著者
小川 紹文 山元 剛 KHUSH Gurdev S. 苗 東花
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.523-529, 1991-09-01
被引用文献数
5

イネ白葉枯病抵抗性に関する研究は主に日本と国際稲研究所(IRRI),フィリピンで行われてきたが,植物防疫上病菌の相互交換が行えなかったため,両国のみならず各国のイネ白菜枯病抵抗性に関する研究結果は相互に比較検討出来なかった.このため,日本農林水産省とIRRIはイネ白菜枯病抵抗性に関する研究の相互比較を行うと共にその共通基盤を作成するため,1982年に共同研究を開始した.すなわち,日本とIRRIの判別品種をフィリピン産及び日本産白菜枯病菌レースを用いて分析し,抵抗性遺伝子を一つずつもつ準同質遺伝子系統の育成をして,イネ白菜枯病菌レースの国際判別品種を確立することとした.その結果,1987年に準同質遺伝子系統の一組が育成され(OGAWA et al.1988),最近その準同質遺伝子系統を供試した研究結果も公表され始めた.このため,その準同質遺伝子系統の育成経過とその育成主体を明らかにするため本報告を行った.
著者
村瀬 弘 中嶋 正敏 伊藤 幸郎 島本 達夫 小川 小夜 前沢 秀憲
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.765-769, 1973
被引用文献数
2

膵十二指腸動脈瘤を術前に診断し,摘出に成功した1例を報告する.膵十二指腸動脈瘤の報告は,今日までに18例にすぎず,希な疾患とされている.手術成功例は9例,術前診断例は2例である.本邦ではまだ報告がなく,本症例が第1例である.患者は48才の主婦.生来健康であったが,昭和47年5月頃から腰痛が続く.近医で第3腰推右側の直径約3cmの半円形石灰化像より腹部大動脈瘤を疑われ,8月31日に当科受診した.胸部,腹部に異常所見はなく,血圧142/84.検査では,血清アミラーゼ値の一過性異常, PS試験で膵外分泌能低下,糖負荷試験で糖尿病型を示すほか,とくに異常はなかつた.動脈撮影で,前下および前上膵十二指腸動脈におのおの1個の動脈瘤を認めた.前下膵十二指腸動脈瘤壁は,前記石灰化像と一致した. 11月30日開腹し, 2個の動脈瘤を摘出した.ともに動脈硬化性であつた.術後は一過性に膵液のうつ帯をきたしたが,以後の経過は良好で,昭和48年2月13日に退院した.
著者
坪井 孝夫 小川 輝繁 宇高 義郎 三宅 淳巳 石井 一洋
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

炉心溶融時に生ずる水素に起因するデトネーションに関して、3年間に以下の研究成果を得た。(1)炉心溶融時の雰囲気中に存在する水蒸気がデトネーションへの遷移(DDT)に及ぼす影響を実験的に調査するために、水蒸気濃度を0%から4-5%へと変化させた結果、全長13mのデトネーション管では3-8%の水蒸気を含む混合気ではDDTが生じなかった。実験条件によりこの限界は変化した。衝撃波管を用いた実験では、DDTが生ずるまでの誘導時間は、水蒸気濃度と初期温度に強く依存した。(2)局部的に混合気濃度が異なる場合、すす膜観測より、通常のすす膜構造と異なる規則的模様が観測され、複数の燃焼形態か混在することが観察された。(3)生じたデトネーションが構造物間の狭い空間を伝播する際の挙動については、間隙長一定の場合に、デトネーションのセルサイズが同一であっても混合気の組成によって伝播形態が大きく異なった。さらに混合気の組成(当量比、窒素およびアルゴン希釈割合)を大きく変化させた場合は、同一のセルサイズに対しては水素過剰混合気の方が速度欠損が大きかった。同一希釈量では、窒素希釈の方がアルゴン希釈よりも間隙内速度欠損が大きかった。(4)デトネーション管端にステンレスチューブを複数本最密になるよう挿入し、チューブ内径および長さがDDT過程に及ぼす影響について調べた結果、チューブの挿入によりDDT距離が大幅に短縮された。本研究の遂行にあたり、石井一洋、三宅淳巳、坪井孝夫と同行の大学院生がアーヘン工科大学を訪れ、アーヘン大学のオリビエ教授、シュミット助手、ビークリング助手、グレーニッヒ教授を招聘し、研究打ち合わせ並びに共同実験を行った。
著者
小川 泰弘 釜谷 聡史 マフスット ムフタル 稲垣 康善
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.11, no.5, pp.39-61, 2004-10-10 (Released:2011-03-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1

機械翻訳に対する要求の高まりに伴い, 日本語や英語, 韓国語といった言語の翻訳に関する研究が進み, 実用的なシステムが構築されつつある. その一方で, そうした研究があまり進んでいない言語が存在する. こうした言語においては, 翻訳の要である対訳辞書の整備も遅れている場合が多い. 一般に対訳辞書の構築には高いコストが必要であり, 機械翻訳システムを実現する上での障害となっている. しかし, 人間が翻訳作業をする場合, 対訳辞書に記載がない単語を別の表現に言い換えて辞書を引くことにより, この問題に対処する場合がある. 本研究ではこの手法を模倣し, 未登録語を登録語に言い換えることにより対訳辞書を拡充することを提案する. 本論文では, 対訳辞書の拡充に必要な単語の言い換え処理を収集段階と選抜段階の二つに分割し, 前者において語義文に基づく手法を, 後者において類似度に基づく手法をそれぞれ適用した. また, 類似度に基づく手法では, シソーラスにおける概念問の距離に加え, 単語を構成する漢字の語義を利用した. これによって, 語法や概念が近く意味的にも等価な言い換えを獲得できた. さらに, 獲得した言い換えを翻訳システムで翻訳して日本語一ウイグル語対訳辞書への追加を試みたところ, 未登録語300語のうち, その68.3%に対して利用可能な対訳が得られた.
著者
小川 修史 田中 昌史 掛川 淳一 森広 浩一郎
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 : 日本教育情報学会学会誌 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.3-14, 2012-02-10

継時的な比較による児童の変容把握を目的として,小規模校では長期間にわたり継続して比較的短い文書を児童らに記述させる形式の実践が多く行われている.このような実践においては,教師はある時点の文書と自己の児童に関する記憶を比較することで児童の変容を把握していくが,児童数が少なくても長期間にわたり蓄積されていく文書であるため,教師の負担は大きく,記憶内容を忘却あるいは誤認識してしまう可能性がある.そのため,長期間蓄積された文書の分析を支援する仕組みが有用であると考えられる.そこで,本研究では教師に文書集合の特徴的な表現を提示し,それらの表現を手掛かりに文書を分析していく枠組み,つまりテキストマイニング導入のための検討を行っている.本稿では小規模校における継続的な実践で蓄積された文書集合を学期毎にテキストマイニングし,比較することにより抽出された特徴表現の有用性について検討する.
著者
船橋 亮 槙山 和秀 土屋 ふとし 杉浦 晋平 三好 康秀 岸田 健 小川 毅彦 上村 博司 矢尾 正祐 窪田 吉信
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.133-137, 2005-02

症例1(42歳男性).患者は他院で左精巣腫瘍(seminoma)の高位除精術を受け,その3年後にseminoma縦隔転移で化学療法を施行した.腫瘤は縮小したが,肝機能障害およびAFP高値(40ng/ml)遷延し,今回紹介入院となった.C型肝炎の活動性上昇からAFPのLCA分画測定を行い,化学療法による肝機能障害でC型肝炎の活動性が惹起されAFPが上昇したとの判断で経過観察とした.その結果,10ヵ月経過現在,AFPは13.4ng/mlまで下降した.症例2(30歳男性).患者は左精巣腫大で紹介入院となり,AFPは45ng/mlであった.左高位除精術を行なったところ,病理診断ではceminomaであった.化学療法後もAFPは29.1ng/mlで,LCA分画測定結果から更に化学療法を追加した結果,AFPに変化なかったものの,化学療法休薬中にもAFPは上昇せず経過観察となった.2年経過現在,AFPは20ng/ml台で推移しており,再発は認められていない
著者
加藤 健一 小川 哲司 小林 哲則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLC, 言語理解とコミュニケーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.442, pp.25-30, 2006-12-15

本稿では,特徴変換にブースティングの枠組を適用した識別器統合手法を提案する.一般的に,複数の識別器を統合するとき,識別性能は向上することが期待できる.しかし,識別器の統合にあたって,二つの重要な課題がある.一点目は,統合する識別器各々の誤り傾向が異なっていなければ(相補性がなければ),わずかな性能の改善しか得られない点,二点目は,相補的な識別器が生成されたとしても,各々の識別器が与える情報の統合手段が適切でない場合,やはりわずかな性能の向上しか得られないという点である.そこで本稿では,上述した二点を考慮した上で,相補的な識別器の生成手法と,その統合手法について検討を行う.相補的な識別器を生成するにあたっては,Heteroscedastic linear discriminant analysis (HLDA)に基づく特徴変換の過程でブースティングの枠組を適用した.また,統合においては,各々の識別器から出力される尤度の情報を特徴ベクトルとし,このベクトルが張る空間上でSupport vector machine (SVM)に基づくパターン認識を行った.提案手法により識別器を統合することで,孤立単語音声認識実験において,統合前と比較し74%の誤りが削減されることがわかった.
著者
緒方 一喜 田中 生男 小川 智儀
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.241-245, 1975
被引用文献数
7

Field surveys of the distribution of domiciliary cockroaches were conducted in Tokyo and Kawasaki during the period between 1972 to 1974. In Tokyo, dead cockroaches collected from various types of buildings following insecticide treatment by pest control operators were brought to the laboratory and identified. Among a total of 286 buildings surveyed, 172 (60.1%) were restaurants and snacks, 25 (8.7%) offices, 14 (5.0%) food factories, 12 (4.2%) residences and 12 (4.2%) supermarkets. A total of 2,802 cockroaches was collected including Blattella germanica (93.7%), Periplaneta fuliginosa (4.8%), P. japonica (0.5%), P. americana (0.8%) and P. australasiae (0.2%). However, the findings cannot be taken to represent the general tendency of cockroach infestation in Tokyo since a disproportionately high number of restaurants and offices, which are the principal clients of pest control services, were surveyed. A correlation between the type of structural property and established cockroach species was examined and a dominance of B. germanica was shown in all cases. This was especially striking in the case of structures constructed within the past 5 years. In Kawasaki, a total of 145 cockroach adhesive traps were set in offices, restaurants, stores, apartments, residences and farm houses on two occasions in both summer and winter. Species compositon of trapped 1,755 individuals was B. germanica (78.6%), P. fuliginosa (20.7%) and P. japonica (0.7%). B. germanica was dominant over P. fuliginosa in offices, apartments, restaurants and stores, while the opposite was true for residences. In farm houses, P. fuliginosa was most abundant followed by P. japonica. A distinct tendency for the abundance of B. germanica in urban buildings, P. fuliginosa in residences and P. japonica in farm houses was observed. Furthemore, P. japonica has never been trapped during winter, suggesting that they had entered diapause.
著者
小川 晶
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.51-62, 2011-08-30

高学歴・高齢初出産母子の中には,子どもが生まれたことでそれまでの仕事中心の生活の変換を余儀なくされることも多く,そのような家庭への支援には困難を伴うのが常である。増加傾向にある高学歴・高齢初出産母子への支援の難しさを解くことは保育実践上の今日的課題と言えよう。そこで本論文の目的は,高学歴・高齢初出産母子への支援のあり方について一つのモデル構築を試みることである。そのためにここでは,母親との関係構築に困難を伴った筆者自身の母子支援実践過程から保育者と子ども,母親と子ども,保育者と母親の関係性の変容過程を取り出し,エピソード記録を中心とする質的研究の方法をとって分析した。その結果,母親の価値観を変えるためには,子どもがより良く変わるプロセスを可視化して示すことが必要であること。また,社会的志向が高く,職業キャリアを積んでいる女性としての母親への寄り添いが必要であること。さらに,複雑化する双生児の母子関係形成を解かり易く示す必要があることが分かった。
著者
渡辺 俊明 小川 健治 勝部 隆男 平井 雅倫 矢川 裕一 梶原 哲郎
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.1092-1092, 1991-12-25

第11回学内免疫談話会 平成3年7月6日 東京女子医科大学臨床講堂I
著者
岡田 仁志 小川 賢
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.83, pp.21-26, 1999-10-09

「理想的電子マネー」が存在しない現時点において、電子マネーの導入決定権者が合理的な選択を実現することは容易でない。本稿はDEA分析とAHP法を利用して電子マネーの選択を支援する枠組みを提案する。電子マネーを評価する基準として、()セキュリティのレベル、()顧客プライバシー保護の程度、()運営コストの多寡、()使いやすさの度合い、の4つをとりあげた。これらの観点に基づき、スーパーキャッシュ()、VISAキャッシュ()、モンデックス()、デビットカード()の4種類の電子マネー類を対象に優位性を問うアンケートを実施し、投票データから電子マネーの優位性を明らかにすることを試みた。It is not easy to select a type of electronic money, because there is no perfect type. We enforced a questionnaire about 4 types of electronic monies, which are Super Cash, VISA Cash, Mondex, and J-Debit. The viewpoints to evaluate them were security level, privacy protection level, cost performance, and usefulness. Then we tried to analyze the predominance of electronic money, with the methods of AHP (Analytic Hierarchy Process) and DEA (Data envelopment analysis).
著者
眞次 康弘 中塚 博文 豊田 和広 小川 尚之 大城 久司
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.1452-1456, 2001-09-01
被引用文献数
26

原発性虫垂癌5例を経験した.当院における虫垂癌の頻度は切除虫垂の2.02%(247例中)切除大腸癌の1.39%(361例中)であった.(1986年7月〜2000年3月)内訳は男性3例, 女性2例, 平均年齢59.2歳.術前診断は虫垂炎4例, 虫垂粘液瘤1例, 組織診断は通常型腺癌3例, 嚢胞型腺癌2例であった.術式は回盲部切除3例, 結腸右半切除2例, 虫垂切除後2期的手術が3例であった.虫垂癌の早期発見には虫垂炎症例に対し術前画像検査, 術中の注意深い検索, 術後の病理組織学的検索を行うことが重要である.術式では浸潤癌にリンパ節郭清を伴う根治手術を, 術前診断の困難な早期虫垂癌に対して虫垂切除を行うことは矛盾はないと考えられた.追加手術としてsm癌は浸潤癌に準ずる手術を, m癌は断端陰性かつ断端処理が可能であれば虫垂切除術でよいと考えられたが, まだ症例数が少なく今後さらなる症例の蓄積と予後調査が必要である.
著者
加藤秀一 堀江 憲一 小川 克彦 木村 重良
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.61-69, 1995-01-15
参考文献数
12
被引用文献数
6

コンピュータシステムの使いやすさや分かりやすさ(ユーザビリティ)を、誰もが客観的に手軽に評価できるHI(ヒューマンインタフェース)設計チェックリストを開発しその有用性を検証した。本チェックリストは、(1)専門家でなくとも便いこなせ、(2)信頼性・客観性の高い定量的な結果が得られ、さらに、(3)実際に、改善にまで直結できること、を主な目的に開発された。合計133のチェック項目により、画面(9セクション、69項目)と操作性(7セクション、64項目)がチェックできる。チェック緒果は、先に開発したHI設計ガイドラインヘの適合度を表わす定量的な値で得られ、チェック項目やセクション間のバランス評価、他システムとの比較評価ができる。一方、本HI設計チェックリスト自身のユーザビリティを検証するため、4名の被験者の、半年間こわたるチェックデータやチェック時間を分析した結果から、チェックリストの末経験者でも、インタフェースの不適合な箇所を、客観的かつ網羅的に、短時間で検出できることを確認した。また、HI設計チェックリストで、運用/開発中のコンピュータシステムのユーザビリティを評価した結果から、HI設計時に見落とされやすい(守られない)ガイドライン項目や、レビュー時に重点的にチェックすべき項目を抽出できた。これらのユーザビリティ評価を通して、HI設計チェックリストの有用性が検証できたと考えている。