著者
堀 紀子 山下 仁 津嘉山 洋 坂井 友実 西條 一止
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.340-344, 1996-12-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
7

当診療所において我々が鍼治療を行った五十肩の症例を集積し、鍼治療の効果について検討した。1) 21例の五十肩の症例が集積された。2) 鍼治療経過中に15例 (71%) の自覚症状が改善した。3) 鍼治療後に運動時痛の67%、安静時痛の44%、夜間痛の56%で一時的軽減 (数時間~数日間) を認めた。4) 治療後に疼痛軽減が得られなかった症例は、脱落する傾向がみられた。五十肩に対する鍼治療は、疼痛の軽減に対して効果的であった。また、運動療法の併用により、拘縮予防に役立つ期待がもたれた。
著者
私市 正年 清水 学 川島 緑 小牧 昌平 東長 靖 赤堀 雅幸 小林 寧子 栗田 禎子
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本報告は、現代イスラーム運動や民主化問題の背後にある民衆の役割と宗教運動について、歴史性と現代的諸状況とを総合的に比較しながら、その実態の分析を行なった調査・研究の成果概要である。東長と私市は、スーフィズムと聖者崇拝の原理と思想的本質の分析をすることによって、それが民衆イスラームを包含する多元的性格を有していることを解明した。小牧と川島は、それぞれ遊牧社会のアフガニスタンと農耕社会のフィリピンを事例にして、近代から現代初頭に関する新資料の調査、解読により、近代以降の当該社会の民衆がナショナリズムやイスラーム政治思想の形成に重要な役割を果たしていることを明らかにした。栗田は現代スーダンを事例に、イスラーム復興と民主化への動きにおいて民衆の担う役割を分析した。小林はインドネシアにおける宗教法改正案を分析し、その背後に民衆の「市民社会的権利」を拡大する努力を見出した。清水と赤堀の成果は、それぞれ中央アジアのイスラーム運動とエジプトの遊牧民を事例にして、地域ごとに異なるイスラーム運動の多様性および遊牧社会のイスラーム価値観の変容を明らかにした。両者の成果はステレオタイプ的イスラーム理解に対する鋭い批判であり、この視点こそ「民衆と宗教運動」の研究の意義、イスラーム社会を相対的に理解する重要性を示しているといえよう。また私市「北アフリカ・イスラーム主義運動の歴史」は、大衆に支えられた社会運動としてのイスラーム主義運動の総括的研究である。本研究プロジェクトを効率よく推進するため、高橋圭(研究協力者)が「民衆と宗教運動」に関する文献リストを作成した。また、民衆が関与するNGO活動の重要性にかんがみ、岡戸真幸(研究協力者)がエジプトの同郷者集団の調査を実施した。
著者
堀江 淳 直塚 博行 田中 将英 林 真一郎 堀川 悦夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.DbPI2373, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 呼吸困難感受性(Borg Scale Slope(BSS))、運動時呼吸困難閾値(Threshold Load of Dyspnea(TLD))と身体機能、運動耐容能との関係を分析し、BSS、TLD評価から推測できる影響要因とその対応策について検証すること。【方法】 対象は、病状安定期にある慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者13例(全例男性)、平均年齢71.1±6.9歳、BMIは22.5±4.2kg/m2)であった。肺機能検査は、%FVCが97.8±20.6%、FEV1.0%が51.2±22.7%、%FEV1.0が57.3±24.3%であった。modified Medical Research Council(mMRC)息切れ分類は、Grade1が7名、Grade2が6名であり、GOLD病期分類はstage 1が3名、stage 2が4名、stage 3が4名、stage 4が2名であった。除外対象は、重篤な内科疾患を合併している者、歩行に支障をきたすような有痛性疾患を有する者、研究の主旨が理解出来のない者とした。 BSS、TLDは、1分間に10wattのramp負荷で心肺運動負荷テスト(CPX)を実施、1分ごとに修正ボルグスケールにて呼吸困難感を聴取し算出した。また、CPXの測定項目は、最高酸素摂取量Peak V(dot)O2、酸素当量、炭酸ガス当量、Dyspnea Index(DI)、O2 pulse変化量、SpO2変化量とした。その他の測定項目は、気道閉塞評価(FEV1.0%、%FEV1.0)筋力評価(握力、大腿四頭筋力、呼吸筋力)、6分間歩行距離テスト(6MWT)、漸増シャトルウォーキングテスト(ISWT)、長崎大学呼吸器疾患ADLテスト(NRADL)とした。 統計解析方法は、BSS、TLDとCPXの測定項目、その他の測定項目の関係をPearsonの積率相関係数で分析し、相関係数0.5以上を相関ありとした。また、mMRCのgrade 2と3の比較をPaired t検定で分析した。なお、帰無仮説の棄却域は有意水準5%未満とし、統計解析ソフトはSPSS version 17.0を使用した。【説明と同意】 本研究は、ヘルシンキ宣言に沿った研究として実施した。対象への説明と同意は、研究の概要を口頭及び文章にて説明後、研究内容を理解し、研究参加の同意が得られた場合のみを本研究の対象とした。その際参加は任意であり、測定に同意しなくても何ら不利益を受けないこと、また同意後も常時同意を撤回できること、撤回後も何ら不利益を受けることがないこと、個人のプライバシーは厳守されることを説明した。【結果】 TLDは、FEV1.0%(r=0.61)、%FEV1.0(r=0.56)、6MWT(r=0.90)、SWT(r=0.85)、NRADL (r=0.87)と有意な相関が認められ、V(dot)O2(r=0.53)、DI(r=-0.56)は有意ではないものの相関が認められた。一方BSSは、全ての項目と有意な相関が認められなかった。mMRCのgrade 2と3の比較において、TLDは、grade 2がgrade 3より有意に息切れの出現が遅かったものの(p<0.05)、BSSは、grade 2とgrade 3に有意な差は認められなかった。【考察】 COPD患者の運動耐容能、ADLを改善させるためには呼吸困難感の感受性ではなく、呼吸困難感の閾値を低下させること、所謂「感じはじめてからの強くなり易さではなく、如何に感じはじめることを遅らせるか」の重要性が示唆された。TLDを鈍化させる対策として、運動時の気管支拡張剤を有効に活用し気道閉塞の程度を可及的に改善すること、換気予備能をもたせることが考えられ、それにより運動耐容能、ADLを改善させる可能性を有するのではないかと考察された。【理学療法学研究としての意義】 COPD患者の運動耐容能トレーニングの重要性は認識され、多くの施設で理学療法プログラムに取り入れられている。しかし、運動時の呼吸困難感を詳細に評価し、患者個人に合わせた気管支拡張剤の有効活用を行いながら、理学療法を実施している施設はごく一部である。本研究は、少数例ながら運動時の呼吸困難感を詳細に評価し、その影響要因を明確にし、今後の運動耐容能、ADL改善のための呼吸困難対策について考察できたことは、意義深い研究となったものと考える。
著者
堀,正剛
出版者
日本生薬学会
雑誌
生薬学雑誌
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, 1964-06-20

The color tone and viscosity of the Japanese honey was examined. The nearly maximum chromaticity of the Japanese honey was 580〜590 mμ represented by CIE system. The viscosity of the honey between 20 to 45 was related to the temperature and the content of the water, as the following equation: W=(-0.87t+91.5)/(logη) where, W, water content (%); t, temperature (℃), and η, viscosity(centi poise) respectively.
著者
中尾 教子 堀田 龍也
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.30, no.Suppl., pp.133-136, 2006-12-20 (Released:2016-08-03)
参考文献数
5

学校の情報化を支える専任的外部人材に求められる業務を明確化,体系化するために,4分類135項目からなる標準化リストを開発した。これを用いて,3地区12名の専任的外部人材の業務を分析した結果,地方自治体や担当校ごとの業務バランスの違いや個人の業務特性を指摘することができた.このことにより,開発された標準化リストには,業務評価を行う際に,一定の識別力があることが確認された.
著者
林 豊 小柳 貴俊 泉 愛 吉松 直美 井ノ上 俊哉 堀 優子 斎藤 未夏
出版者
九州大学附属図書館
雑誌
九州大学附属図書館研究開発室年報 (ISSN:18813542)
巻号頁・発行日
no.2018, pp.21-27, 2019-07

九州大学附属図書館では,2018年10月より,インターネットで公開している所蔵貴重資料等のデジタル化画像の二次利用を大幅に自由化(オープン化)した.同時に,デジタル化されていない貴重資料等の二次利用手続きについても簡素化を果たした.本稿では,この取組みの概要,検討の過程,利用者からの反響,今後の展望について紹介する.
著者
林 豊 大村 武史 堀 優子
出版者
九州大学附属図書館
雑誌
九州大学附属図書館研究開発室年報 (ISSN:18813542)
巻号頁・発行日
no.2018, pp.14-20, 2019-07

九州大学附属図書館では,図書館業務の改善を目的として,2019年3月よりヌーラボ社の販売するプロジェクト管理ツール「Backlog」(バックログ)の有料プランを導入し,正式運用を開始した.本稿では,導入の背景,試行運用の様子,運用方針の概要,今後の課題等についてまとめる.
著者
富山 潤 須田 裕哉 崎原 康平 山田 義智 堀口 賢一 岡部 成行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.11-23, 2019
被引用文献数
2

<p> 琉球大学では,点検に多くの制約を受ける離島架橋に対して戦略的イノベーション創造プグラム(Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program:SIP)インフラ維持管理・更新・マネジメント技術の開発技術のひとつであるひび割れ画像解析技術の実証実験を行い,目視点検の結果と良い相関を得た.この結果は橋梁管理者に評価され,本技術が実橋梁の点検業務の一部に利用された.本技術の実証実験に対する沖縄での取り組みは,新技術を地域実装に導いたひとつの実装モデルといえる.</p><p> 本論文では,本技術が実証実験から地域実装に至った取り組み,経緯および課題について考察する.さらに,新技術のコストメリット,効率性および高度化についても考察する.また,新技術の地域実装を通して新しい技術開発が行われた事例についても紹介する.</p>
著者
堀籠 教夫
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.91-98, 1996-02-10 (Released:2018-03-02)

ベイズの定理そのものは比較的構成が簡単であるが、従来の客観的統計と大きく異なる点は事前分布という分布の導入にそのすべてが凝縮されている。つまり、事前分布に個人の経験等が入るためであり、この定理が主観統計と言われるゆえんである。ここでは指数分布を取り上げて、この分布にベイズの定理を当てはめた2つの場合を取り上げる。1つはアイテムのバーンイン時間の決定についてであり、もう1つはこの定理を指数分布に当てはめて表現した場合について取り上げる。いずれもベイズ特有の計算等が入るがそれらについても詳述し解説する。
著者
堀尾 尚志 居垣 千尋 佐々木 圭一 牧 大助
出版者
神戸大学農学部
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.117-122, 1982

Among the steering modes of farm tractor, the crab-steering has hardly been taken up in production and also in research. That mode of steering may be unapplicable to manual operating that has made familiar with normal mode of steering for long time, but because the vehicle with that mode can always hold its body in a certine direction, that type has a profitable property for the automatic guidance in field operation, and positional relation of sensor and implement is one-dimensional problem and attaching point of sensor to body is unrestricted. This type vehicle can not turn, but travelling of field operation necessitates no turning in many kinds of operations except at head land. At head land, it may be solved to change steering mode. The authors aspect to the property of crab-steering and aimed to develop the automatic guidance system with this steering mode. In this paper, the stability of relay-control system of automatic guidance was considered with describing-function method, and the results of tracking tests with trial vehicle were discussed and considered by means of time varying Fourier coefficients of tracking pass.
著者
城島 クニ子 堀川 蘭子 浜口 陽一
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.325-329, 1970-07-01 (Released:2009-11-16)
参考文献数
9

11種の魚卵について, そのタンパク質源としての栄養価を検討した。1. 各種魚卵のアミノ酸組成はTry, 含硫アミノ酸に不足するが, 他のアミノ酸組成は鶏卵に匹適する優れたものであり, 特にLysを豊富に含む。2. ケミカルスコアは47~62, EAA indexは85~92であった。3. 生鮮魚卵のNPUは56~69, NPRは3.7~4.9でEAA indexとの間にそれぞれ相関があった。またケミカルスコアとも関連が認められた。4. 11種の中ではサワラ, ハモ, ブリ, タラが比較的良く, カマス, カレイ, サバは劣る。5. 加工による影響はそのアミノ酸組成には現われないが, NPUを著しく低下させる。
著者
大川 直樹 今堀 誠一 柿崎 聡 城戸 麻千子 山科 起行 三石 裕之 寺部 和伸 符 罕 グエン ビンティ タイン 郷 隆之
出版者
石油技術協会
雑誌
石油技術協会誌 (ISSN:03709868)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.243-255, 2016 (Released:2018-05-09)
参考文献数
19
被引用文献数
6

The exploration well named METI Joetsu Kaikyu (JX) was drilled in the “Buri” structure in the Joetsu Basin from April through July, 2013. The “Buri” structure is located in the Joetsu Knoll at the eastern edge of the Sea of Japan, offshore Niigata Prefecture, Japan.This well reached down to 3,110mMDBRT and confirmed the Haizume, Nishiyama, Shiiya (Pliocene), Upper Teradomari (Upper Miocene) and Lower Teradomari (Upper Miocene) Formations. Those formations were mainly composed of interbedded sandstone and mudstone with minor tuff. Four key beds, “P tuff”, “Q tuff”, “S tuff” and the fossil marker of “Blue Zone” which are identified in the Niigata Basin were also recognized in this well.Several hydrocarbon shows were encountered in the target sections between the Shiiya and Lower Teradomari Formations. The methane gas shows were observed in the main part of the Shiiya Formation without any oil shows. Several minor oil and gas shows were encountered between the basal part of the Shiiya and Lower Teradomari Formations.Although the hydrocarbon accumulations have not been discovered, valuable subsurface information such as stratigraphy, geochemistry and rock properties has been acquired in the well, which contributes to a further understanding of the petroleum system and future hydrocarbon exploration in the Joetsu Basin.
著者
堀 哲郎 有村 章 ECKHART Simo 武 幸子 高木 厚司 片渕 俊彦 粟生 修司 SIMON Eckhart RIEDEL Walte SIMON Eckhar
出版者
九州大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

本年度は2年計画の2年目に当たり、以下のような成果を得た。1.侵害環境適応反応発現を媒介する神経活性物質の作用機序の解明in vivoマイクロダイアリシス法により測定した無麻酔ラット前頭前野のノルアドレナリン(NA)放出は、拘束ストレスによって亢進し、この反応は、corticotropin-releasing factor(CRF)の脳室内前投与によって著明に減弱した。また、CRFの脳室内投与で、前頭前野のNA放出は増加した。従って、拘束ストレスによって脳内のCRF系が活性化され、その結果前頭前野でのNA放出が増加すると考えられた。2.侵害環境適応反応発現における脳サイトカインの作用機序の解明(1) 脳スライス標本におけるIL-1βの迷走神経背側運動核(DMV)ニューロンに対する作用:IL-1βはDMVニューロン幕に直接作用し、プロスタグランディン(PG)系物質を介して抑制性に作用することを示した。IL-1βによる胃酸分泌抑制機序の一つと考えられる。(2) ラット侵害受容行動に対するIL-6の作用:ラットの脳室内にIL-6を注入すると、用量依存性にホットプレートテストによる痛覚過敏が観察された。この反応は、α-MSHの前投与で阻害され、また、脳内PG系物質の産生を介していることが明らかになった。(3) IFNαによる免疫抑制反応の脳内作用部位の同定:IFNαを視床下部の各部位に微量注入し、脾臓ナチュラルキラー(NK)細胞活性を測定したところ、内側視索前野(MPO)注入時のみでNK活性の低下が観察された。3.侵害環境適応反応発現におけるサイトカインの媒介物質機構としてのアラキドン酸代謝系の関与の解明PGE2をラットMPOに微量注入すると、脾臓NK細胞活性が有意に抑制された。ラット脾臓交感神経の活動は、PGE2のEP1受容体アゴニストの脳室内投与でPGE2と同様亢進し、EP2アゴニストでは変化しなかった。さらに、PGE2による反応が、EP1アンタゴニストでブロックされたことから、PGE2による脾臓交感神経活動の亢進は、脳内EP1レセプターを介していると考えられた。4.肝門脈血液中のエンドトキシン(LPS)濃度の測定(1) 実験を始める前に、今回使用した高感度LPS測定法の回収率を確認した。既知の標準LPS溶液を正常血漿中に加え、検体を氷冷していた場合、その回収率は90%以上であったが、37度で10分間インキュベーションしてやると血漿中の添加した標準LPS量は、約1/3に低下してしまうことがわかった。血漿中には補体などのLPSを非活化する種々の因子の存在が報告されており、検体の温度管理がたいへん重要であることが明らかとなった。(2) 肝門脈血液の安静時LPS濃度は、一般静脈血のそれと比較して約30%高値を示した。拘束ストレス負荷により肝門脈中のLPSレベルは拘束負荷30分後に基礎値の約3倍まで上昇したが、1時間の拘束を加えているのに関わらず、拘束開始1時間後には下がり始め、2時間後(拘束終了1時間後)にはほぼ基礎値に戻った。5.肝クッパー(K)細胞のIL-6産生に及ぼすノルアドレナリン(NA)の作用(1) K細胞の一次培養系を用いて、NAが、IL-6の産生に及ぼす効果を観察した。その結果、NAの濃度(10nM-100μM)に依存して、IL-6の産生量が増加した。しかし、その効果は最大でも基礎分泌量の約30%増加に過ぎなかった(NA,10μM)。(2) K細胞のLPS刺激によるIL-6の産生能は、用量依存的(1ng/ml-1μg/ml)に著明に増加した(約10倍)。さらに、NAの同時投与はこのLPSの効果を約30%増強した。(3) 上記の結果より、拘束ストレス時の末梢IL-6増加反応では、腸管由来のLPSが肝でのIL-6産生の直接因子となり、交感神経の終末より遊離されるNAが増強因子となっている可能性が示唆された。
著者
堀田 敬介
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.123-141, 2015 (Released:2018-04-06)
参考文献数
38

一票の最大格差を最小にすることを目的とした最適化モデルをつくり最適解を求めると,与えられた総定数のもとでの格差限界値が得られる。総定数295議席や73議席を47都道府県に議席配分する際の一票の限界格差は,それぞれ1.598倍,4.311倍である。議席配分時に格差が拡大する最も大きな要因は,総定数と都道府県を地域として採用していることである。この条件を緩める施策の一つとして合区や総定数の変更がある。本研究では,これらが最大要因であること,及び,最適化モデルによる限界値分析によって,これらが格差に与える影響を明らかにする。
著者
宇野 敦彦 中川 あや 堀井 新 武田 憲昭 久保 武
出版者
Japan Society for Equilibrium Research
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.213-222, 2006 (Released:2009-06-05)
参考文献数
52
被引用文献数
2

Motion sickness is induced by unusual patterns of spatial information input, but not by a simple strong acceleration. Thus, in the process of the development of motion sickness, the disturbance of spatial orientation is noticed somewhere in the brain, leading to the expression of autonomic signs and symptoms. What part of the brain plays this key role?Peripheral vestibular input has repeatedly been proven to be necessary for motion sickness, even for visually-evoked motion sickness. The vestibular nucleus in the brain stem where spatial information including visual and somatosensory as well as vestibular inputs converge, is the primary candidate for this key structure. In the higher brain, the limbic system, particularly the amygdala, is another candidate. In our rat animal model, bilateral amygdala lesions significantly suppressed motion sickness signs, whereas hippocampus lesions did not. Using cFos protein expression as a marker for neuronal activation, we also showed that the central nucleus of the amygdala was activated by vestibular information during the hypergravity stimulation that induced motion sickness in rats.Involvement of the amygdala may explain some characteristic features of motion sickness, such as its diversity of signs ranging from sympathetic to parasympathetic, and its conditioned occurrence where by some susceptible persons become sick even in motionless vehicles.
著者
宇井 美樹 安田 英之 柴田 柾樹 丸山 孝 堀田 博 原 利男 安田 環
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.38, no.12, pp.1098-1102, 1991
被引用文献数
17

緑茶より抽出精製したカテキン類の口臭抑制効果を判定するため,CH<SUB>3</SUB>SHに対する消臭力,及び唾液にカテキン類を添加し,L-Metと共にインキュベート後発生したCH<SUB>3</SUB>SHを定量し,そのCH<SUB>3</SUB>SH産生抑制効果を測定した.また,カテキン類を添加したチューインガムを試作し,そのCH<SUB>3</SUB>SH産生抑制効果を判定した結果,以下の結論を得た.<BR>(1) カテキン類は強いCH<SUB>3</SUB>SH消臭力を有し,この効果は,従来より口腔内消臭剤として汎用されているSCCの効果をかなり上回るものであった.<BR>(2) 緑茶に含まれる4種のカテキンについて消臭力の測定を行った結果,その効果は,EC<ECg<ECG<EGCgの順に優れており,構造と消臭効果との相関関係が示唆された.<BR>(3) 唾液にカテキン類を添加し,これを24時間インキュベートした結果,L-Metを基質としたCH<SUB>3</SUB>SHの発生はコントロールと比較して,著しく抑制された.また,この効果はSCCの効果よりも強かった.<BR>(4) カテキン類を添加したチューインガムを試作し,唾液のCH<SUB>3</SUB>SH発生量を指標として,その口臭抑制効果について評価を行った結果,カテキン0.01%添加ガム咀嚼後においても,CH<SUB>3</SUB>SH発生は顕著に抑制された.<BR>以上のことからカテキン類は,口臭原因物質として注目されているCH<SUB>3</SUB>SHに対し,優れた消臭作用とその産生を抑制する作用を持つものと推定された.また,カテキン類を添加したチューインガムは,口臭抑制の目的で効果的であると考えられた.
著者
藤代 準 堀 哲夫 金子 道夫 小室 広昭 楯川 幸弘 瓜田 泰久 工藤 寿美 星野 論子 神保 教広 坂元 直哉
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.226-230, 2011
参考文献数
13

直腸刺杭創は転落・転倒等により生じる稀な鈍的外傷であり,一般に深部の臓器損傷と体表創の程度が必ずしも一致しないため,受傷程度の評価が難しく,診断・治療に難渋することもある.われわれは腹膜翻転部の上下に2箇所の穿孔を生じた稀な直腸刺杭創の1例を経験したので報告する.症例は6歳女児で,ビニールプールで遊んでいた際水鉄砲の内筒が肛門に刺入した.出血が止まったので自宅で様子を見ていた.同日夜より腹痛・発熱を認めたため翌日前医受診,CT検査にて消化管穿孔と診断され,当科搬送となった.直腸刺杭創が原因と考え,同日緊急手術を施行した.腹膜翻転部直上の直腸前壁に2.5cmの穿孔を認め,穿孔部閉鎖,洗浄,人工肛門造設術を施行した.術後の直腸造影にて腹膜翻転部より肛門側に別の穿孔部を認めた.受傷後5か月で人工肛門閉鎖術を施行した.直腸刺杭創の治療の際には,術中に腹腔側から観察できない腹膜翻転部以下の下部直腸の精査が重要である.
著者
小池 宙 堀場 裕子 渡辺 賢治
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.178-183, 2016 (Released:2016-08-18)
参考文献数
31
被引用文献数
1

はじめに:抑肝散加芍薬厚朴に良好な反応を示した不随意運動を有した1例を経験したので報告する。症例:17歳の男性。6年前から突然体が反り返るような痙攣様の不随意運動を認めていた。精神科・神経内科等を受診し加療を受けるも改善を認めていなかったため,漢方治療を希望し受診した。抑肝散加芍薬厚朴を煎剤にて開始したところ不随意運動は徐々に軽減した。考察:抑肝散は明代の薛已の創方とされる。江戸時代に日本に伝えられ,様々な加味方も使用された。大塚敬節は先人の加味方を基礎に抑肝散加芍薬厚朴を考案し使用した。抑肝散加芍薬厚朴はエキス剤にないため昨今では使用される機会は多くないが,本例のように有効な緊張興奮を伴う症例には有効である。抑肝散との使い分けについては今後さらに研究が必要であると考えられる。