著者
堀尾 政博
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.299-314, 1981-09-01

硝酸塩中毒は, 反別動物では国の内外を問わず多発しているが, これは大量の糞尿を施肥した土地に生育した作物を摂食した際, その中に多量の硝酸塩が含まれていたことに起因することが報告されている.すなわち, 反芻動物では摂取された硝酸塩は, 第1冑内の細菌によって還元される過程で中間代謝産物としての亜硝酸に変化する. 硝酸およびその還元物質は, 第1胃壁から速かに吸収されて血液中に入るが, 亜硝酸はさらに赤血球内でヘモグロビンを酸化してメトヘモグロビン(MHb)を形成する. これは酸素運搬能カを持たないため組織は酸素欠乏におちいり, 動物は死に至る. この中毒は一般にヒトでは発生しないと思われているが, 近年発ガン物質N-ニトロソアミンの先駆体となっていると言われている硝酸塩等について, ヒトでも再考する必要のある事例が知られてきた. その意味で反芻動物は現象が強調された1つのモデルとしてみなすことができるので, 硝酸塩の代謝, MHbの消長およびそれらが生体に与える影響などについてここに総説としてまとめて紹介した.(1981年5月25日受付)
著者
堀口 兵剛 大森 由紀 松川 岳久 小松田 敦 中嶋 克行
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

秋田県の北部・中部・南部のCd汚染地域の農業従事者は現在でもCd体内蓄積量は高く、健康影響が危惧される。これまでに北部Cd汚染地域での住民健康調査と各Cd汚染地域での医療機関におけるCd腎症スクリーニングにより多くのCd腎症患者や「イタイイタイ病」疑い患者を見出したが、調査対象を中部・南部のCd汚染地域まで拡大し、北部地域での追跡調査、湛水管理の米中ヒ素濃度への影響の観察なども実施する。それにより秋田県Cd汚染地域全体の実態把握、高齢でのCdの健康影響の解明、ヒ素に関する湛水管理の有効性と安全性の検討などを行い、地域住民のCdに関する健康問題の根本的な解決を目指す。
著者
堀川 康史
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.125, no.12, pp.1-24, 2016 (Released:2018-01-28)

応永2年(1395)閏7月、九州探題今川了俊は京都に召還され、翌年2月までに解任された。室町幕府の九州政策の大きな転換点となったこの解任劇は、足利義満期の政治史や地域支配を論じるうえで不可欠の事件として知られているが、その政治過程、とりわけ解任に至った理由・経緯については不明な点が少なくない。本稿は、1390年代前半の九州情勢との関わりを重視する立場から、これらの点について検討を加えるものである。 検討の結果、解任の理由は了俊と九州大名との協力関係の断絶とそれにともなう九州経営の崩壊に求められることが明らかになった。その経緯は以下の通りである。 まず両島津氏との関係について見ると、長く対立関係にあった了俊と両島津氏は、明徳2年(1391)に和平を結んだものの、探題派国人の権益保護と両島津氏との和平は両立せず、和平の成立後まもない時期から南九州では局地的紛争が発生した。了俊は反島津氏を掲げる南九州国人一揆の意向もあって和平の破棄を決断し、明徳5年(1394)2月以降、再び両島津氏との戦いに突入していった。 ついで大友氏との関係に目を転じると、応永初年に大友親世と有力庶家の田原・吉弘両氏の間で内訌が生じた際、了俊は反親世派を支援したことで親世と断交した。親世は大内義弘・両島津氏と結ぶことで了俊に対抗し、結果として応永2年までに了俊は大友・大内・両島津の三者と敵対関係に陥った。この九州大名との協力関係の断絶が、了俊の九州経営を崩壊に導いていくことになった。 最後に足利義満はというと、通説とは異なり京都召還の直前まで了俊を支援していた様子が読みとれる。しかし、有力大名が揃って了俊に敵対し、九州経営の崩壊が徐々に明らかになったことにより、最終的に義満は了俊の解任を決断したと考えられる。応永3年(1396)2月、渋川満頼の探題就任が九州諸氏に報じられ、20年以上に及んだ了俊の九州経営はここに終わりを迎えることになったのである。
著者
藤野 善久 堀江 正知 寶珠山 務 筒井 隆夫 田中 弥生
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.87-97, 2006 (Released:2006-08-15)
参考文献数
18
被引用文献数
23 34

労働時間と精神的負担との関連についての体系的文献レビュー:藤野善久ほか.産業医科大学公衆衛生学教室―労働環境をとりまく厳しい状況のなか,労働者のストレスやうつ・抑うつなどメンタルヘルス不全が増加していると指摘されている.これに伴い,精神障害等の労災補償に関する請求件数,認定件数ともに著しい増加傾向にある.労働時間,対人関係,職場における支援,報酬などは労働者のメンタルヘルスに影響を与える要因と考えられている.平成16年には厚生労働省が「過重労働・メンタルヘルス対策の在り方に係る検討会」報告書を発表し,長時間の時間外労働を行ったことを一つの基準として対象者を選定し,メンタルヘルス面でのチェックを行う仕組みをつくることを推奨した.しかしながら,上で示されたメンタルヘルス対策としての長時間労働の基準は,企業・産業保健現場での実践性を考慮したものであり,労働時間と精神的負担との関連についての科学的な確証は十分に得られていない.一方で,労働時間が様々な労働環境要因,職業ストレス要因と関連して労働者の精神的負担やメンタルヘルスに影響を与えることは,過去の研究からも合理的に解釈できる.そこで本調査では,労働時間とうつ・抑うつなどの精神的負担との関連を検討した文献の体系的レビューを行い,労働時間と精神的負担の関連についての疫学的エビデンスを整理することを目的とした.PubMedを用いて131編の論文について検討を実施した.労働時間と精神的負担に関して検討した原著論文が131編のうち17編確認された(縦断研究10編,断面研究7編).それらのレビューの結果,精神的負担の指標との関連を報告した文献が7編であった.また,労働時間の評価に様々な定義が用いられており,研究間の比較を困難にしていた.今回のレビューの結果,労働時間とうつ・抑うつなどの精神的負担との関連について,一致した結果は認められなかった. (産衛誌2006; 48: 87-97)
著者
堀内 英雄 加瀬 武志 井上 義和 望月 芳義 三木 栄治 鈴木 恒夫 五里主 リチャード H. Hori E. Suzuki
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬蟲兩棲類學雑誌 (ISSN:02853191)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.22-24, 1965-11-15 (Released:2009-03-27)
被引用文献数
2

蛇の登攀性を知るため次の実験を行なった。1)実際の電柱とほぼ同大の模擬円柱を自製し,凸起物をつけず登攀実験を行なった。2)鉄製櫓を自製し,これが登攀性を試みた。3)実際の電柱の登攀性を試みた。以上の実験の結果次のことを知ることができた。1)円柱にもしあろ高さ以内に身を支えるに足る凸起物のない時は蛇は巻きつくことなくして,この円柱に登ることは不可能である。2)凸起物を有しないある直径以上の太さを有する円柱にもまた登ることは不可能である。3)鉄製櫓には容易に登ることができた。4)鉄枠の温度がある温度以上の時には蛇はこの枠に登らない。5)防御器は条件が揃えば有効と認められた。したがって,蛇がある径以上の太さの円柱または平坦な面を登るには体長の1/x以内に身を支える凸起物のあることを必要とし,鉄製物体に対してはある範囲の許容温度があることを確かめることができた。これらの条件は再吟呼を要するものと認む。
著者
森田 恭成 渡辺 伸一 大野 美香 自見 孝一朗 荒川 立郎 難波 智矢 堀部 達也 劉 啓文
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.395-402, 2020-09-01 (Released:2020-09-01)
参考文献数
15
被引用文献数
1

【目的】リハビリテーション(リハ)の介入日数と人工呼吸患者の日常生活動作(activities of daily living, ADL)との関係を検討した。ADLの評価には,Barthel index(BI)を用いた。【方法】共通の離床プロトコルに基づいたリハを週7日と週5日で行う施設群間で比較した。診療録より2017年1月から13ヶ月間のリハに関する情報を収集し,検討した。【結果】週7日群100例,週5日群106例が登録された。BIは両群で差を認めなかった(75対60,P=0.310)が,週7日群はリハ開始とICU退室が早く(2日対3日,P<0.0001,8日対10日,P=0.004),また,端坐位達成率が高く(41.0%対28.3%,P<0.0001),せん妄発生率が低かった(24.0%対45.3%,P=0.001)。多変量解析でBIに関係した因子は年齢であり,せん妄に関係した因子は週7日介入,年齢,鎮静プロトコルであった。【結語】週7日群と週5日群でBIには差を認めなかったが,週7日群でリハ開始とICU退室が早くなり,端坐位達成が多く,せん妄発生は少なかった。
著者
阿部 泰之 堀籠 淳之 内島 みのり 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.134-140, 2014 (Released:2015-02-17)
参考文献数
19

【目的】本研究の目的は,医療介護福祉間の,特に現場においてのバリアをなくす取り組みであるケア・カフェ®を地域に適用することにより,地域の連携がどのように変化するか調査することである.【方法】ケア・カフェ®の参加者を対象とした質問紙による前後比較研究を行った.医療介護福祉の地域連携尺度の点数変化の解析,質問紙の自由記載の内容分析をあわせて検討する混合研究法を用いた.【結果】地域連携尺度の点数は,合計点数および4つの下位尺度において有意に上昇し,その効果量は0.32~0.36であった.自由記載の内容分析において,参加者はケア・カフェ®に参加することにより,多職種の顔の見える関係をつくるという本来の目的以外にも,癒しの場,コミュニケ-ション上の気づき,社会関係資本など,多様な成果を得ていることが分かった.【結論】ケア・カフェ®は,地域における医療介護福祉の連携を改善する有用なツ-ルである.
著者
堀田 一弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1624-1633, 2005-08-01
被引用文献数
4

本論文では, 局所カーネルの和に基づくSupport Vector Machine(SVM)を用いた部分的な隠れに頑健な顔検出法を提案する. 近年, SVMを用いた顔検出法の有効性が報告されているが, 従来手法では画像から抽出した大局的な特徴に対して一つのカーネルを適用していた. 大局的な特徴は部分的な隠れの影響を受けやすいので, 従来手法は隠れに頑健でないと考えられる. SVMに基づく顔検出法に部分的な隠れに対する頑健性を付与するためには, 局所特徴をうまく扱う必要がある. ここでは, 局所特徴をうまく扱うために局所カーネルを導入し, その統合法として和を用いた. 実験では, 人工的な隠れを含む顔画像や光源方向の変化により生じた影を含む顔画像を用いて従来の大局カーネルに基づくSVMとの比較を行い, 提案手法の隠れに対する頑健性を示した. また, サングラスやマフラー等の実際的な隠れを含む顔画像から顔を検出できることも確認した.
著者
木下 華子 山本 聡美 堀川 貴司 渡邉 裕美子 陣野 英則 山中 玲子 梅沢 恵
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

日本には、古都や古代寺院の遺構、あるいは絵画資料・記録・伝承等に描かれた荒廃した町並みや建造物など、古代以降、文学・美術・芸能に多くの廃墟表象を見いだせる。本研究では、文学・美術・芸能を専門とする複数の研究者を組織し、日本古代・中世における廃墟を、上述の多様な視点から総合的に分析する。また、研究会・シンポジウム・出版などを通じ、廃墟論の学術的フレームと議論の場を創出する。東日本大震災以降、廃墟は物理的にも精神的にも私たちの間近に存在する。古代・中世の人々が廃墟と共存した有様を解明することで、現代社会における、廃墟を内包した新たな文化創造の論理的基盤を獲得することを最終的な目標とする。
著者
井上 敬介 浦山 由巳 上久木田 務 白井 俊光 白木澤 治 杉山 篤央 須藤 眞生 田中 広徳 田原 繁広 那須川 真澄 平原 茂人 堀江 匠 光吉 浩 三原 宏美 宮本 貴之 村上 大吉郎 山中 邦昭
出版者
一般社団法人日本PDA製薬学会
雑誌
日本PDA学術誌 GMPとバリデーション (ISSN:13444891)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.5-93, 2015 (Released:2015-08-12)

This publication has been prepared to express a sound and practical view on the better manufacturing environmental control for non-sterile pharmaceutical dosage forms, which has been discussed for several years by a special working group members of Kansai Study Group (KSG) accredited as one of the committees in Parenteral Drug Association (PDA) Japan Chapter. The opinions proposed or advanced in the document are formed for the purpose of furnishing a beneficial and valuable guide with advisability to any persons or organizations concerned in establishing appropriate manufacturing control systems for quality products.   The leading topics discussed among the WG are focused on the prevention against cross-contamination and foreign matter ingress, and categorized into five subjects composed of HVAC systems, premises, gowning, cleaning, and cleanliness standards. Constructive and earnest discussion therein has been devoted to the key processes, wherein considerable amounts of powders are handled for the successful operations of weighing, granulation, mixing, and tableting. In the expectation of good usage, many of the principles and the way of thinking presented hereupon, in particular can be applied or rearranged to a wide spectrum of other manufacturing processes for various dosage forms of non-sterile drug products.
著者
豊島 英徳 堀 原一
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.256-269, 1972-12-15 (Released:2011-12-02)
参考文献数
55

(植込み形)人工臓器にとって本質的な問題であるエネルギー源(電源)について, とくに商用電源, 水銀電池等在来形電源に一部とってかわる高信頼・長寿命(10年)のラジオアイソトープエネルギー源(電源)(ことに, β-ce1. 238Pu RTG)について, 現在実用化されている(人工)心臓ペースメーカーの場合を中心に, 欧米各国の報告の紹介, 著者らの動物実験での経験に併せて, また補助・人工臓器の場合は簡単に, 解説した.