退院への不安については,家族,経済や就労に対する不安が多かった.結婚状況では,対象者の 26%に結婚経験があったが,そのうち離婚率は 82%と高率であり,結婚継続の困難さが示された.就労については,就労希望者群では就労希望のない群に比し,退院希望者の占める割合が有意に高かった.これらの入院統合失調症患者に対し有効かつ積極的な作業療法を展開していくためには,以上に示した個々の対象者の社会精神医学的側面についての理解を深めることが重要である.
著者
加藤 貴彦 堀口 真愛
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.78, pp.22012, 2023 (Released:2023-04-11)
参考文献数
24

Many developed countries, including Japan, have capitalist economies based on market principles. In capitalism, businesses try to develop new products and increase their added value, and expand the market in order to generate new profits. Owing to the universalization of capitalist efficiency, our daily lives are becoming condensed to only the necessary things in life. In addition, the advancement of science and technology, which is the driving force behind the expansion of profits, has forced people to become obsessed with new technology and information, and as a result, we have also lost our mental comfort. In this paper, first, we explain the time required to secure the energy necessary for human survival throughout human history. Second, we describe labor productivity with the emergence and development of capitalism. Third, we explain the difference between essential time and pressure-free time, and consider the necessity of pressure-free time during working hours. Finally, we discuss the relationships among pressure-free time, presenteeism, and work engagement.
著者
加藤 徳明
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.178-185, 2021-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
21
被引用文献数
1

運転に必要な高次脳機能は, 「注意機能 (情報処理速度, 反応時間含む) 」, 「視空間認知機能」, 「言語機能」, 「遂行機能」, 「記憶機能」などに大きく分類できる。その程度の把握のために, Trail Making Test (TMT) , Symbol Digit Modalities Test (SDMT) , Wechsler Adult Intelligence Scale (WAIS) の符号問題, Rey-Osterrieth の複雑図形 (ROCF) , 反応時間検査, Stroke Drivers Screening Assessment (SDSA) が重要と言えるだろう。日本高次脳機能障害学会では「脳卒中, 脳外傷等により高次脳機能障害が疑われる場合の自動車運転に関する神経心理学的検査法の適応と判断」を作成した。失語症の有無でフローチャートを分けており, (1) 認知症, (2) 半側空間無視, (3) 注意と処理速度, (4) 構成能力, (5) 遂行機能, (6) 失行 (失語症がある場合), の順に評価を行う。特に (3) の評価では TMT-J を重視している。検査のみを実施しその成績の数字だけから判断することは望ましくない。病歴, 画像所見, 日常生活や社会生活の情報などから対象者の全体像を把握して総合的に判断する必要がある。
著者
加藤 美砂子
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.377-379, 2001-08-15 (Released:2011-03-14)
参考文献数
9
被引用文献数
1
著者
金子 和広 冨士田 裕子 横地 穣 加藤 ゆき恵 井上 京
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.31-41, 2022 (Released:2022-06-28)
参考文献数
38

1. 北海道新篠津村の石狩泥炭地内に残存する小規模な湿地では,1960年代以前に掘削された排水路の影響で乾燥化が進行しており,保全のために2006年から毎年,5月から8月の期間に湿地への灌漑用水の導水が行われている.導水が与えた影響を評価するため,導水以前,導水初年,導水開始13年後の地下水位と植生を比較検討した.2. 導水期間中の地下水位は,導水初年・13年後においていずれの地点でも導水以前から平均で30 cm程度上昇した.地下水位の変動パターンは地形によって異なり,窪地では導水期間中に水位が湛水状態を保った一方,窪地以外の地下水位は最高でも地表面から20 cm以下だった.3. 導水開始13年後の植生について,窪地では草本層でヨシを主とする湿生在来種が優占し,導水以前に出現した非湿生外来種のオオアワダチソウが消滅した.窪地以外では,高木層で優占したシラカンバの大半が枯死した場所があったものの,草本層に占める湿生種の割合は50%未満で窪地よりも低く,湿地の乾燥化後に侵入したと考えられるワラビやオオアワダチソウが多くの場所で増加した.4. これらの結果から,地形・地下水位・植生は密接に関連することが示された.窪地では導水がもたらす湛水状態が湿生植物の優占する群落の維持や復元に十分効果的であったが,窪地以外での地下水位上昇は,湿地保全の観点からは十分な水準に達していないと結論付けられた.
著者
河角 龍典 加藤 政洋
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.144-145, 2012

嘉手納基地ゲート前に建設された「ビジネスセンター」の地形景観をGISを用いて復原し、都市計画との関連性について検討する。
著者
田巻 義孝 堀田 千絵 加藤 美朗
出版者
人間環境学研究会
雑誌
人間環境学研究 (ISSN:13485253)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.153-159, 2014 (Released:2014-12-25)
被引用文献数
2

The aim of this study was to examine the two points in DSM-5 (Diagnosis and Statistical Manual of Mental Disorders, 5-th. ed.) diagnostic standard. The first point is that the severity level for intellectual disability is determined by adaptive functioning rather than IQ scores. The second point is that the autistic disorder is determined by deficits in two core domains (a: social communication and social interaction, b: restricted, repetitive patterns of behavior), but they cannot be used for determining whether to make diagnosis function at predetermined items.
著者
米田 泰子 加藤 佐千子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.31-38, 1994-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
11
被引用文献数
4

In order to discover the correlation between the concentration of caffeine and tannin released by brewing tea and the result of the palatability, as for gyokuro, sencha, mizudasisencha, hojicha, bancha, oolong-tea, we brewed each tea three times and measured the amounts of caffeine and tannin in each different brewing period.1. Gyokuro; The second infusion exuded more caffeine and tannin when it was steeped for 0.5,1,2,3 minutes. And the first infusion exuded more when it was steeped 4 minutes. But in the palatability of each brewing tea there were little differences on the degree of bitterness and astringency. The total taste of the first infusion was the strongest and most preferred.2. Sencha; The second infusion exuded the most caffeine and tannin when it was steeped for 0.5,1 minute. The first infusion exuded them most when it was steeped for 3 or 4 minutes. The bitterness and astringency in the first infusion were as mush as the second infusion and in the third infusion were weaker. The more the tea was rebrewed the weaker the taste got.3. Hojicha, bancha; The first infusion exuded more caffeine and tannin (except 0.5,1 minutes steeped one), and the bitterness and astringency were stronger.4. Oolong-tea; As for the concentration of caffeine and tannin the result was the same as hojicha, bancha. The first infusion with the strongest total taste was not preferred. The second one seemed to be favoured.5. The lower quality teas have a positive correlation between the concentration of caffeine and tannin and bitterness, astringency, umami and popularity. Their tastes seem to be more affected by the concentration of caffeine and tannin. Oolong-tea has a negative correlation between the popularity and the concentration of caffeine and tannin.
著者
佐伯 覚 蜂須賀 明子 伊藤 英明 加藤 徳明 越智 光宏 松嶋 康之
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.411-416, 2019 (Released:2019-09-25)
参考文献数
36
被引用文献数
3 1

要旨:若年脳卒中患者の社会参加,特に復職は重要なリハビリテーションの目標であり,ノーマライゼイションの理念を具現化するものである.国際生活機能分類の普及に伴い,社会参加の重要性が再認識されている.また,政府が主導している「働き方改革」に関連した「治療と就労の両立支援」施策の一つとして,脳卒中の就労支援が進められている.しかし,脳卒中患者の高齢化・重度化,非正規雇用労働などの労働態様の変化は脳卒中患者の復職に多大な影響を与えており,若年脳卒中患者の復職率は過去20 年間,40%に留まっている.脳卒中患者の復職は医療だけでなく福祉分野とも関連し,職業リハビリテーションとの連携,さらには,復職予定先の企業等との調整など様々なレベルでの対応が必要であり,医療福祉連携を超える高次の連携が必要となる.